「この日の為にこの一年を生き、この日に賭けている。5回戦ヒジ打ち有ルールは僕がキックを始める以前からあった基本」。そんなRIKIXジム・小野寺力会長の原点となる意気込みの集大成は、「つまらない展開になったり、判定決着もあるかもしれないが、ファンにワクワクして来てもらいたい」というマッチメイクには満足しているという全9試合。

拘りルールはすべてを貫けない状況ではありますが、観衆が集中力を切らさず、好カードを満喫できる長過ぎない時間と総ラウンド数を心掛けるというNO KICK NO LIFE興行。

ビッグマッチ揃いだけに、この日はちょっと長くなってしまいましたが、大田区総合体育館での開催は3年連続。“キックの日”を掲げていこうと毎度の2月11日(祝日)を押さえるのは難しく、今年は3月12日となりましたが、日時より手頃な広さの大田区総合体育館をキックボクシングのメイン会場に定着させて欲しいものであります。

昨年2回O-EAST渋谷で開催された興行も、平日夜でも主要駅の渋谷で仕事帰りのサラリーマンも立ち寄りやすい手応えで、今年も2回予定されています。

◆42歳の大月晴明と44歳の立嶋篤史は気になる存在

すべてが好カードでしたが、気になる存在は42歳の大月晴明と44歳の立嶋篤史。大月は前口太尊にヒジで切られ、激しい流血でストップされましたが、4月10日の市原での蘇我英樹(市原)戦は出場の予定(この日の試合後の意見)。息子に生き様を見せ続ける立嶋篤史は経験値からくる戦略は見事で、徐々に19歳の藤野伸哉を接近戦でのボディブローでたじろがせる攻めも見せつつ、3回戦では巻き返す時間は少なく、藤野の手数と的確さが優りました。

前口太尊(右)にノーガードで打たせる場面も見せた大月晴明(左)、頭部の傷は問題ないとアピール

「5回戦は3回戦で終わる展開にはない4ラウンド目からのスタミナ重視の展開がある。特に首相撲に捕まれば激しいスタミナ消耗になり、組み負ければそのままヒザ蹴りの餌食、それに打ち勝つにはその練習も充分でなければならない。総合力が必要な競技ですよ」

2003年頃、まだキックボクシング自体が5回戦から3回戦に短縮する前の頃、“新人3回戦”に対する戒めとして語ってくれたある古いジム関係者がいました。その後、そんな基本に逆行するかのように“ランカー以上の3回戦”がどこの団体でも定着してしまいました。テレビ重視の影響を受け過ぎてはいけないと言った関係者も多かったところでしたが、その“3回戦勢力”は増すばかりでした。今後のキックボクシング競技本来の完成度に期待して、4ラウンド目から差が出てくる5回戦本来の醍醐味をNO KICK NO LIFEでは魅せていってもらいたいものです。

◆59.2kg契約5回戦
WBCムエタイ世界スーパーフェザー級チャンピオン.梅野源治(PHOENIX/27歳/59.2kg)
VS
スターボーイ・クワイトーンジム(元・WPMF世界SFe級C/タイ/24歳/59.0kg)
引分け / 1-0 (主審 大成敦 / 小林 48-47. 大村 48-48. 玉川 48-48)
「梅野はパンチとローキックが強いからヒジを合わせろ」
タイのトップクラスにも研究されているという、日本人で最もムエタイ殿堂王座に近い梅野源治の戦法スタイル。減量でいつも以上に体重が残り、思うように動けずスピード遅く、当たっているけど倒せないもどかしさが残る展開だった様子。その打って出たパンチに合わせ、スターボーイが狙った右ヒジ喰らってダウンし、「またやっちゃったな。今後もこれまで以上に頭使って臨機応変に瞬時に動かないとタイだと厳しい結果になるだろう」と今後もより険しいムエタイロードになると反省する梅野源治。厳しい立場ではあるが、こんなタイトップクラスに警戒される存在であることに誇らしい想いであるファンは多いでしょう。

スターボーイvs梅野源治。一瞬の隙を突いてのヒジ打ちも高度な技術

◆55.4kg契約5回戦(ヒジ打ち禁止)
RISEバンタム級チャンピオン.那須川天心(TARGET/17歳/55.3kg)
VS
WBCムエタイ・インターナショナル・スーパーバンタム級チャンピオン.宮元啓介(橋本/23歳/55.6→55.5→55.4kg)
勝者:那須川天心 / TKO 2R 0:26 / カウント中のレフェリーストップ / 主審 北尻俊介
「那須川天心は倒しに行って飛びヒザ蹴りでキッチリ仕留める、魅せる技を持った選手、今後、ヒジ打ち有ルールでどこまでできるか、タイのトップクラスにぶつけてもいい」と語る小野寺氏。宮元啓介を倒してしまうパンチと蹴りの速さとタイミングで次々と日本のトップクラスを撃破することに驚きですが、今後、5回戦ヒジ打ち有でも勝ち進めるか、また数々の好カード実現に期待が掛かります。

調子を上げる前に劣勢となった宮元啓介(右)、物怖じしない那須川は先手を打って一気に攻めた

◆59.5kg契約5回戦
WPMF世界スーパーフェザー級チャンピオン.町田光(橋本/28歳/59.4kg)
VS
森井洋介(ゴールデングローブ/27歳/58.7kg)
勝者:森井洋介 / TKO 4R 0:03 / 主審 大村勝己

町田のスネの裂傷で骨が見えるほどの深い傷、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ 頭部のカットもあってドクターチェックを受けるも、スネの方の深さに視線が行き難かった。

◆65.5kg契約5回戦
ザカリア・ゾウカリー(オランダ/21歳/65.1kg)vs 水落洋祐(はまっこムエタイ/31歳/65.5kg)
勝者:ザカリア・ゾウカリー / TKO 5R 2:28
頭部負傷によるドクター勧告を受入れレフェリーストップ / 主審 玉川英俊

◆62.5kg契約3回戦
大月晴明(元・全日本ライト級C/キックマスターズマスクマン/42歳/62.4kg)vs 前口太尊(RHOENIX/29歳/62.5kg)
勝者:前口太尊 / TKO 3R 0:47
ヒジでカットされた頭部負傷箇所の悪化でレフェリーストップ / 主審 小林利典

◆63.0kg契約3回戦
SHIGERU(元WPMF世界SFe級暫定C/31歳/新宿レフティー/63.0kg)vs セーンアーティット・ワイズディー(タイ/26歳/63.0kg)
勝者:セーンアーティット・ワイズディー / 0-2 (主審 大成敦 / 玉川 30-30. 小林 28-29. 大村 29-30)

◆63.0kg契約3回戦
佐藤琉(エイワスポーツ/34歳/63.0kg)vs 長谷川健(RIKIX/31歳/63.0kg)
引分け / 1-0 (主審 北尻俊介 / 大成 29-29. 小林 29-29. 玉川 30-29)

◆ウェルター級3回戦
KENGO(RIKIX/31歳/66.6kg)vs 遊佐隆介(チームサムライ/21歳/65.0kg)
引分け / 三者三様 (主審 大村勝己 / 北尻 29-29. 小林 30-29. 大成 29-30)

◆58.0kg契約3回戦
立嶋篤史(元・全日本フェザー級C/44歳/58.0kg)vs 藤野伸哉(RIKIX/19歳/57.8kg)
勝者:藤野伸哉 / 0-3 (主審 玉川英俊 / 北尻 29-30. 小林 28-30. 大成 28-29)

スピードと手数で優る藤野伸哉(右)、打たれモロいが、ジワジワ盛り返すしぶとさを誇る立嶋篤史(左)

◆解説者もアナウンサーも皆、素晴らしかった!

2年連続の解説者の石井宏樹と、いくつもの格闘技実況も長く、人気も上がっている市川勝也アナウンサー

全9試合、リングアナウンサーとして登場した一人目、三遊亭貴楽さんは1985年からリングアナウンサーを始めた方で、当時の日本キックボクシング連盟、MA日本キックボクシング連盟、全日本キックボクシング連盟、ニュージャパンキックボクシング連盟へ移りつつコールされてきています。当時現役だった伊原信一氏、斉藤京二氏をもコールしている古い方で、小野寺力氏がキックデビュー前からお気に入りだった貴楽リングアナウンサーでした。

二人目、ハリー杉山さんはフジテレビの「ノンストップ!」月曜~木曜担当の方。
セミファイナルとメインイベントを担当した福沢朗さんは説明するまでもない元・日本テレビアナウンサーの有名な方。多様なリングアナウンサーが揃ったNO KICK NO LIFEでした。

メインエベンターとプロモーターの主役2人、梅野源治(左)と小野寺力(右)

主な出場選手と賑やかに揃ったラウンドガール10人

◎NO KICK NO LIFE 2016 / 3月12日(土)大田区総合体育館17:05~21:00
主催:RIKIXジム
放送:「TOKYO MX 3月31日(木)24:00~24:30、4月7日(木)24:00~24:30」
「スカパー!サムライTV 3月24日(木)22:00~24:00」
前日公開計量:3月11日 品川区東大井 ムーヴアクション(株)19:00~19:40

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7