1991年の暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)成立以降、暴力団(ヤクザ)に対する社会の締め付けが強まった。指定暴力団の構成員であることがバレると銀行で個人名義の口座を開くことは出来ないし、生命保険や損害保険に入りことも許されない。さらに借家を探そうにも不動産屋が指定暴力団の構成員だとみなせば、住居の紹介すら受けることが出来ない。

たしかに、暴力団(ヤクザ)は非合法のシノギ(金儲け)を収入源にしていることはあるだろうが、こんな扱いを受けたら一般的な社会生活すらおくれなくなるのではないだろうか。仮に組織を抜けて「堅気(カタギ)」に戻ろうにも、勤務先で給与の振込先を聞かれて「銀行口座がありません」と答えれば、不審に思われるのではないだろうか。それが原因で「不採用」になりはしないか。

◆暴対法で無法化する公安警察──市民に危害を加えるのは「ヤクザ」でなく「半グレ」「チンピラ」

暴対法は過剰だと思う。公務員として身分が保証され、昼間から日がな一日乱闘の訓練ばかりしている公営組織暴力団(機動隊)とは裏腹に、民間のヤクザには犯罪を犯していなくとも、基本的生活権が認められてはいない。だからヤクザの構成員数は右肩下がりで、「シノギ」も合法的な企業体を装わなければ、即座に警察から「中止命令」を食らってしまう。

でも、「ヤクザ」はどの時代にでも、どこの国にでも必ず必要とされる、緩衝材のような存在ではないか。日本語で「暴力団」と表記すると物々しいけれども、非合法部分で社会の緩衝材的役割を果たす組織は世界を見回しても相当多くの国や地域に存在する。日本の「ヤクザ」だって、戦後の混乱期、警察力が不足していた頃は正式に警察の依頼を受けて労働争議の弾圧や治安維持に加わっていたことは動かしがたい歴史である。時に権力の走狗となり「泥仕事」を請け負うのも「ヤクザ」の役割であった。

そして、警察や総務省、法務省が広報するほど、今日「ヤクザ」は一般市民に危害を加えることはない。そりゃぁその筋の人の集まりの近くに行けば、逃げ出したくなるような独特な雰囲気はあるし、どう真似しようとしたって私如き善良な市民(?)には模倣できない雰囲気はある。だからといって彼らが「おいおっさん、なにメンチ切っとるんじゃ!」と私に絡んできた経験はない。そういう言いがかりをつけてくるのは組織の人ではなく、いわゆる「チンピラ」だ。

「ヤクザ」と比較にならない厄介な存在が一部で「半グレ集団」と呼ばれる暴対法の網にはかからない、実質上の「犯罪集団」だ。最近個人的に「振り込め詐欺」を追及していたら、その元締めがかなり有名な「半グレ」集団であることが判明した。被害拡散防止の為に警察にその旨を連絡したが、相も変わらず警察は即応しない。「貴重なご意見ありがとうございます。情報は必ず上にあげておきます」と言うばかり。いったい何を仕事にしているのだ刑事警察は。

公安警察は頼みもしなくとも、でっち上げ逮捕した人の家に令状を示す前にズカズカ窓から入って来るほど、仕事には過剰に熱心だが刑事警察の程度の低さには、毎度呆れかえるばかりである。

◆冤罪を前科とみなし口座開設を拒否する銀行の姿勢は人権侵害にほかならない

そして「暴対法」や「反社会勢力」との取引を慎重に、という流れの中でお門違いにも被害をうけるのが、「暴対法」や指定暴力団とは何の関係もなく、刑法により有罪を受けた多くの人びとだ。例えば日本には「名誉棄損」の刑事事件で逮捕、勾留された経験を持つ存命の人物が1人だけいる。190日を超える拘置所での勾留がなぜに「名誉棄損」で必要だったのか。まったくもって理解できない扱いを受けたその人は、何と銀行で定期預金を開こうとしたら断られたのだという。因みにその方が定期預金開設を申し込んだ銀行とは長年商売上も、個人的にも取引があり現在も個人名義の普通口座は保有しているという。

どうして定期預金が開設出来ないのかを銀行に尋ねたところ「総合的に判断して」と馬鹿にした答えが返ってきたそうだ。「総合的に判断して」この言葉は企業や役所が「痛いところ」を突かれて明確な回答を出したくない時に利用する常套句だ。私も3ヵ月に1度くらいの割合で取材しているとこの言葉を返される。「総合的に判断して」の裏には、必ず確信の持てない、いい加減な判断や社会には出せない裏事情がある。

上記のケースでは金融機関に義務づけられている「反社会的勢力との取引禁止」を誤解、拡大解釈して、あってはならない「無辜の市民」を「反社会勢力」と断定することにより、失礼千万な口座開設拒否という暴挙に出ている訳である。当該人物を「反社会勢力」と断定するのであれば、これまで続けてきた取引をどう説明するのだ。現在も開設されている普通預金を放置しておいてよいのか。銀行に詳細を尋ねたが納得のゆく説明は得られなかったという。

これは明らかに銀行側が「暴対法」を拡大解釈し過ぎ、金融庁の顔色を忖度し過ぎた大失態であると同時に、無原則かつ説明の出来ない恣意的な「口座開設拒否」は明らかな人権侵害問題だ。

仮に何らかの罪で服役し、刑期を終えて社会復帰した人が銀行口座を開くことが出来なければ、居住場所を見つけることが出来るだろうか。就職先を探し出すことが出来るだろうか。

有罪が確定しても、裁判で確定した刑期を刑務所で過ごしたり、罰金を払えば、その罪は償ったことになるはずじゃないのか。それでも民間社会でさらに「制裁」を受け続けなければならないというなら「法の支配」はこの島国には存在しないことを意味する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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