〈2015年7月15日国会前の市民デモ〉

7月15日、予告されていた通り衆議院の特別委員会で「戦争推進法案」が自公多数で可決された。国会の外では1日総計10万人以上の人々が抗議の声を挙げ続けたが、当たり前のように無視された。

昨日の強行採決の際の映像を見て私は違和感を感じた。浜田靖一議長が審議を打ち切り、議長席に野党議員が詰め寄る。ここまでは想像通りだ。だが、だれも委員長浜田の暴挙を「体を張って」止めようとした議員はいない。挙句の果て採決に移ると野党議員は用意していた「自民党感じ悪いよね」「安倍政権を許さない」「強行採決反対」という印刷されたメッセージを掲げ始めた。

元から政治や政治家を本当は全く信用していない私にとって、またもその思いを強くさせられる光景だった。野党議員は国会を取り巻く市民ではない。特別委員会の委員以外にも多くの議員が議事の傍聴に訪れ、議場後方には立ち見の議員であふれかえっていた。

◆国会議員はもっと「体を張って」法案を阻止せよ!

ここで審議されているのは一体どんな法案なのか、その重大さに対する本当の危機感が野党議員にはあるのか。「戦争推進法案」はこれまであまた審議された悪法のなかでも間違いなく最大級に憲法違反かつ将来の「戦死者」を創出することが確定的な、絶対に許してはならない法案なのではないのか。

市民は国会の外でしか活動出来ないけれども、国会議員には委員会の議場に入る権利がある。だったらなぜ「体を張って」採決を止めないのだ。議長席に詰め寄った議員は誰一人として委員長の議事進行を物理的に阻止しよとはしていなかった。辻元清美議員は合掌しながら「議長だめです」と言い続けていたけれども、そんなことが通じる相手だと本気で考えているのか。他の議員も議長机を叩くだけで、誰も議長席から浜田委員長を排除しようとはしない。

私は「暴力はいけない」という一般論をこの場合排除する。抗議する市民は国会の外では何も暴力行為に及んでいないのに少なくとも2名がこの日逮捕されているし、抗議行動を警戒した警察は鉄策を国会の周りに二重三重に張り巡らせていた。重ねて強調するが、審議されているのは「暴力の究極形」である「戦争」を召致する法案だ。いわば「無法暴力の合法化」を図ろうとの策動が行われているのだ。目の前で立ち上がろうとしている「戦争」を止めるためならば、議事進行を物理的阻止することなど何の罪もないに等しい。

いや「どんな場合でも暴力はいけない」、「法律に沿った範囲で抗議しないと」という意見があるが、この法案に限っては、その意見は完全に間違いだと私は断言する。

〈2015年7月15日国会前の市民デモ〉

◆「自民党感じ悪いね」などと恍けたフレーズをかざしている場合か!

本気で野党議員がこの審議を阻止しようとするなら議場封鎖や委員長を議長席から引きずりおろす位の行動にでなければおかしくはないか。

これ程重要な法案でなくとも、過去に国会内での「実力行使」による衝突はいくらでもあった。何日も議場入口で座り込みを続ける野党議員を警察が排除したこともあったし、強行採決を画策する議長を議長席から引きずりおろしたことも実際にある。近年国会内も「お行儀良く」しておくのが何か「美徳」であるかのよな誤解があるが、そうではない。与野党の体によるぶつかり合いは別に珍しいことではなかったし、その時の強力な「排除要員」として元プロレスラーの馳浩は自民党から頼まれて議員になり、実際彼は混乱の中で野党議員排除に活躍をしたことがある。

そしてこの特別委員会委員長の浜田の父親、浜田幸一は1979年自民党内の派閥抗争「40日抗争」で主流派閥が机や椅子でバリケードを作っていた時「いいか、断っとくけどなー。かわいい子供達の時代のために自民党があるっちゅうことを忘れるな!お前らのためにだけ自民党があるんじゃないぞ!」とテレビカメラに向かいながら椅子や、机を投げ捨てていったことがあった。

浜田幸一は好きではなかったがこの時のセリフ、今となっては新鮮だ。そして息子の浜田靖一をはじめとする、自民党議員や安倍はこのセリフにどう答える?「かわいい子供達の時代」を戦争の時代にしようとする与党の強引な審議に野党議員は体を張れ。

「自民党感じ悪いね」など、初めて政治に興味を持った子供のように恍けたフレーズの紙をかざしている場合か。ちなみに国会議員には国会会期中「不逮捕特権」がある。この国会は9月まで会期があるからそれまでは余程のことがなければ逮捕はされない。

15日は日中から夜遅くまで、蒸し暑い中、市民の必死の抗議が続いた。その熱意を野党議員はしっかり受け止めるべきだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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