原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」5号発売!

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号8月25日発売!

酷暑は峠をこえたようですが、近い日本の将来を重大に左右する「安保関連法案」の審議が連日参議院で行われています。

また、さる11日には九州電力川内原発1号機が多くの人の反対にもかかわらず再稼働されてしましました。川内原発再稼働を待っていたように桜島周辺地下のマグマが地上に向かって動き出し、桜島には警戒情報レベル「4」が史上初めて出されました。桜島と川内原発の直線距離は50キロです。火山に詳しい専門家は「桜島で最大級の噴火が起こった場合、関西地方でも5センチ程度の火山灰が積もるかもしれない」と警告をしています。

はるかに離れた関西で5センチならば、至近距離の川内原発には一体どのくらいの火山灰が降り注ぐのでしょうか。また、川内原発では運転開始後、排水系統に異常が発生し、九州電力は出力を上げる予定を当初の計画から延期しています。

本当に原発は不安だらけです。

だから黙ってはいられない!

昨年鹿砦社が発刊した「NO NUKES voice」の第5号(創刊一周年記念特別号)が出来上がりました。

脱原発・反原発を中心に「採算を度外視しても」(編集長)も果たさなければならない役割を指向してきた同誌ですが、今号は間違いなく日本の言論界で脱原発・反原発の「エポックメーキング」となる怒涛の迫力です。

◆総力特集「福島―沖縄 犠牲のシステム」は渾身の6本立て50ページ!

第5号のテーマは「福島―沖縄犠牲のシステム」。野球に例えれば、真正面ど真ん中への直球ストレート連投です。変化球は一切ありません。本文は東大の高橋哲哉先生と映画監督三上智恵さんの対談で幕を開けますが、この「対談」の緊張感と真剣勝負は読んでいても火花が散っていて、読者までがやけどをしそうです。目指すゴールは同じでも少し考えの異なるお二人。その妥協なき「討論」(闘論)は、どなたにとっても一読の価値ありです。思想を戦わすということの「凄み」を体験できる貴重な対談です。

そして、日本を代表するフォトジャーナリスト広河隆一さんのインタビューが続きます。チェルノブイリに50回以上の取材を重ね、福島第一原発事故翌日には福島に入り、原発近くでの取材を行った広河さん。お話のテーマは「加害者は必ず被害を隠す」です。チェルノブイリ原発事故で起こった事と福島事故後に起こったこと、その対比から見えてくる意外な共通点と相違点は現地で長年取材を重ね、あわせて救援運動にも積極的に関わった広河さんにしか語りえない内容でしょう。広河さんの奥行きの深い視点は、チェルノブイリから福島、そして沖縄へと広がります。沖縄に保養施設「球美(くみ)の里」を設立した広河さんの熱意が誌面から発露され、その意思と行動は読者を圧倒するでしょう。

次いで共に元知事である沖縄の大田昌秀さんと福島の佐藤栄佐久さんによる超大物対談です。お互いが意外なほどに福島、沖縄とのかかわりがあったことがお話の中で明らかになります。和やかな語り口ながら日本政府と闘って沖縄を背負った大田さんと、政府の原発政策に苦言を呈したために「冤罪」同然の弾圧を受けた佐藤さんの対談は「NO NUKES voice」だから実現できた夢の対談です。


◎[参考動画]衆院安保法制特別委員会─沖縄地方参考人会での大田昌秀元沖縄県知事の意見陳述 (2015年7月6日那覇市:10分)


◎[参考動画]佐藤栄佐久元福島県知事講演「原発問題と地方の論理」(2015年5月10日和歌山市:92分)

巻頭3本の特集記事だけでも、誇張なく「永久保存版」の価値ありです。その他沖縄からの視点で震災に向き合う蟻塚亮二さん(精神科医)や逆に茨城県から沖縄に自主避難した久保田美奈穂さんのお話は沖縄と福島(福島事故)を交互の視点で見直すのに最上の教材でしょう。GE(ゼネラル・エレクトリック)社の技術者として福島第一原発の建設に関わった名嘉幸照さんは沖縄のご出身です。「二つの故郷原発技術者の『福島』『沖縄』」を語って頂いています。文字通り「福島―沖縄 犠牲のシステム」に翻弄されたご自身の一代記です。

◆原発推進〈戦犯〉直撃取材は八木誠=関西電力社長兼電事連会長!

そして鹿砦社といえば、名物直撃取材です。今回は八木誠=関西電力社長兼電事連会長が「ターゲット」です。果たして戦果は如何に?

◆小出裕章さんの最新講義録から全国各地の脱原発報告まで総力網羅!

更に贅沢なことに、今年3月で京都大学原子炉実験所を定年退職された小出裕章さんの登場です。退職後唯一非常勤講師を引き受けた関西大学で行われた講義の1回分、90分を全文掲載! 大学生を相手に、いつになく熱を込めて語る迫力満点の小出さん。終盤の衝撃的な内容は本誌でしか目にすることが出来ないでしょう。

他にも注目記事が満載です。福島事故の避難者加藤凛さん、第三次原発賠償関西訴原告の石塚路世さん、トルコ現地で原発反対運動を取材・研究した森山拓也さんの各報告は、ほとんどの読者には初めての目にする内容ではないでしょうか。

本誌常連の元博報堂の本間龍さん、納谷正基さんには引き続き思いを語って頂いています。こちらも重鎮、経産省前テント広場の淵上太郎さんはテントひろばの物語に加えて、国から提訴され争っている裁判を東京高裁口頭弁論陳述書の要旨を紹介しながら解説していただきました。その他全国各地の運動情報も満載。細かくは紹介しきれません。

総ページ数は176頁。これまでの「NO NUKES voice」と厚みが違います。質も量もです。今この内容の雑誌を出せる出版社があるでしょうか。宝島?無理です。岩波書店?無理です。週刊金曜日?無理です。だから鹿砦社がやるのです!

僭越ながら、今、脱原発・反原発ではこれ以上の内容はない!と鹿砦社は自信をもって世にその評価を委ねます。巻頭秋山理央さんの写真から、編集後記まで緊張感が途切れることがありません。

秋の気配が感じられるようになりましたが、熱の充満した「NO NUKES voice」5号(創刊1周年記念号)は文字通り「必読」です。今すぐ書店へ! (伊藤太郎)

『NO NUKES voice vol.5』──『紙の爆弾』2015年9月号増刊

2015年08月25日発売 定価680円[本体630円+税]
A5判/176ページ(巻頭カラー8ページ+本文168ページ)
NO WAR! ?NO NUKES!
戦後70年の2015年夏、するな戦争!止めろ再稼働!
戦後70年の夏を迎えた日本は、4年ぶりの原発再稼働と安保法案成立に抗う「新たな闘い」が始まった。
福島の復興、復旧も進まない中での原発再稼働、沖縄が日米両政府の意向に翻弄され続けての「戦争法案」
そこに共通するものとは何か。「犠牲のシステム」としての福島と沖縄が孕む根本的問題を暴く!
総力特集「福島─沖縄 犠牲のシステム」では高橋哲哉・東大教授と、
映画『標的の村』、『戦場ぬ止み』で話題の三上智恵監督による対談、
世界の最前線から真実を伝えるフォトジャーナリスト広河隆一さん(DAYS JAPAN)が語る原発事故の実態、
大田昌秀元沖縄県知事と佐藤栄佐久元福島県知事による基地、原発立地県の「闘う知事」対談をお届けします。
また、本誌特別取材班による八木誠関電社長への直撃ルポや、
原発とメディアの「不適切な関係」を暴き続ける作家・本間龍さんの連載といった“トガった”トピックや、
川内原発再稼働反対をはじめとした全国の最新運動情報も掲載!
世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』にご期待ください!

【主な目次】
《表紙・巻頭グラビア》ALL STOOD STILL Vol.5 『ローカルアイテム─プラカードと横断幕』
秋山理央(フォトジャーナリスト)

《総力特集》福島─沖縄 犠牲のシステム

フクシマ─オキナワ「犠牲のシステム」を超える加害責任の共有
高橋哲哉さん(東大教授)vs三上智恵さん(映画監督)

加害者は必ず被害を隠す 原発事故の実態──チェルノブイリから福島へ
広河隆一さん(フォトジャーナリスト)

基地、原発─「闘う知事」は語る
大田昌秀さん(元沖縄県知事)vs佐藤栄佐久さん(元福島県知事)

《講義録》核と原子力、そして人間の幸福──科学者の目、科学者の願い
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)

《各地の原発再稼働阻止活動情報》
東京での九電東京支社抗議をはじめ、川内、高浜、伊方、志賀、玄海の各原発をめぐる再稼働阻止運動レポート

《全国からのレポート》
本間龍さん(作家) 原発プロパガンダとは何か? 第三回 福島民報・福島民友(二)
山崎久隆さん(たんぽぽ舎) 巨大なリスクを抱えたままの福島第一原発の止まらない汚染
淵上太郎さん(経産省前テントひろば) 経産省前テントひろばの実態とは何か─東京高裁高等弁論陳述書要旨
松浦寛さん(FB憲法九条の会) 脱原発から護憲運動へ
首都圏反原発連合 MCAN activity now! 首都圏反原発連合中央放送誌面版
……and more!

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号が8月25日発売開始!

2016年逝きし世の日本へ──2024年8月15日に記された日系難民家族の回想記

HIROSHIMA1945 - FUKUSHIMA2011

「いいかい遥(はるか)、さっきの質問は二度と人前でしちゃいけないよ。私達は色んな危険に囲まれているんだ。遥ももう少し大きくなれば解るだろう。だから解らないことは誰もいないところで父さんに小声で話しなさい」
私が娘にそう諭すと遥は「うん、わかった」と素直に忠告を受け入れた。

遥の質問はこうだった。
「ねえねえお父さん。なんで私達は日本語を知っているの? 友達と話すときはいつもスペイン語なのに家に帰るとどうして日本語なの? 日本ってもうないんでしょ? だれも住めなくなったって学校で教わったけど……」

遥は買い物客で賑わうエスペラント通りの市場の中で突然私に日本語で問いかけてきた。
「黙りなさい。スペイン語で話すんだ」と私は遥の耳元で呟いた。10歳の娘に私達が住んでいた国の話をする事は親の義務のようにも感じるが、難民として制限の多い生活をしている立場を理解するのに若すぎる。いずれ物事が分かるような年齢に達したら全てを話そうと思う。妻もそれに対して異論はないようだ。

◆2016年「JAPAN CHAOS」──悪夢の連鎖が始まった

KAGOSHIMA2016

2016年、山口県の岩国基地に配備されていたオスプレイが鹿児島の川内原発上空で操縦不能に陥り稼働中の原発へ墜落したのが事の始まりだった。悪夢の連鎖と言えばそうとしか言えないが、今となっては後悔すらが無意味だ。事故の前年に戦争へ向けて法整備を完了していた日本は川内原発へのオスプレイ墜落事故直後に、米国がホルムズ海峡にイランが多量の機雷をばら撒いたことを理由に日本への機雷撤去作戦への協力を要請する。「集団的自衛権」で逃げ場を塞がれていた日本政府は原発事故の対応よりも米国の要請に応じることを優先させた。その結果2011年の福島第一原発で起こった事故と比較が出来ない大惨事が発生し、急性放射線障害により九州では事故から2日以内に3万人が犠牲となった。

その後も暴走する原発事故へ有効な対策は皆無で、被害は四国、山陰、山陽から関西までに広がった。西日本からの国外避難は、一切の航空便が日本への乗り入れを停止したことにより不可能となった。事故後1週間で犠牲者の数は確認できているだけで20万人に上ったと言われている。

その事故の最中、米国からホルムズ海峡での機雷除去作戦の要請に日本政府は諾々と従った。海上自衛隊、航空自衛隊のみならず海上保安庁の巡視艇までがペルシャ湾へ派遣された。

日本国内の行政機関は実質的に破綻を来たしていたと言って過言ではないだろう。マスコミも同様で大手新聞社が朝刊の発行を行えないという第二次大戦中も例のないところまで混乱は極まっていた。私はその時、もうこの国はお終いだから逃げなければと決断していた。

日本政府が実質的に機能停止に陥った、という確定な情報が伝わってきたのは複数の海外メディアがインターネットを通じて発信したニュースによってだった。

私は妻と娘の遥とともに新潟に向かった。停泊していたロシアの貨物船の船長に多額の袖の下を渡し、取り敢えずナホトカへ向かった。貨物船の中には私たちのように日本から避難する人達があふれていて誰もが先を案じていた。

ナホトカに到着するとロシアの入国管理局は私達「避難者」の受け入れをすんなりとは認めなかった。難民申請も持たずにいきなり押しかけて来た避難民を受け入れなければならない国際法上の義務がロシアにあるわけではないから、その態度は仕方ないものであったといえる。結局ここでも入管当局と個別折衝で袖の下を渡す事ができた人達だけが入国を認められた。そうでなかった人たちの安否は判らない。

私はロシアに長期滞在するつもりはなかった。ロシア語は話せないし、この国には不安定要素が多すぎると感じていた。急ぎモスクワ行きの航空機に飛び乗りモスクワから中米の某国に向かった。この国は幸い私達を難民として受け入れてくれた。第二次大戦で日本と戦火を交えていなかったことが幸いしたのかもしれない。

今日、2024年8月15日は日本がまだあった頃、「終戦記念日」と言われた日だった。今私達が暮らすこの国は第二次大戦に参戦していなかったので、取り立てて8月15日が話題になることはない。

2016年、1億2千万近い人間が僅か数週間で放射能と戦争により国家を破滅させた「JAPAN CHAOS」は近代史の中でもまだ評価が定まっていない。私の心の中でも同様だ。遥には物心がついたら説明するとは言ったものの、それが果たせる自信はない。

◆2024年8月15日──自ら国を破滅させた愚かな民として他国で生きる

ここへ難民として住み着いて8年になる。日本を出た2016年、遥は2歳だった。家の中では日本語を使っているが、日常生活ではスペイン語だけで通している。私の家族のようにこの国へ逃れてきた日本からの難民は少なくない。しかし彼らの中には「日本への帰還、日本政府の再建」等と言った政治的行動に走るグループがいて、それはこの国の政府からは「厄介者」と危険視されている。

また、決して豊かとはいえない経済状況が続くこの国の国民は私達難民に政府から与えられる僅かばかりの「生活援助」にも不満を持っている。だから私は妻や娘に「家の外では『日本』のことは決して話題にしないように、政治的な話には関わらないように」事あるごとに言い聞かせている。私達は祖国を失った難民なのだ。しかも侵略や他国の攻撃により祖国を失ったわけではない。政権の愚策により、2度と戻れない猛烈な放射能汚染を広め、無責任な政治意識が何の利益も産まない好戦国=米国の言いなりとなり。こともあろうか原発事故の対策を放棄して米国の作戦に国力を傾注してしまった、救いがたい愚かな民族だ。

世界中のあちこちに散らばる日本系難民の苦悩はこれから果てることがないだろう。だから本音を言えば娘の遥には「日本を忘れなさい」と語ろうかとも思案している。

幸いこの国では肌の色や出身による差別は少ない。でも子供たちの間にも「日本」と言う国がどうして破滅したのかへの純粋な興味はある。遥と同じクラスで成績が優秀なフリオやフェルナンデスは遥には同情してくれているという。でも少し意地悪なメンドーサやイザベラにはからかわれることがあるらしい。

仕方ない。難民はそれらを背負って生きなければならない。クルドやパレスチナと我々は違う。自ら国を破滅させた愚かな難民なのだから。でも遥や子供が責めを負わなければならない道理はない。弁解する資格すらない私たちは贖えない罪を死ぬまで背負わねばならない。

あれだけ明確な予兆が示されていたのに、それを食い止めることができなかった。あの時代の空疎感。生物種としての衰退がこの結果を招いたのか。これから年を重ねるごとに私の心がどう変化するのか、それすら想像がつかない。

日曜日(16日)には教会に礼拝に行かなければならない。この国ではカソリックとして振る舞うことが身の安全にもつながる。私も妻も礼拝は護身術でしかないが、遥には礼拝に通うことが自然な行為になってきたようだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎極東戦線異状なし!?──放射能や戦争法案に鈍感すぎる若者たちと遭遇して考えた
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「目が覚めた」人たち──抗議行動はいろんなカタチがあっていい
◎「不逮捕特権」を持つ国会議員は「体を張って」安保法案を阻止できる!

戦後70年を独裁者「退陣」の年へ!話題の『紙の爆弾』9月号発売中!

 

福島原発被曝の現実から目をそらさない「DAYS JAPAN」と広河隆一氏の在野精神

「DAYS JAPAN」と言う月刊誌をご存知の方も多いであろう。
今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」だ。

「DAYS JAPAN」2015年7月号

悲しいニュースだが直視を避けられない現実が詳細に報告されている。本号は発売直後よりアマゾンをはじめとするネット上の図書販売サイトでは完売となり、書店でも残部僅かのようだが、増刷されるとのことであるのでまだご覧になっていない方にはご購読を強くお勧めする。

「DAYS JAPAN」はかつて講談社が発行してたが休刊となり、2004年にフォトジャーナリストの広河隆一氏が会社を立ち上げ編集長に就任し復刊した。表紙の右下には発刊以来毎号「一枚の写真が国家を動かすこともある」との腰の据わったメッセージが記されていたが、その場所には編集長が丸井春氏に代わった昨年からは「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」と、より明確な「宣言」が掲載されるようになった(「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」はそれ以前にも時に表紙に書かれていたメッセージではある)。

◆発刊以来、原発問題に深く取り組んできた「DAYS JAPAN」

この雑誌の最大の特徴は現在世界でも希少となった「フォトジャーナリズム」を実践し続けていることだ。同時にパレスチナ、イラク、中東など世界中の紛争地帯(それが脚光の当っている場所であろうがなかろうが)の問題を取り上げ、視覚に訴えると同時に卓越した視点から解説を行うことだ。国内問題も同様である。一貫して在野の立場から権力監視を続ける骨太の編集方針は「ジャーナリズム」の原点から全くぶれていない。

また同誌が主催する「DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」は世界的に権威のある写真コンテストとなり、ここでの受賞者がピューリッツアー賞などを後に受賞することも珍しくない。実は世界のフォトジャーナリストから注目されている雑誌でもある。世界的な注目を浴びる雑誌はこの島国に「DAYS JAPAN」だけである。

「DAYS JAPAN」2015年7月号より

前述の通り今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」である。同誌は発刊以来一貫して原発問題に深く取り組んでおり、2011年の1月号(大震災の2カ月前)特集は「浜岡原発爆発は防げるのか」だった。事故直前まで月刊誌でこれだけ原発問題に警鐘を鳴らしていた雑誌は他にはない。スリーマイル島やチェルノブイリで原発事故取材経験豊富な広河氏は福島事故発生後3日目には現地入りしている。そこで持参した放射線測定器がチェルノブイリでも経験したことのない高い値、針が振り切れる経験を初めてする。目前には何も知らない人々がマスクもつけずに危機感もなく往来している姿を見て、取材を止め高線量地帯へ向かう人々の車を止め引き返すように説得を始める。


◎[参考動画]「3・11メルトダウン 福島原発取材の現場から」Part2
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)綿井健陽氏2011年7月18日公開

◆「DAYS JAPAN」行動原理の体現者・広河隆一氏

「DAYS JAPAN」の行動原理はこの時の広河氏が体現している。ジャーナリストとして現地へ赴くがある時期「人間として」何をすべきかと感じた瞬間に彼らは「行動者」へと転身する。広河氏がレバノンの難民キャンプ取材から難民支援を始めて20余年が経つ。チェルノブイリ取材を50回ほど行っている広河氏は1991年に「チェルノブイリ子供基金」を設立し、保養施設「希望21」を各国のNGOと政府の協力により設立し、そこで保養を行った人の数は7万人を超えたという。

福島原発事故のわずか2か月後、早速保養所設立プロジェクトは動き出し、早くも翌年2012年7月には久米島に「球美の里」を設立し福島から子供達(親同伴の場合もあり)の受け入れを開始する。常人には想像できない発想と行動力は編集長が代わっても引き継がれている。

原発や被曝については「付け焼刃」ではなく長年の取材経験と人脈、知識と実践を持つこの雑誌に敵うものはないだろう。いや違った。「NO NUKES voice」ははるか後ろを走っているけれども志だけは負けたくないと編集長以下腹を固めている。
◎「DAYS JAPAN」Facebook
◎広河隆一氏のtwitter


◎[参考動画]DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展 特別講演会「震災と原発問題」
2012年11月20日京都造形芸術大学 学校法人瓜生山学園公開

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎百田尚樹「沖縄2紙を潰せ」発言で強まる「琉球独立」という島唄の風
◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎「松岡社長逮捕は当然」か?──関西大学「人間の尊厳のために」講義の白熱討論

『NO NUKES voice vol.4』原発いらない!全国から最前線の声を集めた脱原発情報マガジン!
タブーなきスキャンダルマガジン月刊『紙の爆弾』は毎月7日発売です!

《ウィークリー理央眼004》若者に影響された沼津の戦争法案反対デモ

「戦争法案」(安保関連法案)の成立阻止行動が全国各地で活発化してきている。
6月13日(土)には戦争法案反対デモが静岡県沼津市でも行なわれた。

以下がそのデモの映像なのだが、年齢層が高めにも関わらず緊張感があり非常に激しいコールをしている。


[動画]ストップ!戦争法案・市民大集会 – 2015.6.13 静岡県沼津市(2分49秒)

国会前等で頑張っている若者達を意識した速いテンポのショート・シュプレヒコールが特徴で、「コール&レスポンス」(短いコールの連続の掛け合い)まで取り入れている。

「戦争!」「反対!」
「憲法!」「守れ!」
「安倍!」「辞めろ!」

この一連のコールは若者からアドバイスをもらったわけではなく、デモの主催者の方が若者達のデモ動画を見て研究し、今回初めて採用したという。
普段はリズミカルとは言えないロング・シュプレヒコール中心なので、ショート・コールに戸惑っている方もいたが、「こういうのも悪くない」-と参加者の評判もまずまずだった。

世代を問わず、良いと思ったスタイルを自分の地元のデモで取り入れたりしながら、ずっと声を上げ続けることは非常に大切だと思う。
アピールに効果的なスタイルを老若男女が日本中で真似したり真似されたりしながら、より良い方向を皆で目指して全国各地のデモが進化していくという、デモのあるべき「未来」と「希望」が沼津で垣間見えた。

[2015年6月13日(土)・静岡県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

普通の人こそ脱原発!──世代と地域を繋げる脱原発情報誌『NO NUKES voice』Vol.4
タブーなきスキャンダルマガジン月刊『紙の爆弾』!

http://www.rokusaisha.com/

《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!

6月8日午前10時から東京地裁429号法廷(有賀貞博裁判長)で、5月28日に「建造物侵入」容疑で逮捕された「火炎瓶テツ」さんを含め3名の「勾留理由開示公判」が行われた。

公判前の8時30分、支援する人々は東京地裁近くに集まり、9時30分に30余席しか無い傍聴席の傍聴抽選が行われた。抽選には100名近くが傍聴券を求め列をなし、この「不当逮捕事件」への関心の高さが伺われた。

私は残念ながら傍聴券抽選には外れたが、取材の意義に賛同して下さった有志の方から傍聴券を譲って頂き傍聴をする機会を得た。この場を借りてご協力頂いた方に深くお礼を申し上げたい。

◆「嫌がらせ」としか思えない行為を傍聴女性に行う職員たち

本コラムでご紹介した通り429号法廷はいつも「警備法廷」だ。法廷前では多数の裁判所職員が列をなし、鞄や携帯電話などの所持品は全て裁判所の命令で「一時預り」を強いられた。

筆記用具だけは持ち込みが認められているはずなのだが、女性傍聴者に対して複数の職員が取り囲み「ノートの中を見せろ」と不当な恫喝をかける。私もノートの所持は確認されたが、中を見せろとは言われなかった。

429号法廷では女性に対して、嫌がらせとしか理解出来ない行為が多発していると聞いていたが、目前で不当行為を目にする事になった。私を含め数人が「自分はノートの所持を確認されただけなのに何故この人にだけ内容確認を強要するのか」と問い詰めると職員は何と「金属探知機」を持ち出し、女性のノートの裏表に「金属探知機」をかざし(何の意味があるのか?)「ご協力有り難うございます」と発言し、去って行った。

◆警察官に連れられて入廷した「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」

傍聴者が法廷に入ると裁判官は「傍聴者は声を出したり拍手などをすると退廷を命じます」と恫喝とも言うべき異例の注意を言い渡した。定刻7分遅れで手錠と腰縄をかけられた「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」が警備の警察官に連れられて入廷し、手錠と腰縄を外され、正面から裁判官と向かい合う位置に二人、弁護士席の前に警察官を挟んで着席した。

この着席位置に弁護側から「被疑者を全員弁護士席の前に着席させよ!」と要求が出されたが、裁判官は取り上げなかった。が判官が事件名を小さな声で読み上げ、弁護側の主張に移った。

弁護士は「本件は逮捕建造物侵入を容疑とした逮捕自体が不当であり、3人は即時に保釈されるべきである」と8項目の求釈明を求めた。しかしそれに対して裁判官は肝心な質問には「答えません」とまともな回答をしない。堪り兼ねた傍聴席から「説明しろ」と声が上がると、裁判官はすかさずその傍聴者に「退廷を命じます」と最初の退廷を出した。

◆被疑者の住所を不明としながら3人の自宅の家宅捜索を行った不合理

その後も弁護団から厳しい質問が相次ぐが、相変わらず裁判官は「答えません」を連発する。

明らかに裁判官は回答から逃げており法律の素人にもその矛盾が明らかだった。

特に勾留の理由に被疑者の住所が不明としながら3人の自宅に家宅捜索を行っている不合理は際立っていた。

その後、3被疑者の意見陳述に移り、各人が10分不当逮捕を糾弾した。被疑者の発言に共感した女性が小さく拍手をすると、裁判官はまたしても退廷を命じ、5、6人の職員が女性を抱え上げ法廷から排除した。

次いで弁護団の意見陳述が行われ「明確な不当逮捕」を厳しく追及して、一連の審理は終わった。

◆閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した裁判官

その瞬間、傍聴席から「仲間を取り返すぞ!」と大声が上がった。すると傍聴席に控えていた職員が傍聴席と法廷の間に列をなし傍聴者の静止を試みる。しかし法廷内の被疑者は両手を上げて強い意思を示し、応じるように傍聴者から次々激励と裁判官糾弾の声が相次ぐ。

たまらずに裁判官は閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した。

午後2時、裁判所は3人の保釈決定を弁護団に伝えて来た。

午後6時半、釈放された3人がテント前広場に集い報告集会が行われている。


◎[参考動画]岩上安身による火炎瓶テツ氏インタビュー(2013年12月30日)


◎[参考動画]火炎瓶テツさん、「憲法改悪と護憲」について語る(2013年4月29日)


◎[参考動画] 火炎瓶テツ@辺野古新基地建設NO!防衛省抗議行動(2015年1月13日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎火炎瓶テツさんの勾留理由開示公判が東京地裁「429号法廷」で行われる意味
◎「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義

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火炎瓶テツさんの勾留理由開示公判が東京地裁「429号法廷」で行われる意味

先日来お知らせしている「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が6月8日(月)10時から東京地裁429号法廷で行われるとの情報を得た。

やはりかと思ったが、法廷は「429号」だった。

東京地裁429号法廷は特別な法廷だ。通常の法定であれば刑事事件(裁判員裁判の殺人事件)であっても、民事事件であっても、傍聴席に空席がある限り、開廷前であれ、開廷中であれ誰でも法廷の傍聴席に自由に出入りできる。

が、東京地裁「429号」法廷は特別だ。ここは常時「警備法廷」として準備されている特別に警戒が厳しい部屋として、業界では悪名高い。

通常の法廷であれば傍聴者は荷物を持って傍聴できるけれども、「429号」法廷の場合ほぼ間違いなく裁判所の職員に鞄所持品、携帯電話などを預けなければならない。加えて私の過去の経験から言えば、裁判所入所時に金蔵探知機で所持品を調べられているのに、この部屋に入る際に更に全身を調べられた。

部屋の前の廊下には目つきの鋭い裁判所職員(?)が常駐し、その姿は何も知らずに訪れると、相当威圧感を受ける。

◆「429号法廷」とは傍聴者たちに対しても「本気で弾圧するぞ」という権力の意思表明

「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が429号法廷で開かれること自体、裁判所や検察は「本気で弾圧するぞ」と言う意思を示していると了解しても間違いないだろう。この場所は主として新左翼活動家や暴力団の抗争などの刑事事件で専ら使われる法廷でもある。

当日、傍聴予定の方はあらかじめ、そういった場所であることを覚悟しておいた方がいい。一般の法廷と雰囲気が全く違う、威圧的な雰囲気の中で「勾留理由開示公判」は行われる。

高々建造物侵入(といっても「押し入った」わけではないのに)容疑で「警備法廷」をあてがうほど、国家(権力)は警戒しているということだ。

「火炎瓶テツ」とその仲間たちは丸腰の人ばかりなのに。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎合法ラディカルな自由メディアの天使「ノエル」少年を権力が恐れる本当の理由

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「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!

6月3日夜(19時~21時)警視庁東京空港警察署(羽田)で、先月28日に不当逮捕され、現在も同署に勾留されている「火炎瓶テツ」氏への激励行動が行われた。警視庁は都心からわざと通いにくい場所を選定して彼らの勾留を決めたのだろう。だが平日の夜にもかかわらず約70名の人が集まり、次々に激励のメッセージを語ったり、歌で伝えたりした。同様の激励行動は5月30日(日)の日中にも行われていて、その際は100名を超える人が参集したという。激励の場では、警察署内の「火炎瓶テツ」氏から(弁護士経由)のメッセージが読み上げられた。「30日激励行動の声が二度聞こえた」と。

激励行動に参加した複数の人がその模様を中継していた。中継画面を視聴している人数も数百人に上る。「火炎瓶テツ」氏逮捕が如何に注目されているかを示す数字だ。

◆凄まじい拡大解釈による「接見禁止」で被疑者の心を萎えさせる

3日は空港から警察署まで徒歩10分ほどの間に私服制服警官が数人、警察署では20名程の警察官が警備にあたっていた。現在「火炎瓶テツ」氏は「接見禁止」(弁護士以外の面会が許されず外界と完全に遮断される)が付けられている。最近集会やデモで逮捕された人には微罪であっても裁判所はいとも簡単に「接見禁止」を出す。「接見禁止」は証拠隠滅や逃亡の恐れがある被疑者に基本限定されるはずだが、その拡大解釈振りも凄まじい。

逮捕勾留された経験のある人物(西宮市に本社のある出版社社長)によると「接見禁止はきつかった。弁護士も毎日来てくれるわけではないし、こちらから手紙は出せても返事は一切受け取れない。あれが長期間続いたら精神がどうなっていた事やら」とその辛さを語っている。某出版社社長は神戸の不便な場所に勾留され、しかも突然の事件で支援体制も整っていなかったことから外部からの声援などでの応援はなかった。

◆「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」(山田悦子さん)

だが、別の逮捕経験者によると、警察署あるいは拘置所外部からの激励は、時としてとても大きな力になるという。まだ若かったある活動家はデモの際に逮捕勾留され連日の厳しい取り調べの中で「完黙」(完全黙秘、事件についての聴取で何も語らないこと)を貫こうとしたが、精神的に参ってしまい、不覚にも供述を始めてしまった。その時警察署の壁の外から「××君絶対完黙で頑張れよ!」との声が聞こえ、ふと我に返り再び「完黙」を貫き通せたという。

甲山事件で冤罪被害者にされた山田悦子さんは講演の度に「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」と語っている。

何を言いがかりに逮捕されるか、少し真面目に政治や社会のことを考えて行動している人には全く油断のならない時代だ。運悪く逮捕されても、余程無茶な起訴をされないかぎり23日で勾留は終わる。その間肝要なのは「完黙」を貫くことだ。取調官は時に甘い言葉で、時に脅しを込めてあれこれ誘導してくるが、とにかく逮捕された件については一切話をしないことが、その後の裁判の行方を左右する。

こんな事、「火炎瓶テツ」は先刻ご承知だろうけれども、今外から彼を支援している人の中にまだご存知ない方がいるかもしれないので念のためお伝えする。

◆6月8日東京地裁で行われる「勾留理由開示」公判の重要性

尚、「火炎瓶テツ」は勾留理由開示公判を要求し、時刻は未定も8日月曜日に東京地裁で公判が開かれる。勾留理由開示公判とは被疑者が「なぜ勾留されなければならないか」を裁判所に問いかけ、明らかにするための特別な法廷だ。不当逮捕や弾圧の際には保釈へ向けた意思表示の一助となるし、「接見禁止」が付けられていても、法廷で傍聴人と顔を合わすことが出来るというメリットもある。勾留理由開示公判は勾留に納得しない被疑者が裁判所をいわば追求する場でもあるので、時に荒れる。

傍聴券が出るほどに傍聴人が参集すれば裁判所に対する大きな圧力になる。東京在住でお時間のある方は関係者に時刻ご確認の上8日は東京地裁へお出かけになると貴重な体験が出来るかもしれない(尚、世間の注目が高まったり、勾留理由開示公判を請求すると、微罪の場合その直前に保釈されるケースも多いので念のため)。


◎[参考動画]2015.05.29「不当逮捕への抗議と…仲間への激励行動」警視庁丸の内警察署前【1/2】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働

5月28日経産省前で3人の市民が逮捕されたという報に接した。「『戦争法案反対国会前集会』を終えた3名が、経済産業省本館の門扉外側のスペースで抗議行動を行っていたところ、警備員の通報を受けた警察官により身柄を拘束されてしまいました」と友人は語っている。経産省の敷地に入った「建造物侵入」が逮捕容疑のようだが、言いがかりであることは明白だ。

◆火炎瓶テツさんと仲間たちの逮捕容疑は明確な意図に基づいた「言論弾圧」

これは明確な意図に基づいた「言論弾圧」である。逮捕された3名の中の1名は、反原発や反戦争など主として経産省前、だが時に応じて文科省前、東電前や米国大使館前などを自在に移動し、「決して逮捕されない」ように細心の配慮を払って活動していた「火炎瓶テツ」さんだ(本名は書かないが事件の性質上彼の「仕事名」は明かした方が良いと考え、顕名とした)。


◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』終了後?火炎瓶テツと仲間たち【10/10】

私は彼を良く知っている。彼の明晰さと行動力、そして人に訴えかけるアジテーション、即興のラップリズムに乗せた風刺のメッセージ。

東京で抗議行動に参加された方の多くは彼の顔や声を聞いたに違いない。「大丈夫?」と聞くと「何やられても絶対逮捕されませんよ」と昨年語っていた彼は、3・11後大勢が官邸前に集まるのを確認しながら、自分の活動拠点を取り敢えず「経産省前」としたようだ。この点「経産省前テント広場」の方々と着眼点の共通点がある。慧眼だ。

彼のバイタリティーには恐れ入っていた。灼熱の夏の日も、極寒の冬の日も週に最低2、3回は「仲間」とともにどこかで抗議活動を繰り広げている。

そう彼には、彼と共に活動を続ける「仲間」がいる。だから抗議行動の名前は常に「××反対!!火炎瓶テツと仲間たち」となっていた。逮捕された時にも多くの仲間がその現場を確認していたことだろう。

◆下地真樹=阪南大准教授「不当逮捕」と共通する「狙い撃ち」

2012年12月大阪で公安に逮捕された阪南大学経済学部准教授、下地真樹氏(「モジモジ先生」下地真樹さんの声明「警察はウソをついて私を逮捕」)のケースとの共通点も見いだせる。それは彼が単なる「抗議活動参加者」ではなく、優れて自分の言葉で問題の中心部を抉り出し、それを行政なり企業なりに直接ぶつける議論に「ひとりで」対抗できる頭脳と行動力の持ち主と言う点だ。

実は権力にとっては10万人の集会よりも、「個を確立した」10人の方が恐ろしいのかもしれない。党派にも属さず、自分の皮膚感覚と経験、そして学習に依拠して毎度毎度異なるテーマ―で悪政の根本を糾弾する「火炎瓶テツ」は、そろそろ「好きにさせておいてはいけない」と判断されたのだろうか。

彼のニックネームはやや「過激」に聞こえるかもしれないけれども、この時代、心の中に「火炎瓶」を持つぐらいの怒りを持たない方がどうかしている。

◆理性のある人間が戦争に反対し、戦争推進の動きに怒るのは当たり前

国会の中で安倍は一体何を語っているのか? 有事関連法制などというが、その実「どのように戦争を執り行うか」(しかもその前提は極めて根拠が曖昧・希薄である)の技術・解釈論だけであり、呆れるほど結果に対する洞察力を欠いている。戦争が起きたらどんなに非常が待ち受けているかを、真剣に想像している方々がどのくらいいるであろうか。残念ながらそういった懸念なしに過ごすことの出来ない日常が今日の姿だ。政府により戦争への明確な準備が目の前で行われている。

いくら嫌がっても残念ながらそれが現実だ。「人殺し」はいけない。どのような理由があろう避けるべきだ。だが戦争は国家が「お墨付き」を与える「合法的殺戮行為」だ。私的な「人殺し」に反対するのであれば「戦争に反対する」のは明々白々じゃないか。日本の憲法がどうであれ、日本の友好国がどうであれ、もっと言えば自分の親戚や身内が賛成しようとも、理性のある人間は戦争に反対し、それを推し進めようとする動きに怒るのは当たり前ではないか。戦争推進に怒ることなくして、一体何に怒れというのか。

◆「個」を持った「まつろわぬ」人たちがどんどん駆られる島国ファシズム第二段階

国家にとって目障りで邪魔なのは「個」を持った発言者・行動者だ。だから今回の逮捕は「火炎瓶テツ」には気の毒ではあるけれども、とうとう「戦争扇動者」安倍により「こいつは野放しに出来ない」と認められた勲章ともいえる。仮に不当な起訴や重刑が語られれば話は別だが、いくらなんでも大した罪状で罪は問えまい。

私は今日もまた「ついに来たか」と感じた。水際はどんどん迫って来る。影響力はないもののある意味「発言者」である私にとって、「火炎瓶テツ」の逮捕は他人事ではない。彼の主張は私の思想に比べれば余程穏便だったのだから。

これから、どんどん駆られるだろう。「個」を持った人間が、「まつろわぬ」人たちが。この島国のファシズムは第二段階に入った。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

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《ウィークリー理央眼001》150回目の首相官邸前抗議

毎週金曜日、総理大臣官邸~国会周辺で行われている原発に反対する抗議行動、通称「官邸前抗議」が5月22日で150回目を迎えた。
2011年に福島原発事故があり、その翌年の3月に第1回目の抗議が始まり、ほぼ毎週抗議が続けられ3年2ヶ月が経った。
その間に首相が代わり、政権も変わったが、人々の反原発の気持ちは変わっていない。

[2015年5月22日(金)・東京都]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

「普通の人」こそ脱原発!──『NO NUKES voice』第4号5月25日発売!

 

関西大学の教壇で鹿砦社の松岡社長が〈生きた現実〉を語る!

松岡利康=鹿砦社社長(2015年5月22日関西大学)

関西大学で共通教養科目の中のチャレンジ科目として開講されている『人間の尊厳について』で5月22日、講師としてついに松岡社長が教壇に立った。浅野健一同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)に次いでの登場で、出版人として受講学生に松岡節が披露された。

さて、どんな講義が展開されるやら。鹿砦社、松岡社長が学生にどんな球を投げかけるのか。ど真ん中の直球か、胸元すれすれのブラッシュボールか、と期待半分に案じていたが、内容は至極穏やか、かつ優しさに満ちた講義となった。

◆〈社会〉との関わりの中で〈死んだ教条〉ではなく〈生きた現実〉を語る

配布されたレジュメは「はじめに─〈人〉と〈社会〉との関わりの中で、〈死んだ教条〉ではなく〈生きた現実〉を語れ!」と勢いのある書き出しから始まる。学生運動経験のある松岡社長のことだ、その後にアジビラ風の文章が続くと思いきやそうではなかった。レジュメは出版のあれこれというよりは松岡社長が社会的に手掛けている活動紹介が中心となっている。

したがって講義内容も出版人というよりも松岡社長(鹿砦社)がどのように「社会」と関わっているか、関わりを創造しているか、の紹介に主眼が置かれていた。

◆「人権破壊」としての福島原発事故への衝撃から『NO NUKES voice』発刊

最初に言及されたのが「人権破壊」としての「脱(反)原発」活動への関わりだ。福島原発事故に強い衝撃を受け、また怒った出版人として『NO NUKES voice』を発刊したことがまず紹介された。

『NO NUKES voice』Vol.1(2014年08月25日刊)~Vol.4(2015年05月25日刊)

◆左右問わず生きた思想」を学ぶ場としての「西宮ゼミ」

次いで、鹿砦社本拠地で続けられている「西宮ゼミ」に寄せる思いと意義に言及した。関西で鹿砦社と言えば「西宮ゼミ」と言われるほど浸透した感のあるこの企画も、単なる出版にとどまらず、「左右問わず生きた思想」を学ぶ場として市民に提供してきた意義を述べ、これまでの登場した全ての講師陣が資料で紹介された。

2015年の「西宮ゼミ」は「前田日明ゼミin西宮」。第3回は2015年6月7日(日)14:00よりノボテル甲子園にて開催。ゲストはジャーナリストの田原総一朗さん。お題は「戦後レジームの正体を総括する!」

◆鹿砦社はなぜ、Paix2(ぺぺ)「プリズンコンサート」や熊本「琉球の風」を支援し続けてきたのか?

その後は、これまた鹿砦社が長年応援している女性デュオ「Paix2(ぺぺ)」の紹介だ。「プリズンコンサート」でついに全国すべての刑務所を制覇した「Paix2(ぺぺ)」。その活動を高く評価する松岡社長が支援する意味と出版の結びつきについて思いが語られたが、その真意は次週の講義で更に重みを増し、学生に伝わることになろう。

『逢えたらいいな プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり 』(2012年04月20日鹿砦社)


◎[参考動画]Paix2(ペペ)「受刑者のアイドル 網走刑務所」(2014年12月NHK放送)
◎[参考動画]Paix2(ぺぺ)公式youtubeチャンネル

更にはつい先ごろ7回目の開催となった「琉球の風」への協賛とそれに至る経緯が語られ。主たる講義部分は終了した。どれもこれも「社会」、「人間」との生きた繋がりを示す実践であり、素人が想像する専門職的な出版や編集の話とはほとんど無縁だ。

『島唄よ、風になれ!「琉球の風」と東濱弘憲』(2013年11月25日鹿砦社)


◎[参考動画]「熊本に流れる琉球の風」(2012年9月NHK放送)

これは一般的な出版社社長の講義ではない。自社発行物の紹介が無かったわけではないけれども、月刊誌『紙の爆弾』 に言及することもなければ、出版差し止めの苦い経験も語られなかった。敢えて名づければ「社会派企画出版社」の活動実績報告に近いだろうか。

「琉球の風」を語り終わった後には同イベントの様子を記録したDVDが約30分教室で流された。昼食直後の時間帯ということもあり、講義の最中には安らかにお休みになっている学生諸君の姿も散見されたが、DVDの映像が流れると目を覚まし熱心に見入る姿が印象的だった。

島唄の大御所で琉球の風」総合プロデューサー知名定男さん(写真中央)、「かりゆし58」前川真悟さん(右)、松岡利康鹿砦社代表(2015年5月17日「琉球の風~島から島へ2015」会場にて)

◆次回5・29関西大講義の「松岡弾」がいかなるものになるか?

2回連続の講義の初回、松岡社長はたぶん、学生に「言葉」で伝えようと内心弾倉に込めている弾薬を放ちはしなかった。学生に理解しやすい内容でまずは肩に力を抜いてもらい、胸襟を開いた学生たちに「価値観」を揺さぶる衝撃を次回講義に準備しているのではないか。

松岡社長によると、講義の感想を記した学生の感想文は「琉球の風」DVDの内容に感激した内容が多かったそうだ。学生の多くは初回講義である種の「油断」をしたのではなかと私は目星をつけている。そして、それは松岡社長の狙い通りだ。次回講義の「松岡弾」がいかなるものになるか、恐らく松岡社長の壮絶な過去を知らない学生諸君よりも私の方が楽しみにしているかもしれない。5・29関西大学で何が起こるだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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