滋賀医科大学医学部附属病院が、国立がん研究センターが公表したプレスリリースを改ざんして、6月11日に、同病院のウェブサイトに掲載していたことが分かった。

この資料は、国立がん研究センターが公表した時点では、1ページに満たない短い資料だった。ところが滋賀医科大は、これに約2ページ分の情報を複数の資料から抜粋して再構成し、3ページに編集した。そして、これら全部が国立がん研究センターによるプレスリリースであるかのように装って掲載したのである。

何が目的でこのような大がかりな改ざん行為に及んだのだろうか。既報したように、滋賀医科大病院は、岡本圭生医師による高度な小線源治療(前立腺癌が対象)を年内で中止して、岡本医師を病院から追放しようとしている。それを正当化するためには岡本メソッドが、他の癌治療と比較して、継続するだけのメリットがないという世論を形成することが必要になる。そこで権威のある国立がん研究センターのロゴが入ったプレスリリースを改ざんして、自分たちの目的に沿った内容に改ざんしたである。

具体的な手口は、次のYouTubeで紹介している。滋賀医科大病院に問い合わせた際の音声も、そのまま収録した。


◎[参考動画]滋賀医科大学のフェイク(安江博 2019/6/26公開)
https://www.youtube.com/watch?v=w3rPzAk9G3E

◆がんセンターの資料は1ページ目だけ

フリーランス記者の田所敏夫さんらが、この改ざんについて、国立がん研究センターへ問い合わせたところ、YouTubeで示されている部分のみが同センターが発表した部分であることが判明した。

国立がん研究センターは、元々のプレスリリースと改ざん部分の区別について、田所さんに対し、次のように文書で回答している。

「お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
 当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。」

つまり約2ページ分を滋賀医科大病院が我田引水に「編集」して、元々のプレスリリースを含む3ページの資料に編集し、あたかもそれが国立がん研究センターが発表したものであるかのように装って、病院のウェブサイトに掲載したのである。

改ざんされた資料は次のURLでアクセスできる。オリジナル(国立がんセンターのプレスリリース)と比較してほしい。

◎[参考資料]改ざんされたプレスリリース
https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/cms/file.php?action_disp&id=1156&fid=2013

 

改ざんされたプレスリリース

◆何が加筆・編集されたのか?
 
滋賀医科大学病院が改ざん・編集により印象操作を企てたのは、前立腺癌に対する4つの治療法における5年後の非再発率である。それによると次のような成績になっている。

・ロボット支援前立腺全摘除術(弘前大学):97.6%
・外照射放射線治療(群馬大):97.6%
・小線源治療(滋賀医大):95.2%
・重粒子線(放射線医学総合研究所病院):不明
・小線源治療(京都府立医大):94.9%

これらのデータを見る限りでは、滋賀医科大学の小線源治療(岡本メソッド)にはまったく優位性がないことになる。それどころかロボット支援前立腺全摘除術か外照射放射線治療を受けた方が、岡本メソッドを受けるよりも5年後の非再発率が高いことになる。当然、岡本メソッドの中止と岡本医師の追放はやむを得ないという世論が形成されかねない。おそらく滋賀医科大の塩田浩平学長は、それが目的でこのような誤解を与える記述の掲載を許可したのである。

◆データのトリック

これらのデータには、専門家でなければ見破れない巧なトリックが隠されている。端的に言えば、基準が異なるものを比較しているのだ。比較するのであれば、比較の基準が同じでなければならない。滋賀医科大病院は、その基本的な学術上のルールすらも無視しているのだ。

周知のように前立腺癌の検診は、血液を調べるPSA検査により行われる。PSAの数値が4.0 ng/mLを超えると前立腺癌の疑いがあり、精密検査で癌を発症しているかどうかを確定する。

意外に知られていないが、実はこのPSA検査は、前立腺癌の治療を受けた後の経過観察でも行われる。

施術方法のいかんを問わず、治療を受けた患者のPSA値は下降線をたどり、横ばいになるのだが、再発すると再上昇に転じる。この原理を応用して、医師は、PAS値の変化を観察することで、癌が再発したかたどうかを判断するのである。
 
この点を前提にしたうえで、データの改ざんについて説明する前に、前立腺癌の治療法についてもあらかじめ言及しておかなくてはならない。前立腺癌の治療では、ホルモン療法と呼ばれるホルモンを投与する療法により、施術前に癌を委縮させる方法が適用されることがままある。癌を小さくしたうえで、施術するのだ。

ホルモン治療が効力を発揮した場合、PSA値は下降する。そしてホルモン治療が終わった後も、1年から2年ぐらいの期間はその効用が維持されるので、PSAは上昇しない。

滋賀医科大が提示した他の医療機関のデータは、ホルモン治療の効用が持続している期間を含めた非再発率なのである。

とりわけ、弘前大学のデータにいたっては、論文の中でも、経過観察の期間が30カ月であることを明記している。それにもかかわらず都合のよいデータだけを提示して、あたかもロボット支援前立腺全摘除術と岡本メッソドでは、大きな違いがないような印象操作を行っているのである。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

◎[関連記事]黒薮哲哉[特別寄稿]小線源治療患者会が国会議員と厚生労働省へ嘆願、2万8,189筆の命の署名を提出(2019年3月15日付けデジタル鹿砦社通信)

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
フリーランスライター。メディア黒書(MEDIA KOKUSYO)の主宰者。「押し紙」問題、電磁波問題などを取材している。

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これまで釜ヶ崎現地で食堂を営みながら労働者を支援している尾崎美代子さんからの報告をもとにお伝えしているように、先月から釜ヶ崎の動きが目まぐるしく転回しています。どういう経緯で知り合ったか思い出せませんが、尾崎さんとはもう20年余りの付き合いになり、誰がなんと言おうが、その人間性を信じています。彼女の報告にウソはないと思います。

彼女は、食堂を営みながら、冤罪や福島支援、女医変死事件などに積極的に奔走されています。

 

西成労働福祉センター

一部の関西マスコミも報道しているように、突然の西成労働福祉センター1Fの強制閉鎖で多くの労働者が雨宿りの場所を追われ排除されています。これに対し異を唱える労働者のみなさんが抵抗し、一時は閉鎖を阻止し占拠、自主管理していました。

しかし、それも強制力で排除され、労働者のみなさんは、外にテントを張ったりして過ごされています。今はしのぎやすい季節ですからまだいいとしても、これから来る酷暑は大変です。

センターは、日本が高度成長で沸き、大阪万博があった1970年に竣工しています。階上には病院、公営住宅を持ち、しかしながら老朽化や耐震性などで問題があり建て替えは既定路線とのことです。さすがにこれだけの大きな建物をすぐに取り壊し建て替えはできませんから、これらあと2年ほどは移行期として閉鎖されずにやっていくそうです。

単純な疑問は、それなら、労働者の集まり場所になっている1階だけを突然閉鎖せず、労働者のみなさんの今後の行く末を面倒見ながら向こう2年間にわたってソフトランディング的に進めていけばよかったんじゃないんでしょうか(というのが外部の者の素朴な感想です)。

この連休も私のような中小企業経営者は、ゆっくり休めず休み明けの業務の準備に大わらわですが、1日割いて釜ヶ崎に陣中見舞いに行ってきました。

この通信でもお馴染みの「カウンター」リンチ事件被害者M君も同行してくれました。彼は東北地震の被災地にも陰ながらボランティアに駆けつけるような好青年です。

カップ麺50個、水、カンパなどをお渡しし、喜んでいただきました。東京から青年が支援に来ていました。後日また仲間を連れてくるそうです。まだこういう青年がいて頼もしい限りです。

例の「代替地」とされる場所も見ましたが、30人ほどが集まれるテントと長椅子、仮設トイレを設置しただけの簡素なものでした。もちろん雨もしのげません。

「代替地」。労働者をバカにするのもいい加減にしろ!

私たちは労働者の側に立ち、こういう強制力によるセンター閉鎖と労働者排除に対しては、断固抗議する労働者の方々を支援します。

尾崎さんらが労働者のみなさんと共に抗議の声を上げるのは当然で、おとなしくしているほうがおかしいです。もし足元で起きたことに黙っているのなら、「尾崎さん、どうしたの?」と疑問を投げつけるでしょう。

センター閉鎖・労働者排除を黙過した人たちもいたようですが、私としては、小異を捨てて大同につくの精神で一致して戦ってほしいと願います。

以前から釜を代表する人物のひとり稲垣始さんは、労働者の先頭に立って怒りの声を上げ抵抗されました。当然です。

釜ヶ崎には二つの組合があり、稲垣さんが委員長を務める「釜ヶ崎地域合同労働組合」(釜合労)と、「釜ヶ崎日雇労働組合」(釜日労)です。どちらも長い歴史を持ち、元は同じということです(釜日労の初代委員長が稲垣さん)。80年代はじめに分裂し、以後ずっと対立しているようです。「釜合労」が名誉毀損で「釜日労」を訴え勝訴したこともあるとされています。賠償金600万円余りで高額です。双方言い分もあるでしょうが、もうそろそろ矛を収めたらいかがでしょうか。

今回の閉鎖騒ぎでも、「釜合労」は所有するバスをセンターに入れシャッターが閉めれないようにしたり頑張っていました。

閉鎖に抵抗した釜合労のバス

 

排除された労働者の荷物とテント

ところが「釜日労」の姿が見えません。こちらの方々のほうが多数派で戦闘的だと聞いていましたので、こういう時には奮闘しているのかと思っていました。なにか逆のようで、正直ちょっとガッカリです。あとからいろいろ講釈を垂れるのは誰でもできます。

今回の事態については『人民新聞』も報じていましたが、これに対しても長文の批判文を委員長名で出しています。地元大阪のことですし、常に弱者の側に立つ『人民新聞』が報じるのは当然で、ちょっとみずからに都合が悪いとすれば不倶戴天の敵のように見なすのはいかがなものでしょうか?

また、1日には「釜日労」関係所有のテントが何者かに破られるという事態が起きています。由々しきことで、抗議文を出すのは当然です。犯人はまだ判っていませんが、なのに、「この街の事情をまだよく知らない新参者の仕業には間違いない。また、それを煽る連中の存在が一役買っているのも事実だろう!」と、まるで「釜合労」や尾崎さんらが犯人であるかのように仄めかすのはいかがなものでしょうか。大いに疑問です。私の知人の多くも「いいね!」したりコメントしたりしていますが、逆に「お前ら、労働者と共にセンター閉鎖に抗議しろ!」と叱咤激励していただきたいと思います。

さらに、尾崎さんや飛松五男さんらが尽力されながらも未解決の「女医変死事件」についても、「釜日労」は冷淡で、これを報じた『週刊金曜日』に強く抗議したそうです。今回の『人民新聞』への抗議に似ています。人民の側に立つことを公言するならば、逆に事件の真相究明のために力を貸していただきたいと思うところです。

尾崎さんと長い付き合いがあるからといって、尾崎さんが先のテントを破ったりしたのなら諌めますし、こうしたことが繰り返されたりするならば訣別します(同行してくれたM君リンチ事件で、その日和見主義的態度を取り、四半世紀以上の付き合いがあった鈴木邦男氏と義絶したように)。また、「釜合労」「釜日労」、どちらに与するわけでもなく、労働者の利益のために頑張っているほうを応援するのは言うまでもありません。

新潟出身で東京の大学に行き、在学中に新聞会の活動を通して山谷や釜ヶ崎の問題に関心を持ち、20数年前に釜ヶ崎に居を据え食堂を開いた尾崎さんの想いは素晴らしいと思います。私が尾崎さんの立場ならできません。

 

「はなまま」尾崎さんの2019年5月5日ツイッターより

女ひとりで食堂を営んでいますので、けっこう怖い場面もあるようで、刃渡り40センチぐらいののこぎりを持って食堂の前に居座られたりしたことも。こういう時には食堂のお客さんや仲間らが追い払ってくれるそうです。

尾崎さんは、時折冤罪や原発問題などで講演会を開いたりしますが、仲間らが手伝ってくれ、けっこう人数を集めます。来月には湖東病院冤罪事件被害者で先頃再審を勝ち取った西山美香さんと主任弁護人の井戸謙一弁護士(私たちが支援している滋賀医大問題の患者側の代理人でもあります)も来てくれるそうです。

一時は「一億総中流」などといわれた時代もありましたが、今はそんなことなど誰も信じません。ほんの一部の上流とほとんどの下流(嫌な言葉です)の格差が広がり、一所懸命働き年金も積み立ててきたのに年金さえもまともにもらえない(もらってもそれだけでは生活できない)社会になっています。一千万円単位の退職金をもらえるのは公務員とほんの一部の大企業ぐらいでしょう(ここでもほとんどの民間企業、特に中小企業との格差です)。

釜ヶ崎や山谷には、そうした格差や貧困問題が凝縮されていると思います。時代や社会が変わり、街が小奇麗になっていくのは、ある意味で致し方ないとしても、たった一人の労働者も弱者も切り捨てることなく都市計画を進めていただきたいと、あらためて感じました。

これからも情況は激しく転回していくと思われますが、釜への注目をお願いいたします。

 

『NO NUKES voice』18号 「はなまま」尾崎美代子さんによるフォークシンガー中川五郎さんインタビューを収録

『NO NUKES voice』19号「はなまま」尾崎美代子さんによる報告「美浜、大飯、高浜から溢れ出す使用済み核燃料を関西電力はどうするか?」を収録

創業50周年!タブーなき言論を!『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態

4月9日16時30分から大津地裁で患者さん4名が滋賀医大病院附属病院泌尿器科の河内・成田両医師を相手取り「説明義務違反」により損害賠償を請求した民事訴訟と、岡本圭生医師の治療を望む「待機患者」7名と岡本医師が滋賀医大を相手取り「治療妨害の禁止」を求めた仮処分の審尋が大津地裁で同じ日に連続して行われた。

この訴訟と仮処分の日に患者会のメンバーは12時半頃から滋賀医大附属病院前で抗議のスタンディングを行った。患者会は昨年末に「岡本医師の治療継続」を求める署名活動を全国で展開し、短期間に2万8千筆を超える署名が集まった。3月13日署名の現物をもって厚労省、国会議員に嘆願・陳情を行った。それと相前後して病院前での「スタンディング」による抗議活動が始まっていた。冷え込みが強い今年の冬、早朝病院前での「スタンディング」は患者さんにとって、体力的にも厳しいに違いないが、毎回20名を超える参加者が集まり「抗議活動」が続けられてきた。

この日はこれまで最大規模の約35名が病院前に集まり、晴天ながらやや寒い風が吹く中約2時間にわたり、静かに大規模な抗議が展開された。抗議行動に音を上げたのか、病院の事務室ガラス窓は、途中からブラインドが下ろされる。これまでにはなかった病院の狼狽ぶりが観察できた。

約35名が病院前で約2時間にわたり、静かに大規模な抗議を展開した

患者会アドバイザーでフリージャーナリストの山口正紀さん

15時30分からは裁判所にほど近い大津駅前で集会が開かれた。患者会代表の惠さんが「きょうも晴天です。患者会の活動はきっと幸運に見守られているのでしょう」と挨拶をして集会がはじまった。患者会アドバイザーでフリージャーナリスト山口正紀さんが最初のスピーチにたった。

「3月13日厚労省への申し入れも取材しましたが、課長は 『違法行為が確認できないと動けない』というので『違法行為が確認できなくとも、異常なことが起こっていることはわかるだろう』と発言しました。翌日(3月14日)には病院のHPで『新たな小線源治療をはじめる』との告知がありましたが、なんとそれを担当するのは、いま説明義務違反で被告になっている成田医師だそうです。まったく施術の経験がない成田医師。研修を受けた、見学をしたから大丈夫と病院はいっていますが、驚くべきことです。わたしもガンと闘っていますが皆さん共に頑張りましょう」

山口氏はこの日スタンディングから記者会見までの始終を取材されていた。

待機患者の鳥居さん

続いて待機患者の鳥居さんが「わたしには心強い仲間が居ました。ご自身の治療は終わっているのに、手弁当で全国から集まってこられる先輩方の存在です。先日病院前のスタンディングに参加していたら『君は待機患者だろう。体を大切にしなさい。私が変わろう』と言葉をかけて頂きました」と名も知らぬ患者同士の結びつきにより支えられている患者会の運動についての感想を語った。

待機患者の宮内さん

同様に待機患者の宮内さんは「裁判所は常識的に『治療継続』との判断をしてくれると信じています。しかし目的はそれだけではありません。未来の患者にわれわれ同様『岡本メソッド』を受けられるようにする必要があります。そのためには岡本先生が大学に残り、後進の医師を育ててもらう必要があります。皆さん!がんばりましょう!」と元気な訴えを行った。

そのあと、提訴原告の大河内さんと患者会代表幹事で、街頭活動のリーダーが挨拶をし、頑張ろう三唱で集会は結びとなった。到底傍聴席には入りきれない80余名の集会参加者は裁判所前に移動し開廷をまった。

患者会のメンバーが、傍聴できないひとを裁判後、記者会見が行われる教育会館に誘導する。16時20分、傍聴席の扉が開いた。法廷の最後尾にテレビカメラが準備されている。この日の裁判は「冒頭撮影」がおこなわれることがわかった。社会的に注目の高い裁判に限り、テレビ局が裁判所に申請をすれば、代表撮影が2分間許される。

傍聴席には入りきれない80余名の集会参加者が裁判所前に移動し開廷をまった

いよいよ滋賀医大附属病院、泌尿器科を発信源とする問題の数々への注目が、本格的に広がりだしたことを示す証だろう。そういえば、この日病院前のスタンディングから、従来より継続取材と放送を続けているMBS(毎日放送)に加えてABC(朝日放送)の取材陣も新たにカメラを持って現れていた。

16時30分から予定通り「説明義務違反」の裁判が始まり、原告被告双方が準備書面の弁論を行い、参加人である岡本医師の代理人も準備書面を提出した(弁論)。原告側からは、証人として、塩田浩平滋賀医大学長、松末吉隆病院長、原告の申請がおこなわれたが、裁判長は被告に対して、再度の釈明(反論)を求め、被告が5月17日までに書面の提出を行い、次回期日は6月11日13時30分からと決まった。

弁護団長の井戸弁護士

引き続いて仮処分の審尋がおこなわれた。仮処分は非公開なので、傍聴席を埋めた患者会のメンバー取材陣は、記者会見が行われる、教育会館に移動した。仮処分の審尋はせいぜい15分から、長くとも30分程度と考え、記者会見は17時30分開始の予定であったが、記者会見がはじまったのは18時15分であった。

弁護団長の井戸弁護士が会見の遅れた理由などを説明した。井戸弁護士によると仮処分の審尋についての話し合いが長引き、5月中の結論を出せと要請しているが、和解のための期日が4月19日に設けられたとの説明があった。ただし、和解についてはデリケートな内容であり、申立人との確認が必要であることから詳細な説明はなされなかった。仮処分は、早くも決定的な局面を迎えることになった。

岡本医師が会場に現れ参加者に挨拶

記者会見終了後、岡本医師が会場に現れ参加者に挨拶をした。

「本日はお忙しい中、遠方からもお集まりいただきい誠にありがとうございました。私は本日も3名の方の治療を終えて駆け付けた次第であります。私自身、唯一の願いはなんとか待機患者さんを救えるように、また、まだ私の受診すらできず待っておられる患者さんを救いたい。そのことに頑張りたいその一念であります。さて私たちは患者さんの人権や人命を守るために一緒に闘っているわけです。しかし私たちが初めて闘いをしたわけではないことを最近知ることになりました。(中略)私はこの事件を知りとても勇気づけられました。私や私の待機患者さんには既に治療を終わられ、ひたすら利他の気持ちで患者さんを救いたい。なんとかそれに行動したいという多くの方がおられることに大変ありがたく思って居ることと、本当に誇りに思っております。2015年に泌尿器科の不当行為から原告を含める20数名の患者さんを救い出した時から、私の気持ちは一切変わっていません。私はこれまで通り命を懸けて待機されている前立腺がん患者の皆様を救えるように、これからも頑張っていきたいと思いますので、引き続きどうぞご支援のほどよろしくお願いいたします」

岡本医師の挨拶のあと、拍手が鳴りやまなかった。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連記事》
◎田所敏夫-滋賀医大小線源患者会が同病院正面玄関で抗議活動を決行!(2019年3月28日)
◎黒薮哲哉-[特別寄稿]小線源治療患者会が国会議員と厚生労働省へ嘆願、2万8,189筆の命の署名を提出の命の署名を提出(2019年3月15日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダリズム・マガジン『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年、男性患者(当時72)の人工呼吸器のチューブを抜いて殺害したとして、殺人罪で懲役12年が確定し、服役した元看護助手の西山美香さん(39)=同県彦根市=が申し立てた再審請求で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は、裁判のやり直しを認める決定をした。3月18日付で検察の特別抗告を棄却した。裁判官3人による全員一致の結論で、事件発生から16年を経て再審開始が確定した。


◎[参考動画]「無罪判決に向け頑張る」 再審確定で西山さん涙(KyodoNews 2019/03/19公開)

最高裁での再審開始決定は、西山さんが冤罪被害者であることを、無実であることを明かすことになるだろう。このようなケースに接するたびに、ひとりの人間を犯罪者と決めつけ服役させたり、場合によっては死刑を言い渡した裁判官や検事、警察官の個人としての責任は問えないものか、といつも疑問がわく。職務として合法的な手段により無辜の市民に刑事罰を押し付ける。こんなことをされたらたまったものではない。仕事でひとを「罪人」と決め付けるのは「犯罪」ではないのか。

鹿砦社代表の松岡が、本人のFacebookで取り上げているが、アルゼ(事件当時、現在はユニバーサルエンターテインメント)により刑事告訴され、逮捕後神戸拘置所に192日も勾留された事件が、他人事ではくその恐ろしさを示している。

◎アルゼ(現ユニバーサル)岡田和生と私の15年戦争(2017年7月3日付デジタル鹿砦社通信)

◎【緊急NEWS!】私を嵌め逮捕―長期勾留―有罪判決を強い、鹿砦社に壊滅的打撃を与えた旧アルゼ創業者(元)オーナー・岡田和生氏の逮捕に思う(2018年8月9日付デジタル鹿砦社通信)

名誉毀損とされた書籍を読んでも、市民感覚からすれば「どこが名誉毀損になるのか」まったくわからない。松岡が書いている通り、アルゼの経営者には警視総監など警察関係者が天下りで就任していたので、実は警察に喧嘩を売っていたのが実情だったのが、逮捕勾留の理由だったのではないか。にしても出版による名誉毀損で逮捕をしなければならない理由がどこにあるというのだ。逮捕勾留は、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合にのみ認められる。松岡の場合、証拠は既に出版した書籍だから隠滅の手段はないし、会社の代表だから社員を放り出して逃げることもないじゃないか。

◆「りんご箱から腐ったりんご」を取り除く井戸謙一弁護士

西山さんの「冤罪」問題を井戸謙一弁護士から聞かされたのは、2年ほどまえだっただろうか。まだどのメディアもこの問題を取り上げておらず、本コラムでさまざまな事件についての取材を執筆している片岡健氏だけが追いかけていた。

◎滋賀患者死亡事件 西山美香さんを冤罪に貶めた滋賀県警・山本誠刑事の余罪(2018年2月16日付デジタル鹿砦社通信)

「実刑判決を受け服役中なんです。あとしばらくしたら満期です。田所さんも是非取材して書いてくれませんか」と井戸弁護士から説明と依頼を受けた。当時わたしは「M君リンチ事件」の取材に忙しく、残念ながら西山さんの事件には手付かずだった。あれから不思議なご縁で、井戸弁護士とはたびたび取材者として、関係者としてお目にかかったり、連絡をさせていただいたりするご縁をいただいた。

井戸謙一弁護士

3月20日、朝日新聞ほか多くの新聞の一面トップは西山さんの再審決定を報じている。19日の午後、井戸弁護士は西山さんの記者会見やその後の取材対応で忙殺されていたに違いない。その真っ最中に滋賀医大附属病院係争関係で、重大な事項が生じた。関係者が井戸弁護士に急報を告げると超多忙のなか「5分だけなら」と井戸弁護士は相談に応じてくださった。夜、関係者及びわたしが送ったメールへも短時間で返信いただいた。西山さんの再審決定の美酒に浸る猶予もなく原発事故被害者、冤罪被害者、刑事被告人、滋賀医大問題関係者……想像を越えるだろう数の人びとの相談に井戸弁護士は瞬時に判断を下す。

弁護士のなかには「かみそり」なんとかと持ち上げられたり、「人権派」と自他称し・されながら、その実暴利を貪り、あるいは「どうしてこんな事件のこんな当事者の弁護に就任するのか」と首を傾げたくなる言行不一致の人物が少なくない。裁判官時代に志賀原発の運転差し止め判決、住基ネット差し止め判決を下した井戸謙一弁護士は、法廷の中だけを見ている弁護士ではなく、事件や争いの本質がどこにあるのか。問題の核心はなにか。そのためにはどのような論理構成が必要で可能かを依頼者の立場で考え、アドバイスを与え、冒頭の西山さん冤罪事件を立件前の証言の変化から緻密に解き明かし、再審を勝ち取った。

たくさんの事件を受任しながら、井戸弁護士は滋賀医大附属病院問題に必ず、法を駆使した「メス」を入れるだろう。そのことが滋賀医大附属病院の腐敗解消の端緒となり、患者の命が救われると同時に、滋賀医大附属病院に勤務する、真面目で誠実な関係者への激励と名誉回復にも繋がるだろう。「悪貨は良貨を駆逐する」が「りんご箱から腐ったりんご」を取り除くことも可能なのだ。


◎[参考動画]〈湖東記念病院事件・再審確定〉元看護助手・西山美香さん会見(shiminjichi second 2019/03/19公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

衝撃月刊『紙の爆弾』4月号!

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

滋賀医科大学医学部附属病院(以下、滋賀医科大病院)で岡本圭生医師による前立腺癌・小線源治療を受けた患者や治療の順番を待っている患者らでつくる小線源治療患者会(以下、患者会)のメンバー4人が、3月13日、国会議員と根本匠・厚生労働省に対して、それぞれ別個に2万8,189筆の署名と嘆願書を提出した。同病院が告知している岡本医師による小線源治療の中止を撤回させ、継続させる方向で、政界の支援と行政指導を求めた。

患者会が3ヶ月で集めた2万8,189筆の署名

本ウェブサイトで報じてきたように、滋賀医科大病院は、前立腺癌の治療で卓越した成果を上げてきた岡本医師による小線源治療を、今年の6月末で打ち切り、7月からは手術を受けた患者の経過観察だけに切り替える。新規の患者は受け付けない。そして今年一杯で前立腺癌小線源治療学講座そのものを廃止して、岡本医師を解雇する。

そのために岡本医師の治療を強く希望しながらも、順番遵守の原則で手術の予約ができない患者が増え続けている。すでに30名を超えている。手術を受けた患者も経過観察が受けられなくなる。患者会による今回の嘆願は、こうした事態の打開を求めて行われた。

嘆願メンバーの患者会、代表幹事・安江博さんは、次のように現在の異常事態を訴えた。

「一番問題なのは、滋賀医科大病院に対して他の病院から治療の依頼がきているにもかかわらず、治療を断り続けていることです。滋賀医科大病院には治療ができる岡本医師がいるし、施設もあります。治療を希望している患者さんがたくさんいるにもかかわらず治療を拒否しているのです」

紙の爆弾のグラビアを示し説明する安江さん

 

議員への陳情

◆死への秒読みの恐怖にたえる日々

岡本メソッドに最後の希望を託していながら治療予約のできない2人の前立腺癌患者も、みずからの胸中を議員や官僚に訴えた。このうち東京都在住の山口淳さんは、昨年10月に癌の診断を受けた。転移するリスクが極めて高い癌だった。

「医師に5年生存率を尋ねると、70%といわれました。最初、前立腺癌は慌てなくてもいい病気だと思っていましたが、調べていくうちにそうではないことが分かってきました。暗い気持になりました。将来のことを考えると眠れなくなり、食事もすすまなくなりました。体重が7キロ減りました。必死で治療できる医師を捜したところ、高リスクでも再発率が3%程度の治療をする病院があることを知ったのです。それが滋賀医科大病院でした。岡本先生による治療だったのです」

有名で人望に厚い医師なので、はたして初診を受けることができるかどうか山口さんは不安で一杯だった。しかし、メールを送ったところ、すぐに岡本医師から返信があり、11月に初診を受けることが決まった。

「その時は、本当にほっとしました。やっと死から脱出できると安堵したのです。食欲も、体重も戻りました」

ところがその後、2019年の6月以降は岡本医師の治療が廃止になると告げられた。一度は命拾いしたと確信したのに、無惨にも再び絶望の底へ突き落とされたのだ。
山口さんは、現在、別の病院でホルモン治療を受けながら、滋賀医科大病院が方針を見直すのを待っている。が、そのホルモン治療も2年ぐらいが限度だと言われている。死への秒読みが始まっているのである。

 

記者会見風景

◆「きちっと癌を治せる治療を受けさせて」

山口さんと同じく東京在住の木村明(仮名)さんも岡本メソッドを希望しながら手術予約ができない患者のひとりである。昨年の9月、4段階に分類される癌ステージの「2」に該当する中間リスクの癌と診断された。木村さんが言う。

「わたしの場合、高リスクではありませんが、確実に再発しないように癌を治したいという強い希望があり、いろいろインターネットを検索したところ、岡本医師の存在を知りました。岡本先生に直接メールを送り、10月に1回目の診察を受けました」

患者にとって治療後のQOL(生活の質)を度外視することはできない。たとえば前立腺癌の摘出手術を受けた場合、尿もれなどの後遺症が頻繁にみられる。癌そのものは征服できてもQOLのレベルが低くなることがあるのだ。木村さんは、QOLを重視して、岡本メソッドを求めたのだ。ところが予想外の展開になる。

「12月に2回目の診察を受けたときに、『申し訳ないが、自分が治療できるのは6月末までで、木村さんは間に合わなかった』と言われました。わたしだけではなく、ほかに何十人もそういう患者さんがいるとも言われました。初診すら病院側から拒否されている患者さんもいるとのことでした。6月で治療が中止になると、わたしも他の患者さんも困ります。きちっと癌を治せる治療を受けさせてほしいというのが願いです」

◆責任を問われるべきなのは泌尿器科の医師たち

滋賀医科大病院で、起きている異常実態の発端は、泌尿器科の医師による不適切な医療にある。2015年1月、同病院は岡本医師を特任教授とする小線源治療学講座とそれに併設する外来を開いた。ところが同講座を下部組織にすることを目論んだ泌尿器科が、岡本医師を頼ってきた患者の一部を泌尿器科に誘導。独自に小線源治療を計画し、手術の前段で不適切な医療を行ってしまった。医師らは、小線源治療の手術経験のない素人だった。

滋賀医科大の塩田浩平学長は、被害を受けた患者の治療を岡本医師に命じた。しかし、被害を受けた患者らは怒りが収まらずに告発の動きにでた。そこで患者の口を封じるために、病院は小線源治療学講座の終了と岡本医師の追放を計画したのである。本来、両者はまったく別の問題なのだが。

◆寒空の下の署名活動の果実

こうした実態について岡本医師の治療を受けた体験を持つ、原田勝一(仮名)さんは、次のように訴えた。

「本来、病院から排除されるべき人物は、不適切な医療を行った泌尿器科の教授らであって、被害にあつた患者さんを救った岡本先生ではありません。岡本先生こそ滋賀医科大病院に残って患者さんの治療を続けるべきですが、現実にはまったく逆で、泌尿器科の医師らはなんのお咎めも受けていません。患者を助けた岡本先生が逆に排除されようとしています。まったく非常識なことが滋賀医科大で起こっているのです。こうした滋賀医科大病院のやりかたに疑問を持った方がたくさんおられて、それが2万8,000筆を超える署名になったのです」

 

厚労省課長申し入れ

署名は患者が中心になって、寒空の下、3カ月という短期で集められた。駅頭などで街宣活動を繰り返し集めたのである。

署名と嘆願書を受け取った厚生労働省の北波孝・厚生労働省医政局総務課長は、「出来ることと出来ないことがありますが、 こういう嘆願があったことは滋賀医科大病院へ伝えます」と、約束した。

なお、厚生労働省への嘆願に先立って、参議院議員会館で行われた国会議員に対する嘆願では、次の国会議員の秘書が、患者会の4人に対応した。

こやり隆史・参議院議員(自民党)
足立信也・参議院議員(国民民主党)
山下芳生・参議院議員(共産党)
三ツ林裕也・衆議院議員(自民党)
櫻井 周・衆議院議員(立憲民主党)

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▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
フリーランスライター。メディア黒書(MEDIA KOKUSYO)の主宰者。「押し紙」問題、電磁波問題などを取材している。

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1月9日、滋賀医科大学小線源治療患者会の皆さんが文科省と、厚生労働省を訪れ、“FACT-P(Functional Assessment of Cancer Therapy – Prostate)”と呼ばれるQOL(Quality of life=術後の生活の質)調査が、滋賀医科大学附属病院により不適切に実施された問題についての申し入れを行った。申し入れ文書は、下記に掲載した通りである。

FACT-P案件申し入れ文書(1~2頁)

FACT-P案件申し入れ文書(3~4頁)

午前11時から行われた文科省への申し入れでは、高等教育局医学教育課大学病院支援室長補佐の早川慶氏が申し入れに応じ、患者会の説明を聞いた後「諸法令、関係省と協議しながら対応する」と述べた。

午後2時からは厚労省医政局総務課企画法令係長、松下有宇(ゆう)氏と医政局総務課課長補佐渡邊周介氏が患者会の申し入れに対応した。

患者会のメンバーは、
・カルテが担当医師ではなく、事務職員のにより削除されていること
・“FACT-P”は国際的なQOL調査で実施の際には、患者への説明と同意が義務付けられているが、それらがなかったこと
・本来調査票にはあってはならない「氏名」記入欄が設けられていたこと
・氏名記入欄があるだけでも問題だが、少なくとも23名の患者さんの調査票に、本人以外が氏名を書き込まれていること
・FACT調査の版権を持っている米国のFACT機構に患者会が質問をしたところ、「FACT機構の考えを回答する。滋賀医大附属病院は確かにFACT調査利用の認証を受けているが、FACT調査はこの調査表使用の前提条件として説明と同意を得ることを前提としている。このことは全世界共通としている。患者への説明と同意を取らず、氏名を特定できる方法で調査を実施していたことは機構としては想定外のことである」と回答があったこと
・滋賀医大附属病院の本件への対応が極めて、不適切であること
などを説明した。

申し入れ内容を説明する奥村謙一郎さん

患者会メンバーが最後に「本件については具体的にどのような対応をしていただけるか」と質問したところ、渡邊氏は「医療法は非常に難しい面もあるので、細かく精査したうえでどのように対応するかきめる」と答えた。「対応の内容が決まったら教えてほしい」との要請を渡邊氏は拒否しなかった。

続いて15時30分から厚労省記者クラブで記者会見が開かれた。厚労省担当者に行ったのと同内容の説明の後、質疑に移ると、「カルテの改竄は刑事事件に相当するが、刑事告発の意思はないか」、「患者会が望むのは賠償か」、「その後病院との間でやりとりはあるか」など質問が相次いだ。

とくに、参加した患者さんの1名がご自身のカルテを持参しており、氏名記入欄に誰の目にも明らかな筆跡の違う名前が書きこまれていることを示すと、テレビ局の記者は驚いた様子であった。

1月9日の記者会見には、約15社が参加していたが、同日のうちに共同通信が、記事を配信。その後ネットニュースやテレビ番組でも記者会見の模様は取り上げられた。

病院の姿勢を強く糾弾する安江博さん

裏とり(証拠固め)をしなければ、デリケートな問題は報道しないマスコミも、ここまでの証拠を見せつけられたら報道に踏み切らざるを得なかったということであろう。報道によれば滋賀医科大学附属病院は「記者会見の内容を承知しておらず、コメントは控える」と回答しているそうだ。

コメントはできないだろう。明らかな不正行為なのだから。

滋賀医科大附属病院の院長並びに、経営陣はもうそろそろ、世間では筋の通らない屁理屈をこねまわすことはやめるべきだ。同病院でこのようないい加減なことをする医師や職員は少数だ。泌尿器科が発生源の数々のトラブルは、滋賀医科大附属病院に勤務する、優秀かつ親切な多くの医師や医療関係者にとっての侮辱ではないか。

さらに、消息筋から滋賀医科大附属病院については、「FACT-P調査の問題をはるかに凌駕する大スキャンダルが発生している」との情報もある。ここしばらく滋賀医科大附属病院から目が離せない。

このように滋賀医科大附属病院泌尿器科の不祥事が続く中、患者会は明日1月12日(土)小線源講座の岡本医師の治療継続と、待機患者の治療の機会を守ることを訴えるデモをJR草津駅で13時から予定している。患者会によれば近畿はもとより、東京、四国、山形、新潟など全国から患者さんや待機患者さんが集結するという。

記者会見に臨んだ患者会のメンバー

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

治療継続を訴えるメッセージ

もし、あなたが、いずれかのがんと診断されていて、その部位の「がん治療に抜群の実績を上げている先生がいる」と聞いたら、どうなさるであろうか。「一度診てもらおう」と考えるのは、ごく自然だろう。だが、遠路はるばるその病院を訪ねたのに、肝心の担当医が、定年退職でもないのに「辞めさせられる」と聞かされたら、あなたはどう感じるであろうか。

そんな苦悩に直面している患者さんたちがいる。本通信で何度か紹介してきた「滋賀医大病院小線源治療講座」の閉鎖も問題である。患者会のメンバーは自主的に、あるいは患者会として全国各地でチラシ配り、署名活動を展開してきたが、12月23日(日)、24日(月)の両日は滋賀医大附属病院に近い、JR草津駅前で広報・署名活動が展開される。23日午前草津駅前に患者会のメンバー31名が集まり、11時から待機患者さんが窮状を訴えた。

待機患者の月原さん

◆待機患者・月原さんの訴え

「私は奈良県在住の月原と申します。私は今から16年前に父を亡くしました。前立腺がんが骨に転移ししたことが原因で約6年半の闘病生活を経ての死です。そのため私自身前立腺がんについては、常に意識して、早め早めの取り組みをすべく定期的なPSA検査を受けておりました。今年になりPSAの数値が上昇したので、8月に生検(細胞検査)を受けた結果、前立腺がんが見つかりました。その時のショックは今もよく記憶しております。すぐに治療方法について医師から説明がありましたが、いずれも再発に不安を覚えました。そこで家内と、再発のない治療方法をインターネットなどで探した結果、滋賀医大岡本圭生先生の小線源治療にたどり着きました。早速岡本先生にメールしたら、すぐに返事がきました。『紹介書や手術時のデータを揃えなさい』。すべてそろえた日に先生に連絡したら『10月11日に会いましょう』と、これまた即返信が来たのです。

とてもお忙しい方のはずなのに、このクイックアクション。なんと患者思いの温かい先生なのかと感動しました。無事岡本先生に会え次回は12月末に具体的な治療計画を相談することになっており、『よし、これで治療してもらえるぞ』と安堵していた矢先、『入院が来年7月以降になるので確約できない』という連絡が来ました。最初何を言われているのか、意味が分からなかったのですが、滋賀医大が来年12月で岡本先生の講座を閉鎖。それに先立ち7月以降の治療を停止する、ということを知らされ、『なぜ多くの待機患者が実在するのにどうして切り捨てるような措置ができるのか。国民の税金で経営されている、国立大学附属病院にそんな勝手が許されるのか。私は一気に奈落の底に突き落とされました。

署名に応じる方々

岡本先生と寄付講座の運営会社は7月以降の治療停止は、人道上・公益上反対されていると聞いています。岡本先生が病院におられ、治療希望患者がたくさんいるのにさせない。こんなこと国立大学附属病院としてありえないことではないでしょか。また病院側は不当かつ未経験の治療を行おうとした成田医師が「後任」と宣言しています。我々患者の命をどこまで軽視するのか、憤りを感じずにはおられません。

私は岡本先生の治療を受けたい。真の健康を取り戻したい。そして同じ病気で苦しむ方々に、同じ喜びを味わってほしいと強く思います。滋賀医大の関係者の方々、何が正しいのかを胸に手を当てて考えていただきたい。患者軽視の滋賀医大ではなく、患者ファーストの岡本先生が正しいことは誰の目にも明らかです。どうか私ども全国の待機患者に新たな希望を与えてください。切にお願い申し上げます」(待機患者の月原さん)

待機患者の横田さん

◆待機患者・横田さんの訴え

「彦根の横田と申しますよろしくお願いします。私の場合ことの発端は本年10月5日に大津の医療機関で前立腺肥大の状況がわかり、血液検査の腫瘍マーカー検査の結果98.0の異常値を通知されました。至急に総合病院泌尿器科で検査治療を行うことを指示されました。その後約1月にわたり彦根の医療機関で辛い検査の日々で、MRI、CT、骨シンチの検査と続き11月2日に担当医師から検査結果を通知されました。結果は悪性度も進行度も高い、高リスクの前立腺がんの確定診断であり、膀胱へ浸潤している可能性もあり、その場合は根治の期待はできない、というものでした。検査前から私の娘からの情報を得て、岡本医師の小線源療法を希望していましたが、私の症例からは、受けてもらえるかどうかは岡本医師の判断による、とのことで、祈る思いで滋賀医大を受診しました。

11月5日診察当日岡本医師からは治療に関しては正面から受けていただきました。しかし残念なことに現医療体制に期限が決められている掲示を見て驚き、岡本医師からは「掲示してあるとおりです」というようなことを言われたのみです。治療の方針はトリモダリティー。トリモダリティーとは高リスクの場合に行われている治療法で、ホルモン治療、放射線内照射、放射線外照射を併用するもの、の明言があり当日からホルモン治療を開始していただきました。その日前までは骨への転移の恐怖感から仕事中も含め、起きている間は「死への不安」で押し潰されそうな毎日を過ごしていましたが、その日からは転移の可能性が低減されたことや、何よりも先生から『私であれば治すことができる』と言っていただきましたので心の状態は病気発覚前の状態に戻り、10月は発熱などで仕事も休みがちでしたが、それも解消しました。岡本先生を信頼し、根治の希望を託し任せるしかないと思いました。次回受診日は2月ですがその後の治療計画は白紙ですし、確実なものは何もありません。こんな状況で、現治療体制の継続を切望し、自分にできることを開始しようと患者会の署名活動を行ってきています。職場や地域の方から200人ほどの賛同署名を頂いております。どのような状況になろうとも、岡本先生に最後まで治療を受けることを望んでいます」(待機患者の横田さん)

待機患者の訴えの後、メンバーは5グループに分かれ、チラシ配り、署名活動を開始した。午前中は穏やかな天候に恵まれ、総計1216枚のチラシを配布し、419筆の署名が集まった。この日の活動には東京、名古屋、四国などからも患者会のメンバー31人が参加した。

署名する親子

◆利他で貫かれた「患者会」の活動

一方、患者会メンバーの中には、街頭活動には参加できないが、裁判などに使われる情報の整理や加工、運動方針の議論、待機患者さんとの相談窓口など、個々人の個性を活かした活動が展開されている。患者会メンバーには医師、エンジニア、元官僚や現役の大学教員、自営業とバックボーンはそれぞれだ。

しかし、治療を受けて前立腺がんを克服した患者さんたちが、待機患者さんにも治療の機会を確保しよう、自分が享受した、前立腺がん完治の喜びを「知らない誰かとも」共有したい。まったく私利がなく、利他に貫かれているのが「患者会」の特徴だろう。無私の活動に頭の下がる思いだ。

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集合した患者会メンバー

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兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

患者さんの訴え

◆集会には120名超が集結

11月27日13:10から大津地裁で、4名の原告が滋賀医科大学医学部附属病院、泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を訴えた裁判(事件番号平成30わ第381号)の第二回期日が開かれた。この裁判についてはこれまでも2回報告しているので、背景にお詳しくない方は、そちらをご覧いただきたい。

正午から大津駅前で、患者会による集会が開かれた。患者会員数は、既に900名を超えているが、この日は120名以上のひとびとが大津駅前を埋めた。司会者は既に治療を終えらた患者さんであるが、この日の集会では、患者会のアドバイザーとして活躍していながら、ご自身も8月に癌が見つかり、現在闘病中の山口正紀さんから寄せられたメッセージを司会の方が読み上げた。やや長文になるが、初めてこの事件に接する方には参考になるので山口さんからのメッセージ全文をご紹介する。

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◆山口正紀さんからのメッセージ

滋賀医大病院による人権侵害の責任を問い、患者切り捨てと闘う裁判の第2回口頭弁論報告集会に各地から参加された皆様、患者会アドバイザーとして皆さんの闘いに参加させていただいているジャーナリストの山口正紀です。10月9日の第1回弁論の集会で少しお話させていただきましたが、9月初めに「ステージⅣの肺がん」が見つかって治療に専念せざるを得なくなり、本日の弁論、集会に参加できず、ほんとうに残念に思っています。

患者会は、発足からわずか半年で900人を超える大きな集まりになったとのこと。どれほど多くの前立腺がん患者が、岡本圭生先生の小線源治療に生きる希望を見出し、その講座継続を願っているかを物語る数字だと思います。しかし、滋賀医大病院泌尿器科の河内医師や松末院長たちは、そんな患者の皆さんの切実な思いなどまったく想像もできないのでしょう。この裁判でも、不必要・不適切な、治療とも呼べない人権侵害行為で原告の方々、多くの患者さんに重大な被害を与えたことを謝罪もせず、それどころか、患者さんを救った岡本先生を病院から追放しようと躍起になっています。
昨年末、病院のホームページに掲載された「講座閉鎖」の告知を読んで、本当にびっくりし、あきれ果てました。「小線源外来の終了後は、泌尿器科において、標準的な小線源治療の開始を予定している」と言うのです。

しかし、この「標準的治療」とは、いったいどんな治療なのでしょうか。小線源治療には高度な知識と熟練した技術を要しますが、それを一度もやったことがない成田医師らが、そのことを患者には黙ったまま、手術をする。そういう患者を無視した行為を「標準的な治療」と言っているのです。これは、まさに岡本先生が医師の良心にかけ、勇気をもって未然に防いだ患者のモルモット化を、今度は病院公認でおおっぴらにやろうとするものです。しかも病院の告知は、岡本先生の外来を閉鎖した後、「患者さんのご希望に沿って本院泌尿器科で経過観察する」と言っています。どこまで患者をバカにすれば済むのでしょうか。患者を実験台にしようと企み、それがばれても被害者に謝罪もせず、それどころかその悪事を未然に防いだ岡本先生を追放する。そんな医師にあるまじき連中に「経過観察」を任せるような患者がいる、とでも思っているのでしょうか。心底、患者をバカにした告知ではありませんか。

これまで、大学病院当局のパワーハラスメントの中で、がまんを余儀なくされてきた岡本先生が11月16日、ついに堪忍袋の緒が切れて、病院による名誉毀損と闘う仮処分を申し立てられました。その記者会見の様子が、デジタル鹿砦社通信に載っています。待機患者として参加された東京の山口淳さんの話には、ほんとうに心を打たれます。〈がん告知後の悪夢の中で、ようやくたどりついた岡本先生の外来が閉鎖されようとしている。不安いっぱいの中で送ったメールに岡本先生からメールが返ってきて、先生の診察を受けることができた。けれども来年、ほんとうに手術を受けることができるかどうか。もしかしたら、また死を覚悟しなければいけない状態に舞い戻るかもしれない。もし、岡本先生の講座を廃止する非情な措置が取られたら、我々の生きようとする希望が失われてしまう〉山口淳さんはこう訴えられました。

いま、ステージⅣの肺がん治療に取り組み始めたばかりの私にとっても、この訴えは100%、切実に共有できます。私もこの間、生き延びるための治療を求めて不安な日々を送ってきました。こんな患者の皆さんの痛切な思いを、滋賀医大病院泌尿器科の医師や病院長、学長は、なぜわからないのでしょうか。わかろうとしないのでしょうか。先日、地元の滋賀県をはじめ、名古屋や東京など全国各地で患者会の皆さんによる街頭での訴えや署名活動が始まった、とのことです。いま滋賀医大病院で起きている患者切り捨て、暴力的な「岡本医師追放工作」の実態を一人でも多くの市民に知らせる。それが、大学と病院当局に反省を迫り、小線源講座の継続を実現するための最も近道だと思います。この裁判もその重要な一環です。

私も引き続き、皆さんの闘いに参加したい、そんな思いから、鹿砦社から出ている『紙の爆弾』という月刊誌の2019年1月号に、「がん患者の命綱を断ち切る暴挙」という8ページの記事を書きました。この問題の背景と本質、患者会と岡本先生の闘いの意義について、わかりやすく書いたつもりです。12月7日ごろには、書店に並ぶと思います。定価600円です。ぜひ書店でお買い求めいただき、今後の地域や街頭での訴え、署名活動などでこの問題を市民に説明する際の参考に使っていただければ、と思います。また皆さんと一緒に、口頭弁論当日の大津駅前集会や、裁判報告集会に参加できる日が来るよう、頑張って治療に励みます。皆さんは、闘う相手が病気だけでなくてたいへんだと思いますが、滋賀医大病院の悪事と闘いながら、お体にも十分気をつけてください。「裁判勝利・小線源講座継続」に向けて、ともにがんばりましょう。

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山形県から駆け付けた患者の家族

◆山形県から駆け付けた参加者も

続いて、岡本圭生医師の治療を待つ「待機患者」さんと、原告の方からそれぞれスピーチがあった。既に治療を終えた患者の中には「これからは待機患者さんを救うのが一番の目標です」と語った方がおられ、多くの方が同意されていた。前回もこの集会を取材したが、今回は女性の姿も目立った。患者をご家族に持つ方々だ。その中には、山形県から駆け付けたご家族の姿もあった。

◆弁論進行の様子

13時近くになり、患者会のメンバーは大津地裁に集合した。法廷の傍聴席は55席しかない。多くの方が傍聴することができず、閉廷後に開かれる記者会見会場に移動した。傍聴席が満席になり、原告側には原告二人と弁護団、被告席には被告側弁護士2名がそろい、西岡繁靖裁判長が開廷を告げた。

西岡裁判長は被告側から提出された準備書面1を確認し、甲号証(原告側証拠)の取り調べ(確認)を行った。被告側から「文書送付嘱託の申し出」が法廷に提出されたので、西岡裁判長は「その必要性等、あるいはどういう文章か概略ご説明頂けますか」と被告代理人に問うたところ、岡田弁護士は「本日遅れまして申し訳ございません。文書送付嘱託の申し出をさせていただきました。診療録の送付嘱託の申し立てでございます。既に甲号証で正本として出されてはいますが、本件につきましては訴状でもかなり詳しく診療経過等について、説明をされていますので、診療経過を全部確認するという意味において、診療録の送付嘱託をお願いしたい次第であります」と述べた。

西岡裁判長は原告弁護団に意向を確認した。井戸弁護士は「裁判所が送付嘱託の判断をされることは、『然るべく』、ですけれども、病院がそれに応じるとなれば、ご本人の同意を求めてこられる。それについてはご本人たちが同意するか、しないかは、『然るべく』と。代理人としてはそれに関与しない」と判断を述べた。

西岡裁判長は「ご本人の同意はご本人が判断されることなので、裁判所も関与できる話でもありませんし、被告代理人も関与できない、というお話でした。『然るべく』ということなので、裁判所としては採用いたします」と述べた。さらに「今回の被告の主張を大雑把に要約すると、平成27年以降、岡本医師の指導の下で、被告らが診療にあたる。要するにチーム医療としてやる、という体制でやっていたけれども、平成27年12月に、今回のご主張によると、岡本医師が被告の指導を実施しないという懸念が生じたと、いうところでその体制を見直しをして、岡本医師に患者さんを担当してもらうようになった。そういうご主張なんですね」と被告側に確認し、被告代理人は頷いた。そして「裁判所としては進行協議でご相談できればと思っております。双方お願いしていいですか」と原告被告双方の弁護団に尋ねた。

双方が合意し、別室での「進行協議」が行われることになり、この日の弁論は終結しそうになったところ、井戸弁護士発言を求めた。「準備書面1を出されて、証拠は出されていないのですが。例えば4ページの下から5、6行目。私もまったく知らなかったのですが、『外科系学会社会保険連合においては、小線源治療は』、云々と書かれていますね。こういうものは裏付け資料が出せるのであればと思うのですが、無いのでしょうか」と被告弁護団に尋ねた。被告側は「その点は出したいと思います」と回答した。

井戸弁護士の質問を補強する形で西岡裁判長は「いまのご質問は一例ということで、今回被告のご主張を精査していただいて、取り寄せで確認しなければいけない物は、取り寄せしていただいたらと思いますが、被告側の手元にあるものは、早いうちに出してもらえますか」と注文をつけた。被告側は「了解です」答えた。

ここでこの日の弁論は終了し、傍聴者は記者会見が行われる別会場に移動し、原告被告双方の弁護団は、別室で「進行協議」に移った。数十分後記者会見会場に弁護団が到着し、井戸弁護団長が、この日弁論ならびに進行協議について以下の通り解説した。

─────────────────────────────────────────────

裁判の解説をする井戸弁護士

◆井戸弁護団長による解説

「11月21日付けで被告から準備書面1が提出されました。こちらの訴状への反論です。何を認めて何を認めないのか。そして被告としてどういう主張をするかが書かれたものです。今後これに対して原告側が再反論をしてゆきますが、どういう内容のものなのかを報告させていただきます。特徴を述べると、『小線源治療・岡本メッソドに対する誹謗』、それから『事実のごまかし』そして『開き直り、責任転嫁』そう評価できると思います。

小線源治療については、合併症の問題、完治率など含めて優れた治療方法であると、我々は主張してたわけですが、それを否定してきています。『治療成績が他のものと変わらない』、『周囲への被ばくとか排尿障害などでメリットがある』、『外照射療法に比べて、小線源療法は体に傷をつける問題もある。近年は小線源療法は減少傾向にある』ということを主張しています。その中でも岡本メッソドについては、標準的な小線源療法よりも、高い線量を加えるのですけども、『線量を上げれば合併症のリスクが増すんだ。岡本メッソドの評価については様々な意見がある』と書いています。これが岡本メッソドに対する『誹謗』ですね。

それから事実関係としては、『ごまかし』があると思います。成田医師が自分が小線源療をしようということで、23人の患者さんを抱えていたわけですが、23人の患者さんについても、『成田医師が術者として確定していたわけではない』、『実際に小線源療をするのは確定していなかったんだ』、『岡本先生とチームとしてやろうとしていたので、ひょっとしたら岡本先生がやったかもしれない』と。これは『事実のごまかし』だと思います。

そして『成田医師が施術をしていたとしても、危険性はなかったんだ』という主張をしています。これは『開き直り』だと思います。たしかに小線源治療は未経験だったけれども、4人の原告の皆さんは1番目にする予定の患者さんじゃなかったわけです。だから『原告の皆さんにする時には精通を経ていた。初めてではない』ということを言っています(笑)。

法廷でも私が質問したことですが、「外科系学会社会保険連合においては、小線源治療は云々」という主張をされています。これには何の根拠も示されていないので、『根拠の証拠を出せ』と言ったわけです。また『成田医師は前立腺癌治療については豊富な経験を有していた。それから岡本医師の治療に麻酔担当として5件以上関与して教育を受けていた』この辺りは岡本先生の説明と違うのではないかと思います。

そして『少なくとも数例は岡本先生に立ち会ってもらい指導を受ける予定であった』、これが極めつけだと思うんですが『小線源治療は前立腺の生検(細胞採取検査)と同じようなものだ』と(会場から「えー」の声)。『成田は生検の豊富な経験がある』。組織をちょっと採る『生検』と、シードを綿密に埋め込む小線源治療が同じようなものだという主張をしています。

23人の方の治療が中止になったのは、岡本先生と協働してチームでやる予定だったのに、2015年12月の末に岡本先生が『成田医師を指導しない懸念が生じたので、成田医師を術者とする小線源治療は中止になったんだ』という説明で、説明を岡本先生に転嫁する内容です。『実際には適切な時期に説明していたと考えられる』と主張しています。『現実に1例目の患者には説明しました』と言っていますが、これは成田医師が説明したわけではなく、放射線科の医師が説明したと聞いています。

河内医師については、『岡本先生に指導させて成田医師に小線源治療の経験を積ませようとしただけだ』、『成田医師が未経験の医師だと説明しないように、成田医師と謀議することはしていない。だから河内医師にも責任はない』そういう内容です。

そういう『誹謗』『ごまかし』『責任転嫁』という特徴がありますので、これに対する反論については、根拠なしに主張している部分には、こちらからまず質問しようと思っています。専門用語で求釈明(釈明を求める)といいますが、それに対する回答を得て、それを踏まえて全面的な反論をしようと考えています。

次回期日は2月26日11:00からです。その間12月7日までに質問事項、求釈明事項を私どもは提出します。それに対する回答が1月末です。それを踏まえて次回期日前に全面的な再反論をする予定です。

そのあとの進行協議で裁判所は「この事件は岡本先生がキーマンだと」。滋賀医大泌尿器科において、どのような体制で成田医師を術者とする小線源治療をしていたのかが、この事件のポイントになるので、被告側はご本人ですからわかりますが、原告側は患者ですから内部のことはわからない。

したがって、岡本医師がどうしてもキーマンになるので、「岡本医師抜きでこの訴訟を遂行していくのは、困難なのではないか」というのが裁判所からの意向でした。岡本医師を原告でもなく、被告でもないんですが、準当事者のような立場でこの訴訟に入って来てもらえないか。そのための法律的な方策を考えたい、とうのが裁判所の意向でした。

訴訟告知補助参加という形で、原告、被告ではないのですが、この訴訟に岡本先生も利害があるから、『参加人』としてこの訴訟に来てもらって、岡本先生(あるいは代理人)の主張を法廷でしていただく、あるいは岡本先生から証拠を出していただく。そういう形で進められないかという話でした。我々も考えていなかったし、被告側の弁護団も考えていなくて、びっくりしたんですけれど、裁判所が積極的に出てきてこの事件の真実を早期に掴みたいという、非常に積極的な姿勢の表れだと、我々は評価しました。ただ法律的な問題もありますので、被告側が賛成するのかしないのかを早期に回答を頂き、さらに検討する形になりました。法律的なテクニカルな問題があり、法廷では相談しにくかったので、別の場を設けたということでした。裁判所の問題意識は正当だと思いますし、原告側としてはその方向で前向きに対応していきたいと思っています」

─────────────────────────────────────────────

その後、原告の2人と、治療を待つ患者さんご本人と、待機患者さんから寄せられたメッセージが代読された。

被告側が提出した準備書面1は、井戸弁護士が強調した通り、「誹謗」・「ごまかし」・「責任転嫁」に満ちていると、原告弁護団は評価している。一方予想外の展開で裁判所(裁判官)が岡本医師を「参加人」として訴訟に入ることを求めてきたのは、弁護団が作成した精緻な訴状と、被告側弁護団の提出した、粗雑な内容の準備書面1の格差が主たる原因であろう。しかしチラシ配り・署名活動などにも力を入れ、また毎回期日のたびに、多数の人が集会を開き、傍聴席を毎回埋め尽くしてきた「患者会」の方々の活動・熱意が裁判所を動かしだした、と考えても不思議ではないだろう。

※なお、下記URLに患者会関連記事が掲載されている。
https://www.asahi.com/articles/ASLCV7SR3LCVUBQU01F.html

集会風景

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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仮処分申し立てを説明する竹下育男弁護士(右)と岡本圭生医師(左)

11月16日、滋賀医科大学前立腺癌小線源治療学講座岡本圭生(けいせい)特任教授が、滋賀医科大学を相手に仮処分の申し立てを行った。18時30分から滋賀会館で記者会見が開かれた。会見では冒頭弁護団から仮処分申し立ての内容について詳細な説明があった。

岡本医師が申し立てた内容は、

[1] 債務者(注:滋賀医科大学)は,債権者(注:岡本医師)に対し,債務者のホームページ中の医学部附属病院の「病院からのお知らせ」欄に掲載した「新聞報道について」と題する別紙請求コメント目録1記載のコメントを全部削除せよ。

[2] 債務者は,債権者に対し,債務者のホームページ中の泌尿器科学講座「お知らせ」欄に掲載した「当講座医師に関する新聞報道について」と題する別紙請求コメント目録2記載のコメントを全部削除せよ。

[3] 債務者は,債権者に対し,債務者医学部附属病院内の所定の掲示場所に掲示した「滋賀医科大学泌尿器科学講座医師に関する新聞報道について」と題する別紙請求コメント目録2記載のコメントと同一内容の文書を撤去せよ。

の3点である。新聞記事報道に対して滋賀医科大学が反論した文章の中に、事実と異なる記載があり、それにより岡本医師の名誉が毀損されているためその書き込みを削除せよ、また同内容で病院内に掲示されているものを撤去せよとの申し立てである。

一見、この仮処分申し立ては、「単なる文章の削除要求」のようにとらえられるかもしれないが、岡本医師の投げかけている問題意識の根本はそれだけだはない。弁護団の説明ののち岡本医師自身が、以下の見解を述べた。

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岡本圭生医師

◆岡本圭生医師の見解

滋賀医科大学前立腺癌小線源治療学講座特任教授の岡本圭生と申します。今回、私が滋賀医科大学に対して申し立てをおこした背景をご説明いたします私自身は、これまで14年間にわたり、滋賀県だけでなく、全国から来院された1000例を超える前立腺癌患者の方々に対して小線源治療という特殊な放射線治療をおこなってまいりました。

2015年から滋賀医科大学では私を特任教授とする寄付講座である小線源治療学講座が設置されました。その時期に今回問題となっている事件が発生いたしました。この事件についてわかりやすく説明させていただきます。

2015年、滋賀医科大学泌尿器科において、泌尿器科教授の指示により実際の患者に対して小線源治療の経験がない、という事実を患者に説明すること無く、いきなり治療の執刀を行うという患者の人権を無視した計画が20名あまりの患者さんに対して企てられました。
具体的には、実際の小線源治療について未経験であり、過去10年間でたった一症例の見学経験しかない泌尿器科准教授が患者さんの同意を得ることなく、いきなり小線源治療をおこなうことが計画され、私は当日の手術に立ち会うよう、泌尿器科教授から要求されました。

さらに私は、当該患者の方々を診察することも接触することも説明することも、泌尿器科教授から禁じられていました。これは、あとに述べるように現在滋賀医科大学が主張している、「私と泌尿器科が協力して小線源治療を行う予定であった」という説明では つじつまの合わない非常に異常な状況といえます。さらに、私はこの計画が実行直前まで進んでいた2015年12月当時、泌尿器科教授と準教授から 「患者が治らずともそれは私(岡本)の責任にしないから最初から手術を準教授にさせろという」要求を繰り返し受けておりました。

医療が、医療として成立するためには、医師・患者間の誠実な信頼関係が存在することが絶対条件・前提条件となります。患者さんは目の前の医師が自分にとって最善を考えてくれるということで医療を託すわけです。一方、医師は目の前の患者さんに対して最善を尽くそうという姿勢をもっていること これが医療の大前提であります。この前提が壊され、意図的に人権侵害や患者を欺く行為が医療として計画され実行されることが許されるなら、それは医療ではなく、傷害行為と呼ぶべきものです。

私はこの計画が患者の人権を侵害するものであり、危険であるとして学長に進言しました。このことを受けて当時学長はこの計画を「コンプライアンスと倫理的な観点からも憂慮すべき」とみずから宣言し、泌尿器科の計画を中止されました。そして学長と院長からの依頼により2016年1月以降、泌尿器科の当該患者を私が診察治療することとなりました。そして当時学長は「2016年以降小線源治療に泌尿器科は一切関わらせない」と宣言されました。

こういった動かしがたい事実があるにも関わらず、現在滋賀医科大学では、泌尿器科の小線源治療計画を「コンプライアンスと倫理的な観点からも憂慮すべき」と自ら宣言し、中止させた学長までが 変節し、「私が非協力的であったために今回の諸問題がおこった」との事実と異なる虚偽の記載をホームページ上に掲載しています。これらの記載は「私が組織内の決定に従わず、患者の診療にも協力しない医師であるとの誤った評価を招き、私自身の名誉を著しく毀損すると考え、削除を求める仮処分申し立てを行いました。

現在滋賀医科大学は泌尿器科が医療の名の下におこなった患者さんの命を危険にさらし、人権を踏みにじった蛮行を組織ぐるみで隠蔽、もみ消すためになりふりを構わない行動をとっています。この問題を告発し、正そうとした私を大学から追放するために寄付講座をそもそも2017年年末で閉鎖しようともくろんでいました。しかし、2017年年末既に多くの待機患者が存在することから本学は講座の延長をしぶしぶ認めました。

しかしながら今をもってもなお寄付講座を2019年12月で閉鎖をし、それに先立つ来年の7月から私の小線源治療を停止すると宣言しています。このことが断行されますと私にしか治せない全国から頼って来院される難治性高リスクの前立腺癌患者さんたちの命が危機にさらされ命が見捨てられることになります。

国立大学附属病院の存在理由と公益は患者ファーストの医療を実践することにありはずです。全国から頼って来院される前立腺癌患者を切り捨てることは、患者ファーストと公益に反する行為です。医療の現場が患者ファーストの理念を失い、保身や組織優先の医療を行うのであれば、それは、権限・権力を有する医師による医療の私物化に他なりません。

2015年に私が泌尿器科の医療行為を止めようとしたのは このようなことが許されれば患者さんの同意なしに、患者さんの命が危険にさらされると判断したことが第一の理由です。

第二の理由は、故意かつ意図的に説明義務違反を犯し、患者の人権を踏みにじることが医療の名の元に秘密裏に行われることが、許されるのであれば、患者と医師の信頼関係によってのみ成立する医療というシステムそのものが破壊されるという非常に強い危機感を抱いたからであります。

私のとった行為が組織の命令に背くものであったとしても、私は誤った組織の命令よりも患者の命を守り、人権を守ることを優先する覚悟であり、このことに今も変わりはございません。

その理由を最後に述べさせていただいて、私の締めくくりとさせていただきます。 医師には医の国際倫理綱領として「ジュネーブ宣言」、「ヘルシンキ宣言」というものがございます。これは第二次大戦後すぐに採択された医師の倫理綱領であります。それによればわれわれ「医療者はどんなときも目の前に患者さんの最善のためにだけ行動せよ」という綱領であります。

さらにこの綱領には副文があります。そこには「目の前に患者さんの最善を実行するための障碍として時に、国家権力や組織の圧力を受けることがあろうが決してその圧力に屈してはならない」と記載されています。

このことが、私が命に代えてもやり抜こうとしたことの本質であります。 

つまり私は医の国際倫理綱領は組織の命令より優先されると考えています。私の判断と行動が医師として是か非か 判断いただければ幸いです。本日はありがとうございました。

─────────────────────────────────────────────

つまり、滋賀医科大学のホームページや病院内に掲載された文章はもちろん問題であるが、その新聞記事が書かれる原因となった、泌尿器科小線源療法未経験医師による、患者への説明義務違反を経て、施術が実行されそうになった事件が根本にある。

岡本医師が学長に危険性を伝えたため、学長は「コンプライアンスと倫理的な観点からも憂慮すべき」と判断。施術は止まったが、岡本医師から学長への警鐘がなければ、泌尿器科小線源療法未経験医師が患者に施術を行っていた可能性が高い。

会見には既に岡本医師の治療を受け、完治した神戸の柴山さんと、これから岡本医師の治療を受けようとしている東京の山口さんが参加し、経験を話した。

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岡本医師の治療を受け完治した経験を語る柴山さん

◆神戸の柴山さんのお話

私は2015年8月、58歳のときに前立腺癌の宣告を受けました。PSAが49超高リスクの前立腺癌と診断されました。地元の病院では「前立腺の全摘出手術は既に無理な状態、しかも根治は到底無理である」と宣告されました。その病院ではホルモン治療しかないと言われ、途方に暮れて「もう人生も終わりか」と絶望の淵におりました。

そんな折たまたま書籍から岡本先生のことを知り、メールで相談させていただきましたところ、とてもやさしいお言葉で「すぐに来なさい」と返信がありました。その後ホルモン治療、小線源治療、外部照射を組み合わせた、トリモダリティーという治療を施していただきました。そして今年の9月、最後の外部照射の治療から2年経過して岡本先生の受診をしたところ「完治確定です。もうこれで大丈夫です。再発もしません」という診断を頂きました。私や家族にとって夢のようなことでした。奇跡と言っても過言ではありません。

罹患当初は「このまま死ぬかもしれない」というよりも「もう遠くなく死ぬだろう」と思っておりました。当時84歳だった私の父よりも「先に逝くだろう」と思っておりました。この時は人生最大の絶望でしたが、「完治確定」を頂いた際は人生最大の喜びを味わったことになりました。私の状況は超高リスク前立腺癌でしたので、岡本先生でなければ完治はあり得なかったと思います。今まさに当時の私と同じような状況で絶望のどん底にいらっしゃるであろう、患者さんには是非岡本先生を紹介して差し上げ、この感動を味わって頂きたいと思っています。

私が岡本先生に出会ってよかったと思う点は一言でいえば「患者ファースト」を徹底されている点です。その1つ目、岡本先生はメールアドレスを公開されておられます。来る者は拒まずとの姿勢を貫かれていること。

2つ目は安心感です。初診の際に「超高リスク前立腺癌であっても95%以上完治する」とのお言葉で、私自身や家族が絶望のどん底から、安心感に変わりました。またその後安心感は、完治確定まで継続しました。

3つ目は当初より岡本先生から、「このような治療を行い、マーカーがこのように変化し、こうなれば完治です」という計画をお聞きしておりました。結果は全くその通りになりました。少し違ったのは予定より早く完治が確定したことです。

4つ目はホルモン治療を受けましたが、ホルモン治療は患者の体にダメージがあります。岡本先生のホルモン治療は極力短期間しか行いません。患者ファーストの現れだと思います。私は幸運にも岡本先生と巡り会い、素晴らしい治療を受けただけですが、岡本先生がここに至るには血のにじむような努力があってのものとお聞きしております。そのため患者が安心して治療が受けられるのです。私も治療中のQOLは大変良く、ジョギングや登山を続けられ、仕事も治療中を除いて通常通り休まずに続けられ現在に至っております。

最後に癌患者を助けるために努力を惜しまない岡本先生の治療継続を心から希望いたします。岡本先生の治療は他の医師の治療と比較して、群を抜く非再発率と根治率であることはいうまでもありません。現実に岡本先生を紹介したい人が私の周りにもおります。しかし患者を軽視した現在の滋賀医科大学では、それもできません。岡本先生にしか助けられない命を、大学の一部の人間が、その権威を使って私利私欲や都合によってその望みを断ち切ることが人道上許されてよいわけはありません。現在大学の一部の人間が権威を盾にして倫理違反を犯した医師を処分せずに居座らせています。

かたや、患者を不当な医療から救済し病院と患者を危機から救った岡本先生にパワハラを与え、さらに組織から除外しようとしていることは絶対に許されるべきではなりません。現在の滋賀医科大学は組織の保身のために奔走しているとしか見えません。是非とも岡本先生の治療継続を懇願する次第です。

─────────────────────────────────────────────

 

治療を待つ山口さん

◆東京の山口さんのお話

「青天の霹靂」ということばがありますね。そういう経験を3か月前にしました。65歳検診を8月に行きまして、検査の翌日にいきなりその検査機関から電話が自宅にありまして「あなたのPSAは87です。直ぐに病院に行って下さい」という知らせが来ました。私にとって87という意味が全く分かりませんでした。電話の向こうでとても慌てている様子がありましたので、これはやばい状態だろうなということはわかりました。

ただし痛みも何もないんですね。日常生活に全く変わりはない。これはどんな病気なのだろうかと。逆に慌てました。検診先に行き紹介状を書いてもらおうとしましたが、どこに行ったらいいかわからない。私はネットで調べました。ロボット手術、ダビンチ手術をやっている病院が近くにありまして、そこで細胞検査を受けました。ところがそのお医者さんは「5年生存率は70%」というんです。「でも切ってさっぱりしましょう」といったんですね。床屋かなという感じです。

しかも「転移してても切りますよ私は」というのです。ネットで調べるとそういうのはあまりない。先ほどの方がおっしゃりましたが、ホルモン治療をするわけですが、そのお医者さんは「切る」と言ったので益々信頼がおけなくなりました。

その話を聞いて私は夜寝ることができなくなりました。5年生存率70%ということは、死亡率が30%あるわけです。3分の1は死んでしまうわけです。ルシアンルーレットがありますね。あれだって6分の1ですが、私の賭けは、そこに2発の銃弾が装填されているのと同じことなわけです。そんな賭けに乗ることを私は到底できないです。

ということで食欲もなくなり4キロ痩せました。それが10月初旬です。悪夢から逃れられないような状況になりました。そこでまた必死でネットを探したところ、滋賀医大岡本先生の記事にたどり着いたんです。96%再発しないという記事です。

ところがその直後岡本先生が訴訟事件に巻き込まれている、という記事を目にしまして、本当にこの先生にかかることができるのかな、とまた厳しい精神状態に追い込まれました。岡本先生にメールを送ったのですけど、返事が来るかどうかはわからない。ところがメールが先生から来たんです。私は本当にほっとしました。先週ついに先生の初診を受けることができたのです。精神的にもおかしくなりそうな状況だったのですが、食欲も戻って、精神状態も普通の状況に戻ることができました。

例えば来年7月で先生の手術ができなくなると、私が実際に受けることができるかどうか、非常にあやふやな位置にいるんです。再び元の治療、ロボット手術を受けるかと言うと、死を覚悟しなければいけない状況に舞い戻るわけです。

こういった患者さんはたくさんいるわけで、滋賀医大には全国から来ているわけです。癌の最大の脅威は何かというと、転移と再発です。私も転移の検査を受けて結果が出るまではドキドキでしたね。発狂しそうになるくらいでした。転移はなく安心しましたが。

でも岡本先生治療を受けてようやく、再発しない状態になるわけです。ここで滋賀医大が岡本先生の講座を閉鎖する非情な措置が行われるのであれば、我々の生きようとする希望が失われるわけです。こういった状況に対して、是非滋賀医大の非情なありかたを世論に知らしめていただきたい、と心から願っております。

─────────────────────────────────────────────

以上、岡本医師及び、患者さんの重たい言葉に、余計な言葉は付け足さない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

 

大津駅前の集会に集まった「患者会」の皆さん(写真提供=「患者会」の皆さん)

10月9日13時10分から大津地裁で、4名の原告が滋賀医大付属病院、泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を相手取り440万円の支払いを求める損害賠償請求を大津地裁に起こした(事件番号平成30わ第381号)裁判の第一回口頭弁論が開かれた。

大津駅前で12時から本年6月に結成された「滋賀医大 前立腺癌小線源治療患者会」の集会がある、と聞いていたので大津駅前に11時ころ到着すると、早くも患者会のメンバーが集合し始めていた。12時には参加者が80名を超え、その時間比較的静かな大津駅前を行き交う人々の注目を浴びていた。

集会では患者会のアドバイザーである元読売新聞記者の山口正紀さんが冒頭に発言し、「病院は患者に謝罪すべきなのに、患者の命を救った岡本先生を病院から追い出そうとしている。どうしてこんなことが考えられるのか」と問題点を整理しながら滋賀医大付属病院の姿勢を強く糾弾した。引き続き原告の男性や複数の患者会メンバーが発言をした。

◆医療機関による「説明義務違反」

問題の中心は、小線源治療の第一人者である岡本圭生医師の治療を受けようとした23名の患者たちが、その意に反して、岡本医師の治療を受けられず、しかも小線源治療の経験がない成田医師が、小線源治療を行うという暴挙の直前に岡本医師の学長への直訴により、かろうじて難を逃れた「説明義務違反」である。

医療機関による「説明義務違反」は患者による治療の選択権を奪うだけではなく、場合によっては生命にかかわる重大な問題だ。患者には当然説明を受ける権利があるが、これまで個々の患者の問い合わせや、説明の要請、患者会による問い合わせに対しても病院側は「HPに出ている通り」、「内容は裁判であきらかにしてゆく」と誠実さの欠如した回答しか返答していない。

 

大津地裁前で参加者に説明をする山口正紀さん(写真提供=「患者会」の皆さん)

◆発足後4か月で800名を超えた患者会

患者会のメンバーは発足後4か月で既に800名を超えており、いかに岡本医師による小線源療法への信頼が厚いか、また滋賀医科大学への怒りが大きいか、この人数が雄弁に物語る。「同じ医師の治療を受けた」以外に何の共通点も持たない人々が、短時間でこのように集結することはそうそうあるものではない。病気の性質上患者会のメンバーは中高年の男性であるが、皆さん紳士的な方ばかりだ。

山口さんも指摘されていたが「病気と闘いながら、病院とも闘わなければいけない」ことなど、患者の誰も望んではいないだろう。しかしそこまでの事態を引き起こした、河内、成田両医師及び、滋賀医大付属病院の責任は重大である。

◆井戸謙一弁護団長の発言

55席の傍聴席は満員となり、傍聴できなかった患者会のメンバーやご家族も多数見受けられた。定刻通りに西岡繁靖裁判長は開廷を宣言した。被告側は答弁書を提出しただけで、この日は代理人も出廷していなかった。

冒頭、井戸謙一弁護団長が発言を求め、

「この事件は医師の説明義務違反による損害賠償事件でよくある類型だと思います、しかし本件は一般の事件と異なることをご理解いただきたと思います。だからこそ、これだけたくさんの傍聴人が詰めかけているのです。1つは多くの説明義務違反事件はインフォームドコンセント認識不足の医師による、過失や杜撰な説明により、医療上のミスを行ってしまった。個別、1回切り起こるものです。

 

井戸謙一弁護団長(筆者撮影)

 それに対して本件は故意に、組織的にしかも長期間にわたって、23人もの患者に対して行われた事件であることが1つです。それからこの事件が国立滋賀医科大学付属病院という、滋賀県を代表する基幹病院を舞台として行われ、被告の2人は当時も、現在も泌尿器科の教授、准教授という要職にある医師であるということであります。本件において未経験者による小線源治療は水際で差し止められ、重篤な被害の発生を防ぐことはできましたが、この問題で患者側が病院に説明を求めても、病院からはまともな説明もなく、患者らは謝罪も受けておりません。よって原告らは本件提訴に至ったものであります。
 この事件の本質は、患者の利益よりも、自己の権力あるいは利益を優先するいまの医師の世界の体質にあると考えます。この問題をあいまいに済ませてしまえば、将来にわたって同様のことが繰り返されることが危惧されます。繰り返された場合ことが医療であるために、重篤な被害を与えることがあります。原告らは請求事実を説明義務違反に絞りました。個別には小線源治療の前段階における不適切な処置などもあるのですが、訴訟の迅速な進行のために争点を絞ったものであります。したがって裁判所に置かれては迅速な進行に努めていただき、早期の判決をお願いしたと考えております」と述べた。

そのあと原告代表の男性が意見陳述を行いこの日の弁論は終了した。次回期日が11月27日13時10分である。

閉廷後、滋賀県弁護士会館に場所を移して、記者会見が行われた。傍聴席には入れなかったメンバーのために、この日の法廷で何が行われたかを、井戸弁護士が説明した。記者会見であきらかになったことは、被告側による答弁書には、迅速な訴訟の進行に向けての誠意が感じられないこと。法廷戦術上被告は医師2名に絞ったが、病院にも当然責任はあると、原告も弁護団も考えていること、などである。

患者の会のメンバーや滋賀医大付属病院関係者に取材する中で、予想をしなかった事実に突き当たった。当初訴状を読んだり、記者会見で質問するなどする中で、この問題は、あくまで滋賀医大付属病院、泌尿器科が震源であり、原因である事件であると、わたしは認識していたが、どうやら(たしかにその基本的構図に間違いはないが)さらに大きな背景と、思惑が関係しているようである。その実態については、今後も取材を進め、明確になった時点で読者にご紹介してゆく。

◎[関連記事]田所敏夫「滋賀医科大学附属病院泌尿器科の背信行為 『小線源患者の会』が損害賠償請求」(2018年8月2日公開)

◎滋賀医科大学前立腺癌小線源治療患者会のホームページはこちらです。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

衝撃満載『紙の爆弾』11月号!公明党お抱え〝怪しい調査会社〟JTCはどこに消えたのか/検証・創価学会vs日蓮正宗裁判 ①創価学会の訴訟乱発は「スラップ」である他

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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