昭和天皇が崩御し、バブルの終焉とともに日本社会は全国的な不況に陥った。カネはないが遊びたい、という客たちが繁華街に溢れた。このあたりからであろうか。キャッチが風俗雑誌を切り抜き、パウチ加工したものを客の目の前でチラつかせて足を留めさせ始めたのは。客は面白いように釣れた。

◆ぼったくりの温故知新──iPadで客引きする歌舞伎町のキャッチたち

平成になると、キャッチのアイテムはさらに進化する。パソコンやアイコラを駆使し、自家製のフライヤーや小冊子を作っているキャッチもいた。そして、今やiPadを所持するキャッチが増えている。

二次元の画像だったものが、iPadの普及により三次元の動画で紹介できるのである。ネット上には、世界各国の動画や画像が氾濫している。取り放題、見放題、使い放題である。これほどの規模の宣伝媒体は、過去に存在しない。

「ウチの店ではですね。こんな娘が……」
キャッチが示すiPadの画面に、目を釘付けにする 客、客、客。ネット社会らしい、新手の客引き法である。

古典的な手法で、客から法外な料金を獲るぼったくり店。時代の先端を担うiPadを駆使し、客引きに利用するキャッチたち。まさに、『温故知新』という故事がそのまま当てはまるのが、ぼったくり店とキャッチの現状なのだ。

◆「確認しなかったのは、アナタの責任でしょ」──ぼったくり店の相場は1人最低5万円前後

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

店側としては、きちんと「客の了解」をとっている。了解をとった以上、それは「正規のオーダー」であり、これを踏み倒せば無銭飲食だ。客さえ入店すればしめたもの。あとは売上を上げるだけである。

一例をあげれば、セットを1万円程度に設定しても、チャームやオードブル、フルーツを一品、女の子のドリンク代などを加算していく。他にも、タイムチャージなどがある。基本的に、ぼったくり店は自動延長だ。自分から帰る意志を告げないと、延長料金が発生し続ける。タイムチャージと称し、30分毎に延長料金5千円~1万円は取るだろう。

そして、これら算出された小計にサービス料40~60%。テーブルチャージ10%、ボックスチャージ10%、ミュージックチャージ10%などを累計で加算していく。当然、消費税も加算される。一番安く見積もっても、小計金額の2・5倍以上となる。(※店により若干異なる)

現在のぼったくり店では、座った時点で小計が1人最低5万円前後になるように設定されている。メニュー通り5万円の小計で計算すれば、1人あたり12万5千円。4人ならば50万円。しかも、この金額設定はメニューにきっちりと明示されているのだ。だから、違法性はないと突っ張れるのである。

「お金に余裕がないなら、オーダーをだす前にメニューを確かめればいい。女の子に料金システムを尋ねればいい。確認しなかったのは、アナタの責任でしょ」

店側の言い分である。だから、モメた客を警察に連行して払わせる、ということが可能だった。ただし、今年の6月1日からは交番にぼったくり被害客が駆け込むと、被害者、加害者ともに新宿署に連れて行かれ、刑事事件と同様の扱いを受けるようになった。くわえて弁護士が夜9時から歌舞伎町に待機、2万5千円の料金が派生するが店と交渉してくれる『歌舞伎町ぼったくり110番』が東京弁護士会によって6月26日から稼働しているなど、状況は変わりつつある。[つづく]

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動? [近日掲載]
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃 [近日掲載]
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界 [近日掲載]
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり [近日掲載]
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる [近日掲載]

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