参院選、事前に大方予想はついていた。それに拍車を掛けることになるかもしれない「安倍暗殺」。自民大勝を告げる選挙速報は、ただ淡々と実務的に流れていった。

◆野党は政策で負けていた

いつものことながら、今回の選挙も争点がないと言われた。だが、いつもと同じだった訳ではない。

自民党は比較的争点になるような政策を掲げていた。経済は「新しい資本主義」、安保防衛は「防衛費GDP2%へ増」、そして憲法改正。問題は、これと真っ向から対決する野党がなかったことだ。

正直言って、野党の政策には、この「危機」の時代に対処し、自民党とは違う日本を創るというビジョンが感じられなかった。これでは勝負にならない。ここに、野党大敗の第一の要因があったのではないだろうか。

◆四分五裂だった野党

自民党と真っ向から対決する路線も政策も持たなかった野党が、その下に統一し団結することがなかったのは必然だった。

特に今回、野党の分裂はいつにも増して甚だしかった。まず、選挙前の内閣不信任案を野党一致で出すこと自体ができなかった。出した立民が孤立し、深手を負った。

その上で、前回、前々回の参院選で実現した一人区の野党一本化ができなかった。できたのは、32ある一人区中11だけ。結果は、4勝28敗の惨敗だった。

また、野党間協力どころか抗争がいつにも増して激しかった。野党第一党をめぐる立民VS維新の抗争は、ともすれば自民党との戦いを超えたものになった。それに加えて、出馬政党のいつにない林立。「政権の受け皿」など念頭にも浮かばない有様だったと言える。

◆できなかった危機への対応

今度の選挙では、「危機」が異口同音に叫ばれた。与野党そろって、「物価高騰の危機」、「戦争の危機」を叫んでいた。

しかし、それに対処するビジョンらしきものを提示していたのは自民党だけだった。だが、その自民も、「危機」の本質を全面的に明らかにしていた訳ではない。

物価高騰、戦争の危機と言った時、人々の念頭にあったのはもちろんウクライナ戦争だ。そこで問題は、このウクライナ戦争が単純なロシアによるウクライナ侵略戦争ではないという事実だ。

軍事や経済など、「複合大戦」とも言われ、直近では、「第三次世界大戦」の声も出てきているこの戦争の根底には、米欧覇権秩序・勢力VS中ロと連携した全世界脱覇権秩序・勢力の攻防がある。この世界を二分する攻防にあって、自民党が米欧覇権の側に立っているのは明らかだ。

だが、この米欧覇権の側の戦略戦術自体、霧の中に包まれている。日本など同盟諸国の軍事と経済を自らの下に統合して自身を強化する一方、中ロなど脱覇権勢力を包囲、封じ込め、排除、弱体化して打ち負かす覇権回復、建て直し戦略の全貌を米国が明らかにするはずがない。

自民党が今度の参院選を契機に打ち出したビジョン、政策がこの米覇権戦略の手の平の上にあるのは言うまでもない。

今、日本に問われているのは、自らの進むべき道を自らの頭、自らの力で選択し切り開いていくことだ。

参院選で示された野党の姿、それは、その反面教師だと思う。

これまでのように米欧覇権の側に明確な自覚もないままに立ちながら、大政翼賛的に自民との争点もつくれず、自分たち相互でいがみ合っていた姿、そこからの脱却こそが求められているのではないだろうか。

 

小西隆裕さん

◆「黄金の三年」に問われていること

これから日本政治の前には、「黄金の三年」と言われる国政選挙のない三年間が横たわっている。

この期間に、ウクライナ戦争に象徴される米欧覇権勢力VS中ロと連携した脱覇権勢力の世界史的攻防は進展し、その米欧覇権側の対中対決最前線、「東のウクライナ」としての日本の面貌は大きく変えられていくのではないか。

そのために、何よりもまず、「新しい資本主義」「防衛費GDP2%」そして「憲法改正」が公約通り実行されていくだろう。

それが日本にとって何を意味しているかは、今、ウクライナの現実が雄弁に教えてくれていると思う。

国政選挙のないこれからの三年をどうするか。

問われているのは、日本の「東のウクライナ」化に反対し、それを阻止する闘いの三年にすることではないかと思う。

これまでの野党政治の荒涼たる廃墟の上に、世界政治の実相を見据え、それに真っ向から相対するビジョンと政策をもった新生日本への新しい運動の構築こそが今切実に求められているのではないだろうか。

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年、ハイジャックで朝鮮へ

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