黒薮哲哉
同志社大学の元教授・浅野健一氏が、顔写真入りで『世界日報』(1984年11月21日付)にコメントを提供していたことが分かった。『世界日報』は統一教会の機関紙である。

ジャーナリストが自分の記事やルポを発表する媒体に制限はない。媒体の編集方針に迎合して自らの主張を曲げない限り、記事の内容そのものがおかしい場合を除いて、原則として問題はない。しかし、浅野氏の場合には二つの考察点がある。
『世界日報』に掲載された浅野氏のコメントは、日本の刑事裁判に対する批判と犯罪報道の在り方に関するものである。この点に踏み込む前に、『世界日報』が浅野氏にコメントを求めるに至った事件を紹介しておこう。
昭和55年9月、朝日新聞と毎日新聞は、同志社大学の教授が15歳の少女を催眠にかけていたずらをしたとする趣旨の記事を掲載した。教授は無実を訴える遺書を残して自殺した。その後、教授の遺族が名誉毀損を理由に朝日新聞社と毎日新聞社を提訴したが、事件は和解によって解決した。
浅野元教授は、刑事裁判について、「もし、その人が百パーセント確実に犯罪者だとしても、その人を裁くのは国家権力であり、国家権力は法律を厳守して行う」(略)、「警官や検察官、裁判官でもその判断が間違うことがある」と述べ、それを前提に、「何の専門的訓練も受けていない新聞記者が」彼らに代わって判断を下してはいけないと述べている。
このような見解を踏まえた上で、浅野氏は次のように結論付けている。
「こうした悲劇を防ぐには、新聞は通常犯罪事件の調査報道をやめるよう提言したい。」
「通常犯罪事件」が具体的に何を意味しているのかはよく分からないが、霊感商法や壺、判子などの悪徳商法もその範疇に含まれないのだろうか。前出のセクハラ事件も、含まれる可能性もある。コメントを通じて、事件を報じた朝日・毎日を批判しているからだ。
また、「警官や検察官、裁判官でもその判断が間違うことがある」と述べていながら、浅野氏はこれまで数多くの訴訟を提起してきた。刑事告発も頻繁に行っている。ある同志社大学の関係者は、同志社大学在職中に複数の訴訟を起こしていたと話している。そのために多くの人が恐れているとも語っている。(つづく)
※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年6月11日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu
