2016年の『NO NUKES voice』──福島も沖縄も蟻のように粘り強く、あきらめず

下地真樹さん(阪南大学経済学部准教授)

◆3・11から5年目の現実と社会運動の行方を探る──『NO NUKES voice』7号

取材日は2015年12月28日、つまり昨年の師走になるが、阪南大学の下地真樹先生には逮捕まで経験された中で、見えてきた独自の運動感や視点を語って頂いた。予想よりもはるかに慎重で注意深い洞察をなさるお話が印象に残っている。

本年1月24日は高浜原発再稼働反対の現地全国集会に参加した。豪雪の予報に反して好天のなかでデモと集会が行われた。やはり寒かったが、参加者の熱が心を暖めてくれた。1月27日には関西電力本店前での抗議行動にも参加した。多彩な参加者の顔があったけれども、ビル街を吹き抜ける風が北陸の風よりも冷酷に思えた。この関連の記事は『NO NUKES voice』第7号で報告した。

田所敏夫「高浜原発再稼働反対行動1・24から1・27全国集会に参加して」(『NO NUKES voice』07号より)
福井県小浜市明通寺の中嶌哲演住職

◆仏教者として反原発を闘う中嶌哲演住職──『NO NUKES voice』8号

福井に向かう山道はまだ所々に残雪があり、路面凍結部分もあった。そう、まだかなり寒い時期に明通寺ご住職の中嶌哲演さんにはお話を伺った。幾度もお顔を拝見してはいたが、初対面であったのに、気が付けば3時間以上もお付き合い頂いていた。中嶌さんのお話は仏教者として原発に長年取り組んできた重みと、人間に対する厳しさと同時に優しい眼差しに溢れていた。

長時間お話頂いたあとに「ちょっとお痩せになったのではありませんか」とうかがうと、「実は先月母が亡くなったもので……」と大変な時期にお邪魔していたことを知ることとになり、調子に乗って長時間お話を伺った自分を恥じた。今後の取材ではお話を伺う方のメッセージを伝えることもさることながら、その方のご体調にも気を配るべきだと反省した。

〈メディアの危機〉の前線で抗い続けるTBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さん(『NO NUKES voice』08号より)

◆徹底した現場主義の報道人・金平茂紀さん──『NO NUKES voice』8号

TBS報道の顔、金平茂紀さんに小島編集長とともにお話を伺ったのは3月30日だった。翌日を最後に執行役員から解かれることは知っていたが、そのことについて金平氏はもう諦観しているようだった。

紙面には表れている以上に金平氏の言葉は率直だった。人物批判は容赦ないし、テレビの現状、政治状況についての見解も極めて先鋭だ。よくこれで『報道特集』のキャスターが勤まるなぁ、画面の中で見せるバランス感覚は天性のものだなぁと感心したが、その裏には徹底した現場主義、報道人として身についた(当たり前のことであるが、その当たり前ではない報道人が多い中彼の存在が光る)反射的行動と嗅覚にはインタビュー中も、こちら側がやや緊張させられた。

もっとも冷蔵庫から取り出して振る舞って頂いた500mアルミ缶入りの「さんぴん茶」を飲み干すことが出来ず、あの残りがどうなったのか、ご迷惑をおかけしたことが妙に気にかかっている。

◆「世に倦む日日」田中さんと松岡発行人の《爆弾対談》──『NO NUKES voice』8号

そして、その後大議論を引き起こす、《爆弾対談》田中宏和さん(「世に倦む日日」主宰者)×松岡利康(本誌発行人)3・11以降の反原連・しばき隊・SEALDs。この対談も長時間にわたり、その後鹿砦社が直面することになる「あの問題」への入り口だった(あえてこれ以上深くは触れない)。『NO NUKES voice』第8号編集過程でも貴重な経験をたくさんさせて頂いた。

「世に倦む日日」田中宏和さんと松岡発行人による《爆弾対談》(『NO NUKES voice』08号より)
アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)

◆根っからの市民活動家、アイリーン・美緒子・スミスさん──『NO NUKES voice』9号

私的にはニアミスが数えきれないほどあったアイリーン・美緒子・スミスさんのお話も刺激的だった。根っからの市民活動家のアイリーンさん。インタビューにお邪魔すると事務所には可愛いお子さんが眠っている。アイリーンさんのお孫さんだった。インタビュー前に雑用を全て済ませて、「はい、お待たせしましたいいですよ」と、向き合ってくださったアイリーンさんは微笑ましい顔をしながら、頭脳の中では「戦闘モード」に切り替わっていた。反応が早い。ポイントを外さない。感情的批判はしない。停滞を嘆かない……。多くの要諦を教わった。

インタビューを終えて写真撮影に映り「私の腕にしては良く撮れました」と写真を示したら「あ!これイイ!結構美人じゃん!」とスイッチはすっかりオフになっていた。素敵な人だった。

◆法曹界の「ミスター反原発」井戸謙一さん──『NO NUKES voice』9号

予想通りと言えば予想通り、恐るべき頭脳と良心を兼ね備えたのが「稼働中の原発運転停止」判決を出した男、法曹界の「ミスター反原発」井戸謙一弁護士だった。井戸弁護士の強さは法的な側面だけでなく、技術的、科学的にも非常に高度な知識を有しておられることだろう。そして原発問題に限らず冷静な「在野精神」の持ち主だと感じた。井戸氏のような裁判官が増えれば、日本司法も少しは信用が増すことだろう(そんなことは金輪際あり得ないだろうけれども)と強く感じた。『NO NUKES voice』第9号での私の関わりは上記2氏だ。

井戸謙一さんインタビュー(『NO NUKES voice』09号より)
不当逮捕で長期勾留されている山城博治さんの一刻も早い釈放を!(『NO NUKES voice』10号より)

◆山城博治さんと大城悟さんに沖縄の声を聞く──『NO NUKES voice』10号

これまでも「福島・沖縄」をテーマに特集を組んだが『NO NUKES voice』第10号では沖縄平和運動センター議長の山城博治さん、事務局長の大城悟さんに名護市の闘争現場でお話を伺った。

また、熊本『琉球の風』でご縁を頂いた元憂歌団の内田勘太郎さんにも松岡社長とともにお話を聞くことが出来た。それぞれの方のお話は現在書店に並んでいる『NO NUKES voice』第10号でご覧頂きたい。これまで他の媒体では紹介されることのなかった、アプローチになっていると自負している。

鹿児島知事選挙では「再稼動反対」を掲げた三反園訓が当選し、反(脱原発)陣営は勝利に沸いたのだけれども、「三反園」は裏切るとの私の予想は不幸にも的中してしまった。しかし選挙で示された「再稼働反対」の民意が揺らいでいるわけではない。三反園よ、恥を知れ、と言っておこう。

他方、新潟では泉田知事不出馬を受けて急遽野党統一候補(民進は自由投票)で出馬した米山隆一氏がよもやの大勝利を収めた。新潟の与党、青年会議所、農協が束になって担いだ森民夫の勝利は動かないかと思われたが、6万票以上の差をつけて米山氏は当選した。彼は三反園のように軽率に裏切ることはないだろう。新潟県民はまだ中越地震の恐怖を忘れてはいない。

経産省前テントが深夜、強制執行で撤去され、小池百合子が都知事に就任すると、一気に「東京オリンピック」がらみのニュースで報道はかき乱されている感があるが、その中ようやく12月20日政府は「もんじゅ」廃炉を決定した。遅きに失したとはいえ、ようやく1兆円以上を費やして、事故しか起こさなかった「危険物」でしかない「もんじゅ」が廃炉に向かって動き出すことが決まった。

長年にわたる反対運動が2016年の年末に勝ち取った福音だ。しかし政府は「新しい施設の研究を始める」と言っているし、福井県知事は「そんなのいやだぁ」と駄々をこねている。こういう幼児並みの連中は早々に現役から退くか、不信任を突きつけたいところだが、私たち小市民には蟻のような力しかない。粘り強く、あきらめず、来年も反(脱)原発の声を取り上げ、わずかづつでも前進をしてゆきたいと切に思う。

「運動なんか無駄だ」と冷めた声にぶつかることも多いが、ベトナムに売りつけるはずの原発の商談が破談になったように、思わぬところで地道な運動は勝利の萌芽を見せ始めてもいる。あきらめず、粘りづよく。来年も『NO NUKES voice』をよろしくお願いいたします。

山城博治さん「差別と犠牲を強要する流れは沖縄だけに限らない」(『NO NUKES voice』10号より)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』10号【創刊10号記念特集】基地・原発・震災・闘いの現場──沖縄、福島、熊本、泊、釜ヶ崎

『NO NUKES Voice』10号 地質学者、小野有五さんが指摘する泊原発地層の不安

泊原発周辺のフィールドワークを長年行ってこられた地質学者・小野有五さん

『NO NUKES voice』Vol.10が昨日発売された。講談師・神田香織さんと哲学者・高橋哲哉さんの対談をはじめ、沖縄平和運動センターの山城博治さんや元原発作業員の池田実さんが登場するなどして非常にボリュームある一冊に仕上がっている。筆者も『大宮浩平の現場至上視点』というタイトルで写真と取材記を掲載させていただいているが、取材を通して誌面では書き尽くせなかったことも少なくない。とりわけ今回の北海道取材では、泊原発周辺のフィールドワークを長年行ってこられた地質学者・小野有五さん(表紙写真右)のお話は説得力に溢れていた。誌面では詳しくお伝えできなかった小野有五さんの言葉を筆者が再構成したかたちで以下、要約紹介する。

◆“活断層”とは何か?

3.11以降、原発の新規制基準は“将来活動する可能性のある断層等”の上に重要な施設を設置することを認めていません。ですから、原発施設の敷地内に“将来活動する可能性のある断層等”が存在すると判断された場合は、その原発を稼働させることができないのです。ちなみに、40万年前より後に活動した断層は“活断層”と呼ばれ、それは“将来活動する可能性のある断層等”に含まれています。

 

◆北海道電力の主張

北海道電力は泊原発の敷地内にある断層が“岩内層”という地層を変位させたということを認めていますが、“岩内層”は120万年前に形成されたものであるとしており、それ以降の地層変位が無いため原発敷地内に“将来活動する可能性のある断層等”は存在しないと主張しています。北海道電力が“岩内層”と呼ぶのは、岩内平野に分布する砂・小石からなる層のことです。そうした特徴をもつ地層から取り出した“凝灰岩”(火山灰が固まったもの)を調べ、それが120万年前にできたものであったため、“岩内層”は120万年前の地層だと判断しているのです。

◆泊原発の敷地内に存在する断層は“将来活動する可能性のある断層等”である

しかし、砂でできた層の中にある凝灰岩というのは、他から取り込まれたものだと考えるのが妥当です。したがって、取り出した凝灰岩の形成年代が120万年前のものだでからといって、それが周辺地層の体積年代ということにはなりません。

そもそも、地質が似ているという理由のみで全てをまとめて“岩内層”と呼ぶことに問題があります。北海道電力が“岩内層”と一括してきた地層は、場所によって堆積年代の異なる堆積物であると考えるべきであり、地形を考慮した地質学的な視点によれば、泊原発の敷地内にある断層が変位させた層、すなわち北海道電力が“岩内層”と呼ぶ層は、明らかに40万年前よりも新しい層なのです。

ですから、泊原発の敷地内に存在する断層は“将来活動する可能性のある断層等”であると判断することができ、新規制基準に基づけば、ここに重要な施設を設置することは認められません。

以上が小野有五さんの解説要約だ。実にわかり易く明快な理論だと思う。科学者でない我々が科学と向き合うとき、必要なのは“誰の声を聞くか?”という判断だ。この点で泊で聞いた小野有五さんの声は強く深く私に聞こえた。

[撮影・文]大宮浩平

▼大宮 浩平(おおみや こうへい)
写真家 / ライター / 1986年 東京に生まれる。2002年より撮影を開始。 2016年 新宿眼科画廊にて個展を開催。主な使用機材は Canon EOS 5D markⅡ、RICOH GR、Nikon F2。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

12月15日『NO NUKES voice』第10号発売
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

『NO NUKES voice』10号発売!地震列島にオスプレイも基地も原発もいらない!

 

◆オスプレイ事故は「不時着」でなく「墜落」だ

やはりオスプレイは墜落した。12月14日の京都新聞朝刊は「米軍オスプレイ不時着」の見出しで、「防衛省関係者によると、13日夜、沖縄県の近海に米軍の新型輸送機オスプレイ1機が不時着した。搭乗員は脱出したが、けが人がいる模様」と報じている。不時着? 沖縄県の近海? 報道機関よ、事実は正確に伝えよう。「沖縄県の近海への不時着」は「名護市沿岸部への墜落」ではないか。

沖縄のメディアや現時点での情報によれば、「墜落地」は陸地に近い「浅瀬」で、13日深夜から沖縄県警の機動隊車両が周囲の道路を埋め尽くしている。沖縄県民をはじめとする「オスプレイ」への懸念は、奇しくも『NO NUKES voice』発売日の直近に現実のものとなった。直視しよう、現実を。正しく伝えよう、危機の現実と「墜落」の事実を。この事故は過去の事故歴を紐解けば、いつかは必ず高い確率で起こる必然だったのだ。唯一の幸いはそれが沖縄住民の生命に被害を及ぼさなかったことだけだ。

「オスプレイ墜落」は高江や辺野古の基地建設反対運動が訴えてきたことの正当性を証明した。余分な解説は不要だ。「オスプレイは墜落する」その事実をしっかり凝視しよう。

名護警察署
沖縄の右翼にもインタビュー敢行!
不当逮捕で長期勾留されている沖縄平和運動センター議長の山城博治さん

◆不当逮捕直前に山城博治さんが『NO NUKES voice』に語ってくれた沖縄・基地〈闘いの現場〉

本日15日発売の『NO NUKES voice』10号で見逃せないのは、奇しくも沖縄情勢のレポートだ。特集に登場いただいた沖縄平和運動センター議長の山城博治さんと同事務局長大城悟さんのインタビューを是非お読み頂きたい。その中には「オスプレイ墜落」を正しく読み解く全てがある。

昨日もお伝えしたが山城博治さんはこの『NO NUKES voice』取材後に不当逮捕され、長きにわたり勾留されている。博治さんは高江や辺野古だけでなく、沖縄における〈現場の闘い〉の象徴といってもよい。博治さんのインタビューを出版する時点では、彼が不当に逮捕され、これほど長期勾留の身に置かれようとは編集部も想像していなかった。また、事務局長の大城さんには博治さん逮捕後も折に触れ、編集部が電話で博治さん逮捕・勾留の状況を伺っているが、大城さんは「すべて仕組まれた弾圧だと思います」と語っていた。

近年の国政選挙や県会議員選挙、知事選挙の全てで「基地は要らない」と沖縄の民意は示されている。「もっと沖縄知事や行政が奮闘しないか」との声も耳にする。だが、それは筋が違うだろう。選挙の結果を中央政府が無視し、踏みつけにする構造こそが指弾の対象であり、その矛先を誤ってはならない。

その点、最先端で闘い続け、現在、権力に捕らわれている博治さんのインタビューは、鹿砦社ならではの切り口で踏み込んでいると自負している。「差別と犠牲を強要する流れは沖縄だけに限らない」というは、福島のおかれた苛烈な実情、震災復興が遅々として進まない熊本、鳥取などと共通する、地方軽視のを鋭く射貫く告発の言葉だ。

歴史的・構造的に「沖縄に基地は全く不要」と説く沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さん

◆博治さんと共に闘う大城悟さんのロングインタビュー

同センター事務局長、大城悟さんの「前線での闘い、生の声──沖縄に基地は全く不要」では、より詳細に闘いの歴史、理由、現状の課題が明らかにされている。博治さん不在の中、連日高江の現場で運動の指揮を執る大城さんのインタビューは闘争の現場で取材されたものである。時間は状況の変化をもたらす。頭を垂れるようなざる得ないような、惨憺たるニュースが続くなか、全国の運動を最も厳しい沖縄から牽引するお二人のインタビューは必読だ。そして日本を代表するギタリスト内田勘太郎さんが語る「憂歌と憂国──沖縄・原発・一陣の風」も期せずして、沖縄に生活するヤマトンチュの複雑な面を我々に伝えてくれる。

大阪・西成区周辺に貼ってあった「福島除染作業員募集」の看板

◆熊本、泊、釜ヶ崎──2016年ファシズムと闘い続けた現場報告

自然災害、とりわけ近年大規模地震の多発により、被災地への眼差しが希薄になりがちだが、とりわけ史上最多の余震を記録した熊本地震のもたらした惨禍は数値で示すことのできないものだ。もちろん犠牲者の数の多寡を目安にすることに意味がないわけではない。1995年の阪神大震災6000以上、2011年東日本大震災2万以上、2016年熊本地震131人、2016年鳥取中部地震負傷者30名。しかしこの数字と悲劇の数は比例すると考えるのは間違いだろう。失われた、傷ついた人々の身体や精神を数値だけで評価する癖がつくと、本質を見逃してしまう。その思いを熊本出身の松岡が「『琉球の風』に込められた震災復興への意思」に綴っている。

本号初登場の釜ヶ崎からは尾崎美代子さんの「私が『釜ヶ崎から被爆労働を考える』を始めた理由」が新たな視点を提供する。日雇い労働者の街、釜ヶ崎で尾崎さんは何を見て行動を起こしたのか。多重搾取構造の最底辺で除染などの作業に従事せざるを得ない人々の労働問題。今後半永久的につづくであろう、原発(事故がなくとも)労働の構造的問題を伝えてくださる貴重なレポートだ。

次いで、池田実さんの「福島原発作業の現場から ミリ・シーベルトの世界で働くということ」、「被ばく労働を考えるネットワーク」の「なすび」さんの「福島第一原発の収束・廃炉作業における労働問題」が続く。この2つの報告は現場労働をより皮膚感覚で知るための貴重なテキストだ。

さらに斎藤武一さんの「北海道泊原発と〝がんの村“ほぼ四十年ほぼ毎日、海水温度を測り続けてわかったこと」は市民科学者がひたすら追求し続け到達した恐るべき結論を教示してくれる。

◆ゴジラ級の熱量──80頁の大特集「基地・原発・震災・闘いの現場」

福島の原発事故や再稼働・被曝労働の問題に止まらず、沖縄の基地、熊本の震災復興も取り上げた特集記事は80頁にも及ぶ。重層的なファシズム社会が到来した2016年師走に鹿砦社が放つ今年最後の『NO NUKES voice』──。その熱量だけはゴジラ級だ。

沖縄平和運動センター議長の山城博治さん

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

12月15日『NO NUKES voice』第10号発売
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

基地・原発・震災を問う『NO NUKES voice』第10号明日15日発売!

『NO NUKES voice』第10号が明日15日発売日を迎える。反(脱)原発に主軸を置く季刊誌としては、意外にも日本初の境地に踏み込んだ本誌が、読者の皆様のご支持の賜物で10号まで発刊を続けることができた。

◆原発マフィアに怒涛の勢いで反転攻勢をかける

怒涛の勢いで反転攻勢をかける、原発マフィアに対して、街頭から、市民からは次第に「反(脱)原発」の声が薄められ、先細りになってゆくかのような印象操作が総力を挙げて取り組まれている。東京オリンピック、リニアモーターカー、TPP、果ては改憲と矢継ぎ早に飛んでくる反動の矢の数々に対応するだけで、「反(脱)原発」陣営も消耗戦に追い込まれている部分は確かにある。

だからこそ、この惨憺極まりない《今》の窮地を、止揚し、力関係を真逆にするための媒体としての使命が『NO NUKES voice』には課されている。鹿砦社はまだまだ成長過程にある『NO NUKES voice』の編纂に今号も全力で取り組んだ。誌面に登場していただいた方々の顔ぶれからは「未来への光」が見える。

◆原発・基地・震災──沖縄、福島、熊本、泊、釜ヶ崎での〈闘いの現場〉特集

『NO NUKES voice』第10号の特集は、「基地・原発・震災・闘いの現場 沖縄、福島、熊本、泊、釜ヶ崎」だ。これまでもそうであったが、反(脱)原発は、他の社会問題と切り離して単独で論じることはできない。原発と基地、福島と沖縄、福島と釜ヶ崎、原発と震災などはいずれも不可分なテーマだ。第10号は福島、沖縄、熊本、泊へ取材陣を派遣し各地からの報告とインタビューにより、原発をはじめとするこの社会を構成する問題構造を有機的に浮き上がらせようと挑戦した。

神田香織さん(講談師)と高橋哲哉さん(哲学者)

何よりも喜ばしいことは、世代交代を委ねられる若手のライターの活躍だ。腰の据わった反(脱)原発運動の現場では、どこも高齢化(失礼!)が深刻な課題である。戦線の先頭に立つ方々の平均年齢が65歳以上という場面は決して珍しくはない。その継続的な闘いに深い敬意を示しながらも、世代を超える困難さを多くの方が感じておられる。「どうして将来のある、被害当事者の若者に気が付いてもらえないのか」とのジレンマは各地の運動で、本音として頻繁に耳にする共通課題だ。

本号では既にこれまでも健筆を奮ってくれた大宮浩平氏に加え、井田敬氏(ともに1980年以降の生まれ)が大活躍をしている。第10号発刊にあたり、編集部としては戦線に気鋭の実力充分な心強い若者が加わってくれたことを読者とともに喜びたい。もちろん若ければよい、というお気楽な気分で彼らを持ち上げているのではない。両氏とも論壇の最先端で活躍できる能力、取材力、文才と行動力を兼ね備えている。彼らの活躍にまずはご注目いただきたい。

「差別と犠牲を強要する流れは沖縄だけに限らない」と語る沖縄平和運動センター議長の山城博治さん

◆神田香織さん(講談師)と高橋哲哉さん(哲学者)による福島怒りの対談

そして、特集にある通り対談やインタビュー、報告記事も本誌をおいて他のメディアではまず不可能であろうラインナップが並ぶ。巻頭は神田香織さん(講談師)と高橋哲哉さん(哲学者)の対談「福島の人は沖縄の闘いから学ぼうと思い始めた」で幕を開ける。福島県出身者として、3・11後あらん限りの力を尽くして活動を続ける神田さんと靖国神社問題をはじめ、原発についても「犠牲」の観点から鋭い論考を続ける高橋さんの対談は穏やかな言葉で激烈極まる状況への指弾が繰り広げられる。

唯一無二のギタリスト、内田勘太郎さん(2016年10月2日熊本・琉球の風にて)

◆憂歌団ギタリストの内田勘太郎さんが奏でる〈憂歌と憂国〉

本号で見逃せないのが沖縄平和運動センター議長の山城博治さんへのインタビュー「差別と犠牲を強要する流れは沖縄だけに限らない」と同センター事務局長大城悟さんの「前線での闘い、生の声──沖縄に基地は全く不要」だ。現在不当逮捕によりいまだに勾留されている山城氏と、山城氏不在の中、連日高江の現場で運動の指揮を執る大城氏のインタビューは闘争の現場で取材されたものである。全国が注目する沖縄の闘いの根源をお二人の言葉から直接お届けする。

さらに、元憂歌団メンバーで日本を代表するギタリスト内田勘太郎さんが語る「憂歌と憂国──沖縄・原発・一陣の風」は内田氏の人格が伝わる「優しい」語り口だ。しかし優しい語りに込められた思いの強さは、必ず読者の心を揺さぶるであろう。カルピスの瓶を指にはめたあの奏法のオリジナリティーは語りでも冴えわたる。

まだまだ特集は続く──。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

12月15日『NO NUKES voice』第10号発売
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

出版は「まだまだ喰える」と錯覚すら覚えた東京国際ブックフェア

東京ビックサイトにて9月23日から25日にかけて行われた「第23回東京国際ブックフェア」に行ってきた。

これは、出版社たちが力を入れている本や、印刷技術の最先端を展示するフェアであり、年々、参加する出版社が減っているで今年はどんなものだろうと気になっていたものだ。

◆ 講談社の猫本に見る「一点突破主義」

気になったのは、まずあの天下の講談社が、小説からノンフィクションまであらゆるジャンルの本を出しているのに、「猫関連本」にしぼって、猫本ばかりを展示して勝負してきたことだ。もはやこうした「一点突破主義」でないと出版社は生き残れない。その証拠に、趣味本から旅行本までカバーしている枻出版が横で展開していてそれなりに客を集めていたが、猫本ほどは売れていなかった。

◆「自由価格競争」時代に入った雑誌・書籍

つぎに、特筆すべきは、もはや雑誌や書籍の価格が「自由競争」の時代に入ったのではないか、という点だ。第二出版販売と八木書店が「自由価格本」のコーナーを作っていたが、2、3割安い本が飛ぶように熟れていた。

もはや八木書店が展開しているような自由価格競争は地方のスーパーなどでは常識で「本や雑誌は固定価格」の時代は過ぎようとしている。一部では「時限販売」などと呼ばれているが、たとえば、取り次ぎの日本出版販売は、この夏、「時限販売」と称して、一部の雑誌をテスト的に値引き販売したが、好結果に終わっており、この先も期待できる商売のやりかただ。

このフェアで配布された資料によると、もはや書籍を電子販売している出版社は4割を超えたようだ。
そのわりに「電子書籍は紙の書籍の売上げを埋めない」とする出版関係者が多い。

だが希望はある。過日、山口組弘道会系のヤクザと飲んでいたが、「最近の若いやつが本を読み始めた。やはり極道とてバカじゃあいけない」と話をしていた。

ヤクザこそ、法律に精通し、なんとかして暴力団排除の情勢の中を生きなくては、ならない。

◆出版の世界は「まだまだ喰えるのではないか」と錯覚すらしてしまうフェア

またこの日は、「告白」でデビュー、もはや「イヤミスの女王」となった湊かなえさんが講演、ふだんから世話になっている出版社の担当編集、取り次ぎ担当者、そして営業担当者を呼んで「本ができるまでのプロセス」を参加者にわかりやすく展開していた。

なんと双葉社は、「告白」の映画が決定してきたときに、文庫本が80万冊売れたという前提で膨大な予算の宣伝費をつぎこんでいた。もちろん文庫本は210万部を超える大ヒットとなり、映画も大当たりで38億円を稼ぎ、日本アカデミー賞でも4冠を達成、2010年の興業収入で7位となった。

かくして、出版の世界では「まだまだ喰えるのではないか」と錯覚すらしてしまうフェアだったが「本自体は昨年より売れていない」(参加した版元関係者)という声もある。

世知辛い出版不景気が続くが、やはり200万部突破するようなヒット作を生むべく努力したいものである。

▼小林俊之(こばやし・としゆき)
裏社会、事件、政治に精通。自称「ペンのテロリスト」の末筆にして松岡イズム最後の後継者。師匠は「自分以外すべて」で座右の銘は「肉を斬らせて骨を断つ」。

 7日発売!タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!

《冤死の淵で》阿佐吉廣氏(山梨キャンプ場殺人事件) 母との再会を一途に願って

外部との交流を厳しく制限され、獄中生活の実相が世間にほとんど知られていない死刑囚たち。その中には、実際には無実の者も少なくない。冤罪死刑囚8人が冤死の淵で書き綴った貴重な文書を紹介する。8人目は、山梨キャンプ場殺人事件の阿佐吉廣氏(67)。

阿佐氏が綴った手記の原本計16枚

◆「虚偽証言だけで死刑が確定」

〈今、私は、山梨キャンプ場殺人事件で共犯と呼ばれる、元社員達の、自分の罪を軽くしたい、あるいは逃がれたいと思う虚偽証言だけで死刑が確定いたしました。他に証拠は何ひとつありません。〉

これは、今年2月に発売された私の編著「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(鹿砦社)に、阿佐氏が寄稿した手記の一節だ。

事件が発覚したのは03年の秋だった。山梨県警がタレコミ情報をもとに都留市のキャンプ場で、3人の遺体が埋められているのを発見。3人は阿佐氏が営む会社「朝日建設」の元従業員だった。阿佐氏は、部下らと共に殺人などの罪に問われ、「自分は無関係」と無実を訴えたが、12年に最高裁で死刑が確定。現在は死刑囚として東京拘置所に収容されつつ、甲府地裁に再審請求中である。

阿佐氏が収容されている東京拘置所

◆冤罪を疑う声が多い理由

専門筋の間では、阿佐氏の冤罪を疑う声は非常に多いのだが、その最大の理由は、裁判で共犯者とされる元部下がこんな証言をしたことである。

「取り調べや裁判の最初の頃には、阿佐社長が被害者らを殺し、私たちも手伝ったと証言していましたが、あれは嘘です。本当は、阿佐社長は殺害の現場にいなかったのです」

この元部下によると、殺害行為を実行したのは、事件発覚時にはすでに死去していた「副社長格のY」だった。Yは被害者らとトラブルになり、首を絞めて殺害したが、その時に元部下も被害者の足を押さえるなどして手伝った。しかし警察の取り調べでは、阿佐氏が主犯だというストーリーを押しつけられたという。

「私は朝日建設を辞める際、阿佐社長に見捨てられたように感じて恨んでいたので、阿佐社長が被害者を殺害したとみていた警察に、話を合わせてしまったのです。でも、自分の嘘で阿佐社長が死刑にされたことに耐えられなくなり、本当のことを話したのです」(同)

一方、東京拘置所で収容中の阿佐氏は、前掲の手記で、自分を貶めるウソの供述をした共犯者たちへの思いも次のように綴っている。

〈彼らの虚偽「供述」や虚偽「証言」は決して彼らが意図して言ったものでは無く、取調官に誘導され、強要されて出来上ったものです。その冤罪の被害者は私だけでなく、彼らも被害者なのです。私は、だからこそ一日も早く、真実を明らかにして、楽な気持にさせてやりたいとの思いで一杯なのです。〉

この文章からは、凶悪殺人犯として死刑判決を受けた阿佐氏が本来、暖かい人柄の人物であることが窺える。

阿佐氏の再審請求が審理されている甲府地裁

◆一目でいい、母に会って・・・

徳島県出身の阿佐氏には、裁判中から遠路はるばる面会に来てくれていた母親がいる。80代後半になり、現在は認知症に陥っているというが、前掲の手記には、その母親への思いも綴られている。

〈私の大切な、たった一人の母も、ときどきは正気に戻る時には、私に会いたいと切望していることでしょう。私も一目でいい、母に会ってこの胸、一杯にある感謝の言葉を伝えたいと思っております。〉

人は極限的な状況に置かれた時、何より心の拠り所にするのはやはり肉親ではないか。阿佐氏の手記はそんな感想を抱かせる。前掲書に掲載された手記全文には、母との思い出や阿佐氏の半生、事件の経緯などが克明に綴られている。
 
【冤死】
1 動詞 ぬれぎぬを着せられて死ぬ。不当な仕打ちを受けて死ぬ。
2 動詞+結果補語 ひどいぬれぎぬを着せる、ひどい仕打ちをする。
白水社中国語辞典より)

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

 「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
  商業出版の限界を超えた問題作! 全マスコミ黙殺にもかかわらず版を重ねた禁断のベストセラーが大幅増補新版となって発売開始!

原発推進インチキ・メディアを斬る!《6》もんじゅ利権の具『週刊新潮』座談会再び

これこそ世紀の「くだらない座談会」として、ギネスにでも遺すべきだろう。なんと週刊新潮の8月11・19日合併号では「特別読物 原子力の専門学者座談会 御用学者と呼ばれて」シリーズで、「反原発」に「反対」する学者たちの座談会が開かれているが、テーマは「もんじゅ」でタイトルは『なぜ「もんじゅ」が日本の平和と環境に資するのか!』というタイトルが打たれている。

参加しているのは高木直行教授(東京俊大学大学院)、澤田哲生助教授(東京工業大学)、奈良林直教授(北海道大学大学院)、河田東海夫(原子力発電環境整備機構=MONO元理事)の4人が「もんじゅ」こそが環境と平和に資すると平気でのたまう。

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

記事を抜粋する。記事はまずこんな前文から始まる。

———————————————————————

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

原子力規制委員会が引導を渡したのは昨年11月のことだった。高速増殖炉「もんじゅ」について、機器の点検漏れが数多く発覚したことなどを理由に、今の原子力研究開発機構(JAEA)は信用できないので、それに代わる新しい運営主体を探すよう、文部科学大臣に勧告したのだ。もんじゅはプルトニウムとウランの混合酸化物、MOX燃料を使い、発電に使ったプルトニウム以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」を実用化すべく建設されたもの。日本の核燃料サイクル戦略の中核に位置づけられていたが、それが存続の危機に追い込まれたのだ。規制委員会が突きつけた回答期限のメドは「半年」。すでに半年を超え、8ヶ月が経過したが、新しい受け皿の具体案は示されない。「もんじゅ」は消滅するのか。もはや必要ないのか。澤田哲生氏を進行役に、専門学者たちが議論を交わした。

———————————————————————

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

この馬鹿野郎たちの議論の前に解説すると、「もんじゅ」について原子力規制委員会が「運営母体を変えろ」と勧告したのに続いて、今年1月にIAEA(国際原子力機関)が実施するIRRS(総合規制評価サービス)の監査が入ったと澤田氏が指摘している。そう、まずはIRRSの監査の基準がなっていないという議論から始まる。規制委員会の田中俊一委員長が「核燃料サイクルや高速増殖炉開発の意義を十分に納得していない」と高木氏は吠える。

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

そして議論は「もんじゅを再稼働するのには、電力会社の協力が必要だ」という最悪の論調に走っていく。

奈良林氏の言葉を抜粋する。
『今、電力会社は自分の発電所の再稼働問題で手一杯。再稼働が進めば余力もできるでしょうが、今がタイミング的に一番まずい。再稼働がなかなか進まない点は、IRRSがいみじくも言っています。今の原子力規制庁と規制委員会は、新規則基準を作るまではよかったが、規制の運用が〝初期段階〟だと。日本の規制は世界から見ると小学生だというのです。だから、もんじゅを安全にする指導もできず、無駄な書類ばかり作らせている。』

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

この国はもんじゅの再稼働に141億円をつぎ込もうとしている。これだけの金があれば、いくつ被災者住宅が建つというのか。

もんじゅは、1995年にナトリウム漏れ事故を起こしている。
直近では、7月下旬に、点検漏れが新たにあったとして報道された。もんじゅは今や「瑕疵つき物件」なのだ。

あいた口がふさがらないことに、河田はこんな発言をしている。

『高速増殖炉は軽水炉とはまったく体系がちがいます。それに、もんじゅは研究開発のための原子炉ですから、一生懸命に稼働率を稼ぐ必要はなく、保全計画が適正であるのを検証しつつ、一歩ずつ前に進めばいい。ミスが全然ないように学びながら作りあげていくものです。だから規制庁による点検漏れだ、違反だという指摘は、基本的にはフィロソフィーが違うのかなと。規制のあり方を一度ゼロベースに戻すべきです。また、もんじゅに関わっていた人は「運転する自信はじゅうぶんある」と言います。ですから、きちんと実働しながら、それを紙の体系とすり合わせていくことが大切だと思います。』

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

おいおい、何度も事故を起こした車の運転手が「自信が十分にある」「学びながら運転します」といえばあんたたちはその車に乗るのか。

ナトリウムが漏れたということは、拡大すれば端的にいえば体のタンパク質がとけていくかもしれないということで内蔵疾患の原因にもなりかねない。

座談会の学者たちよ! そして「週刊新潮」の人間たちよ!
福島の被災者住宅のど真ん中で座談会をやってみよ。
それができないなら、すぐにお詫びと訂正記事を出せ。

(渋谷三七十)

  『NO NUKES voice』最新第9号発売中! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線
 Kindle版配信開始!『ヘイトと暴力の連鎖』!

 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!

原発推進インチキ・メディアを斬る!《5》『週刊新潮』の呆れたもんじゅ座談会

『週刊新潮』(2016年1月28日号)特別読物原子力の専門学者座談会第12弾「御用学者と呼ばれて」

ずいぶん以前の話だが、「反・反原発」路線で売っている『週刊新潮』の1月28日号で、「特別読物 第12弾 原子力の専門学者座談会 御用学者と呼ばれて」の連載で「高速増殖炉もんじゅと日本の核燃料サイクル」と題して、東京工業大学・澤田哲生助教授、東京都市大学大学院・高木直行教授、東京大学大学院・岡本孝司助教授、北海道大学大学院・奈良林直教授らが「もんじゅ」をテーマに語っていた。
なんてことはない。掲載当時は「もんじゅ」の運営を原子力規制委員会が、日本原子力研究開発機構(JAEA)にかわる主体にゆだねるように馳浩文部科学大臣に勧告した頃だ。要するに、「もんじゅが必要」という論調にもっていきたいのが見え見えの呆れた座談会だ。日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を再稼働させると、少なくとも5800億円の費用がかかると文部科学省が試算していることがアナウンスされている。冗談も休み休み言ってくれよ、週刊新潮! 吐き気すらするこの記事を抜粋しよう。

———————————————————————

澤田 仮に、今回の勧告でもんじゅが廃炉に向かうとしたら、日本のエネルギー政策、原子力政策にどんな影響が及ぶでしょうか。核燃料サイクルはフランスのアストリッドと協力してやる話もあるようですが、国内の六カ所村などの再処理施設はどうなるのか。エネルギー小国の日本がもんじゅを捨てるのは、あまりにもったいないと思います。
岡本 エネルギーを司る役所は経産省と文科省に分かれますが、今回の勧告に監視、経産大臣は「もんじゅは文科省の所管です」とにべもなく語っている。経産省は、核燃料サイクルを推進しているはずですが、地震が多い日本では使えないフランスのアストリッドに期待しているのか。そもそも、もんじゅがつぶれたらアストリッドもありません。
高木 経産省はもんじゅに見切りをつけ、アストリッドとの協力で核燃料サイクルを進めるというのでしょうか。でも、もんじゅをやめた時点で多くの人は、日本が高速増殖炉開発をやめたと思いますよ。
奈良橋 もんじゅをやめてしまうと、日本では二度と高速炉を建設できないと思います。ナトリウムを流して高速炉を運転するのは特殊な技術で、日本は30年かけてナトリウムを使える人を育ててきた。それを絶やしてしまえば、アストリッドと協力しても、日本側から適切なアドバイスをする人がいなくなってしまう。(『週刊新潮』2016年1月28日号)
———————————————————————

おいおい「週刊新潮」よ、いや新潮社の諸兄よ! チェルノブイリの被害を描いてノーベル文学賞をとったベラルーシの女性作家、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏の『チェルノブイリの祈り――未来の物語 』(岩波現代文庫)を読んで感想文を書け。そして福島の被災者住宅に個別配付し、悔い改めよ! もしくは、「もんじゅ」の再稼働を署名で止めろ!

まだまだ腐った「原発推進メディア」はたくさんある。ひとつとして許すことはできない。機会があれば、紹介しよう。

(渋谷三七十)

  『NO NUKES voice』vol.9! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線
 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

銀座の蝶、凋落のフジテレビ社長よりも伸びしろある新人作家へ

森村誠一、野沢尚、東野圭吾、池井戸潤などを輩出した“売れっ子作家製造器”とも呼ばれる「第62回江戸川乱歩賞贈呈式」(日本推理作家協会主催・後援・フジテレビ/講談社)が9月9日18時から帝国ホテルで行われたが、この手の文学賞を彩るために呼ばれる「銀座の艶っぽいホステス」が群がったのは、フジテレビ社長の亀山千広社長や講談社の野間省伸ではなく、大御所作家で選考委員の有栖川有栖、池井戸潤、今野敏氏らでもなく、337名の中から大賞に選ばれ、『QJKJQ』で受賞した新人作家、佐藤究(きわむ)だった。

佐藤究氏

「例年、念入りにフジテレビの亀山社長や野間社長や大御所作家に挨拶するのですが、今年、招待された銀座のホステスたちは、挨拶は数分程度で、さっそく『金の卵』と化ける可能性もある新人作家、佐藤のところに並ぶ編集者の列に入ってきたのはびっくりした」(文芸雑誌記者)

とくにフジテレビの亀井社長は活気あふれる受賞式とは正反対でどんよりとした雰囲気。日帯(6~24時)視聴率で、TBSに抜かれて民放4位に転落、破棄がないフジテレビの亀山千広社長は「年々、受賞作が映像化しづらい作品になっておりまして。特に今回の受賞作は、本の帯に『私の家族は全員、猟奇殺人鬼』とある。テレビでは絶対できません」と冗談交じりに、あいさつの弁。その声には張りがなく「体調が悪いのか」とささやかれる始末。負のオーラがばらまかれているのか、近寄るのは男ばかりで、ポツネンとひとりたたずむ姿も。

いっぽうで吉本興業の警備員だったという異色の受賞者、佐藤は「私も今回応募した337名と同じくただ書き続ける日々を送ってきました。書くことは私の古い友人です。作家は、サーカスの曲芸師です。ここはトランポリンやブランコなどを行うサーカスをする楽しい場所です。楽しんでいってください」といっぷう変わった挨拶で聴衆を引きつけていた。

和服姿の美女ホステスがこっそり教えてくれる。「今時の出版社社長や落ち目のフジテレビの社長や、ベテラン作家などに営業しても、もうひいきの店は決まっているし、新人作家は大化けしてベストセラー作家になって大枚をお店に落とす可能性があるのです。だから店どうしの争いも激しいのです」(同)

佐藤への挨拶の順番を巡って割り込む和服ホステスもいて、「ちょっと、私たちが並んでいたのです」と押し返される場面も。いっぽうで野間社長も旧知の男性とばかり話しており、あまり女性を受け付けない雰囲気をかもしだしていた。

「さながらこの会場は現在の不況が凝縮されていた。出版社もテレビ局も銀座の店で遊ぶ余裕がなく、結局、当たれば億単位で稼ぐ“作家”のほうが銀座ホステスにとって“くどくべき相手”だということです。その証拠に、夜8時ごろはもう例年だとほぼ解散なのに,佐藤の“出待ち”をしているホステスもいた」(同)

同賞は、講談社の編集者ががっちりと佐藤をプロテクトしており、佐藤のほうは挨拶してきた連中に名刺を渡さない。

「佐藤が気に入った相手がいれば出版者の編集者であれ、銀座のホステスであれ、広告代理店スタッフであれ、佐藤のほうから連絡するのが受賞式でのマナーであり、ルールです」(同)

さて、凋落のフジテレビ亀井社長は、つぎの予定があるのか早々と会場をあとにした。
「江戸川乱歩賞は賞金が1000万円だが、かつて東野圭吾が『1000万円なんてはした金』と第60回の江戸川乱歩賞贈呈式で言い放ったことがあるように、売れっ子になれば『一晩に数百万を銀座に落とす』のも夢じゃないからね」(同)

この作品は、一家全員がシリアルきらーというかなりエキセントリックな作品だが、ふたりが推薦したようだ。 池井戸潤の選評を紹介する。

———————————————————————

現実と幻想が交錯するストーリーで、その境界線が曖昧なことが読み味なのかもしれない。小説は自由なのだから主人公を含め家族全員が殺人鬼という設定があってもいいし、殺人鬼が犯人を追って密室殺人に挑むというのなら、それはそれでおもしろい。

だが、その謎解きは肩すかしだ。その後の展開も、この小説世界を支える枠組みやルールを後だししている印象を受け、果たしてこれが周到に準備された小説ともいえるか、という疑問を最後までぬぐえなかった。

だが、これはあくまで私一己の読み方である。選考委員のうちふたりがこの小説に最高点を与えて評価するというのであれば、それを拒むものではない。受賞者の今後の活躍をおおいに期待したい。

———————————————————————

いい選評だ。審査委員の今野敏は、「終盤の主人公の少女と実父とのエピソードには思わず涙しそうになった」と語っている。

このところ「文学賞」は、最初からテレビドラマ化しやすい作品に受賞させるようになった。さらに同じおもしろさなら「現代劇よりも時代劇」を、「笑える話よりも泣ける話」を選ぶようにトレンドが変化してきた。ゆえに「本来なら受賞する作品も、落選する可能性がある」と日本推理作家協会のわが師匠も話していた。

さて、「家族全員が殺人者」というストーリーで羽ばたく佐藤氏は、もともと吉本興業の警備員をしていたという変わり種だ。

もともと江戸川乱歩がポケットマネーでつくったこの賞は、森村誠一、東野圭吾、西村京太郎、鳥羽亮ら偉大な作家たちを生み出してきた。この賞の存続を強く望む。

そして92年から後援で参加しているフジテレビよ! 亀山社長よ! 
ドラマ化しにくいのはわかるが、てめえの挨拶が終わるやすぐ帰るという姿勢はいかがなものか。

現在、不況にあえぐ出版社は無名の作家は初刷り1000部なんてザラ。ファンが確実に集まる江戸川乱歩賞受賞作家に「夜の女」がなびき、凋落の出版社やテレビ局らは相手にされない時代が到来したのだ。

(伊東北斗)

  色とりどりの女優たちがエロスで彩る昭和映画史!大高宏雄『昭和の女優 官能・エロ映画の時代』
 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!

《冤死の淵で》高橋和利氏(鶴見事件) 手記に綴った司法権力への満腔の怒り

外部との交流を厳しく制限され、獄中生活の実相が世間にほとんど知られていない死刑囚たち。その中には、実際には無実の者も少なくない。冤罪死刑囚8人が冤死の淵で書き綴った貴重な文書を紹介する。7人目は、鶴見事件の高橋和利氏(82)。

◆80代まで生き永らえた原動力

今年2月に発売された私の編著「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(鹿砦社)には、高橋氏も手記を寄稿してくれている。その手記は次のような冒頭の一文が非常に印象的である。

〈八十一歳。私をこの歳まで生き永らえさせているものは、足の先から頭の天辺にまで詰まり凝り固まっている司法権力への失望と満腔の怒りだ〉

横浜市鶴見区の小さな金融会社で、経営者の夫婦が殺害される事件が起きたのは1988年6月20日のこと。ほどなく殺人の容疑で検挙されたのが、現場の金融会社に出入りしていた電気工事会社の経営者で、当時54歳の高橋氏だった。それから28年。この間に高橋氏は無実を訴えながら死刑判決が確定し、再審請求も退けられているが、裁判の過程では、冤罪であることを示す数々の事実が浮き彫りになっていた。それゆえに高橋氏は、司法権力に対し、〈満腔の怒り〉を抱くに至ったのである。

髙橋氏が綴った手記の原本計20枚

◆捜査や裁判を舌鋒鋭く批判

そもそも、高橋氏がこの事件の犯人ではないかと疑われた原因は、事件の日に現場の金融会社を訪ね、被害者夫婦が殺害されているのを目撃しながら、警察に通報せず、その場にあった現金を持ち逃げしたことによる。つまり、第一発見者が犯人にすり替わってしまったのだが、この経緯を見る限り、高橋さんにも落ち度はある。

しかし裁判では、事実上唯一の有罪証拠である自白には、様々な不自然な点が見つかった。しかも、高橋さんは取り調べに対し「凶器のバールやプラスドライバーはゴミ集積場に捨てた」と自白しているにも関わらず、なぜか凶器は見つかっていない。しかも、現場の金融会社は事件の4カ月前にも窃盗に入られ、融資の借用証や不動産の権利証などの重要書類を盗まれているなど、「別の真犯人」が存在することを窺わせる事情も色々存在したのである。

高橋氏が収容されている東京拘置所

それゆえに高橋氏の捜査批判、裁判批判の舌鋒は鋭い。

〈取り調べの凄まじさは話の外で、思うだけで抑え難い怒りでむかついてくる。(略)大声で罵倒、椅子、机を蹴り、足や脇腹を蹴り、髪を掴んで振り回し、体重をかけて覆いかぶさり机に押さえ付ける。そうしたことをいくら裁判官に訴えても、証人として出廷した警察官が捜査段階での暴力や脅しはなかったと証言しているのだから、そういう事実はなかったのだ。(略)裁判官には洞察眼の欠けらもない。被告に向けるのと同じ疑いの眼を、なぜ証人の警察官にも向けて見ようとはしないのか。〉

◆妻が語る冤罪死刑囚の実像

手記だけを読むと、雪冤に執念を燃やす高橋氏について、読者は気難しい人物なのではないかという印象を持ちそうだ。しかし、妻の京子氏によると、実際の高橋氏は会社に入ってきたカマキリを追い払うことすらできない優しい性格の人だったという。前掲書では、事件の詳細のほか、京子氏へのインタビューにより高橋氏の誠実な人柄も浮かび上がっている。
 
【冤死】
1 動詞 ぬれぎぬを着せられて死ぬ。不当な仕打ちを受けて死ぬ。
2 動詞+結果補語 ひどいぬれぎぬを着せる、ひどい仕打ちをする。
白水社中国語辞典より)

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

 「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
 Kindle版配信開始!『ヘイトと暴力の連鎖』!