黒薮哲哉
◆真村訴訟とは
メディア黒書で2010年頃まで断続的に報じていた真村訴訟のその後について、ごく手短に報告しておこう。読売新聞が関与しているこの事件が、深刻な局面に達していることが判明した。単に「押し紙」問題だけではなく、人権問題も孕んでいることを筆者は確認した。
真村訴訟というのは、2002年、福岡県でYC広川を経営していた真村久三氏が、読売新聞(西部本社)から改廃(廃業のこと)を通告されたことに端を発する。
そこで真村氏は、福岡地裁久留米支部で読売に対して地位保全を求める裁判を起こした。裁判所は、真村氏の訴えを全面的に認めた。高裁も地裁判決を支持し、真村氏はYC広川の経営を続けることになった。これにより、真村氏は改廃を免れた。2007年12月のことである。
※事件は複雑なので、今後、順を追って記述するが、この時点までの経緯については、『新聞販売の闇と戦う』(真村久三・江上武幸共著、花伝社)を参照してほしい。
◆仮処分に従わなかった読売新聞
ところが読売は、真村氏の地位保全が確定してからおよそ半年後、一方的にYC広川への新聞の供給を止めた。そこで真村氏は、再び地位保全を求める裁判を起こさざるを得なくなった。
まず、仮処分を申請した。緊急性を要したからである。その後、本訴を起こした。
当然、販売店を改廃するためには正当な理由が必要なので、読売はさまざまな理由を裁判所に提出した。そのひとつには、真村氏が筆者の取材に協力したというものまで含まれていた。(これに関しても、裁判書面が記録として残っているので、時期を見て内容を紹介しよう。)
仮処分について、裁判所は真村氏の訴えを認め、読売に対してYC広川への新聞の供給を再開するよう命じた。地裁から最高裁まで同じ判断だった。しかし、読売は仮処分に従わなかった。
そこで裁判所は、読売に対して1日につき3万円の間接強制金(制裁金)の支払いを命じた。その累積額は約3600万円に達した。
◆裁判所に自らの主張を認めさせた読売新聞
やがて悲劇的な事態が生じる。
2度目の地位保全裁判で、裁判所は読売の主張を認めたのだ。地裁から高裁まで同じ判断だった。これを受けて読売は、真村氏に対して累積した間接強制金の返還を求めてきた。
しかし、約3600万円はYC広川の維持や真村氏の生活費に充てられていたため、返済は容易ではなかった。
真村氏が支払いに応じないでいると、読売は真村氏の自宅を差し押さえた。さらに訴訟も起こし、裁判所に自らの主張を認めさせた。
◆真村氏の自宅を競売にかけた読売新聞
わたしはこの時点では、楽観的な見方をしていた。
読売は日本最大の新聞社なので、裁判で自分たちの主張が認められたことで満足し、これ以上は真村氏との係争に関わらないだろうと思っていた。約3600万円についても、支払いを免除するだろうと考えていた。
ところが、法的な支払い期限(10年)が差し迫った先日、読売は真村氏の自宅を競売にかけたのである。これに関連して、複数の訴訟も提起されているようだ。
最初の訴訟から、24年である。一時的な中断はあるにしろ、ひとりの人間を24年も裁判所に張り付けて問題はないのか?
この事件は、以下3点の考察点を孕んでいる。
1,「押し紙」問題
2,間接強制金の払い戻しをめぐる問題
3,不可解な裁判官人事の問題
4,人権問題
メディア黒書は今後、詳細を調査し、ウェブサイトで報告していく。海外へも伝えていこう。
なお、真村氏の物件の差し押さえには、自由人権協会の代表理事である喜田村洋一氏も関わっていた。以下の写真を参考にしてほしい。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年10月31日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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