また分裂、新たな団体、ジャパンキックボクシング協会(JKA)が誕生!

キックボクシング50年の歴史は分裂の繰り返しでもありました。なぜ分裂は起こるのか、政治と同じような派閥組織の永遠のテーマであります。

21世紀に入り、新たに始まったのが団体に属さないフリーの興行プロモーターの多発。更に興行とは別の認定団体誕生。2013年にはMA日本キックボクシング連盟から脱退したジャパンキックボクシングイノベーションが誕生。

JKAロゴ

そして平成最後の年にまた分裂で令和元年初日に新しい団体が誕生。新日本キックボクシング協会から脱退したのが“ジャパンキックボクシング協会”という名の団体発足となりました。かつての日本キックボクシング協会の復興ではありません。本当はそうしたかっただろうとは推測できますが、そこには“老舗”を名乗れない事情があります。

キックボクシングの原点は1966年1月に設立された日本キックボクシング協会で、TBSの全国ネットによる隆盛、斜陽から氷河期を経て1984年11月に統合団体に吸収された後、1996年3月に、後のMA日本キックボクシング連盟から脱退し、日本キックボクシング協会が復興した原点回帰から始まるのが新日本キックボクシング協会とそこから分かれたジャパンキックボクシング協会のふたつの団体です。

新団体の代表となった長江國正氏は現役時代、藤原敏男や島三男、ビラチャート・ソンデン、ベニー・ユキーデといった名のある世界的トップと戦った元・全日本フェザー級チャンピオンで、WKA世界ライト級王座にも就きました。1984年に引退後、治政館を開設して2001年1月には武田幸三をタイ国ラジャダムナン系ウェルター級チャンピオンまで育て上げています。初めての団体代表となる長江國正氏が率いるジャパンキックボクシング協会の今後の活動は順風満帆か波乱万丈か、しっかり見ていきたいところです。

ジャパンキックボクシング協会代表となった長江國正氏

以下は、ジャパンキックボクシング協会広報部より発表されましたリリースです(4月16日配信)。

———————————————————————-

「このたび所属しておりました新日本キックボクシング協会と今後の方向性などの話し合いの結果、円満に退会することとなり新団体を発足する運びとなりました。
令和元年5月1日より『ジャパンキックボクシング協会』を設立し、同じく前団体から退会した有志のジムと新たに加盟するジムで団結し、5月12日(日)後楽園ホール大会でのプレ旗揚げ戦より活動をスタートしていきます。

日頃の皆様のお引き立てに心から感謝するとともに、何卒倍旧のご支援お引き立てを賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

ジャパンキックボクシング協会  
代表・長江國正  

 

5月12日開催KICK ORIGIN興行ポスター

団体名:ジャパンキックボクシング協会
(JAPAN KICKBOXING ASSOCIATION)
設立日:令和元年5月1日

執行部
代表・長江國正(治政館ジム会長)
副代表/統括本部長:小泉猛(市原ジム会長)
興行本部長:八木沼広政(ビクトリージム会長)
事務局長:鴇稔之(KICK BOX会長)

ジャパンキックボクシング協会事務局
〒144-0052 東京都大田区蒲田5-12-2バリアビルB1F

前団体で現役王者であり所属団体移籍の為、ベルトを返上した下記の両選手につきましては当協会におきましても初代王者に認定することが決定しました。

ジャパンキックボクシング協会フライ級チャンピオン.石川直樹(治政館)
ジャパンキックボクシング協会フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー)

またジャパンキックボクシング協会旗揚げ戦は8月4日(日)後楽園ホールに於いて、年内興行は11月(後日発表)を予定しております。

KICK-Origin / 5月12日(日)後楽園ホール17:00~
主催:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

石川直樹。王座は2016年10月23日、4R・TKO勝利で泰史(伊原)から奪取したのが原点

《予定カード》

第11試合 52.5kg契約 5回戦
JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館)
VS
儀部快斗(タイ国RAM100スタジアム114pondチャンピオン/エクシンディコンJAPAN)
第10試合 タイ国チェンマイスタジアム認定バンタム級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン.馬渡亮太(治政館)
VS
挑戦者同級1位.ペットモンコン・ソー・ジンジャルンカンチャン(タイ)

第9試合 フェザー級3回戦
瀧澤博人(元・日本バンタム級チャンピオン/ビクトリー)
VS
ニシャオ・ソー・ジンジャルンカンチャン(チェンマイスタジアム・フェザー級C/タイ)

第8試合 58.0kg契約3回戦
JKAフェザー級1位.皆川裕哉(KICK BOX)
VS
ペットワンチャイ・ラジャサクレックムエタイ/タイ)

第7試合 63.0kg契約3回戦
JKAライト級5位.興之介(治政館)vs MA日本ライト級2位.翼(菅原)

第6試合 54.0kg契約3回戦
JKAバンタム級3位.幸太(ビクトリー)vs NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館)

第5試合 フェザー級3回戦
JKAフェザー級2位.櫓木淳平(ビクトリー)vs 同級3位.渡辺航己(JMN)

第4試合 バンタム級3回戦
JKAバンタム級5位.田中亮平(市原)vs 同級6位翼(ビクトリー)

第3試合 ライト級3回戦
JKAライト級4位.林瑞紀(治政館)vsHARUKA(JMN)

第2試合 ウェルター級3回戦
モトヤスック(治政館)vs山本大地(誠真)

第1試合 フェザー級2回戦
又吉淳哉(市原)vs花塚ノリオ(E.D.O)

———————————————————————-

石原將伍。2017年10月22日、王座決定戦で高橋亨汰(伊原)にKO勝利したのが原点

《取材戦記》

チェンマイスタジアムタイトルマッチはどれほどの価値があるのでしょう。スタジアム毎に王座認定されていたらどれぐらいの数になるだろうかと思います。タイでもやたらチャンピオンが増えてきた印象を受けます。

新日本キックボクシング協会での日本フライ級チャンピオン、石川直樹と日本フェザー級チャンピオン、石原將伍は新団体に移っても初代チャンピオンに認定されるという。「選手に罪は無く、団体の都合だから」という解釈でしょうが、脱退において王座は返上されているので、本来は新団体で改めて王座決定戦を行なうべきものであるが、この解釈は理解されないでしょうね。ならば「初代チャンピオンは認定チャンピオン」で終わることなく、新日本キックで王座獲得した試合まで遡って経歴を残して認定して貰いたいものです。「誰と戦って王座獲得したのか」を言えなければなりません。

ジャパンキックボクシング協会はこれまでの団体とどんな違いを見せられるのか。この団体とは部外者の業界関係者の予想では、「おそらく加盟ジムが今迄以上に増えるだろう」と言うもの。そういう新団体への信頼も期待が掛かっているのでしょう。しかしすでに6団体が存在する中、大所帯となることは考え難いので、イベント盛り上げ重視ばかりに集中しないよう競技性を確立した一番の団体を目指して貰いたいところです。

プロボクシングのようにコミッションが機能すれば否応にも分裂など出来ないものですが、名前だけでないその機能するコミッションを確立できなかったのは「昭和の隆盛期に先を見据えなかった老舗の怠慢」という関係者もいます。分裂しまくった平成の時代を終えて、これから30年ほど続くと思われる令和時代の内に統一と国家ライセンスの下、運営が成立する業界となることを願いたいものです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

老舗の挑戦! 緑川創がWKBA世界王座獲得、新日本キックを率いる新エースとなるか! TITANS NEOS.25

今後この老舗王座をどう活かしていってくれるか。まずは“防衛してこそ真のチャンピオン”という目黒ジムの伝統を果たさねばならない。そして最終目標はムエタイ二大殿堂にあり。ラジャダムナンスタジアム再挑戦へ向けて、もう日本人相手には負けられない。

江幡睦は1月23日にリカルド・ブラボと共にラジャダムナンスタジアムで戦っているが、睦は判定負けを喫した様子(ブラボはKO勝ち)。「やはり現地で勝つことは難しいが、負けて教わることも沢山ある。ここから更に学んで這い上がろうと思う」と前向きな発言。

新日本キックvsREBELSの対抗戦は2勝2敗1分。HIROYUKIや重森陽太も熱望しているREBELSとの交流戦は次に繋がる好カードとなるか。

◎TITANS NEOS.25 / 4月14日(日)後楽園ホール 17:00~20:45
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会、WKBA

カウンターの右ストレートを打ち込む緑川創

◆第13試合 WKBA世界スーパーウェルター級王座決定戦 5回戦

緑川創(元・日本ウェルター級C/藤本/69.85kg)
   VS
ペットカントン・ポー・ペットシリー(タイ/69.25kg)

勝者:緑川創 / TKO 3R 2:31 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

ペットカントンは元・タイ南部クラビー県アーウナーンスタジアム・スーパーバンタム級チャンピオン。緑川創は先月の勝次同様、この壁を乗り越えなければ更なる上位は進めない。

相打ちはスリップ気味の緑川は立ち上がり、ペットカントンはノックダウンとなる

長身から来るペットカントンの蹴りが邪魔だが、パンチとローキックで様子見の緑川。第2ラウンドに緑川が相打ち気味に右ストレートでダウンを奪う。両者が崩れかかりダブルノックダウンかと思われたが、緑川はバランスを崩したもの。ペットカントンの蹴りを避け徐々に距離を詰める展開に持ち込み、第3ラウンドにはパンチのタイミングを掴んで勢いよく連打で仕留めた。

パンチが当たる距離を掴み打って出る緑川創
相手の出方を探りながら技を試し、KOへ繋げていく江幡睦

◆第12試合 54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/53.9kg)
   VS
グン・ハーブタイジョン(タイ/53.6kg)
勝者:江幡睦 / TKO 2R 2:33 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一

戦いながらの相手の分析、いつものようにローキックから様子を見てスピーディーな攻めを見せていく。そのローキックも徐々にダメージを与えていき、パンチへ繋ぐリズムを作っていく。

距離を詰めればラッシュしパンチ連打でダウンを奪い、更に左右ボディーブローで倒し、レフェリーが止めるTKOで仕留めた。

隙を見つけ、グンの蹴りに合わせて右ストレートを打つ江幡睦

◆第11試合 73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)
   VS
マキ・パンコーン(タイ/71.9kg)
勝者:斗吾 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-27. 桜井29-28. 少白竜29-27

パンチで前進する斗吾はヒジで切られる隙を見せてしまう危なさも併せ持つ。それでもパンチで出て行く圧力で、第2ラウンドにはダメージと疲れが見えるマキからダウン奪う斗吾だが、ヒジを思い切り振って出る技があるマキ。斗吾はロープに詰めボディブローも何度も炸裂するが心折れないマキを仕留めるに至らず判定勝利となった。

ヒジで切られる不覚はあったが、重いパンチで圧倒した斗吾

◆第10試合 54.5kg契約3回戦  

日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(藤本/54.45kg)
   VS
ジョムラーウィー・ペットノーンセーン(タイ/54.35kg)
勝者:HIROYUKI / TKO 3R 0:57 / ヒジによる目尻カットと鼻骨骨折によるレフェリーストップ
主審:仲俊光

ローキックで様子見から蹴りの攻防が増えていく中、ヒジ打ちの交錯から飛び蹴りを見せるジョムラーウィーに慌てることなく圧力掛けていくのはHIROYUKIの方。更に第2ラウンドにフェイントから飛び後ろ蹴りでノックダウンを奪うHIROYUKI。第3ラウンドにはヒジ打ちで額を切り、第1ラウンドにヒジを当てた鼻骨骨折の影響も含めてレフェリーストップに追い込んだHIROYUKIがTKO勝利。

HIROYUKIがジョムラーウィーを上回る攻めを見せて飛び技に繋ぐ

◆第9試合 64.0kg契約3回戦

WPMF日本スーパーライト級チャンピオン.藩隆成(クロスポイント吉祥寺/63.9kg)
   VS
ポーンパノム・イハラジム(タイ/63.75kg)
勝者:藩隆成 / 判定2-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-28. 宮沢29-29. 仲30-29

パンチとローキックで前進する藩隆成。下がり気味だが右ミドルキックが強いポーンパノム。その蹴りで藩隆成の左脇腹が赤く腫れていく。藩隆成のローキックが効果的に現れつつあるが、ポーンパノムは表情に表れない。藩隆成は手数が増え追う形が続き判定勝利を掴む。

ポーンパノムの右ミドルキックで藩隆成の右脇腹は赤く内出血するが、攻め続けたのは藩の方

◆第8試合 ライト級3回戦

重森陽太(前・日本Fe級C/伊原稲城/60.95kg)
   VS
ポンシャン・ブレイブジム(タイ/60.4kg)
勝者:重森陽太 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:少白竜30-26. 宮沢30-26. 桜井30-26

重森のスピードとしなりある蹴りがポンチャンを上回る攻勢を見せていく。第3ラウンドにパンチでノックダウンを奪うが、バランスを崩したタイミングもあり、ダメージは少ないポンシャン。

終始多彩に攻めてピッチを上げるが倒すには至らず不完全燃焼気味ながら大差判定勝利を収めた。

多彩に強い攻めを見せた重森陽太、飛び技が光った
差が付き難い展開の中、泰史の右ミドルキックがヒット

◆第7試合 スーパーフライ級3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/52.15kg)vs濱田巧(team AKATSUKI/52.15kg)
引分け 0-1 / 主審:仲俊光 / 副審:椎名29-29. 宮沢29-29. 桜井29-30

序盤は決定打が無い両者だったが、第3ラウンドは激しい展開へ移るも、それでもノックアウトに繋がるヒットは無く差が付かず引分けとなった。

◆第6試合 63.0kg契約3回戦

高橋亨汰(伊原/63.0kg)
   VS
日本ライト級6位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/63.0kg)
勝者:高橋亨汰 / 判定2-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-29. 宮沢30-29. 仲30-29.

◆第5試合 58.0kg契約3回戦

日本フェザー級2位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/57.9kg)vs拓也(チャクリキ武湧会/57.65kg)
勝者:瀬戸口勝也 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名30-26. 少白竜30-25. 仲30-26.

◆第4試合 73.0kg契約3回戦 

日本ミドル級2位.本田聖典(伊原新潟/73.0kg)vs中川達彦(打撃武道 我円/72.1kg)
勝者:本田聖典 / TKO 3R 0:08 / 有効打による瞼の腫れ、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:宮沢誠

◆第3試合 スーパーフライ級3回戦

日本フライ級2位.空龍(伊原新潟/51.7kg)vs響波(Y,s glow/51.7kg)
勝者:空龍 / 判定2-0 / 主審:椎名利一
副審:少白竜29-29. 桜井30-28. 宮沢30-29.

やや空龍が的確さが優るも、第3ラウンドの響波のパンチ攻勢で勝負に出て、空龍が鼻血を出すが巻き返すに至らず、空龍の僅差判定勝利。

若い戦い、スピーディーな展開の中、空龍が響波をハイキックで攻める

◆第2試合 ライト級 3回戦

日本ライト級10位.千久(伊原/61.0kg)vs大谷翔司(スクランブル渋谷/61.05kg)
勝者:大谷翔司 / KO 2R 2:59 / 3ノックダウン / 主審:仲俊光

大谷がパンチで連打していく中、2度のダウンを奪い、連打したところをレフェリーが止めた。

大谷が連打で千久を圧倒する
喜びのチャンピオンベルトを巻いた緑川創、引退まで手放してはいけない

◆第1試合 フェザー級3回戦

浦林幹(クロスポイント吉祥寺/57.15kg)vs瀬川琉(伊原稲城/57.1kg)
勝者:瀬川琉 / TKO 1R 2:00 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:少白竜

瀬川の左ストレートがまともに当たると浦林は足に来て立てないところをレフェリーが止めた。

《取材戦記》

平成最後の年に(前年も含め)幾つかの団体や興行プロモーションで異変があったキック界となりました。

今、新日本キックボクシング協会も設立以来の分裂が起こり、1月のWINNERS興行後に脱退するジムが多くあり、3月3日のMAGNUM.25興行からリングサイド役員席の顔触れ、マッチメイクに変化が現れました。しかしここから早期に建て直しを図るのが老舗の力。この新日本キック21年と昭和から続く経験値がこれからどう活かされてくるでしょうか。

緑川創は王座獲得となりましたが、斗吾もリカルド・ブラボもWKBA世界王座を目指す選手で、先月、取り逃がした勝次も再挑戦を狙っているでしょう。老舗王座を活かし、ここでも各階級毎に、8人での世界王座決定トーナメントでもあれば盛り上がるだろうというファンの声も聞かれます。

次回の新日本キックボクシング協会興行は、5月が抜けて7月7日(日)に後楽園ホールに於いて、MAGNUM.50が開催されます。

藤本会長と伊原代表に囲まれてWKBA世界のベルトを巻く緑川創

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を!『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」

8人によるミドル級トーナメントは西村清吾が23秒で倒される大波乱!

トーナメントの本命が初戦早々に、わずか23秒で消え去るとは意外な結末でも、これが真剣勝負の怖さ。勝ち上がった4名は次なる準々決勝に期待が膨らむ盛り上がりを見せました。これで日本一を決めるには、まだ至らないメンバーと言えますが、今後、他団体で、各階級で、新たなメンバーで「KNOCK OUTイベント」以外でも出来るトーナメントが増えていくことでしょう。

◎出陣シリーズvol.2 / 4月13日(日)後楽園ホール17:15~20:50
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

相打ちのジャブで櫻木も踏ん張る
ムエタイ技が優った村田のヒザ蹴り

◆第13試合 59.0kg契約 5回戦

JKイノベーション・フェザー級1位.櫻木崇浩(前・C/武勇会/32歳/58.85kg)
   VS
NKBフェザー級2位.村田裕俊(元・C/八王子FSG/29歳/59.0kg)
勝者:村田裕俊 / 判定0-3 / 主審:前田仁
副審:鈴木47-50. 川上46-50. 佐藤友章46-50

5連敗中同士と言われる珍しいメインイベントはキックだから起こり得るマッチメイクだろう。パンチと蹴りの正攻法で出る櫻木に対し、長身の村田はやや離れた距離からの左ストレート、ミドルキックが効果的にヒット、距離が詰まればムエタイ技があり、首相撲に持ち込んでの崩しやヒザ蹴り。村田が主導権を握ったまま最終ラウンドにはパンチの連打でノックダウンを奪い、更に攻勢を続け判定勝利に導いた。

村田の迎え撃ちのヒザ蹴りがヒット、復活の手応え有りか
小原の左ヒジ打ちがヒットした直後

◆第12試合 PRIMA GOLD杯 ミドル級トーナメント準々決勝 3回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM-KOK/40歳/72.45kg)
   VS
J-NETWORKミドル級3位.小原俊之(キングムエ/34歳/72.3kg)
勝者:小原俊之 / KO 1R 0:23 / テンカウント / 主審:亀川明史

開始早々の探り合いに西村はパンチから入ろうとした瞬間、小原の左ヒジ打ちが西村のアゴに強烈にヒットし、西村はあっけなくノックダウン。

すぐ立ち上がろうとするもフラついて、マットに手を付きながら立ち上がって赤コーナーに帰って呼吸を整えるも、レフェリーに背を向けたまま。カウント8でファイティングポーズをとらないとカウントアウトされる可能性が高いが、西村はそんな意識は働かなかっただろうか。或いは目が虚ろだったか、亀川レフェリーはテンカウントを数える。

「まだ戦える」と抗議する西村だが、裁定が覆ることはなく、あっけない幕切れとなった。小原俊之は6月15日の準決勝で清水武と対戦。

西村が呆気なく倒れる
西村は「まだ戦える」とアピールするも叶わず
右ストレートでダウンを奪った今野

◆第11試合 PRIMA GOLD杯 ミドル級トーナメント準々決勝 3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/35歳/72.35kg)
   VS
井原浩之(前・MA日本ミドル級C/ Studio-K/35歳/72.4kg)
勝者:今野顕彰 / 判定3-0 / 主審:鈴木義和
副審:馳29-28. 前田30-28. 亀川29-28

距離を詰める井原と離れてボディブローを狙って打つ今野。第2ラウンドには今野がヒジ打ちで井原の額をカットすると距離が縮まり、井原が右ローキックに来たところに右ストレートでノックダウンを奪う。第3ラウンドは逆転を狙う猛攻の井原を凌ぎきった今野が判定勝利。

今野顕彰は6月15日、準決勝で田村聖と対戦。

離れた距離での今野のハイキック

◆第10試合 63.0kg契約3回戦
大月晴明(元・全日本ライト級C/マスクマンズ/45歳/62.6kg)
   VS
NKBライト級4位.野村怜央(TEAM-KOK/29歳/62.7kg)
勝者:大月晴明 / 判定3-0 / 主審:川上伸
副審:佐藤友章30-27. 亀川30-27. 佐藤彰彦30-28

KOを量産した爆腕をけん制する構えの大月。離れたところからでも打って出る大月のパンチに野村は蹴りの距離を保ち、蹴りからパンチでの応戦でヒットも見せる健闘ぶり。野村の踏ん張りに、爆腕での豪快ノックアウトは難しい展開となった大月はそれでも圧倒した展開で判定勝利を掴んだ。

大月の爆腕ようやくヒット

◆第9試合 62.0kg契約 3回戦
 
J-NETWORKライト級チャンピオン.まさきラジャサクレック(ラジャサクレック/33歳/62.0kg)
   VS
NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/31歳/61.75kg)
勝者:棚橋賢二郎 / 判定0-3 / 主審:馳大輔
副審:亀川28-29. 前田28-29. 鈴木28-29

棚橋も強打を武器とするスタイルだが、まさきのムエタイスタイルにヒットし難い展開となるも、第2ラウンド終盤に棚橋が軽いヒットながらパンチでダウンを奪った優勢点で何とか判定勝利に導いた。

棚橋の勝利を導く右フックがヒット
倒しに掛かる田村の右フックがヒット

◆第8試合 PRIMA GOLD杯 ミドル級トーナメント準々決勝 3回戦

NKBミドル級1位.田村聖(拳心館/30歳/72.45kg)
   VS
J-NETWORKミドル級1位.吉野健太郎(前C/TEAM COMRADE/44歳/71.75kg)
勝者:田村聖 / KO 3R 2:27 / カウント中のタオル投入 / 主審:佐藤彰彦

田村はパンチの強さで圧倒する試合が増えたが、序盤は吉野との距離感が掴み難いのか、ヒットし難い展開となった。いきなり吉野のパンチを不用意に貰ったり、もたもたする流れだが、最終第3ラウンドには田村が組み合った中での蹴りからパンチ連打に繋ぎ、豪快なパンチがようやくヒットし、ノックアウト健在ぶりを発揮した。

ようやく豪快パンチがヒットし始めた田村聖
堪らず崩れ行く吉野
左ヒジ打ちに入る清水

◆第7試合 PRIMA GOLD杯 ミドル級トーナメント準々決勝 3回戦

清水武(元・WPMF日本SW級C/sbm TVT KICK LAB/31歳/72.57kg)
   VS
郷野聡寛(元・全日本ヘビー級C/ GRABAKA/44歳/72.4kg)
勝者:清水武 / TKO 3R 0:53 / ヒジ打ちによる顔面をカット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ / 主審:佐藤友章

距離をとり、ローキックと右ストレートでのボディー狙いの郷野。第2ラウンドに距離詰めた清水の左ヒジ打ちで郷野がダウン。第3ラウンドにもコーナーに詰めたところで左ヒジ打ちで郷野の額を切り、レフェリーストップに導く。

タイミングを掴んだ清水がラッシュを掛ける
パックリ切れた郷野の額、宅急便の仕事に響かなければいいが

当てさせない省エネスタイルだったか、相手のバランスを崩すテクニックの郷野の戦略は上手かったが、勝つには難しい攻めだった。

◆第6試合 ウェルター級3回戦 

笹谷淳(TEAM COMRADE/66.68kg)vs宮城寛克(赤雲會/66.55kg)
引分け0-1 / 主審:亀川明史
副審:佐藤彰彦29-30. 佐藤友章30-30. 川上伸29-29

◆第5試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館/53.3kg)vs志門(テツ/53.25kg)
勝者:海老原竜二 / 負傷判定2-0 / TD 3R 2:20 / 主審:鈴木義和
副審:馳29-28. 川上28-28. 前田29-27

◆第4試合 バンタム級3回戦

古瀬翔(ケーアクティブ/53.52kg)vsノーマーシー・カズ(テツ/53.0kg)
勝者:古瀬翔 / KO 1R 2:45 / 3ノックダウン / 主審:佐藤彰彦

◆第3試合 63.5kg契約3回戦

洋介(渡邉/63.4kg)vs野崎元気(誠真/63.5kg)
勝者:野崎元気 / KO 1R 1:56 / 3ノックダウン / 主審:馳大輔

◆第2試合 58.5kg契約3回戦

山本太一(ケーアクティブ/58.5kg)vs将栄(Team ImmortaL/58.3kg)v
勝者:山本太一 / KO 2R 1:05 / テンカウント / 主審:佐藤友章

◆第1試合 ウェルター級3回戦

たいすけ(ケーアクティブ/65.95kg)vsDAIKI(渡邉/66.25kg)
勝者:DAIKI / KO 1R 2:00 / 3ノックダウン / 主審:前田仁

《取材戦記》

この日行なわれた第5試合で負傷判定が下されました。第1、第2ラウンドで海老原竜二のローキックで志門がローブロー(股間への打撃)を受け、そのダメージで中断されること2回目で注意勧告が海老原に与えられ、その後第3ラウンドに、海老原のローキックで志門がノックダウンと裁定されるその直後の3度目のローブローで、試合続行不可能となった為、海老原に減点1を与えて負傷判定へ。故意ではないとはいえ、3度のローブローが“偶然のヒット”と言えるかどうかも議題のひとつ。
この試合を観戦していた別団体のレフェリーと、翌日のTITANS興行で話し合ったところ、「私だったらこうします」とまた別の裁定手段(選択2)を述べられましたが、この試合の裁定に関し、3つの裁定が下される選択肢があると考えられました。

1.海老原の失格で志門の反則勝ち。
2.再開できない志門はレフェリーストップ、海老原のTKO勝ち。
3.偶発的負傷として出された結果どおり海老原の負傷判定勝利。

賛否両論があって当然で、負けにされた方は怒り心頭でしょうが、これが試合成立したいずれかの結果となり、レフェリーによって裁定判断は変わると考えられるでしょう。

一昔前は団体によってはレフェリー養成が進んでおらず、収拾つけられず、“困った時のノーコンテスト”と見られる傾向がありましたが、何らかの裁定が下せるようになったのはこの競技の進化でしょう。

PRIMA GOLD杯トーナメントに限らず、試合はまたどんなアクシデントに襲われるか分かりません。今後のトーナメントも難しい裁定となっても対処が長引くことなく下されることでしょう。

次回興行は6月15日(土)に準決勝戦2試合を中心に行なわれます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」

キックのレジェンド、またも藤原敏男祭り!

 

◆昨年の古希祭りに続き、今年も藤原敏男祭りが開催!

普段は仲がいいはず?の二人 藤原敏男氏と増沢潔氏(右)

3月17日、格闘技マスコミのレジェンド、舟木昭太郎さん(元・月刊ゴング編集長)主催のトークショーにて、今回は当時の全日本ライト級チャンピオン.藤原敏男を窮地に追い詰めた山田ジム勢とのトークショーを中心に開催されました。

メンバーが揃ったところで増沢潔さんが「元選手が煙草なんか吸いなさんな!」と藤原敏男さんが吸っていた煙草を取り上げて火を揉み消してしまう意地悪。

「“元選手”だから吸ってもいいんじゃないの?」と返す藤原さん。今日もやり合う雰囲気が漂うパフォーマンスの序章。

キックボクシング隆盛期に起きた山田ジムとの戦い。

古き仲間から、日本で最初のムエタイジムと言われる山田ジムは、当時、会長がタイ国大使館職員の山田正さん。1969年(昭和44年)にNETテレビ(現・テレビ朝日)で放映されていた、「ワールドキックボクシング」に加わり、勢力を伸ばていきました。この局での放送はわずか1年で打ち切られるも、すぐに全日本系に移り、二大勢力の目白ジム、協同ジムに迫る存在となりました。

1971年11月5日、全日本キックの初代王座決定戦で8階級のチャンピオンが誕生。そのうちの2階級で山田ジム勢が制し、ウェルター級で錦利弘(協同)を1ラウンドKOしたのが増沢潔氏でした。2度就いた王座は陥落したものの、1974年3月9日、全日本ライト級チャンピオン.藤原敏男(目白)とのノンタイトル戦が実現。

初回に増沢が左ハイキックを決めるも、第2ラウンド以降は藤原がペースを握り、最終ラウンドに前蹴りと右アッパーでの2度のダウンを奪って判定勝利した藤原でしたが、増沢のハイキックで、前歯を折られた試合でした。

藤原敏男35歳、現役最後の姿

◆戦いの感想は笑いに包まれるジョーク絡み!

増沢潔 「作戦というのは全然無くて、勝つか負けるかというだけですから、自分の中では1ラウンドから倒すという意識を持って、“当たれば倒れる”って思って行きました。自分は67戦やったけれども、倒せるときに倒しに行っている試合ばかりで、1ラウンドKOが多かったので、パンチ以上に蹴りも強いと思っていたんだけど、足が短くて当たらなかった。それがいちばん親を恨みます(笑)!次やったら勝てると思いますが、どうでしょうか!?」

藤原敏男 「格闘技に“次やったら勝てる”という言葉は無いよ!、あと“1ラウンドあったら勝てた”とか言う奴居るけどさあ。増沢の蹴りは当たれば倒れたかもしれなかったけど、当てさせなかったから俺は。頭良いんだよね俺!酒飲まなかったから現役中は(周囲失笑)!、でもロープに詰まって反動で返ったときに、まさかそこで増沢のその短い足は届かないと思ったから、蹴りをアゴに貰って前歯全部10本折られたよ。差し歯は1本50万円で全部で500万円だね。まだ(お金)貰ってないんだよ(笑)!」と理不尽な請求。

昨年も周囲を笑わす舌戦やっていたが、戦いが縁を深めた本当に仲がいい二人である。

初代チャンピオン(1971年)となったパネルを持つ増沢潔(2018.10.7撮影)

◆藤原敏男vs佐藤正信戦!

1975年(昭和50年)5月31日、藤原敏男の全日本ライト級王座4度目の防衛戦となった佐藤正信との対戦。第2ラウンドに藤原のヒジ打ちが佐藤の左目上を切ると、焦った佐藤は猛然と藤原に襲い掛かったが、パンチと蹴りで出て来る佐藤を見切って藤原は自分の距離を保つ素早いスウェーとフットワークで佐藤にパンチを当てさせず判定勝利。

佐藤正信 「パンチが全く当たらなくて、試合終わった直後に悔しくてグローブはめたまま思いっきりマットを叩きましたよ、“クソーッ”って!」

敗れた佐藤は後にウェルター級に上げ、1976年7月9日、沢野正典(渡辺)を倒しチャンピオンとなるが、藤原敏男を倒せなかったから階級アップしたようなものと振り返る。

昨年の因縁の再戦はジャンケンで勝っていた藤原さん(2018.10.7撮影)
藤原敏男71歳、脚は悪くなったが、弟子達の試合には今も出向く

◆敗れ去った3名と移り行く時代!

その同日7月9日、藤原敏男の土谷亮(山田)との5度目の防衛戦は、今度は土谷のヒジ打ちで藤原が額を切られるも、これで怒りの猛攻でこの切られたヒジ打ち以外は当てさせず、土谷を第3ラウンド終了TKOに下す。これで隆盛期の全日本キックボクシング協会の時代に、打倒藤原敏男に立ち向かった山田ジム勢3名は善戦虚しく敗れ去ったのだった。

その後、佐藤正信は、タイで藤原敏男と激闘を展開して判定勝利したルンピニースタジアム・ライト級チャンピオン.シリモンコン・ルークシリパット(タイ)に1977年(昭和52年)元旦に面目躍如のKO勝利、周囲を驚かせる快挙を果たしました。
名チャンピオンが揃う時代でしたが、この1976年3月で日本テレビが放映を打ち切っており、次第に斜陽期に移っていったキックボクシング界。向上する選手の実力とは正反対に、競技運営のマンネリ化がキックブーム終焉を導き、1979年の東京12チャンネルに続き、翌1980年、日本系もTBSが放送打ち切りへ続き、キックボクシング氷河期へ突入する時代でした。

昭和の良き時代の名勝負を語らせればまだまだ出て来るレジェンド達の話題。次回の舟木昭太郎さんのトークショーは4月20日(日)に目黒ジム同窓会を開催予定。長らく行方不明(冗談!)だった元・東洋ウェルター級チャンピオン.富山勝治さん御来場。藤原敏男さんとの37年ぶりの対面なるか。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

最新月刊『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」

TITANS NEOS開催に向けての興行アピール、記者会見開催!

メインクラスが並んだ光景
新日本キック伊原信一代表が選手のコメントを聴いた感想を語る

4月14日(日)に後楽園ホールに於いて開催予定のTITANS NEOS.25は、キックボクシング老舗の世界タイトル、WKBA認定の世界スーパーウェルター級王座決定戦と、日本vs タイ国際戦、新日本キックボクシング協会とREBELSプロモーションによる5対5対抗戦が開催。

3月22日(金)に伊原ジムにて行なわれた記者会見で、選手や新日本キック伊原代表とREBELS山口元気代表がイベントに向けた意気込みを語りました。

新日本キックボクシング協会・伊原信一代表は、「一人一人のコメント聴いていたら各選手ともすばらしいコメントをしている。普段一生懸命、目標を持って力強く頑張ろうという精神が表れていると思います。選手自身が“しっかりやり遂げた”と思えば、必ずいい結果が付いてくると思います。対抗戦は5戦5勝と言っては山口代表に怒られそうですが(笑)、3勝2敗ぐらいでいけるんじゃないかと思っています。」と控えめな語り。

REBELS山口元気代表はイベントに向けた意気込みを語る

REBELS山口元気代表は、「選手のモチベーションが普段の試合より上がっているし、選手らにとって今後の起爆剤となる切っ掛けになればいいと思います。対抗戦なので、勝ちに行かなきゃいけないんですが、せっかく普段上がらない新日本キックさんのリングに上がって、このREBELSの選手達の試合を見ることの無いお客さんの前で戦うので、本当にお客さんの記憶に残って、“あの選手いいな”と会場に熱を残してくれれば負けても何も言わない。それによって新日本キックさんにとっても良く、次にも繋がるし、“自分が何でそこで試合するのか”という自覚を持って向かう、それを期待しています。」と語る。

◎TITANS NEOS.25 / 4月14日(日)開場16:45 開始17:00

メインイベント出場の緑川創も笑顔がこぼれる

対戦予定カードと選手コメント(来場選手のみ)

◆第13試合 WKBA世界スーパーウェルター級王座決定戦 5回戦

緑川創(元・日本ウェルター級C/藤本)
   vs
ペットカントン・ポー・ペットシリー
(元・タイ南部クラビー県アーウナーンスタジアム・スーパーバンタム級チャンピオン/タイ)

緑川創「昨年、ラジャダムナンスタジアム王座や日本人対決で負けてしまって、どうしても獲りたかったベルトを獲れなかった訳ですけど、スーパーウェルター級でキック人生最終章の始まりにしたいと思います。」

江幡睦はいつもながらのハキハキしたコメント

◆第12試合 54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原)vs グン・ハーブタイジョン(タイ国スラタニー県バンタム級チャンピオン/タイ)

江幡睦「僕らの夢であるラジャダムナンスタジアムのベルトを獲る為に、今回も強敵相手を用意して頂きました。僕はこの試合に圧倒的、そして“倒しに行くキックボクシング”でムエタイに勝つことを目標にしています。キックボクシング50年の歴史でムエタイ500年の歴史を打ち破る。これに僕は夢があると思っています。新日本キックの看板を背負って倒しに行きます。そして今、いろいろな団体のキックボクシングが有名になり、盛り上がっています。トップに立っていればトップ同士、必ず交わる時が来ると思います。僕はこの新日本キックでトップに居続ける。それがキックボクシングが盛り上がるポイントになると思っています。」

斗吾は緊張感あるコメントで控えめ

◆第11試合 73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原)
   vs
プーパンレック・クラミツムエタイジム(タイ)

斗吾「伊原会長には結構指導して頂いたので、また違った斗吾を見せたい。前回(3月3日)のあの悔しいドローが無かったら、今の更なる成長は無かったと言われるような試合をしたいと思います。」

◆第10試合 バンタム級超3回戦  

日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(藤本)vs 未定

HIROYUKI「まだ対戦相手が決まっていませんが(3月22日時点)、強豪タイ選手ということで、過去3戦2勝で強豪タイ選手にも勝っているので問題ないと思います。本当は団体対抗戦に出たかったです。バンタム級からスーパーフライ級、フライ級でも構わないので、山口代表、もしREBELSにマッチメイクできる選手居たら宜しくお願い致します。」

◆第9試合 新日本vs REBELS 64.0kg契約3回戦

ポーンパノムvs藩隆成の対峙

WPMF日本スーパーライト級チャンピオン.藩隆成(クロスポイント吉祥寺)
   vs
ポーンパノム・ペットプームムエタイ(新日本側枠出場/プーケット県バトンスタジアム・ウェルター級チャンピオン/伊原/タイ)

藩隆成「ポーンパノムはタイでのベルトも持っていてテクニックもあると思いますが、僕はそのテクニックで勝負していきたい。」

ポーンパノム「一生懸命練習していますし、必ず勝てると思います。日本で試合したことはありますし、特に恐れる必要は無いと思います。」

重森陽太もパネル相手と対峙

◆第8試合 ライト級3回戦

重森陽太(前・日本フェザー級C/伊原稲城)vs ポンシャン(タイ)

重森陽太「新日本キックボクシングが目標にしているラジャダムナンスタジアムのベルトに少しでも近づけるように強いタイ選手に勝っていくことが必要になるので、ムエタイのテクニックでもポイントの取り合いでも勝てる試合をしつつ、勿論キックをやっていく上で、観ているお客さんはノックアウト勝ちを見たいと思うので、しっかりノックアウトも狙っていきたいです。」

泰史vs濱田巧の対峙

◆第7試合 新日本vs REBELS スーパーフライ級3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原)vs 濱田巧(team AKATSUKI)

泰史「両団体の熱い思いをぶつけて魅せる試合をしたい。相手の印象は特にありませんが、自分は同じ階級でもパワーがあるので、それを見せつけてしっかり倒して勝ちたい」

濱田巧「相手の印象は元チャンピオンで、いろんな経験してきた選手なので、今の自分がどのレベルか確かめられるので精いっぱいがんばりたい。」

◆第6試合 63.0kg契約3回戦

高橋亨汰(伊原)vs 日本ライト級6位.ジョニー・オリベイラ(トーエル)

◆第5試合 58.0kg契約3回戦

日本フェザー級2位.瀬戸口勝也(横須賀太賀)vs 拓也(チャクリキ武湧会)

◆第4試合 73.0kg契約3回戦 

日本ミドル級2位.本田聖典(伊原新潟)vs 未定

◆第3試合 新日本 vs REBELS スーパーフライ級3回戦

日本フライ級2位.空龍(伊原新潟)vs 響波(Y,s glow)

響波「今回の対抗戦は自分だけの戦いではないので頑張りたい、自分はスーパーフライ級で178cmあるので長身を活かしたいと思います。」

瀬川琉vs浦林幹の対峙

◆第2試合 新日本 vs REBELS ライト級 3回戦

日本ライト級10位.千久(伊原)vs 大谷翔司(スクランブル渋谷)

大谷翔司「対抗戦ということで負けられない試合であるということと、ガンガン前に出て今迄と違う自分を見せられたらなと思います。」

◆第1試合 新日本 vs REBELS フェザー級3回戦

瀬川琉(伊原稲城)vs 浦林幹(クロスポイント吉祥寺)

瀬川琉「自分のやってきたことが正しかったと証明できるように結果を残したいと思います。」

浦林幹「今回対抗戦で先鋒としていい試合して盛り上げて次の試合に繋げられるよう頑張っていきます。」

代表、選手来場者による集合写真
まだ来日できない対戦相手のパネルと対峙する緑川創

《取材戦記》

代表、選手各コメントはやや省略しています。

記者会見が行なわれた伊原ジムは、行ったことある人しか分からないと思いますが、いつもの練習場のある地下1階ではなく、ガラス張りの地上1階フロアーで行なわれました。キックボクシングの練習場というより、照明も明るくダンスフロアーのような、広くキレイなスペースでした。

1983年(昭和58年)に設立した新日本キックボクシング協会は、諸々の経緯を経て、1998年(平成10年)に復興し、今年22年目で内部紛争の最大の危機にある中、培った総力を結集し、建て直しを素早く試練を乗り越えようとしています。

プロボクシングの世界戦に関わるイベントアピールはテレビやスポーツ新聞での賑わいに比べ、なかなか一般の方の目に留まること少ないキックボクシングのイベントアピールは、このような各団体興行やフリーの興行などでも、以前より頻繁に行なわれて、懸命に興行に繋げているキックボクシング界です。ただ、世界戦以外でアピールされること少ないプロボクシングに比べ、キックボクシングのイベントアピールはかなり浸透し、慣れてきた印象も受けます。

今回、緑川創のWKBA世界戦は先月のライト級の勝次(藤本)に続いての王座決定戦。御本人には「どんな手を使ってでも勝ってください。引分けにだけはなってくれんなよ!」と伝えました。延長の無い、競技として真っ当な決着を願いたい。

4月20日はその勝次がREBELS興行に於いて、63.0kg契約5回戦でNJKFの宮越慶二郎(拳粋会)と対戦予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈57〉タイで三日坊主!Part.49 再びノンカイを歩く

私と一緒にメコン河を眺めるオジサンと若者の比丘二人
クティでテレビを見ている、人懐っこいネーン達

◆再びワット・ミーチャイ・ターの門を潜る

再出家の望みを絶たれ、カメラマンとしての撮影でもなく、横浜の友達の実家があるブンカーンに行くことも含め、貧乏旅行者として、もう一度行きたかったノンカイの寺に着いた。ここからは単なる旅日記である。

門を潜ったところで、私をチラッと見た一人の比丘がそのままクティに入って行った。過去に比丘として来た者が還俗してここに立っているとは思わなかったのだろう。サーラー(講堂・葬儀場)の方では朝食が終わる頃か、読経が聞こえて来た。

先程の比丘がまたすぐ出て来たと思ったら、私を思い出してくれたようで、「オオ、還俗したのか、今着いたのか!」と笑顔で問い掛けてくれて、「もうすぐ皆が戻って来るからちょっと待っていてくれ」と言われ、やがて読経が終わると皆が戻って来た。

プラマート和尚さんも石橋正次似のスアさんも一瞬の間(ま)を置いて私に気付き、笑顔になった。私はワイ(合掌)を繰り返し挨拶するのみ。

船着場から上ってくるトゥン和尚さん達

そしてプラマート和尚さんが「二階へ上がれ!」と私を招き入れてくれた。以前、本堂で仏陀像と撮ったプラマート和尚さんの四ツ切ほどに伸ばしたパネルを渡すとじっくり見つめ喜んでくれて、「暫く泊まっていけ!」と言って頂き、“そう言って欲しかったよ”と心で呟きながら感謝。お言葉に甘えてここに泊めて貰おう。

プラマート和尚さんから2月初めにあった寺の祭りの写真を見せてくれた。信者さんが撮ったようだが上手い撮り方だ。比丘が歩く列の中に藤川さんも澄ました顔で写っていて、順調そうな旅の途中であることが伺える。

◆もう一方のトゥン寺にも立寄る

以前、ネイトさんが剃髪した腰掛け台に寝転んでいると、カメラ持ったままウトウト眠ってしまい、10分ほどで目覚めるとすぐ横には小さいネーン達が座っていた。

この何でもなさそうな砂利道は茨の道

「還俗したの? このカメラ幾らしたの? 覗いていい?」と人懐っこく、興味津々に我も我もとカメラに群がる。落としやしないかとヒヤヒヤだ。以前、私が比丘で居た頃は懐いていなかった彼らが今、何かと話し掛けてくる。俗人となった私の方が近づき易いのだろうか。純粋な彼らは可愛いもんだった。

更にメコン河を眺めていると土手下の船着場に船が到着。ここに船が着くのは初めて見たなあ。地元住民の乗客に混じり3名の比丘が階段を上って来たと思ったら、お隣のワット・ミーチャイ・トゥンの比丘達で、トゥン和尚さんも居た。目が合って間(ま)を置いて笑顔になり、「オオ、キミか! 元気か?」と覚えていてくれたようで嬉しい。

後から追いかけ、托鉢の帰り道に歩いたワット・ミーチャイ・トゥンへの痛い路地にも向かってみた。裸足で少し歩いてみよう。「ア痛タッタタタタッ痛!」やっぱり歩けない。5歩で諦めた。ペッブリーの痛かった路地でも藤川さんが、「スパンブリーの寺なんかに行ったらこんな道ばっかりで托鉢は一列で速歩きやぞ、一人だけノロノロ歩きなんか出来へんぞ!」と言われたが、やっぱり修行の足りなさを実感する。この砂利は茨の道だ。

境内に入ると幾人かの比丘が、しゃがんで井戸端会議をしていた。私が近づいて行くと、「誰だ?こいつは!」といった警戒の顔つきからやがて思い出し、笑顔に変わった。やっぱりこの間が面白い。「覚えてる?」と聞くと皆が「覚えてるよ!」と社交辞令的だが、笑顔が本音を語っている。クティに戻っていた先程のトゥン和尚さんに、以前撮った写真を渡すとやっぱり喜んでくれた。撮られる機会が少ないのだ。和尚さんが見終わるのを待って、皆が寄って集る。比丘も一般人もムエタイボクサーも本能のままの動きは同じ。皆に喜ばれて嬉しい。

ミーチャイ・トゥン側の比丘達を撮る

◆朝の読経と托鉢を見つめる

泊めて貰ったミーチャイ・ター側のプラマート和尚さんの部屋で、翌朝は4時前に目が覚めた。お互い様ながら、鼾が煩かったプラマート和尚さんも起きると早速、外の鐘を鳴らしに行った。「カランカランカラン・・・」と十秒ぐらい静寂な早朝の境内に響き渡る。これで比丘やネーン達の一日が始まる。

以前、藤川さんは私とネイトさんに「朝、仏陀の前に行く時は顔洗ってから行けよ!」と忠告されたことがあった。仏陀像は銅などの建造物でしかないが、生きていた時代のお釈迦様に接する気持ちで毎朝、接しなければならないだろう。それは修行の身でなくても理解できるマナーだった。

やがて4時からその本堂で読経が始まる。前回来た時と同じ状況。プラマート和尚さんが座ってマイクを持つと、濁声でいきなり始まった。

本堂の内と外を見ていると眠そうなネーン達は毎度の小走りでやって来る姿が垣間見れた。例え遅刻しようが、こんな早朝から集まる習慣が仏教徒としての心を育んでいくのだろう。私はその様子が見える出入り口付近のある後方に座っていた。プラマート和尚さんが、私が今でも壇上に座っているのではないかと思ったか、途中振り返って私を見た。

「俗人が上がんねえよ、それぐらい分かるよ!」と小さく呟く。

40分ほどの読経が終わると退散。クティに戻るとプラマート和尚さんはまた眠ってしまった。

ネイトさんがペッブリーに来た時、「プラマート和尚さんは毛糸のパンツ穿いているんですよ!」と言っていたが、それは戒律違反でも、意外と羽目を外すお茶目な生活リズムで、普通の人間らしさがある和尚さんだとも思う。サボン(下衣)を捲ってやりたかったが、そんな大人げないこと出来ないので、パンツを穿いている姿は確認できなかった。

トゥン和尚さんを先頭に10名あまりの列となる
街中方面に向かうミーチャイ寺の托鉢。こんな列になって歩いた日々

6時になると今度は誰かが鳴らす鐘の音によって、黄衣を纏いバーツを持った比丘やネーンが門の辺りに集まりだした。

かつて私も加わった一列縦隊の托鉢。カメラを持って付き纏うが、皆の失礼にならないように遠慮が出てしまう。ミーチャイ・トゥン側からやって来る比丘の列にこちら側の比丘が加わり、ひたすら歩いて寄進を受け、帰りは雑談しながらの帰路。私も会話に加わりながら歩いていると、野良犬の中の一匹が道路を渡りきれずに車に撥ねられた。

車はブレーキを掛けたが、犬も立ち往生したところでバンパーにぶつかった後、車輪に轢かれ、そのまま車は行ってしまう。犬は立ち上がるも、苦しいのかパニックになって吠えながら車道を走り回っていると、反対車線から来たトゥクトゥクにブレーキが掛かることなくまた轢かれ、フラつきながら弱々しい吠え方となって草村へ消えて行った。

その後、生きているかは分からない。ペッブリーの寺に居た片足無い犬たちも、こうやって車に轢かれた犬なのだろう。人から見れば野良犬は下等動物扱いで皆、助ける気は無い。

残酷なシーンを見てしまったが、悪いことしても寺にタンブン(徳を積む)すればバープ(罪悪)は消えると思っているタイ人も多いから、野良犬たちの運命は今後も変らないだろう。

折り返し地点。至るところにこんな犬がいる
こちらはノンカイ駅方面に向かった托鉢御一行

◆旅の寄り道

翌日、前回は行けなかったブンカーンに向かうことにした。

タイに来た資金の一部を貸してくれた友達の家族に会って、日本での元気な様子を撮った写真を見せて安心させてやろうと思う。

プラマート和尚さんには行き先を伝えておき、ター・サデット市場の少し先にあるボー・コー・ソー・バスターミナルから、長距離バスが出ていることを教えて貰い、同じメコン河沿いのブンカーンへ向かった。

更にはビエンチャンへ繋がる旅となっていく。

サイバーツされるのは一握りのもち米御飯

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

衝撃月刊『紙の爆弾』4月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私の内なるタイとムエタイ〈56〉タイで三日坊主! Part.48 再びノンカイへ!

◆タイ滞在の最後に

ノンカイに行く予定は、せっかくだからラオスまで足を延ばすかもしれない。メコン河を挟むと向こう岸に行きたくなるような気がした。有効期限が残る現在のビザが勿体無いが、タイ滞在に必要なお金の工面が都合つく範囲で出来ることをやっておきたい。念の為、ラオスビザは申請しておいた。

ムエタイ関連の仕事があってノンカイ行きは3月初めとなった。今度は全くの一人旅。比丘だったら移動手段において大概のことは優遇されるが、立ち振る舞いに気をつけねばならない。俗人となってはすべて自由だが、何ごとも自力で乗り切らねばならない。今回はすでに一度訪れている土地ばかり。どうにもならない事態にはならないだろう。

再びノンカイにやって来た。ワット・ミーチャイ・ターの門
仏門に居た試合ブランクも問題無く勝利したグルークチャイ

◆グルークチャイの出家

出発前日にグルークチャイが「ハルキがまた出家するなら俺と一緒にナコーン・シータマラートでやるか」と言っていた。彼も近く出家するんだな。アナン奥さんにも「ハルキ、また出家したいならグルークチャイと一緒にやる?」と言われる。聞くところによると、グルークチャイが行く寺はタイ南部の彼らの出身地であるナコーン・シータマラートにある、戒律に厳格な少数派タマユットニカイ、私が行ったワット・タムケーウは庶民的で大多数派のマハーニカイで全く格式が違う。タマユットニカイの寺にヒベのような下品な奴はいないだろう。“ニカイ”とは“派”と捉える解釈が分かりやすい。

いずれも私がやる訳ないだろうと見切っての誘いだろう。得度式は本当に自力で問答に応えねばならない。そしておそらく、副住職か10パンサーを超える役職に着くベテラン比丘による面談がある。私は希望しても入れないだろう。人格品格語学力、とても太刀打ち出来ない。

以前、藤川さんが言っていた話に、
「タイ仏教は日本とは違った宗派があって、ひとつは森林派で原始仏教に近い形で、世俗との関係を出来るだけ避け、森に篭り、己の成仏の修行に励む所と、本当に仏教を学びたい僧の為、勉強に力を入れる寺がある。あとは我々が居るような街へ降りて来て、もっぱら日常の宗教活動を行なうだけの寺に分けられるんや。格式のある寺は、なかなか他所者を入れてくれんが、タイの仏教では日本と違ってどこで修行しようと一度出家してしまえば、どこの寺でも泊めてくれるし、修行させてくれるから自分の意志でどこでも行けばええ。その修行寺によっては、托鉢で受けた食材はバーツの中に全部空けて、混ぜて食べるところもある。修行僧は、その日の修行の為の命を保てばいいだけや。料理を味や目で楽しむといった贅沢は無視や。ワシらにしたら味が混ざって食えたもんじゃないはなあ」

剃った眉毛はまだ薄く、精悍な顔つきのグルークチャイ

格式高い寺には刑務所より厳しそうな環境もあるようだ。タマユットニカイにも格差はあると思うが、私ではこれらの厳しい寺には行きたくないと思ってしまう。今更ながら、アナンさん宅は格式高い一族であると感じ取れた。

その一族であるグルークチャイの出家は1週間ほどだったようだ。一日の様子を聞くと、朝4時に1時間程の読経があり、托鉢に向かい、朝食後9時に短めの読経と学習、昼食後は自由時間だが、夕方に掃除があり、終わってまた1時間弱の読経、更に就寝前の夜9時に短めの読経があるという。その内容は聞いただけでは把握できないが、私の居た寺とは厳しさが違う赴きである。グルークチャイは和尚さんから、雨季のパンサー明けまで務めるよう勧められたが、「試合があるので戻らねばなりません」と言って当初の予定どおり還俗したようだ。

帰って来たグルークチャイの頭髪は元々短髪だから、剃った後でも違和感は少ないが、眉毛が薄いことだけで怖い顔つきに見えた。試合が終わって数日後の出家。そして寺に居た約10日間に関係なく次の試合が組まれていた。彼ら殿堂スタジアムの第一線級選手は3週間から4週間の間隔で試合が組まれていたが、還俗後バンコクに戻って2週間後に試合。プロとしてのブランクは空かないのだった。

◆貧乏旅行者として

それに対して私の呑気な旅は、とりあえずカメラバッグを担いで出発。バーツと合体出来る大きめの頭陀袋は比丘にとっては便利な袋だったが、カメラバッグとしては不便だった。アナンさん宅を出て、ノンカイに到着するまでは仏門とは関係ない貧乏旅行者の旅である。

フアランポーン駅から乗った夜行列車は、やっぱり比丘の巡礼とは違う雰囲気。プレッシャーの無いのんびりした旅の中だった。向かいの席に若いスペイン人男性が座って「これからラオスやカンボジアを回って日本にも行く予定なんだけど、どこが面白いですか?」と問い掛けられた英語を何とか解読できたぐらいの苦労しかない。観光地を巡るだけなら感動の発見は少ないかもしれないな。私がタイに居て一般の観光客とは違った体験が出来たのは、当初からムエタイジムに長期滞在したこと。直接本音の選手や近隣住民と接する毎日だった。これは仏門でも同じだった。

このスペイン男性も日本のどこか田舎でホームスティでもして、農家や牧場の生活を体験すれば面白いと思うが、まず私は英語がほとんど出来ない。相手が日本語が出来るなら、藤川さんだったら次から次とお勧め話や勧められない話がドンドン出てくるだろう。今後も英語をしっかり勉強するとは思えない私ではあるが、言葉と社交性は大事だなあと思う。

終着、ノンカイ駅に朝7時20分に着いた。この日はなんとこの列車の窓越しまでトゥクトゥクの客引きがやって来た。スペイン人は「これからラオスに向かう」と言う。私は歩いて数分の寺に行くだけだからトゥクトゥクは無視する。でも運ちゃんらはとにかくしつこい。歩いて進むとトゥクトゥクの方から止まって問いかけてくる。「もうすぐそこの寺だ!」と何度言ったことか。前回着た時よりしつこいな。思えば前回は黄衣、今回はシャツとズボンだからこれが当たり前なのか。

再びノンカイ駅の最先端に立つ

◆反省を持ってワット・ミーチャイ・ターに向かう

ワット・ミーチャイ・トゥン側の看板とノンカイ駅最先端の路地入口

改めて思う、安易に出家などしてはいけなかった。「何も覚えなくていい」と言われても必要最低限の常識を知っていないと対応を間違え、寺に迷惑が掛かる。私の考えも甘かったが、導いてくれた藤川さんには感謝しなければならない。藤川さんに出会わなかったら、出家してノンカイにまで来ることはなかっただろう。寺で過ごす考え方が違っていたと思うが、このノンカイに来た時のようにもっと藤川さんとは笑い話がしたかったし、細かい注意をして欲しかった。

私の前に新たに日本人出家志願者が現れたら、私がやって欲しかったこと細かな指導をしてやりたいと思う。黄衣の纏い方、在家信者さんとの接し方、バスの乗り方、飛行機の乗り方、街で国歌吹奏に出くわした場合の対応、一人で食事しなければならない時、他所の寺に泊まりにお願いする時など、日常起こり得ることの対処法は教えておくべきだろう。

今回は比丘ではなく呑気な旅行者ながら、また寺に泊めて貰えるならば、プラマート和尚さんには今後のことも相談してみたい期待を持ってワット・ミーチャイ・ターの門を潜ることになる。

トゥクトゥクの客引きは相変わらず煩いが、乗る側は便利で助かる地元の足

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

衝撃最新刊!月刊『紙の爆弾』4月号!
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

勝次は老舗WKBA世界獲得成らず!

ノラシンの前蹴りは初回から厄介な存在だった
ダウンに結びついた勝次の連打

リング周りの本部席の顔触れがやや寂しくなった興行。今回のメインイベントは勝次がWKBA世界挑戦。他、原点が名門目黒ジムだった伊原ジム、藤本ジムを中心に、フリーのジムからの選手とタイ国からの選手を迎え撃った。

◎MAGNUM.49 / 2019年3月3日(日)後楽園ホール 17:00~20:10
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会、WKBA

◆WKBA世界ライト級王座決定戦 5回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/61.0kg)
   vs
ノラシン・シットムアンシー(元・パタヤ地区テーププラシットスタジアム60kg級C/タイ/60.75kg)
5R判定引分け / 副審:桜井48-48. 仲48-48. 少白竜49-48

第6ラウンド(延長戦)三者共9-10で公式記録上、ノラシンが勝者となり王座獲得。
主審:椎名利一

パンチを打ってもヒットを許さないノラシン

初回でのけん制し合った蹴り合いで、勝次の出方を見極めたノラシンは笑みを浮かべ、強いミドルキックと、前蹴りはジャブのように突き刺して来る。ノラシンの前蹴りは鬱陶しく、次第に勝次の出鼻を挫く勢いを増していく。

第3ラウンドには勝次は接近したパンチ連打がタイミングよく当たりノックダウンを奪うが、ノラシンのダメージは浅く、笑みを浮かべてすぐ立ち上がり、続くパンチの応酬ではKO必至かと盛り上がるが、ノラシンは同じ轍を踏まず、第4ラウンド以降もしつこい前蹴りと強いミドルキックで巻き返し、引分けに持ち込んだ。

延長戦も蹴りを当てつつノラリクラリと勝次のパンチをかわし空回りさせ、優勢を保ったノラシンがキック老舗の世界王座を捥ぎ取った。

「相手の技で効いたものは無かったが、前蹴りが厄介でなかなか入って行けなかった。」と語る勝次。相手が出て来るタイプで噛み合う展開だったが、倒すチャンスを手繰り寄せることは出来なかった。

ノラシンの右ハイキックを浅かったが貰ってしまった勝次
江幡塁が勢いあまってロープを飛び越えてしまう

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/55.85kg)
vs
アナージャック・シットゲーオプラユーン(元・タイ南部2階級制覇C/タイ/55.4kg)
勝者:江幡塁 / 判定3-0 / 主審:秋谷益朗
副審:椎名49-47. 仲50-46. 少白竜49-47

江幡塁はパンチとローキックを基本にスピードある様子見。いつもながらの技を試しながらKOパターンを練っていく。アナージャックは打撃をモロに受けず、芯をずらす柔軟さがあるのか、江幡のパンチを貰ってもダメージを負った表情にはならない。江幡塁は蹴りからパンチへ繋いだり、アナージャックの蹴りに合わせたパンチを狙うが、倒すに至らぬ展開が続くも大差となる判定勝利を掴む。

アナージャックのハイキックを間一髪かわす江幡塁
KO狙ってヒジ打ち繰り出す江幡塁
パワーとスピードで圧倒した江幡塁だったが、KOに至らなかった
蹴りに合わせた江幡塁の左ストレート

◆73.0kg契約 5回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.0kg)
   vs
プーパンレック・クラミツムエタイジム(タイ/72.15kg)
引分け0-1 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 仲29-29. 秋谷29-30

ロープ際まで下がって距離を保ち、追い詰めればクリンチして動きを止め、時間稼ぎするタイ選手は、やり難く決め手を欠く引分け。

下がるプーパンレックに斗吾が追って攻める
一段と逞しくなったリカルド・ブラボが圧倒する

◆67.5kg契約 5回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(伊原/67.2kg)
   vs
デンノンセン・エイワスポーツ(タイ/66.6kg)
勝者:リカルド・ブラボ / KO 2R 1:47 / テンカウント / 主審:少白竜

昨年10月、初黒星が付いてからタイ遠征を経て、より成長したリカルド・ブラボ、デンノンセンを圧倒。

◆女子51.0kg契約3回戦(2分制)

栞夏(トーエル/50.4kg)vs 高橋アリス(伊原/50.65kg)
勝者:高橋アリス / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:秋谷29-30. 桜井28-30. 少白竜29-30

Seventeenの専属モデルである高橋アリス選手がデビュー戦を判定勝利。

アリスの右ハイキックが栞夏にヒット
モデルのアリスさん、デビュー戦を飾る

◆71.0kg契約 5回戦

喜多村誠(元・日本ミドル級C/伊原新潟/70.6kg)vs 中川達彦(花鳥風月/70.1kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 1R 2:53 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆62.0kg契約3回戦

日本ライト級1位.内田雅之(藤本/61.45kg)vs 拓也(チャクリキ武湧会/61.6kg)
勝者:内田雅之 / KO 2R 1:54 / 3ノックダウン / 主審:秋谷益朗

◆61.5kg契約3回戦

WPMF日本ライト級チャンピオン.長谷川健(RIKIX/61.25kg)
   vs
高橋亨汰(伊原/61.35kg)
勝者:高橋亨汰 / TKO 2R 2:10 / ノーカウントのレフェリーストップ / 主審:桜井一秀

◆ライト級3回戦

渡邉涼介(伊原新潟/61.0kg)vs 北川哲也(スタージス新宿/60.55kg)
勝者:渡邉涼介 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

◆フライ級2回戦

小野拳太(藤本/50.6kg)vs 石渡悠真(P.K.センチャイ/50.5kg)
勝者:石渡悠真 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)

ノラシンがWKBAのベルトを巻かれてしまった

《取材戦記》

勝次は乗り越えなければならなかったWKBA世界戦の壁。1981年1月7日の老舗世界王座誕生の当初から、王座挑戦のチャンスを与えられながら敗れ去った日本人選手は多い。1996年に新妻聡(目黒)がヘクター・ペーナ(米国)に敗れ、雪辱を果たしてWKBA世界スーパーライト級チャンピオンとなったように、ノラシンに雪辱を果たして欲しい勝次である。

この試合のように王座決定戦やトーナメント戦、かつての昭和の時代の公式ルールでは、延長戦は上位進出を決めるもので、公式記録は“引分け”でした。延長戦で優勢を取った者が“勝者扱い”となります。しかし時代の流れとともに、「規定のラウンドと延長戦を含む公式戦」という考え方が定着してきたようです。

“勝者扱い”の言葉もややこしいかと思いますが、現在のプロボクシングの新人王トーナメント(4回戦)でも長年使われている用語です。JBCルールでは、規定のラウンドを超える延長戦は認められていないので、引分け(0-0、1-0、三者三様)と裁定したジャッジは優勢と見た選手を支持し、上位進出者を決めます。これが“勝者扱い”であって、公式記録は引分けとなります。

キックボクシングではイベント優先で、競技システムが軽視され、昔からある規定を知らない運営関係者が増え、延長戦を含む勝敗結果が公式記録となる団体がほとんどとなった現在です。

M-ONEなどでのWPMF日本王座決定戦の場合は、規定の5回戦で引分けだった場合、延長戦は無く、王座は空位のまま。次期再戦か、改めて別カードで王座決定戦が行なわれることになります。これは母体となるWPMFの管轄下にある為、規定のルールに従っているということでしょう。とにかく老舗のWKBAは権威を保たねばならない。発足当初の世界戦は10回戦でした。タイトル戦を見て、実際これはかなり無理があると思いましたが、飛鳥信也氏、新妻聡氏が挑戦した1990年代は7回戦でした。こういうチャンピオンシップラウンドがあってもいい世界レベルと思います。

新日本キックボクシング協会、次回興行は4月19日(日)に後楽園ホールに於いてTITANS NEOS.25が開催されます。WKBA世界スーパーウェルター級王座決定戦(5回戦)に、緑川創(藤本)が出場します。斗吾、喜多村誠、リカルド・ブラボも目指すWKBA世界タイトル、それは老舗の意地で簡単には獲らせてくれない試練の場を与えられます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき衝撃『紙の爆弾』4月号
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」

新体制のNJKFで二つの王座交代劇!

ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)は、本年より連盟役員が新体制となり、リング上で斉藤京二前理事長と坂上顕二新理事長の交代の御挨拶がありました。

1996年8月のNJKF設立時から10年務められた藤田真理事長の後を継ぎ、2007年から斉藤京二氏が12年間務められました。ここで斉藤氏は「若い力のある会長達に後を託し、更なるキック界の発展に力を注いで頂きたい」と、坂上顕二氏に第3代理事長として受け継がれています。

坂上顕二新理事長の御挨拶、左後方は斉藤京二前理事長

「NJKFの伝統を汚さぬ様、頑張って参ります」と応えられた坂上顕二理事長は、当初の就任発表でも「新しい時代の流れに取り残されないよう私を筆頭に、新執行部において頑張っていく所存です。新執行部においては、他団体のトーナメントをはじめ、タイトルマッチ等、連盟にプラスになる事はどんどん取り入れて、選手達の選択肢を連盟の規定に照らし合わせながら増やしていきたいと思っています。

また、藤田真理事長勇退以来実現していない連盟興行での賞金マッチなどの趣向を、新体制の執行部で考え、選手や連盟の試合を楽しみにして下さっているキックファンの皆様の為に実現していきたいと思っています。」と述べられています。

NJKFは他団体興行出場に寛大な団体で、選手にとって多様なイベント出場の機会が増えていました。今後も団体枠を越えた好カードが実現していくことでしょう。

プレゼンターとして葵拳士郎選手に勝利者トロフィーを授与したのはケニー・ベイレス(米国)さん。この日の立会人ではなく、26日に後楽園ホールで開催されるWBO世界ミニマム級タイトルマッチのレフェリーとして来日されていました。ラスベガスでのビッグマッチを裁く名レフェリーの一人です。

◎NJKF 2019. 1st / 2月24日(日)後楽園ホール 17:00~21:25
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ日本実行委員会、NJKF

◆第12試合 WBCムエタイ日本スーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

ローキックの後、右ストレートをヒットさせたT-98
前へ出る圧力が凄かったT-98のローキック

チャンピオン.YETI達朗(キング/69.7kg)
   VS
挑戦者.T-98(=今村卓也/元・ラジャダムナン系同級C/クロスポイント吉祥寺/69.75kg)
勝者:T-98が第5代チャンピオン / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:神谷48-50. 中山47-50. 和田47-50

YETI達朗は2018年2月25日、白神武央から判定2-0で王座奪取、同年12月2日、匡志YAMATOを1ラウンドTKOで下し初防衛。

2度目の防衛は成らずも、3ヶ月足らずでのT-98との防衛戦を迎えたと今回は興味深い戦いとなりました。

T-98が攻勢を続けた中の右ハイキック
WBCムエタイ実行委員の山根千抄氏と斉藤京二氏から認定されたT-98

YETI達朗の右ストレートやT-98のローキックが勝負の決め手となりそうな主導権争いの打ち合いは見られるも、KOに結びつく強烈なヒットは無く試合が進む。T-98は相手の持ち味を殺してしまう距離を詰めて出る圧力があり、徐々に勢い付いたT-98が第4ラウンドにはローキックから右ストレートをヒット、連打続けて攻勢を維持する。

終盤に首相撲になるとより苦しい表情を見せるYETI達朗。時折の右ストレートやヒジ打ちのヒットを見せるが、T-98は怯まず、リズムを崩さない安定した展開を見せた。

日本のトップクラスとの戦いが多く、ラジャダムナン王座にも就いた経験を持つT-98との経験値の差を見せ付けられたYETI達朗は「完敗です」と漏らした。T-98はWBCムエタイ日本タイトルに於いて2階級制覇。更なる上位、世界王座と二大殿堂制覇へ、ルンピニースタジアム王座も目指す。

「下がれ」と言っても圧力あるT-98を押さえるのは大変だった多賀谷レフェリー

◆第11試合 WBCムエタイ日本スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

ケニー・ベイレス氏、と宮川拳吾会長に囲まれて

チャンピオン.琢磨(東京町田金子/58.65kg)
   VS
挑戦者JKI同級C.葵拳士郎(マイウェイ/58.55kg)
勝者:葵拳士郎が第7代チャンピオン / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:神谷47-49. 多賀谷48-50. 和田48-50

琢磨は2017年11月26日、王座決定戦で浅川大立(東京町田金子)と対戦し獲得。
パンチとローキック主体のテンポの速い攻防が続く。中盤からやや前進気味の葵がヒットを増やしていく印象。大技となったバックハンドブローや飛び後ろ蹴りはブロックされるも、勢いある葵が判定勝利。

昨年、膝の靭帯と半月板を負傷した琢磨はその影響があるのか、攻め続ける圧力が足りなかった。

後ろ蹴りを見せた葵拳士郎、ブロックする琢磨
最終ラウンド終了間際に見せた葵拳士郎の飛び技
高橋亮もローキックを強く返す

◆第10試合 57.0㎏契約3回戦

NKBバンタム級チャンピオン.高橋亮(真門/56.95kg)
   VS
NJKFバンタム1位.大田拓真(新興ムエタイ/56.8kg)
勝者:大田拓真 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:中山28-30. 多賀谷29-30. 和田29-30

パンチ主体に出て行く高橋亮。大田はミドルキックで返し、ハイキックでもブロックする亮の腕を殺していく。

高橋の蹴り返し、ボディーブローも効果的ながら、大田は首相撲からヒザ蹴りでも連打で調子を上げ、技の柔軟さで多彩に攻め主導権を握った大田が判定勝利。

速い展開の中、大田拓真のローキックがヒット
戦い終えた直後、勝った確信でホッとした表情を見せる大田拓真

◆第9試合 56.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA/56.0kg)
     VS
ラット・ウォー・ウィッシェン(元・ラジャダムナン系バンタム級3位/タイ/57.4→57.2kg) 
勝者:波賀宙也 / KO 2R 1:06 / カウント中のタオル投入 / 主審:神谷友和
ラットが1.2kg超過により減点1

第1ラウンドの蹴り中心の攻防は互角ながら、落ち着いた表情で応戦した波賀宙也。第2ラウンドには早々に勝負に出てパンチで追い詰めラットからダウンを奪い、再開後もすぐ攻めに出て、ヒジ打ちをアゴにヒットさせて倒すと、ラットは足下をふらつかせながら立つも、カウント中にタオルが投げられセコンドが介入し、波賀のKO勝利となった。

◆第8試合 56.0kg契約3回戦

大田原友亮(B-FAMILY NEO/56.0kg)
   VS
ペットワット・ヤバチョウベース(タイ/55.95kg)
引分け1-0 / 主審:和田良覚 / 副審:中山30-29. 神谷29-29. 竹村29-29

◆第7試合 バンタム級3回戦

NJKFフライ級2位.一航(新興ムエタイ/53.1kg)VS 松岡宏宜(闘神塾/53.35kg)
勝者:一航 / 判定3-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:和田30-28. 神谷30-28. 竹村30-28

◆第6試合 63.5kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級2位.真吾YAMATO(大和/63.35kg)
   VS
NJKFライト級6位.野津良太(E.S.G/63.7→62.7kg)
勝者:真吾YAMATO / 判定3-0 / 主審:中山宏美
副審:和田30-27. 神谷30-28. 多賀谷30-27

◆第5試合 バンタム級3回戦

NJKFバンタム級3位.日下滉大(OGUNI/53.5kg)
   VS
同級4位.清志(新興ムエタイ/53.45kg)
勝者:日下滉大 / 判定3-0 / 主審:竹村光一
副審:和田30-28. 中山30-29. 多賀谷30-29

◆第4試合 58.5kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級9位.吉田凛汰朗(VERTEX/58.33kg)VS 獠太朗(DTS/58.35kg) 
勝者:獠太朗 / 判定0-2 / 主審:神谷友和
副審:竹村29-29. 中山29-30. 多賀谷29-30

◆第3試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級10位.誓(ZERO/50.6kg)VS EIJI (E.S.G/50.5kg) 
勝者:誓 / KO 1R 2:56 / 3ノックダウン / 主審:和田良覚

◆第2試合 60.0kg契約3回戦

優希YAMATO(大和/59.97kg)VS 羅向(ZERO)/59.85kg)
勝者:羅向 / 判定0-3 (28-29. 28-30. 28-30)

第1試合 女子アトム級3回戦(2分制

祥子(JSK/45.6kg)VS 須藤可純(笹羅/45.3kg)
勝者:祥子 / 判定3-0 (30-28. 29-28. 30-28)

ケニー・ベイレス氏に振り返って貰って頂いた一枚

《取材戦記》

坂上顕二氏は1968年生まれで、今年51歳。若いと言っても、これまでのNJKF若武者会は40歳代の会長が中心。昭和のキックボクシングで最初の分裂騒動が起きた1981年頃は現役引退した30歳代の会長達が多く、当時の私からみれば皆、偉大さとかなりの年輩者に見え、ジムを興したその中には、渡辺ジム・渡辺信久会長、西川ジム・西川純会長、市原ジム・玉村哲勇会長、習志野ジム・樫村謙次会長、当時目黒ジムトレーナーの藤本勲(現会長)氏も含まれ、あの頃はまだキックの歴史が20年足らずだったことが思い起こされます。

そして現在40歳代の会長達が若く見えても、その昭和時代の会長達より歳を超えていることに、時代の流れを錯覚してしまいます。

坂上顕二新体制のNJKFは、就任発表で延べられているとおり、あらゆる企画に挑戦されることでしょう。順風満帆とはいかないのがキックボクシング界。何が起こるか、どう乗り越えるか、応援していきたいものです。

NJKF次回興行は4月21日(日)に若武者会のVERTEXジム、ZEROジムによる「DUEL.17」をニューサンピア栃木にて開催。5月19日(日)は坂上氏の新興ムエタイジム主催の「DUEL.18」が神奈川県レンブラントホテル厚木にて開催。
連盟本興行「NJKF 2019.2nd」は6月2日(日)後楽園ホール開催となります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈55〉タイで三日坊主! Part.47 優しい仲間!

◆持って帰って来た黄衣

汗染みで臭くなってはいけないから洗っておきたい。しかし、アナンさん宅でこの黄衣をドーンと干していいものか。そんなの一般家庭で見たこと無い。黄衣は広げれば横幅250センチ、縦170センチある大風呂敷のようなもの。シャツやパンツを干すのとは違い毛布を干すほどの場所を奪う。上衣、下衣でかなりの場所を使ったが、かなり目立つ。

「まあ仕方無い、今日だけだ」と思うが、こんな黄衣をアナンさんが見つけると「何だ、持って帰って来てたのか?」と語気強く言われた。

私は「自分が使ったものは欲しかったから、また出家する人が居たら纏い方を教えてやろうと思ったんだ!」と素直に応えたが、何とも不可解な表情を浮かべたアナンさんだった。実はこれが後々の大問題だった。

疎い私は、なかなか気付かなかったことだが、その後もアナンさん宅に居て、どうも奥さんの様子がおかしいことに薄々気付いていく。

御飯時に声掛けられない、笑顔が無い、これは常ではなく冗談も言ってくれるから深刻には受け止めなかった。

敬虔な仏教徒のアナンさん。寺との繋がりは長い。1995年1月撮影

◆アナンさんの本音

そんなある日、どうも異様な空気が続くことが気掛かりで、アナンさんに尋ねてみた。

「俺、ここに居て何か間違ったことしているかな?しているならハッキリ言って欲しい!」と言うと、堰を切ったように「ハルキ、何でチーウォン(黄衣)とバーツ(お鉢)を持って帰って来たんだ? これは寺に置いて来るものなんだ。出家の記念品じゃないぞ! これが一般家庭にあるのはバープ(罰当たりなこと)なんだ! それから“もう一度出家したい”なんて言ってるが、出家は何度もやるもんじゃない。皆、社会人として一人前の男になる為に一度は出家するが、それで務めは果たし終えるんだ。二度目をやる者は、一時出家と違って藤川さんみたいに生涯を仏門で過ごす決意がいるんだ!!」

ハンマーで頭を打ちぬかれたようなショックだった。

アナンさんの言葉は正論だろう。黄衣やバーツを堂々と持って帰るなんて、俺は何と愚かなことをやってしまったのか。知らないことは大胆なことを平気でやってしまうものだなあ。記念に欲しいから分かっていても持って来たと思うが、見つからないよう隠して持って来ただろう。

それにしても誰も「それはダメだよ!」とは言ってくれなかった。こういうところはタイ人って他人に無関心なのである。人のやることを詮索しない。「チョークディーナ!」と言った挨拶の裏返しは、「黄衣、持って行っちゃったけど、日本人だからしょうがねえな!」だったかもしれない。

「藤川さん、こういうことを教えておいてくれよ」とまた人のせいにして嘆く。
更にアナンさんは「こういう物があるから、不吉な想いをしているのがオクサン(妻)なんだ。家族が事故にあったり選手が試合で怪我したり、何か悪いことが起きると悩んで元気を無くしている。」

そんなこと気が付かなかった。不機嫌そうに見えたのはそういうことだったのか。奥さんはアナンさんと友人関係にある私には直接言えなかったのだろう。日本人からみれば些細な問題も、生まれた時から敬虔な仏教徒の下で育てばそういう心が育つもの。逆にほぼ無宗教で育った私の方が常識知らずで異常なのかもしれない。
「とりあえず、このチーウォンとバーツは近くの寺に預けに行く!」と言うアナンさん。

それはもう返って来ないと悟った私は、「分かった、これを日本人の友達に預けに行くけどいいか?」と問うと、「この家から無くなればそれでいい」と応えられた。つまり、優しく柔軟に対処してくれたのだ。何が何でも「これは仏門の物、寺に返す」と言った意味ではない。私に逃げ道を作ってくれたのだ。

そしてまず、奥さんに謝った。
「ゴメンね奥さん、俺、何も知らなかったから、とんでもないことをしていた」と言うなり、「マイペンライ!」と笑顔で応える奥さん。大問題だったのに解決すればマイペンライ。こういうところは大らかなタイ人気質。こちらの家庭は上品な家柄だが、一般的なタイ人は時間にルーズだったり、約束守らなかったり、人の物勝手に使っても言い訳したり、イライラすること多いタイ人との付き合いに対し、こちらが間違ったことした際も“マイペンライ”にはずいぶん救われて来たものだ。

◆古き仲間

早速、私は思い当たる友人関係を思い浮かべる。出家前に春原さんと一緒に飯食った、青島さん、薬師寺さん、しかし急には連絡も取れない。いきなり持って現れても迷惑だろう。

次に、10年程前、私が初めてタイに来た頃の、かつてお世話になった空港近くのチャイバダンジム所属の選手が頭を過ぎる。立嶋篤史がタイデビューしたジムだ。比丘として列車に乗って、ノンカイとの行き帰りに空港近くを通った際も思い出した、駄菓子屋の可愛い子がいる集落にある。悩んでいる暇は無い。預かってくれるかどうかも分からないまま、とりあえず黄衣類を持ってアナンさん宅を出た。

日本のリングにも何度か上がったチャンリットさん。1990年5月撮影

チャイバダンジムはすでに閉鎖されているが、このジムに居たチャンリットという選手はほんの20メートル程先に住む女学生と結婚し、その家に住んでいる。何度か試合兼トレーナーで来日経験があり、習志野ジムとチャイバダンジムでは立嶋篤史の兄貴分トレーナーの一人だった。私とも長い付き合いで、お願いするのはこのチャンリットさんしかいなかったのである。

早速訪問すると、ほぼ家に居ること多いはずのチャンリットさんは、やっぱり娘さんと遊んで居た。娘さんは4歳で可愛い盛りだ。ほのぼのした親子の戯れに水を指すように早速、これまでの経緯を話した。

「分かった預かるよ!」。チャンリットさんは悩むことなくそう言ってくれてホッとした。

「確かに持って帰ってはいけない物だけどな!」と付け加えられたことはちょっと心が痛い。このチャンリットさんも敬虔な仏教徒だ。なぜこんな罰当たりな頼みを聞いてくれたかは、長い付き合いの中、持ちつ持たれつ助け合えた仲だったから。私がまだタイに慣れない頃、タクシーに乗る際、日本人と見るなり高値を吹っ掛けて来る運ちゃんに相場の値に抑える値段交渉や、取材の為、遠いジムまで連れて行ってくれたこともあった。また日本では私らが結構お世話をしてあげたから恩を返そうと思ったのだろう。しみじみと感じた恩だった。そして奥さんには内緒にするようお願いした。アナンさん宅にしても奥さんを悩ますことになってはいけなかったのである。そして、還俗直後に買ったカバンに黄衣とバーツを入れてガムテープで雁字搦めに封印し、“ハルキの日本へ持って帰る機材とフィルム”ということにして預かって貰った。

4歳の娘さんと戯れるチャンリットさん、優しいお父さんになった。1995年2月撮影

◆絶たれた一時再出家の今後

藤川さんに「再出家はもう一回やったら、足洗えんようなるぞ」と言われた意味もようやく分かった。鈍感だったなあ。また一時的再出家は絶たれたようなものだが仕方無い。

後日、日本に帰る前にもう一度、ノンカイに行ってみよう。今の私ではなく、将来、藤川さんと同じように、生涯を仏門で過ごす出家を目指すかもしれない。それと新たに日本人出家志願者が現れたら、そこで修行させて貰えるか交流を深めておこう。今後の展開は分からないが、修行ではない今、暫く旅を楽しんでみようと思う。

黄衣を干せるのはお寺の中だけ。一般家庭では見られぬ光景。1994年12月撮影

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

衝撃の『紙の爆弾』3月号絶賛発売中!
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』