朝霞第二小学校の正門前でマイクロ波を測定、欧州評議会の勧告値の74倍、危険領域に、朝霞市は「基地局に関する情報は把握していない」 黒薮哲哉

人命よりも経済を優先する電話会社の方針が露骨になっている。際限なく事業を拡大して、小学校の児童にまで電磁波による健康被害のリスクが及んでいる。

 

5月29日、わたしは朝霞第二小学校(埼玉県朝霞市)の正門前で、通信基地局から放射されているマイクロ波の測定を実施した。マイクロ波は、携帯電話の通信に使われる電磁波で、人体影響が懸念されている。特に幼児に対する影響が深刻とする見方があり、欧米では学校などで、年少者が携帯電話を使用することに一定の制限を設けている国もある。

そんなこともあって、わたしは自宅近くの朝霞第二小学校でマイクロ波を測定することにした。測定の結果、危険領域に入る数値が測定された。

マイクロ波の値は、μW/c㎡などで表示することになっている。数値が高ければ高いほど人体への影響が懸念される。そのことを念頭に以下、①日本の総務省が定めている規制値、②朝霞第二小学校の正門前の測定値、③欧州評議会の勧告値を紹介しよう。

①総務省の規制値:1000μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)
②朝霞第二小学校の測定値:7.35μW/c㎡
③欧州評議会の勧告値:0.1μW/c㎡

※測定に使ったのは、TM195という測定器である。この測定器でカバーできる電磁波の周波数領域は3GHzまでなので、5Gのマイクロ波やミリ波が使われていれば、測定値はさらに高くなる可能性がある。

※通信基地局から発せられる電磁波は、様々な周波数のものが混合されている。変調電磁波と呼ばれ、マイクロ波は言うまでもなく、厳密にいえば、低周波の電磁波も交じっている場合が多い。デジタルで瞬間的に高いエネルギーを放出する。それを延々と繰り返す。

◆朝霞市は状況を把握していない

 

明確な時期は記憶していないが5月に入ってから、わたしは仕事中に頭の中で「キーン」という音を感じるようになった。仕事部屋はマンションの9階。窓を開けると眼下は戸建住宅と畑、それに公園が広がっている。朝霞市郊外の新興住宅地である。

仕事部屋のマイクロ波の数値を繰り返し測定してみた。平均すると0.5μW/c㎡前後の数値だった。以前は、0.01μW/c㎡ぐらいだった。急激に電磁波が強くなったことが、頭に違和感を感じるようになった原因のようだ。

わたしは近くに基地局が設置されたのではないかと思って調査した。すると仕事部屋から250メートルぐらいの地点に、新しい基地局があるのを発見した。電柱の上に平べったい3つのアンテナが設置されている。

以前は、基地局の下にはかならず電話会社の社名と連絡先が表示されていたが、最近はこの種の表示は消えてしまった。行政機関が電話会社に配慮して非表示を認めるようになった可能性が高い。

しかし、わたしはアンテナの形状から所有者の電話会社を推測できた。確認を取るために電話会社の広報部にメールで問い合わせた。しかし、返ってきたのは、「個別の事案については回答を控えさせていただきます」という回答だった。

次にわたしは朝霞市に問い合わせてみた。朝霞市は、次のように話している。

「携帯電話基地局に関する情報は一切、把握していません」

さらに関東電波通信局にも問い合わせたが、「基地局の所有者がだれかは、公開していない」と、回答した。

結局、電話会社を特定することはできなかった。

◆フリーラジカル説、ラマッィー二研究所の実験

マイクロ波の毒性評価には、対立する2つの学説がある。マイクロ波の「非熱作用」を認める説と認めない説である。

マイクロ波に「熱作用」があることは、万人が認めている。熱作用というのは、物質を加熱する作用のことである。典型例としては電子レンジの過熱メカニズムがある。電子レンジはマイクロ波の熱作用を利用した調理器である。

これに対して非熱作用というのは、文字通り熱作用以外の人体影響を意味する。その代表格が遺伝子を傷つける作用である。推測されるメカニズムはいくつかある。そのひとつがフリーラジカル説と言われるものである。

人間は呼吸により体内に酸素を取り込む。その酸素は、細胞内のミトコンドリアでエネルギーに代わる。その際、原子核の周りにある「プラス」と「マイナス」の電子が対になってバランスを保っているが、何らかの原因で一方が欠落して、「椅子取りゲーム」がはじまることがる。このような不対電子に変質した原子をフリーラジカルと呼ばれる。

フリーラジカルは、活性酸素の働きを過激にする。その結果、肉体に不具合を引きおこす。

フリーラジカルが生まれる原因のひとつが、電磁波である可能性が指摘されているのだ。

もともと人間の神経細胞は超微弱な電気や神経伝達物質で制御されている。そこに電磁波を放射し続けた場合、神経が微妙にかく乱される場合がある。その結果、脳が反応して頭痛を感じさせたり、吐き気を感じさせたり、場合によっては皮膚にかゆみを感じさせたりする。脳の働きでこうした感覚を体験するわけだから、症状と医学的根拠は結合しにくい。

日本の総務省は、マイクロ波の毒性評価に関しては、電磁波利用に奔走する産業界の意向に配慮して「非熱作用」を否定してきた。一方、欧州評議会は「非熱作用」を肯定している。それがマイクロ波の規制値などの大きな違いとして表れているのだ。

『身の回りの電磁波被曝』(緑風出版、荻野晃也著)は、2018年にイタリアのラマッィー二研究所が、約10年をかけて行ったマイクロ波による発がんを調べる動物実健の結果を紹介している。これは電話機から漏れるマイクロ波ではなく、通信基地局からの電磁波を想定した実験である。使ったラットは、約2500匹。前代未聞の規模だった。

ラットの胎児段階から自然死の段階まで、ラットにマイクロ波(1.8GHz、第3世代携帯電話)を照射した。死後に解剖して心臓と神経鞘腫の発症を調べた。

その結果、電磁波の測定値が6.6μW/c㎡の領域で、雄のラットに高い発癌率が確認された。(表参照)

表:出典『身の回りの電磁波被曝』(荻野晃也著、緑風出版)

◆懸念される電磁波による長期影響

5Gで使われる電磁波と、第三世代携帯電話の電磁波は周波数が異なるが、ラマッィー二研究所の実験は、安易な基地局設置に警鐘を鳴らしている。

朝霞第二小学校の近くに基地局を設置した電話会社は、みずから名乗り出るべきではないか。児童たちをモルモットにしてはいけない。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』
7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年7月号
13日発売!〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号(NO NUKES voice改題 通巻32号)

【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)関連事件報告】標記リンチ事件に連座した伊藤大介被告人に有罪判決! 鹿砦社代表 松岡利康

伊藤大介という人は、神奈川県で不動産業を営み、「カウンター/しばき隊」と称される「反差別」運動体のスポンサーであり、中心人物です。

 
M君リンチ事件直前、酔っておどける加害者の面々。左から李信恵、金良平、伊藤大介

伊藤は、標記の大学院生リンチ事件に連座し、被害者M君が訴えた民事訴訟で、一審で損害賠償を認められましたが、控訴審では運良く賠償を免れています。

だからといって、リンチに連座したという道義的責任が免れるものではありません。瀕死の重傷を負って倒れているM君を、救急車も呼ばず放置し立ち去っています。

「歴史は繰り返す」とはよく言ったもので、伊藤は、鹿砦社vs李信恵の訴訟の証人尋問の日(2020年11月24日)、傍聴に駆けつけ、その後、またしても泥酔し深夜(11月25日未明)、極右活動家・荒巻靖彦を呼び出し暴行、傷害事件を起こし逮捕、勾留の後起訴され公判が続いていました。

伊藤は、他にも暴力事件を起こし起訴され、2件併合しての公判が続き、その判決が昨6月3日、横浜地裁で言い渡されました。

結果は有罪、罰金20万円を言い渡されました。相手がネトウヨだからか、いささか軽いと思われます。

思うに、伊藤はさんざん暴力を振るって立て続けに暴行・傷害事件を起こしていますが、よほど野蛮な人のようです。

しかし、よーく見ると彼(だけでなく、カウンター/しばき隊)の暴力は権力に向かわず、いわば弱い者いじめの類いです。

伊藤逮捕を報じる2020年12月8日付け産経新聞(大阪版)

ハンドルネーム「肥モン」という人が傍聴記を書かれていますので、一部転載させていただきます。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆

大阪市北区堂山町傷害被疑事件及び茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件判決宣告 1 

2022年6月4日 04:28

傍聴人及び傍聴希望者の顔ぶれ

令和4年6月3日、横浜地方裁判所で大阪市北区堂山町傷害被疑事件と茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件の判決宣告が行われました。

横浜地方裁判所の開廷表には15時から16時とありましたが、死刑判決などの重い量刑を宣告するわけでもないので理由を朗読することはないだろうと考えていました。

傍聴希望者には李信恵さんをはじめ、ハンドルネーム「モジャ」さんなどの姿があり、当選した傍聴希望者に混じって神奈川新聞川崎総局編集委員の石橋学さんが報道記者先に座り、もう一席設けられた報道記者席も報道関係者が座るというものでした。なお、傍聴希望者かどうかわかりませんが、神奈川県の名札を付けた人物がいたことを付け加えておきます。

異動により構成が変わった裁判所

今回は横浜地方裁判所の裁判官の構成が変わっていました。右陪席であった中山登裁判官が4月1日付け人事異動で検事として法務省に出向し、代わって福岡高等裁判所の判事であった倉知泰久裁判官が4月1日付けで右陪席となっていました。中山登検事がどのような職務に就くかはわかりませんが、仮に東京法務局訟務部付け検事となったとすれば、国が被告となった行政裁判などで国側の指定代理人として答弁書などの準備書面の作成に携わることとなります。

判決主文

奥山豪裁判長は、伊藤大介被告人と北島直樹被告人を呼び、証人席で規律するように命じ、二人の被告人は証人席で並んで起立していました。その二人に対し、奥山豪裁判長は次のとおり判決主文を朗読しました。

主文

北島直樹被告人を罰金10万円の刑に処する。
伊藤大介被告人を罰金20万円の刑に処する。
支払いができない場合、1日5000円で労役場に留置する。
訴訟費用は伊藤大介被告人の負担とする。

判決理由~事件の概要~

この判決宣告の傍聴券が当選した私は、傍聴席の前に座るか後ろに座るかで迷っていました。元レイシストをしばき隊をはじめとするしばき界隈はとにかく法廷でのマナーが悪く、男組の故添田充啓元被告人と木本拓史元被告人の公判では、裁判長に向かって「聞こえませーん」と叫んだ傍聴人がいたほどです。

裁判所が判決宣告の法廷を1時間確保したのは、1時間単位で法廷を確保するのが原則で判決主文のみを述べて判決宣告を終わるのではないかと考えた私の予想は大きく外れ、奥山豪裁判長は判決理由の朗読に入りました。

「令和2年9月23日公訴が提起された事件は、被告人北島直樹と被告人伊藤大介が渡辺賢一50歳の背後から腕で掴み、渡辺賢一を突いて階段から転落させたとして公訴を提起されたものである。

伊藤大介被告人は、令和2年11月25日午前1時20分から1時32分にかけて、大阪市北区堂山町8番13号付近において、荒巻靖彦56歳が刃渡り10.5センチの折り畳みナイフを示したため、大川直樹が荒巻を抑えつけ、なおも荒巻が抵抗したため、伊藤が荒巻の顔面を複数回殴り、さらに荒巻の顔面や頭部を殴ったり蹴ったりしたとして公訴を提起されたものである。」(以下略)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

札幌地裁が泊原発の運転認めない判決! 大阪では「老朽原発このまま廃炉!」大集会に2100人が結集! 老朽原発の完全廃炉を実現すれば、この国にだって世界の脱原発の動きを先導できる! 尾崎美代子

5月31日、北海道電力・泊原発(北海道泊村)の周辺住民1200人が、泊原発に地震や津波に対する安全性が不十分だとして、1号機から3号機の運転差し止めや廃炉などを求めていた裁判で、札幌地裁・谷口哲也裁判長は、「現在ある防潮堤は津波に対する安全性の基準を満たしていない」などとして、運転を認めない判決を言い渡した。

一方、廃炉の請求は「具体的な必要性がない」として認められなかった。提訴から10年、泊原発は再稼働に向けた原子力規制委の審査中であった。にも関わらず、「安全性に問題がある」と運転を認めない判決が下された背景には、多くの論点について北電が主張を先延ばししてきたこともある。そのため判決は「提訴から10年以上経っても(北電側が)主張を終える見通しが立っておらず、審理を継続するのは相当ではないと判断した」とされた。


◎[参考動画]”泊原発「運転認めない」判決 廃炉請求は棄却(2022年5月31日)

この大きな判決に先立つ5月29日、大阪市内の靭公園で「老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」が開催された。真夏のような猛暑のなか、全国から反原発、老朽原発廃炉を訴える人たちが2100人も結集した。

若狭の僧侶、中嶌哲演さんは、主催者あいさつで「戦争も原発もそれを推進する元凶は、もっともらしいプロパガンダで本質を覆い隠し、それに抵抗・反対する人たちを弾圧している。しかし、今や戦争に反対し、老朽炉稼働に反対する潜在的な世論は、絶対過半数を超えているはずだ。その不同意・不服従する意志を非暴力的に表明するチャンスは、6月の参議院選挙だが、その潜在的世論をどう高めていくか、本日の集会で共に考え、共に声をあげていきましょう」と訴えられた。

僧侶の中嶌哲演さん(前列中央)

以下、集会での発言者の報告を要約紹介する。

◆美浜3号機運転差止裁判と5月26日東京地裁で第1回期日が始まった「311子ども甲状腺がん裁判」について 井戸謙一さん(弁護士)

老朽美浜3号機の運転差止仮処分は、昨年5月に提訴されました。その後、6月23日に再稼働した美浜3号機は、テロ対策施設の未完のため、一旦停止、今年の10月テロ対策施設が完成したら再稼働の予定です。先日5月23日、第4回の審尋が行われ、関電はなんとかひきのばそうとしましたが、裁判所はそれを許さず、次回7月4日の審尋で期日は終わり、10月の再稼働までには判決が出そうです。関電はまともに反論出来ていないので、勝てると考えております。40年超の老朽原発を止める闘いは、非常に重要な闘いです。ぜひ、ご注目ください。

もう1つ、5月26日東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」の第1回期日がありました。沢山の方が集まり、27席しかない傍聴席の抽選に226人の方が並んでくれました。裁判は、まず弁護団が内容を説明したあと、原告6人のうち1人の女性の意見陳述がありました。原告は、この間の辛かったことを思い出して言葉にしており、水をうったように静まり返った法廷のあちこちですすり泣く声が聞こえ、本人も涙を流しながら、最後までしっかり陳述しました。裁判官も身を乗りだして聞いていましたが、その目は赤かったと私には見えました。

その後、私たちは裁判所に、残り5人の原告の意見陳述もさせて欲しいと訴えました。関電代理人は、事前の進行協議では反対していましたが、さすがに反対とは言えず「裁判所に任せます」と言わざるをえませんでした。それだけの力があった意見陳述でした。

裁判後の記者会見には、入りきれないほど大勢のメディアが来ていました。先日、TBSの報道特集がこの問題を取り上げており、その後「被ばくで甲状腺がんが増えるんはデマ」という激しいバッシングが起こっていました。しかし、福島で甲状腺がんになった被害者が初めて声をあげた歴史的な日だと思います。これを報道できないメディアは駄目ですが、そうならば、私たちは、口コミでこの話を伝えていかなくてはならないと考えます。この裁判を絶対勝たせるために、ぜひ強力なご支援をお願い致します。

弁護士の井戸謙一さん

◆福井県の敦賀市から駆け付けた元原発技術者・山本雅彦さん
 
電力会社と立地自治体は、この間、共同で巻き返しをはかっています。政府のカーボンユートラル政策、ウクライナ情勢に便乗し、エネルギー安定供給には原発が必要だと、政府のクリーンエネルギー政策に沿って、日本原電の3、4号機の新増設、廃炉のもんじゅ敷地内に新型原子炉の建設、更には美浜、1、2号機をリプレイスをさせようとしています。また首長は口を揃えて、原発をテロや戦争の攻撃から守るために自衛隊の誘致しようとまで言い始めています。

昨年秋、福井農業高校の生徒さんたちが、原発を題材にした「明日のハナコ」を上演したが、ケーブルテレビで放送除外となり問題となりました。劇中で、元敦賀市長が石川県で原発を誘致する際「原発は金になる木で、50年後100年後に産まれた子供が『カタワ』(脚本ではカタカナ表記)になるかもいれないが、今は原発をやったほうがいい」という台詞があり、それが差別発言に当たるからだと言われました。

福井県、財団から金がでていることから、彼らに忖度したのでもないかといわれています。こうした報告を聞くと、原子力ムラのやりたい放題ではないかと思われるかもしれない。しかし、昨年6月に私たちが実施した美浜町全戸でのアンケートでは、原発不必要の方が54%、反対が61% 再稼働に不安と考えている方が71%もおられた。今年4月講演会を行った際にも、皆さんは「避難先がおおい町では近すぎて不安だ」「避難ができたとして本当に故郷に戻れるのか」などの悲痛な声がでました。

私たちの運動によって、こうした声を圧倒的多数にすれば、原子力ムラの画策を止めることができるのではと確信しています。共に頑張りましょう。

◆「東海第二原発の再稼働を止める会」副代表の佐藤勝十郎さん

老朽原発の1つで、3・11の被災原発である茨城県東海第二原発のある茨城県からかけつけました。東海第二では、昨年3月、日本原電を相手とした裁判で、運転を禁止するという勝訴判決がだされました。その後、原告・被告とも控訴、現在東京高裁で控訴審に入っていますが、控訴審も一審勝訴を確定させたいと思っています。

この間、380頁にも及ぶ控訴理由書を提出し、再来月進行協議が始まる予定です。何故勝てたのか? 規制委は「深層防護」の1層~4層までは合格とし、第5層の住民避難については規制委の審査はないが、裁判所は不十分と判断しました。今後は、この問題を深堀し、事実として東京高裁に認めさせていきたいと考えています。

◆木原壯林さん(実行委員会)が読み上げた「集会アピール」(案)

ほかにも、青森県、島根県、愛媛県、鹿児島など全国の反原発を闘う皆さんが発言したり、アピールを寄せてくれた。最後に実行委員会の木原壯林さんが「集会アピール」(案)を読み上げた。

「老朽原発動かすな!の闘いは、国内だけではなく、韓国はじめ世界の脱原発運動から注目されている。現在、川内原発1、2号機、高浜3、4号機が運転開始後36年を超えており、韓国の原発5基も35年を超え、2機は来年40年を迎える。もし、高浜1、2、美浜3号機の再稼働を許せば、国内だけでなく、世界の原発の40年超運転の前例にされてしまう。
 一方、老朽原発の運転と原発新設を阻止すれば、最悪でも2033年に若狭から、2049年に存国から稼働する原発がなくなり、世界の脱原発の動きを先導できる。老朽原発完全廃炉に向けてやれることは全て実行しよう。
 とりわけ6月参議院選挙には『老朽原発動かすな!』を争点にし、核依存、原発推進の岸田政権にノーをつきつけよう!」

アピール(案)は、満場からの大きな拍手で確認された。

 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号

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季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン)
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍 選

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

山本太郎! あなたはこのままではいけない! いまのままなら、あなたの独裁ぶりが目立つ欺瞞の政党だ! 田所敏夫

◆あえて批判覚悟で山本太郎を批判する

まもなくやってくる今夏には、参議院選挙が控える。政党地図を眺めると、年のせいか出るのはため息ばかりだ。

さて、鹿砦社は自由な言論を保証する出版社である。これは間違いない。だから敢えて『紙の爆弾』や本コラムで、どちらかといえば評価されている、山本太郎氏率いる政党についての、わたしが抱く違和感と嫌悪感を批判覚悟で申し述べる。

本コラムで山本氏が率いる政党を旗揚げした直後に「な・に・が『れいわ』だ!『新選組』だ!どあほうが! 「維新」さえ下回る最低最悪な党名『れいわ新選組』を掲げた山本太郎議員への絶望どあほう!」(2019年4月16日)とその命名を激烈糾弾する文章を書いた。

その思いは今も寸分も変わらない。自公に国民民主党と維新がすり寄って、ほぼ「大政翼賛会」が完成しつつある今日、山本氏率いるあの党名をどうあっても、わたしは口にすることはでない。当たり前だろうが。国会に議席を持つ政党の中では最も「反動的」な名前なのだから。差別の元凶天皇制と倒幕の時代に暴れまわった暴力集団、新選組。どうしてこんな名前を選んだのか訳が分からない。わたしにとっては、最低最悪の党名である。

そして、どうもここに来て山本氏の独裁ぶりが目に付くようになってきた。一つのサインは山本氏自身が、衆議院議員を辞職して、またしても参議院東京選挙区から出馬することを表明した事実だ。

党勢拡大のためには比例区で得た議席を有効利用するために、辞職して次点候補の繰り上げを図る戦法は理解できなくはない。しかしながら、はっきり言えば山本氏以外に「目玉」のない政党にとって、東京でもう一勢い入れたいとの思惑が明らかなのである。


◎[参考動画]【会見LIVE】山本太郎 参院選出馬選挙区表明(2022年5月20日)

◆「国債は国の借金ではない」の虚構

さらに、わたしには昨今山本氏の主張の中心である「国債は国の借金ではない」、「積極財政を」の掛け声がまったく腑に落ちない、どころか「それは違う!」と重ねて追及したい。

25年以上デフレに陥っていた日本で「賃上げを伴った」2%インフレであれば景気回復の要因にはなりえたであろう。けれども、おそらく山本氏も予想していなかったであろう、小麦や原材料の国際的価格上昇と急激な円安によって、日本の物価上昇は2%をはるかに超えてしまった。それに対して大企業の賃上げが報じられているけれども、中小企業は原材料上昇を価格に転嫁できないことから、賃上げどころか倒産に近い状態に追い込まれているケースが少なくない。なによりも多くの国民は「好況感」など抱いておらず、物価だけ上がる「スタグフレーション」が既に家計を直撃しているのだ。

これは山本氏が主張していた「国債はいくら刷っても、通貨発行権があれば借金ではない」がそうではなかったことを示す現実だと理解すべきだ。時間軸に沿って山本氏を弁護すれば、山本氏が主張する以前から自民党政権は「赤字国債」を乱発していたのであり(公共事業によりやがて還流するODAのように)、その結果毎年の国家予算で30兆円以上を返済に回さなければならないところまで、この国の財政は追い込まれていたのだ。

たしかに、政権与党が理性をもって税制と予算編成を行えば、ここまでの「スタグフレーション」は回避できたはずだが、FRB(米国通貨準備委員会)がゼロ金利政策の見直し(利上げ)を宣言したのに、日銀は政策金利の引き上げを宣言できない。なぜか。理由は簡単だ。利上げすれば国債の利払いが増してしまい、予算が組めなくなる、それだけのことだ。

こういった事態はわたしのような経済の素人にも容易に予想できたにもかかわらず、山本氏率いる政党はなぜか「国債は借金ではない」の主張を引っ込める気配がない。まったく不合理である。くわえて「国債発行は国の借金ではない」論を展開するために、極右の論者とも手を握っていた事実は、猛省に値する。

【何があっても心配するな。そんな国をあなたと作りたい。(82号簡略版)】

◆どうして水道橋博士なのか?

そしてちょっと驚いたのが、水道橋博士の擁立である。水道橋博士の人物像は知らないが、松井大阪市長に訴えられて「反スラップ訴訟」を公約に掲げると発信しているようである。「スラップ訴訟」はたしかに問題ではあるけれども、山本氏率いる政党の政策にこれまでその項目はあったであろうか。

選挙は政策だけではなく、「知名度」も重要な武器である。もともと芸能界出身の山本氏が水道橋博士を擁立するのも解らなくはない。けれども、山本氏が率いる政党の主張と「反スラップ訴訟」の接点はあまりにも希薄ではないか。生稲晃子を東京選挙区に擁立する自民党との違いはどこにある?


◎[参考動画]【街宣LIVE】東京・秋葉原駅(2022年5月29日)

◆本気で闘うのであれば本気の党名に変更せよ!

労組の名に値しない「連合」による「野党潰し」といっても過言ではない最近の狼藉に対して、自公・国民民主党・維新の実質「大政翼賛会体制」を揺るがすには、相当の衝撃が必要であることはわかる。だが、そうであるならば、山本代表は「野党中の野党」としてふさわしい党名をまずは採用すべきではないか。わたしも含めて彼が初当選時に応援した人間の半数以上は彼から離れている事実を山本氏は直視しなければならない。

元号や歴史的な暴力集団の名前を冠するのではなく、山本代表の発想であれば、いくらでも魅力的な党名が思いつくであろうが。それとも、やはり山本代表は政界の色に染まってしまい、そういった発想からはもう離れてしまったのか。


◎[参考動画]NHK日曜討論 山本太郎発言まとめ【2022/05/29】

◆初当選の支持者は半分去ってしまった、これでいいのか?

「原発を止めるために選挙に出た」と公言していた初心はどこに行ったのか。わたしは山本氏率いる政党についての論争では各方面から言いがかりに近い暴論を吹っかけてこられた。暴論も暴論。話にならなかった。だが、今日山本氏率いる政党のある意味成長ぶりと、「変節」を直視すれば、わたしの心配が杞憂であることを望むほかない。安田好弘弁護士・辻恵氏といった大物までが、あの破廉恥な党名を平気で発語している。こんな時代をわたしは、徹底的に嫌悪する。

ただし、橋下に直接楯突いて当時話題になった、大石あきこ議員には好感を持つし、彼女の活躍にも期待するところは大きい。その際、安心して呼ぶことのできる政党名に山本氏率いる政党は名前を変更するべきだ。原則的な「差別反対論者」にはあの政党名を投票用紙には書けない。この致命的なデメリットを誰か進言してほしいものだ。


◎[参考動画]【街宣LIVE】山本太郎と桜を見る会 熊本県・熊本!(2022年5月7日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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楽天モバイル、「障害者」との確認同意書を逆手に通信基地局を増設、問われる企業倫理 黒薮哲哉

新世代公害の代表格といえば、化学物質による汚染と電磁波による汚染である。両者とも汚染が自覚できるとは限らず、透明な牙が知らないうちに人々の体を蝕んでいく。医学的根拠は迷宮の中。電話会社はそれを逆手にとって、「危険という確証はない」との詭弁をかかげて、大規模な電話ビジネスを展開している。NHKなどのマスコミがそれを全面的にサポートする。が、その裏側では、健康被害が広がっている。

東京都目黒区中央町は、中層ビルと民家が広がる都市部の住宅街である。最寄り駅から都心の渋谷まで5分。利便性が高い静かな街である。その街で楽天モバイルの基地局をめぐる係争が起きている。事業拡大に走る楽天と、生活環境を守りたいある女性のトラブルである。

両者の攻防は、わたしの眼には、かつて海外でエコノミック・アニマルと呼ばれた日系企業と現地住民の対立のように映る。外部から侵入してきて、開発と文明化を口実に資源を収奪する「よそ者」と、被害者意識と憎悪を抱く住民の壁である。日本製品に対する不買運動も起きた。

楽天モバイルとと女性の対立にも同じような構図がある。

 
化学物質過敏症で命を落としたはなちゃん

◆愛猫の死

伊藤香さんは、自宅の一部を改造して「はなちゃんカフェ」を主宰している。「はなちゃんカフェ」とは、化学物質過敏症や電磁波過敏症に悩む人々を救済するための憩いのサロンである。

2017年12月19日、伊藤さんの愛猫、はなちゃんが息を引き取った。化学物質による複合汚染が引き金だった。とりわけ猛毒のイソシアネートがはなちゃんを直撃したようだ。米国では厳しく規制され、日本では野放しになっている化合物である。化学物質過敏症の代表的因子である。

◆化学物質の透明な牙

発端は、2012年10月だった。この日、伊藤さんの自宅には、朝から作業員らが入り、床のフロアマニュアル(保護コーテイング)の剥離作業をはじめた。その数日前から伊藤さんは体調を崩していて、自宅で療養していた。剥離作業で使う化学薬品の匂いが家中に充満していたが、特に気にかけることはなかった。しかし伊藤さんは、剥離剤に含まれている化学物質を大量に吸い込んでいたのである。

午後になって体調の異変を感じた。頭痛や吐き気、それにめまいを感じたので、自宅のはす向かいにある目黒病院で点滴を受けた。しかし、この時も自分の体内で恐ろしいことが起きているという自覚はなかった。

作業員らは、次の日も剥離作業を続けた。しかし、工事はうまくいかなかった。伊藤さんによると、床が浸水するほど大量の剥離剤を使っていたという。

それが伊藤さんの家族全員が化学物質過敏症を発症した原因だった。作業員らも被曝・発病した。はなちゃんは、餌を受け付けなくなった。下痢が続き喀血した。そしてほとんど動かなくなった。水俣病が輪郭を現わしてくる時期、狂った猫が現れたように、化学物質は最初に弱者を襲う。しかし、企業の論理は医学的な根拠が分かるまでは事業を続けるというものだった。それが後日、水俣病の被害を拡大した。

伊藤さんは、25日になってようやくホテルに避難した。東京都や地元の保健所などから、猫の症状に鑑みて、強く避難を勧められたからだ。工事を請け負った業者が、責任を自覚してホテルを手配した。

◆化学物質過敏症から「電磁波過敏症」へ

この事故は、後日、行政機関から消費者庁へ消費者安全法に違反した重大事故として報告された。目黒警察署も作業を行った業者から事情を聴取するなどの対処を取っている。

伊藤さんは、ホテルや賃貸住宅を点々とした。香料など微量の化学物質にも身体が反応するようになっていたために、汚染の度合いが少ない住居を探す必要があったのだ。一旦、化学物質過敏症になると、最初の原因となった化学物質はいうまでもなく、あらゆる化学物質に身体が反応する。これは身体を守るための防御反応で、脳がそんなふうにプログラミングされてしまうからにほかならない。

症状は悪化していった。臭覚過敏、聴覚過敏、光過敏、皮膚過敏、添加物過敏などが現れ、生活に支障をきたしはじめた。勤務していた銀行も退職せざるを得なくなった。

さらに伊藤さんは、電磁波にも身体が反応するようになった。ある時、避難先の住居でスマホを使っていると、急に吐き気に襲われた。とっさにスマホを遠ざけると、吐き気は収まった。窓のすぐ外に携帯基地局が立っていた。

伊藤さんが言う。

「この日を境界に、電磁波にも身体が反応するようになりました。電車にも乗れません。ひどい吐き気に襲われることがあるからです。剥離剤による事故にあうまで、こんな身体になるとは想像もしませんでした。学生のころはよく海を見に湘南海岸へ行っていましたが、今はそれもできません」

ちなみに化学物質過敏症の患者は、「電磁波過敏症」を併発することが多い。

◆KDDIと楽天モバイル

伊藤さんが目黒区中央町の自宅に戻ったのは、事故から4年後の2016年9月1日だった。幸いに事故の賠償金は得られたが、かつての生活は戻ってこなかった。

自宅に戻って2か月後、最初の基地局問題がふりかかってきた。KDDIが伊藤さんの自宅近くのビルに通信基地局を設置する工事を始めたのだ。しかし、伊藤さんが事情を説明したところ、KDDIは工事を中止した。既に機材をビルの上に運び上げていたが、計画を中止した。

この時期に、わたしは初めて伊藤さんを取材した。「はなちゃんカフェ」はすでにオープンしていた。わたしは「はなちゃんカフェ」の片隅で横になっている猫を見た。この時は、すでに「寝たきり」の状態だった。死が近づいていた。わたしは化学物質による複合汚染の恐ろしさを痛感したのである。

その後、2020年11月になって、今度は楽天モバイルが伊藤さんの住居から120メートルの地点に基地局を設置した。伊藤さんがそれに気づいたのは、設置工事が完了してからだった。体調が悪くなり、住居近辺を観察してみると、基地局が立っていた。

 
(上)最初の設置された基地局。2021年11月8日に撮影。(下)基地局が増設された後。2022年3月30日に撮影

楽天に事情を説明した結果、対策を検討することになった。東京都議の齋藤泰宏さんも伊藤さんを支援するかたちで協議に加わった。こうして21年9月19日、伊藤さんと楽天モバイルはある確認合意書を交わした。

合意事項のひとつに楽天モバイルが伊藤さんの自宅に電磁波シールド工事を実施するというものがある。これは電磁波を遮断するための工事である。実際に、楽天は自社で費用を負担してシールド工事を行った。屋根や壁に塗料を塗る工法で、それにより電磁波による被曝量は軽減した。

これにより基地局設置をめぐるトラブルは一応決着した。ただし、合意書には、この件に関しては今後「異議申し立て等を一切行わない」という文書を盛り込んだ。さらに、この件については、「一切口外をしない」という文言も付された。

伊藤さんは、これで問題は解決したと考えて、確認同意書に捺印した。

◆オーナーはモデルガンの販売人

ところが今年の3月になって、伊藤さんは楽天モバイルが既存の基地局の横に、別の基地局の設置工事をしている場面を目撃した。伊藤さんは楽天に抗議したが、楽天が工事を中止することはなかった。電磁波や化学物質からの避難所としての「はなちゃんカファ」の意味がなくなってしまったのである。2階のサロンはほぼ元の汚染状態に戻ってしまった。伊藤さんは、同意書に騙されたと思った。

3月20日、わたしは目黒区中央町の現場を取材した。楽天モバイルの基地局の「台座」となったビルに向かった。1階にオーナーが住んでいるというので話を聞くことにした。オーナーは、モデルガンの販売を本業にしているという。本物の銃器を販売しているわけではないが、わたしはウクライナ戦争の武器商人を連想した。

玄関のインターフォンを押すと、小柄な丸顔の男が現れた。丸い小さな目が、警戒するようにわたしをにらみつけた。わたしは軍服を着て鉄兜をかぶった少年を想像した。

事情を説明した後、わたしは2、3の質問をした。

「楽天からいくら賃料を受け取っているのか?」

「答える必要はない」

「楽天の側が、基地局の設置を打診してきたのか?」

「そうだ」

「電磁波で健康被害が出ているが、それについてどう考えるか」

「電波はどこにでも飛び交っている。基地局からのものだけではない」

「近隣住民に健康被害が出たとき責任を取るのか?」   

「取る必要はない」

オーナーの男性について調べてみると、他にもマンションを経営していることが分かった。楽天モバイルが男性に提供している賃料の額は不明だが、それを推測するデータはある。大阪市浪速区の39階建てビルに楽天が設置を計画した基地局の場合は、月額10万円である。

わたしの元には、基地局設置に関する情報が大量に寄せられる。その9割以上が楽天モバイルについての苦情である。

楽天モは千葉県などで、小学校に5G基地局を設置する戦略に成功している。民家の直近にも、基地局を設置している。住民から抗議された場合は、設置計画を中止することが多いが、強引に工事を断行したケースもある。公営の公園内にも、基地局を設置している。その後ろ盾となっているのが、欧州評議会の1万倍もゆるい電波防護指針である。30年以上も前に総務省が定めてものである。

ベルギーのフレモール環境相は、2019年4月、ブリュッセルで予定されていた5Gの試験的運用を先送りにした。フレモール環境相は、メディアに対して次のようにコメントした。

「ブリュッセル市民はモルモットではない」

目黒区中央町の問題は、電話会社のコンプライアンスとは何かという問題を突き付けているのである。

◆楽天モバイルに対する質問

わたしは楽天モバイルに対して次の質問状を送付したが回答はなかった。

1,貴社と伊藤香氏の間で「確認同意書」(2021年9月19日)を交わした後に、貴社が別の基地局を設置したことについて、見解を教えてください。「確認同意書」を交わした時点で、現状の変更はできないと考えますが。

2,総務省の電波防護指針で、健康被害を防止できると考える根拠を教えてください。

3,近隣住民に健康被害が発生した場合、どのような対策を取るのかを教えてください。

4,貴社と総務省、内閣府の間で何らかの取引関係は存在するでしょうか。存在するようであれば、差支えない範囲で教えてください。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

参院選広島2022は筆者が下りて共産・中村候補に護憲・脱原発派を一本化 自民と補完勢力による独占阻止へ さとうしゅういち

筆者は5月下旬、参院選広島2022への立候補を見送り、県議選2023に転進することとしました。

◆自民党と補完勢力(国民・芳野連合会長)による2議席独占阻止へ決断

筆者は2021年4月25日執行の参院選広島再選挙に立候補。それ以降も、れいわ新選組の地元の皆様と一緒に活動を継続していました。そして、参院選2022において広島県選挙区で立候補する準備を進めて参りました。とくに西日本大水害2018の被災地を中心に広島県内ほぼ全域を挨拶回りや街宣を続けてきました。さらに、すでに、選挙カーにすぐに使用できるクルマも支持者の方が準備してくださっていました。

しかしながら、現在、コロナ災害やロシアのウクライナ侵略という状況に自民党のみならず、日本維新の会や国民民主党が悪乗りし、改憲や軍拡に前のめりになっています。立憲民主党も泉代表が軍拡容認発言をするなど、雲行きがあやしくなってきました。

また、地元選出の岸田総理は新自由主義脱却という政権発足時の威勢のよい掛け声とは裏腹に、国家公務員労働者の給料カット法案や「稼げる大学法案」など新自由主義的法案を成立させました。我々介護現場労働者の給料改善策もわずかに3%アップと不十分極まりないものになっています。こうした岸田政権の予算に国民民主党が賛成して与党に寝返りました。

さらに、ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の高騰に悪乗りして、自民党はもちろん、維新や国民が原発推進姿勢を再び強めています。

こうしたなか、被爆地である広島県選挙区では、このまま傍観すれば、改憲、原発推進で、新自由主義脱却は不十分な勢力、すなわち自民党と補完勢力による2議席独占になってしまう状況です。すなわち、自民党の高級官僚出身世襲現職と、国民民主党や連合の芳野会長らが推すタレント新人が優勢である一方で、憲法をいかすことや反新自由主義、脱原発などをきちんと進める予定候補が日本共産党の中村たかえさんとれいわ所属の筆者(無所属でれいわ推薦を想定)の二人です。二人で票が割れれば、自民党と補完勢力による独占は確実な情勢です。

こうした状況をみて、筆者は5月20日、日本共産党広島県委員会を表敬訪問。筆者が立候補を見送るとともに、中村予定候補を応援することを伝達。また、中村さんと筆者の間での政策協定の締結や、政治とカネの問題についての政策提言をさせていただきました。

◆さっそく、尾道・三原で中村支援を宣伝

間髪を入れず、翌21日、筆者とれいわ新選組チーム広島とチーム福山は、尾道駅前とイオン三原店前で街宣を行いました。

尾道市、三原市は、県庁マンとして最後の仕事をさせていただいた場所です。また、尾道市は河井事件でお金をもらって辞職した自民党県議、そして、筆者の県庁マン時代に県の介護保険行政に不当な圧力をかけ、また、県費で海外旅行し放題だった国民民主党の県連幹部を務める県議の地元でもあります。国民民主党県議については鹿砦社刊行の『労働貴族』にも登場します。

イオン三原前での街頭演説

筆者はこの日、『自民党、国民民主党、維新がコロナやロシアによるウクライナ侵攻に乗じて緊急事態条項など憲法をかえると言っている。しかし、冷静に考えてほしい。あなたの安全、安心をアップするのに(自国維の)憲法を変えることは役立つのか?』と語りかけました。

そして、憲法は変えずに25条をいかせ、軍拡ではなく粘り強く緊張緩和を、という、という、さとうしゅういち と れいわ新選組 のスタンスを紹介。

その上で『このままでは、市町村合併押し付け、公務員削減で尾道を含む地方を苦しめたり、社会保障のためと称して消費税を増税して大半は社会保障に使わなかった自民党』の高級官僚現職と『県職員の仕事に不当な圧力をかけたり公費で海外旅行しまくりだった尾道選出の電力労組系県議を中心とした改憲・原発推進の広島の国民民主党』に推薦されたタレント新人という、与党と補完勢力による2議席独占になってしまうと危機感をあらわにしました。

その上で、中村たかえさん(日本共産党新人)とさとうしゅういちだけが、ガツン、と憲法を変えないでいかす、岸田さんも相変わらず進める新自由主義に反対、島根原発再稼働NO含む脱原発であるという状況だと指摘。

その上で、広島の2議席のうち最低1議席は、ガツン、と憲法改悪反対、新自由主義脱却、脱原発の人を送り出すため、自分が降りて、中村たかえ 予定候補を支援すると表明しました。


◎[参考動画]さとうしゅういちIN尾道駅前

◆地元の安佐南区では県議選2023への転進歓迎の声

さらに24日には事務所のある地元の広島市安佐南区で街頭演説と、近所の中小企業や神社などへのあいさつ回りを実施しました。街頭では『憲法に緊急事態条項を入れるよりもあなたの暮らしの緊急事態を救う政策が必要だ。』などと訴え『参院選広島で自民の高級官僚世襲現職と補完勢力推薦のタレントによる2議席独占を避けるため、中村たかえさんを推す』と報告しました。

あいさつ回りでは、参院広島選挙区で自民と補完勢力による2議席独占は避けるため自分が降りて県議選2023に回るとお伝えしました。『それがいい。まず広島から変えていこう!』(自営業60代男性)などと激励のお言葉をいただきました。

この安佐南区では、筆者は2011年に河井案里さんと対決した際には4278票をいただいています。また、直近の国政選挙では筆者と政策が同じか近いれいわ、共産、社民の得票合計が県議選の当選ラインを大きく上回っています。また、前回2019県議選は無投票でした。新規参入を渇望する声は強くあります。

この安佐南区は筆者の立候補の際の最有力の選挙区です。他方で、21日にまわった尾道市は、河井事件でカネをもらった自民党県議といわゆる労働貴族の国民民主党県議がおられるところです。三原市は産廃処分場問題が起きているところです。

また、安芸郡は府中町で再選挙2021の筆者の得票率が県内最高であり、筆者が坂町に西日本大水害2018でボランティアに入った経験もあります。安佐北区はお金をもらっていた県議がおられる上に筆者が同じく水害の際にボランティア活動に入った経験もある区です。安佐南区選挙区を軸に、これらの選挙区も候補に、今後、必勝を期して調整していきます。

◆福山では中村さんのポスターと並べてれいわののぼり

筆者やれいわ新選組の地元組織は、県内各地で中村候補への協力体制を整備しています。

福山市では、地元の共産党サイドの方の了承をいただき、中村候補のポスターとれいわ新選組ののぼりを並べて立てさせていただいております。

比例区はれいわ新選組を全力でとりくむとともに、選挙区は自民党と補完勢力による広島の議席独占という最悪の事態を石にかじりついてでも回避したいものです。

今後、共産党さんサイドと調整をしながら、中村候補を押し上げていきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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「甲状腺がんは増えている」はデマではない!「311子ども甲状腺がん裁判第1回口頭弁論」 被害者の訴えを聞き、放射能被害の現実を知っていこう! 尾崎美代子

5月26日、東京地裁で、311子ども甲状腺がん裁判の第1回口頭弁論が行われた。この裁判は、福島原発事故当時、福島県内に居住していた6才から16才だった男女6名が、東電に対し、事故に伴う放射線被ばくにより甲状腺がんを発症したとして、損害賠償を求める裁判だ。

6名はいずれも甲状腺がんの手術を受け、うち4名は再発に伴う手術で甲状腺を全摘、甲状腺がんの発症や、それに伴う手術、薬の服用などで進学・就職などにも大きな被害が生じている。

裁判では、原発事故と、6名の原告の甲状腺がんの因果関係や原告が受けた損害の評価が実質的な争点となる。午後2時からの第1回期日では、5名の弁護士が弁論を行ったのち、原告2さんが意見陳述を行った。

その後の報告集会の冒頭、井戸謙一弁護団長は、「今日の法廷の印象は、5人の弁護団が手分けしてそれぞれの弁論をしましたが、それは前座で、本番は原告の女性の素晴らしい意見陳述でした」と話されたあと、期日の成果を以下のように述べられた。期日前の進行協議では、毎回意見陳述を認めるかどうかが話しあわれていた。被告・東電は、毎回やることに反対し、裁判所も消極的な感じだった。しかし、今日原告の意見陳述を聞いたあと、再びその話題になり、裁判長が被告代理人に意見を求めた。被告代理人は、建前的には大事なのは争点整理で、それを優先すべきと主張していたが、原告の意見陳述を認めるか否かについて反対とは言えず「最終的に裁判所に委ねます」と述べた。

裁判所も「もう一度考えます」と態度を変えた。被告代理人が反対できなかったのは、原告女性の意見陳述が、彼らの胸にも響いたからだと思う。当時の子どもたちをどう救済していくかで一番大事なのは、原告がどう苦しんできたかを裁判所に理解させる、そのことによって真っ当な判決に導いていくことだ。

先日TBSで報道された「報道特集」について、中身も知らずに「デマだ」とバッシングする輩が大勢いるが、そうではないということを発信して頂きたい。このようにバッシングする社会の風潮を変え、被害者の原告を支援していく社会的風潮をつくっていくということが、この裁判で真っ当な判決を出させる大きな力になると思います。

原告2さんの意見陳述作成を担当した柳原敏夫弁護士から、それまでの経緯が話された。

「彼女は自分から第1回目に陳述すると言ってくれた。そのとき、私が偉そうに彼女に言ったのは、裁判官に届く言葉、あなたにしか言えない言葉を言って下さいとお願いした。人間として扱われなかった治療や手術のことは思い出したくないだろうが、あなたしか言えないのだから。本人も悩んだようだが、連休明け、それまで書いた文章に、本人も思い出したくないアイソトープ治療について2000字を書き足してきました。それが今日のメインテーマでした。書いただけで精魂尽き果てただろうに、今日法廷でもう一度読むのも大変だったろうが、今日は最善の意見陳述をしてくれました。ここには来れませんが、皆さん、彼女に拍手をお願いします」。

その後、前日意見陳述を練習した際の原稿2さんの声が、会場に流れた。「意見陳述要旨」から、その一部を紹介する。

「あの日は中学校の卒業式でした。友達と「これで最後なんだね」と何気ない会話をして、部活の後輩や友達とデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします」

3月16日、放射線量が高かったことを知らない彼女は地震の影響で電車が止まっていたため、歩いて学校に行き、外で友達と話し、歩いて帰ってきた。県民健康調査で甲状腺がんがみつかり、精密検査を受けた。結果は甲状腺がんだったが、医師はそうは言わず「手術が必要です」と説明した。

「手術しないと23才までしか生きられない」と言われたことがショックで今でも忘れられません」

病気を心配した家族の反対もあり、大学は第一志望の東京の大学ではなく、近県の大学に入学、しかし、その大学にも長くは通えなかった。甲状腺がんが再発したためだ。

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「治っていなかったんだ」「しかも肺に転移しているんだ」とてもやりきれない気持ちでした。「治らなかった、悔しい」この気持ちをどこにぶつけていいのかわかりませんでした。「今度こそあまり長くは生きられないかもしれない」そう思いました。……

「手術の後、肺転移の病巣を治療するため、アイソトープ治療を受けることになりました。高濃度の放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで、がん細胞を内部被ばくさせる治療です。

1回目と2回目は外来で治療を行いました。この治療は、放射性ヨウ素が体内に入るため、まわりの人を被ばくさせてしまいます。病院で投薬後、自宅で隔離生活をしましたが、家族を被ばくさせてしまうのではないかと不安でした。2回もヨウ素を飲みましたが、がんは消えませんでした。

3回目はもっと大量のヨウ素を服用するため入院することになりました。病室は長い白い廊下を通り、何回も扉をくぐらないといけない所でした。至るところに黄色と赤の放射線マークが貼ってあり、ここは病院だけど、危険区域なんだと感じました。病室には、指定されたもの、指定された数しか持ち込めません。汚染するものが増えるからです。

病室には、看護師は入って来ません。医師が1日1回、検診に入ってくるだけです。その医師も被ばくを覚悟で検診してくれると思うととても申し訳ない気持ちになりました。私のせいで誰かを犠牲にできないと感じました。

薬を持って医師が2、3人、病室に来ました。薬は円柱型のプラスチックケースのような入れ物に入っていました。

薬を飲むのは、時間との勝負です。医師はピンセットで白っぽいカプセルの薬を取り出し、空の紙コップに入れ、私に手渡します。

医師は即座に病室を出ていき、鉛の扉を閉めると、スピーカーを通して扉越しに飲む合図を出します。私は薬を手に持っていた水と一緒にいっきに飲み込みました。

飲んだ後は、扉越しに口の中を確認され、放射線を測る機械をお腹付近にかざされて、お腹に入ったことを確認すると、ベッドに横になるよう指示されます。

すると、スピーカー越しに医師から、15分おきに体の向きを変えるように指示する声が聞こえてきました。

食事はテレビモニターを通じて見せられ、残さず食べられるか確認し、汚染するものが増えないように食べられる分しか入れてもらえません。

その夜中、それまでは何ともなかったのに、急に吐き気が襲ってきました。すごく気持ち悪い。なかなか治らず、焦って、ナースコールを押しましたが、看護師は来てくれません。ここで吐いたらいけないと思い、必死でトイレへ向かいました。吐いたことをナースコールで伝えても吐き気止めが処方されるだけでした。時計は夜中の2時過ぎを回り、よく眠れませんでした。

次の日から、食欲は完全に無くなり、食事ではなく、薬だけ病室に入れてもらうことのほうが多かったです。2日目も1,2回吐いてしまいました。

私はそれまでほとんど吐いたことがなく、吐くのが下手だったため、眼圧がかかり、片方の目の血管が切れ、目が真っ赤になってしまいました。扉越しに、看護師が目の状態を確認し、目薬を処方してもらいました。

病室から出られるまでの間は、気分が悪く、ただただ時間が過ぎるのを待っていました。

病室には、クーラーのような四角い形をした放射能測定装置が、壁の添乗近くにありました。その装置の表面の右下には数値を示す表示窓があり、私が近づくと数値がすごく上がり、離れるとまた数値が下がりました。

こんなふうに3日間過ごし、ついに病室から出られる時がきました。パジャマなど身に着けていたものはすべて鉛のごみ箱に捨て、ロッカーにしまっていた服に着替えて、鉛の扉を開け、看護師と一緒に長い廊下といくつもの扉を通って、外に出ました。……こんなつらい思いをしたのに、治療はうまくいきませんでした。治療効果がでなかったことは、とてもつらく、その時間が無駄になってしまったと感じました。以前は、治るために治療を頑張ろうと思っていましたが、今は「少しでも病気が進行しなければいいな」と思うようになりました。……通院のたび、腫瘍マーカーの「数値があがってないといいな」と思いながら病院に行きます。でも最近は毎回、数値が上がっているので、「何が悪かったのか」「なぜ上がったのか」とやるせない気持ちになります。……自分が病気のせいで、家族にどれだけ心配や迷惑をかけて来たかと思うととても申し訳ない気持ちです。もう自分のせいで家族に悲しい思いはさせたくありません。もとの身体に戻りたい。そう、どんなに願っても、もう戻ることはできません。この裁判を通じて、甲状腺がん患者に対する補償が実現することを願います。

……………………………………………………………………………………………

裁判の傍聴希望者は約200名、うち傍聴出来たのは27名、期日後の記者会見でも多くのメディアから質問があったとお聞きした。甲状腺がんなど原発事故の放射能による健康被害に関心が高まっている。被害者に対する支援の輪を、今後さらに広めていかなくてはならない。

◎311子ども甲状腺がん支援ネットワーク 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)
おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

人を信じること、人に裏切られること、それでも私は人を信じる ── ある弁護士の懲戒処分取消について考える 鹿砦社代表 松岡利康

齢70代に入り、さして誇るべき実績もない私の人生も末期に入りました。私をよく知る方はご存知ですが、思い返せば人に裏切られたり騙されたりが多かった人生でした。この期に及んでは、もう人に裏切られたくはありません。

ここ数年、ひょんな縁で、私たちが「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び、巷間「しばき隊リンチ事件」とか呼ばれる事件の被害者M君支援と真相究明に関わってきました。6冊もの本にまとめ世に送り出し、決して多くはありませんが、少なからずの心ある方々に理解を得ています。

リンチ被害者M君は、リンチ加害者5人に対し民事訴訟を起こしましたが、この初期、弁護団に加わったのが橋本太地弁護士(大阪弁護士会)でした。ともかく問題のある言動が多く、やがて代理人を辞めていったのですが、その後も問題を起こしています。弁護団から去っても、まともになり本来の弁護士の仕事を懸命にやってくれたら、と蔭ながら応援していたのですが……。一番ショッキングだったのは依頼者と着手金返還を巡りトラブルを起こし「タヒね」(「死ね」という隠語。「死」の上部の「一」を取れば「タヒ」となる)懲戒事件でした。昨年初めのことで、大阪弁護士会は懲戒請求者の主張を認め弁護士として「品位を失うべき非行」として懲戒処分のうち一番軽い「戒告」処分に付したのでした(2021年3月1日付け)。

橋本弁護士は、
「金払わん奴は死ね!」
「弁護士報酬の踏み倒しを撲滅するために何ができるだろうか。」
「弁護士に金払わなくて平気な奴は人殺しと同じだよ。」
「弁護士費用を踏み倒す奴はタヒね!」
「金払う気ないなら法律事務所来るな!」
「金払わない依頼者に殺された弁護士は数知れず。」 (議決書より)

などとSNSで発信し、これに対し依頼者は懲戒を申し立て、昨年3月1日で懲戒処分を受けたのでした。私は、これで心から反省するのであればいいんじゃないか、と思いました。反省しなければ、これ以上の問題を起こしかねないですから。

しかし、橋本弁護士は日本弁護士連合会に処分取消の審査請求を起こし、同会は去る5月17日付けで逆転裁決を下しています。

橋本弁護士と知り合った頃、彼は精神的に病み、生きるの死ぬのと日々ツイートしていました。彼を激励するために、べつに恩着せがましく言うわけではありませんが、高級日本料理店に連れて行ったり北新地のそこそこ高級な飲み屋にも連れて行ったりしました。また、私は2年間、関西大学で非常勤講師を務めさせていただきましたが、そのうち各1回づつ彼にも講義してもらいました。私なりに彼へのエールのつもりでした。彼は1年目の自分の講義(音声)をSNSで発信し依頼の問い合わせが多数あったとのことでした。2年目の講義は映像にし、これもSNSで発信し、1年目より格段に多い問い合わせがあったそうです。

*橋本弁護士のTwitterでは、いまだにこの時の映像を流していますが、そういう経緯があったことを書き添えておきます。少しぐらい感謝してほしいものです。

しかし、彼は、そうした私の気持ちを踏みにじる言動を繰り返しました。ある取材班の一人は悩み血便を下したほどです。

橋本弁護士の処分取消審査請求、弁護士たるものが、そうした下劣な言葉を何度もSNSで発信し依頼者を傷つけた行為は決して許されることではなく、大阪弁護士会の懲戒処分は当然だと思っていました。しかし、日本弁護士連合会がなぜ逆転の裁決を下したのか、市井人としては到底理解できません。本人のためにもよくないと思います。変な理屈付けて、こんな甘いことやってるから弁護士たる者、「三百代言」などとバカにされるんじゃないでしょうか。依頼人(=懲戒請求者)は、次のように悔しさをツイートされています。お気持ちはよく理解できます。

「私はこの懲戒請求した本人です。私の所に日弁連からの議決書はまだ来ていません。それなのに、SNSで弁護士通して、こんなに議決書をシェアして喜ばれると、困ります。それに、着手金も返還してもらっていません。弁護士会は、もっと消費者を保護すべきだと思います。業界の需要が減りますよ。」

むべなるかなです。

ところが、くだんの審査請求の代理人に、かの神原元弁護士の名前があります。これは昨年の時点で情報提供があり知っていましたが、神原弁護士がどういうつもりで橋本弁護士の代理人に就いたのか、あるいは橋本弁護士がなぜ神原弁護士を代理人に選任したのか、非常に裏切られた気持ちです。いやしくも橋本弁護士は、私やリンチ被害者M君らが神原弁護士に立ち塞がれ、彼の手腕によって苦杯と屈辱を舐めてきたことを知っているはずです。

橋本弁護士は、まだ弁護団にいる時、「僕は弁護士として神原のような職業倫理のないやつは許せない」と意気込んでいたのは何だったのか?と思います。と言いつつ、裁判が終わった後で2人して喫茶店に行ったという証言もあり、これは橋本弁護士本人も認めているそうです。そうか、そうであれば合点がいきます。

橋本弁護士にしろ神原弁護士にしろ、彼らの人間性に義憤を覚えます。こうした人間性を持つのが弁護士なのか? こういう弁護士に依頼すれば、仮に「正義が勝つ」ことはあっても、あまり感心しません。

「もう人に騙されたり裏切られたりしないぞ」と肝に命じて来ましたが、藤井正美にはうまいこと社内に入り込まれ3年間雇いました。このかん、勤務時間中にやりたい放題やられました。3年間も気づかなかった馬鹿な社長です。また、藤井につながる「反原連」にも多額の資金を吸い取られ、ちょっと意見するや挙句一方的に絶縁されました(もちろんお金は返ってきません)。

非常にやり切れない気分で、一気に書き連ねてきました。普通は他の人に一読してもらったり1日置いたりして掲載するのですが、今回は執筆即掲載しました。

まあ、人を見る目がないとみずからを恥じるしかありませんが、それでも私は残りのわずかな人生、人を信じたいと思っています。

尚、「裁決書」は2ページですが、このほかに「議決書」が9ページあります。ここでは「裁決書」のみを掲載します。

*朝日新聞5月26日朝刊に記事が出ましたので画像を追加しました。それにしても、SNSでの誹謗中傷が社会問題になり侮辱罪の強化が叫ばれる昨今、弁護士という特権階級だったら許されるのか、「死ね」「タヒね」というようなツイートが「表現の自由」だとする日弁連の頭の中は時代錯誤としか言いようがありません。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

水源地ど真ん中に三原市民の圧倒的反対押し切り産廃処分場! 広島県は許可取り消しと水資源保護条例制定を! さとうしゅういち

広島県三原市本郷町は、広島県のほぼど真ん中に位置しており、広島空港があることでも知られています。昔は独立した町でしたが平成の大合併で三原市に事実上吸収されました。その本郷町に産業廃棄物処分場建設計画が2018年に持ち上がり、大混乱となっています。

三原市・竹原市の水源地のど真ん中。問題の産廃処分場の概要は以下です。

計画地 広島県三原市本郷町南方字観音平22179番地1 外(宗教法人と業者土地取得済)
関係地域 広島県三原市本郷南方 / 広島県竹原市新庄町
埋立面積 9万7,499平方メートル(マツダスタジアム約10個分)
埋立容量 112万6,000立法メートル (2~10t車両30台/日程度・160立法メートル /日)国道2号から搬入
廃水計画 雨水・浸透水は調整池を経由後、自然流下で椋原川と日名内川に排水する
主な産廃排出場所 県内5割、県外5割(岡山、島根、大阪、京都、岐阜、愛知、静岡)

三原市にとっても竹原市にとっても水源地のど真ん中です。三原側は沼田川へ、竹原側は賀茂川へ流れます。

三原側の沼田川下流には三原市最大の浄水場があります。三原市民の4分の3にあたる3万世帯の水道水となります。また、竹原側の下流域には6つの浄水場があり市民の大半の水道水になっています。下流には井戸水利用者、農業用水利用、漁業、地下水を利用した酒・豆腐・飲料メーカーなどもあります。

◆三原市・竹原市の市民の総意で「ノー」も県はゴーサイン

2018年に計画が持ち上がったあと、三原市でも竹原市でも住民が立ち上がり、産廃処分場建設許可をしないよう、県に求める運動を開始。2018年10月25日には三原市議会本会議で2つの産廃処分場建設反対請願が全会一致で採択され、県に決議文を提出。2019年2月25日には竹原市議会本会議で、全会一致で同様の決議が採択されました。

三原市も竹原市も自民党が非常に強い地域。しかし、自民党員の議員もふくめて全会一致で反対決議が採択されたということの意味はあまりにも大きいのです。

しかし、広島県は許可を出してしまいました。許可を出したのは筆者が最後に勤務した広島県東部厚生環境事務所でした。廃棄物関係の職員は理系の専門の職員で人数も限られています。元同僚が許可を出す立場にあったことに複雑な思いです。とはいえ、基本的に広島県の場合は産業廃棄物処分場許可にあたって、周辺住民の意見を聴くよう義務づける条例はありません。不許可にすれば、今度は業者から訴えられるリスクもあります。そうはいっても、行政の透明性は求められる時代であり、産業廃棄物業者もその恩恵に浴しています。

◆一度は廃棄物持ち込みを禁止する仮処分も、ひっくり返る 裁判の経過

これに対して、広島地裁において、住民が広島県を相手取って、産業廃棄物処分場許可を取り消すよう求める行政訴訟を提起しました。平行して業者に産業廃棄物処分場への廃棄物の持ち込み、すなわち稼働しないよう求める仮処分も申し立てています。

 

仮処分申請は、2021年4月にいったん認められました。しかし、それに対する業者の異議が2022年4月認められてしまいました。もちろん、原告側(債権者側)は抗告しています。こうした中で、行政訴訟の第9回公判が4月19日に行われました。次回は6月26日の予定です。

公判後の報告会で、住民側の山田延廣弁護士(写真中央)が年内に結審する見通しであることを明らかにしました。

また、山田弁護士は「広島県には、長野県のような、産業廃棄物処分場許可にあたって住民の意見を聴取することを義務づける水資源保護条例がなく、産業廃棄物処分場がほぼ野放しの状態だ」と指摘しました。

◆このままでは広島が日本・世界のゴミ箱の恐れ

山田弁護士が紹介した通り、長野県には豊かな水資源の保全に関する条例があります。水資源保護区域の大規模な土地の売買があった場合は市町村の意見を聞くことになります。

https://www.pref.nagano.lg.jp/mizutaiki/kurashi/shizen/mizukankyo/jore/index.html

もし、広島で今回あったようなことが長野で起きればどうなるか? まず、売買の段階で売り主が県に産業廃棄物処分場目的であることを届け出ます。関係する市町村が猛反対しているわけですから、県としても「産業廃棄物処分場目的の売買はダメです」ということになります。

このような条例が全国にできつつあるのに、広島だけなければどうなるか? 現に今回の三原市本郷の産業廃棄物処分場が稼働すれば広島だけでなく、岡山や島根などの周辺県はもちろん、大阪や京都、岐阜、静岡、愛知など遠方の産業廃棄物が大挙して押し寄せてきます。それこそ、広島が日本のゴミ箱になってしまいます。

わたしが住んでいる広島市でも安佐南区上安の産業廃棄物処分場で問題が起きています。周辺住民の調査では汚れた水が流出しています。そしてさらなる拡大が計画されています。そして、ここは外資系に買収されています。

◎参考;エクイスグループ、日本で廃棄物処理事業を開始。今後3年間における投資見込み額は最大で550億円 https://www.kyodo.co.jp/pr/2021-06-10_3617278/

日本はそもそも、産廃の基準がいまや韓国や中国よりも緩いとも言われています。たしかに、日本では「管理型処分場」「遮蔽型処分場」の基準は厳しい。曲者は「安定型処分場」です。安定型というと、いかにも安心のように思えます。いわゆる安定五品目の廃プラスチック類,金属くず,ガラス陶磁器くず,ゴムくず,がれき類などのみが捨てられる、だからコンクリートもシートもなしで埋め立てられる、というわけです。だが、実際にはその中にそれ以外のものが混じってもきちんと、検査されるわけではないのです。さらにその中でも、広島の産業廃棄物行政は大甘なのです。

こんな状態では、それこそ、広島は世界のゴミ箱になりかません。安定型処分場の新規許可をしないよう法改正するとともに、広島県でも長野県同様の条例の制定を強く求めます。

ストップ本郷処分場【広島県三原市】 https://mihara-sanpai.com/

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

ABC部数のグレーゾーン、朝日新聞倉敷販売(株)の事件にみる新聞発行部数のデタラメ 黒薮哲哉

産経新聞社が新聞販売店に搬入する産経新聞の部数が、今年3月に100万部を下回った。1990年代には、約200万部を誇っていたから、当時と比較すると半減したことになる。かつて「読売1000万部」、朝日「800万部」、毎日「400万部」、産経「200万部」などと言われたが、各紙とも大幅に部数を減らしている。新聞の凋落傾向に歯止めはかかっていない。

コンビニなどで販売される即売紙を含む新聞の総発行部数は、3月の時点で次のようになっている。()内は、前年同月差である。

朝日新聞:4,315,001(-440,805)
毎日新聞:1,950,836(-58,720)
読売新聞:6,873,837(-281,146)
日経新聞:1,731,974(-148,367)
産経新聞:1,038,717(-177,871)

旧ソ連のプラウダが消えて後、新聞の世界ランキングの1位と2位は、読売新聞と朝日新聞が占めてきた。しかし、現在の世界ラングを見ると、USAツデーやニューヨークタイムスがトップ争いを演じている。これはひとつにはコロナウィルスの感染拡大を背景に、電子版が台頭したことに加え、国際語としての英語の優位性が、それに拍車をかけた結果にほかならない。英語の電子媒体は、すでに地球規模の市場を獲得している。

その結果、「紙」と「部数」の呪縛を排除できない新聞社は没落の一途を辿っている。公表部数そのものが全くのデタラメではないかという評価が広がっている。

◆新聞セールス団が新聞購読料を負担

日本ABC協会が定期的に発表しているABC部数は、新聞の発行部数を示す公式データである。このABC部数の中に大量の残紙(配達されずに廃棄される「押し紙」や「積み紙」)が含まれていることが、周知の事実になり始めている。ABC部数と実配(売)部数の間にある大きな乖離が、社会問題としての様相を帯びてきた。

最近、ABC部数をかさ上げする新たな手口が明らかになった。それはニセの新聞購読契約書を作成して、それに整合させるかたちで、販売店の帳簿類の処理をして、「新しい読者」をABC部数に計上する手口である。

今年4月、わたしは元新聞セールス団の幹部から、ニセの新聞購読契約書を作成する手口が読み取れる内部資料を入手した。このセールス団は、2012年ごろから岡山県倉敷市にある朝日新聞倉敷販売(株)で新聞拡販活動を展開した。しかし、報酬の支払い額やニセの購読契約書などをめぐって朝日新聞倉敷販売と係争になった。

わたしが入手したのは、この事件の裁判資料である。

裁判そのものはセールス団幹部の敗訴だったが、裁判の中で、図らずもABC部数にグレーゾーンが生じるひとつの原因が露呈した。それはニセの新聞購読契約を作成して新規読者として計上する方法だった。しかも、帳簿上の整合性を保つために、ニセの読者の購読料をセールス団の側が負担していた。

実際、判決は次のようにこの手口を認定している。

「両者の間で協議がされた結果、原告(注:セールス団)と被告(注:朝日新聞倉敷販売)は、原告が偽造された契約書に関する新聞購読料を負担し、被告に対し、これを分割して支払う旨の合意をした」

実際、朝日新聞倉敷販売(株)は、セールス団の支払い負担を軽減するために、入店料(新聞拡販の成功報酬)を先払いしていた。金の流れは、「朝日新聞倉敷販売→セールス団→朝日新聞倉敷販売」となり、法的な汚点を排除した上で、新聞の公称部数を増やしていた。

 
倉敷市における朝日新聞のABC部数の変化

◆倉敷市の朝日新聞のABC部数

ニセの購読契約書の枚数について元幹部は、

「朝日は、515枚あったことを認めている」

と、話している。現在、わたしは偽造枚数について調査中である。現時点では枚数を確定できないが、ABC部数に疑惑があることは、次のデータを見れば明らかになる。

倉敷市における朝日新聞のABC部数の変化を示すデータである。期間は2011年10月から2021年10月の約10年。

半年で1000部から3000部ぐらいの変動が観察できる箇所が複数ある。常識的に考えて、倉敷市の朝日新聞の読者が半年で、1000人単位、あるいは3000人単位で変動することなどあり得ない。これは、ABC部数そのものが信用できないデータであることを示している。

筆者は、同じような手口を、他系統の新聞社の元セールス団員からも聞いたことがある。次のような手口である。

戸別訪問で、「タダでいいので新聞を配達させてください」と、話を持ち掛ける。承諾を得ると、実際に新聞を届ける。購読料は、セールス団が負担する。無料で新聞を配達し続けていると、数カ月後に公式に新聞購読契約を結んでくれることが多い。その際に成功報酬が手に入る。このケースでもABC部数は増えていることになる。

以上、紹介したように新聞社と販売店の間だけではなく、販売店と新聞セースル団の間でも、ABC部数をかさ上げするための裏工作が行われているケースがあるのだ。販売店がセールス団に対して「押し紙」をする構図がある。

◆巨大のメディアの汚点とメディアコントロール

海外では、出版物の水増し表示に対しては厳正な措置が下される。たとえば米国テキサス州の『ダラス・モーニングニュース』は、1980年代の半ばに、ライバル紙から発行部数の水増しを告発されたことがある。2004年になって同社は、事実関係を認めた。日曜版を11.9%、日刊紙を5.1%水増ししていたことを確認した上で、広告主に2300万ドルを払い戻したのである。

しかし、日本ではABC部数の水増しが、堂々と横行している。裁判所や警察もこの件に関しては黙認してきた。巨大メディアの汚点を握ることで、メディアコントロールが可能になるからではないだろうか。大半の新聞研究者もABC部数の闇にはタッチしない。

USAツデーやニューヨークタイムスの躍進に象徴される電子メディアへの移行の中で、日本の新聞社は、近い将来に行き場を失う可能性が高い。地球規模で日本の新聞社を見ると、「ならず者」の集まりにしか映らないのである。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号
黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』