尾﨑美代子
鹿砦社『紙の爆弾』最新号(11・12月合併号)に久々に冤罪事件を寄稿いたしました。今回取り上げたのは栃木県の「今市事件」。事件の焦点を、無期懲役で服役中の勝又拓哉さんが「供述弱者」であった件に絞って書きました。

勝又さんは名前も顔も日本人に見えますが、実は台湾人で、日本人男性と結婚し来日していた実母を頼って、日本に来ました。しかし、義理の父親と折り合いが悪く母らとは別居し、一緒に台湾から来た姉と住んでいたこと、日本語がうまく話せないため学校で虐められ引きこもりになったことから、日本語で話したりコミュニケーションをとる機会が奪われてきました。そんな拓哉さんが、とつぜん女児殺害、遺体遺棄で逮捕され、警察、検察にどんな取り調べを受けたのか、気になっていました。今回の取材では、拓哉さんの義理の弟さん(実母と再婚相手の男性との間にできた弟)の高瀬さんに資料を頂いたり、お話を聞くことができました。
私がなぜこの事件が気になっていたか? 実は、今市事件にかかわる金子達也検事という検事がおります。彼は、宇都宮地検に赴任前、千葉県で拙著「日本の冤罪」に収録している「東金女児殺害事件」を担当していました。このときは被疑者でのちに起訴され、有罪判決を受けたKさん(逮捕時20歳)を取り調べています。Kさんには知的障害があり、裁判になった際、弁護側がモニターに「弁護士」「黙秘」「検察官」など映し出し、本人に意味を問う場面がありました。その際、Kさんはほとんど答えることができませんでした。そのKさんは、「やってないなら黙秘しなさいよ」と厳しくいう弁護人より、毎日長時間顔をあわせ「〇くん」と下の名前で親しげに呼ぶ金子検事に「かねこさん、かねこさん」と懐き、「かねこさん」のいう通りにやってもいない殺害を認める供述をしてしまいます。
金子検事はその後宇都宮地裁に異動になり、そこで今度は日本語に不慣れな勝又さんを殺人犯に仕立てたのです。
金子はその後、あちこちの検察を回り、最後は福岡高検の刑事部長になりました。が、親睦会で女性に不適切発言を行い、減給処分を受け、その後は自身で依願退職しています。
この金子だけではなく、今市事件には、なんとプレサンス事件で山岸元社長の部下を恫喝・脅迫し、嘘の供述を強い、結果、現在「特別公務員暴行凌辱罪」で訴えられている田渕大輔検事もいました。あともう一人、悪検事がいたと思いますが、忘れました。
なお、弁護側は控訴審から元裁判長の木谷明弁護士(故人)などが加わり、強力な弁護態勢ができ、さらに一審で有罪とされた証拠を悉く弾劾していったのですが、なんと、東京高裁は、「いつ、どこで殺害したか」という一番大事な訴因を変更させ、一審判決を破棄しました。それなら、一審に差し戻すか、無罪を言い渡すべきなのに、再度勝又さんに無期懲役を言い渡しました。
弁護団の落胆ぶりを考えると胸が苦しくなるくらいです。中でも控訴審から加わった弁護人の一人今村核弁護士、私は、多くの冤罪事件で無罪判決を勝ち取ったこの弁護士の書籍を何冊も読ませて頂き尊敬しておりました。いつか、どこかでお会いできるのではと思っておりました。しかし、今村弁護士は、ご病気で一昨年逝去されました。控訴審で有罪判決が出たことがよほどショックで会ったことは、その後開催されたシンポジウムのなかで、司会者に意見を求められ、「何もありません」とボソッと言ったことからも明らかです。シンポに出て「何もありません」とは……。
今市事件、みなさん、知ってください。今回の記事は、自分で言うのも何ですが、わかりやすい内容にまとまってると思います。ぜひ、購入して頂き、読んで下さい。
11日、映画「マミー」上映会のピースクラブでも販売させて頂きます。
宜しくお願い致します。
▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

『紙の爆弾』11・12月合併号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年10月7日発売
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