「花田郵便局強盗事件」再審請求審で、「犯人」とされたナイジェリア人男性に有利な証拠が出てきた

尾﨑美代子

25年前の2001年に起きた「花田郵便局強盗事件」(兵庫県姫路市)で、「犯人」とされたナイジェリア人の男性Aさんの第二次再審請求審(非公開)で、Aさんが犯人でない可能性を示す証拠が出てきた。

事件の概要はこうだ。地元の特定郵便局に午後4時過ぎ、目出し帽に雨合羽姿の黒人男性2人が強盗に入り約2000万円を強奪、日産シルビアで逃走した。地元にはナイジェリア人など黒人が多く住み、地元の工場などで働いていた。Aさんもその一人。強盗に入ったのはAさんも知っているBとCだったが、なぜAさんが疑われたか? 実は捜査中の警官が、目撃者の通報を受け、Aさんの倉庫内にシルビアがあるのを確認したからだ。警官が倉庫に行った際、倉庫の扉には鍵がかかっていて入れなかった。鍵で開けることができるのはAさんだけ、だからAさんが犯人だとされ、Aさんは警察に連行された。Aさんは犯行を否認したが、翌朝逮捕された。そのニュースを知り驚いたのはCと共に強盗に入ったBだ。「強盗は自分とCがやったのに、Aさんが逮捕されるなんて」と弁護士と共に出頭し、「強盗をやったのは僕とCだ」と自供し逮捕された。しかし、警察はCを探しきれず、Aさんを犯人だとした。

さっき書いたが、警察がAさんを逮捕したのは、倉庫には中央に大扉があり、そこは内側から南京錠がかけられ開けれなかった。その脇に小さな扉があるが、そこには外側から鍵がかけられ、やはり入れなかった。そして鍵を持つのはAさんだけだから、Aさんが犯人と決めつけられた。しかし、今回再審請求審で新たに証拠開示されたのは、扉に鍵などついていない、事件当時の倉庫の写真だ。

Aさんは、倉庫には昼間鍵はかけてなくて誰でも入れたと供述した。Aさんはナイジェリア人仲間のBらと午前中は倉庫近くの工場で働き、午後からは倉庫内で中古車などを扱う貿易の仕事をしていた。Aさんは、日本人女性と結婚し子供ももうけ、更に当時日本の永住権も取得していた。また以前地元で黒人による痴漢事件があった際、仲間が次々と取り調べられることを危惧し、地元の警察と協力し、犯人を逮捕したこともある。そのため、事件当日も地元警察から問い合わされるほど信頼されていた。いわばナイジェリア人仲間にとって何でも相談できる「兄貴的存在」だった。

「Aさんは犯人でない」と自首したBは、実は、そう親しくないCにしつこく誘われ、強盗に関わってしまっていた。しかもCは「そんな大金は取らない。行員らを暴行しない」とBを説得したのに、郵便局から出てきた際には大金を持っていた。怖くなったBは、どうしたら良いか困り、「兄貴的存在」であるAに相談しようと倉庫に行った。しかし、Aが不在だったため、倉庫内に金などを置いたまま逃げていた。

不可解なことが一つある。倉庫にかけつけた警官がかけつけた際、倉庫には鍵がかけられ閉まって入れないはずだった。なのに何故警官は倉庫内のシルビアを確認できたのか。

警官・赤井はこう証言している。シルビアが倉庫に入るのを見たという桂という一般男性に案内され倉庫に到着。しかし鍵がかかって入れない。隙間から覗くとシルビアが見えた。中に犯人が潜んでいるはずだ、と考えた赤井。「誰かおるか? でてこい!警官だ」と声をかけた。ここで「はい、犯人ですが、なにか?」と出てくる犯人がいるだろうか? もちろん返事はない。警察の情報では、犯人は複数の黒人、拳銃を所持しているようだ。ならば早く検挙しないと第二の犯行がおきるかもしれない。赤井はそう考え、本署に連絡。「中にいるようなので確認したい」と申し出ると本署が同意したという。見ると扉の横の少し高い位置に窓がある。「あそこから入れるのではないか」と赤井は、もう一人の警官と桂に手伝ってもらい中に入り、シルビアを確認。では、赤井は外から鍵のかかっている大扉をどうやって開けて外に出れたか。赤井の証人尋問調書にはこう書かれている。
「大扉の内側には南京錠で鍵がされておりましたけれど、この南京錠自体に、それを開ける鍵が付いておりましたので、すぐに開きました」と。そして倉庫の外に出た赤井は、本部の捜査員が来るのを待っていたと。

その高い位置にある小さな窓がこれだ。先日Aさん、青木恵子さんと現地へ行って確認してきた。窓のある位置の半分は2階へ荷物を運ぶエレベーターが付いており開かない。窓のもう半分には鉄格子が組み込まれていて、入れない。どうやって入ったのだ、赤井は。

現在、倉庫の入口の大扉は綺麗に改造されていた
でも大扉の横の小さな窓は昔のまま。ここから入ることは出来ない

はっきり言おう。赤井は扉脇の小さな窓から入ったのではない。開いていた扉から入ったのだ。令状も取らずに扉を開けて入るのは違法行為だ。でも凶悪犯が中にいるはずだからと、「交通規制係」の赤井は、複数の強盗犯がいると考える倉庫に果敢に一人で突入した。もちろん、それも違法だが、赤井はいうだろう。「第二の事件が起きてもいいのか」と。

しかし、今回その扉に鍵がついてない証拠が出てきた。この証拠が、Aさんを無罪に導いてくれたらと祈るばかりだ。

注・ややこしい事件ですが(冤罪はどれも警察、検察が無理矢理犯人にするため作ったストーリーなのでややこしいし、辻褄があわないですが)私の解説はいかがでしたか? わかりやすかったとか、わかりにくかったとかお聞かせ下さい。

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尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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