2015年7月15日、衆院特別委員会で自民・公明両党が「戦争推進法案」の強行採決に踏み切った。


◎[参考動画]7月15日、衆院安保法制特別委で赤嶺政賢議員の質問のあと強行採決(2015年7月15日国会)

◆「小さな嘘よりも大きい嘘に人は騙されやすい」ファシズム論法を体現した安倍政権

人間は時にあからさまな嘘や悪事を目の前で披歴されると、かえって策を弄した詭弁や小ズルい嘘をぶつけられた時よりも、反応が鈍くなることがある。ヒットラーは「我が闘争」の中で「小さな嘘よりも大きい嘘に人は騙されやすい」という権力者が喜んで座右の銘にしたがるような名言を残しているが、安倍はその体現者だ。「戦争推進法制」は昨日今日に突如として出現したものではなく、1955年の自民党発足以来の党是「自主憲法制定」への着々とした目論見がいよいよ最終段階を迎えていると考えるべきだろう。

であるから、その目的達成の為には「小さな嘘(暴言)よりは大きな嘘(暴言)」の方がこの時代にあっては政権にとって有効なのだ。「解釈改憲」という「憲法殺し」は歴代どの首相も手を染めなかった「反則技」だが、「大きな嘘き」を祖父岸信介から受け継いできて、自身も「大きな嘘」を重ねることにより総理の座に納まった安倍にとっては、「違憲行為」すら自己正当化されるのだ。

◆嘘や詭弁を発語しても何も感じない21世紀日本型ファシスト

「フランス語で“白痴化する”ことを“アベチル(Ab?tir)”というんですが、ここから生まれた言葉で“馬鹿”のことを“アベッチサン(Ab?tissant)”っていうんですヨ」(2014年10月18日付「屁世滑稽新聞」より)

安倍は小学生時代から学校での勉強は苦手だったらしく(これだけは私と共通する)、警察官僚から自民党議員になった平沢勝栄が家庭教師をしていたそうだ。だが成蹊小学校からエスカレーターで成蹊大学へ進学となり、難関大学へ進学することは出来なかった。学歴で人の能力が計れるものではないし、私も学歴信者ではない。でも安倍の父親安倍晋太郎は相当熱心に有名大学へ押し込もうとしたらしいが、それはかなわなかった。しかし安倍は「高学歴」は逃したものの、天性とも言うべき「詭弁使い」の才と、嘘や詭弁を発語しても何も感じない「無恥」という感覚を兼ね備えた「21世紀日本型ファシズム牽引者」として君臨している。

大阪都構想の市民投票で敗けて「政界引退」を公言している橋下市長との不可思議会談(6月14日)や、官房長官を通じての翁長雄志沖縄県知事への「謝罪」もどき(7月4日)、改造前内閣では複数大臣の政治資金問題による辞職などがあろうと、この男が徹底的に叩かれることは今のところない。「福島原発からの放射能漏れは完全にブロックされています」と五輪誘致の為に世界に向かって大嘘をつくことくらい安倍にとって晴れがましい得意満面な舞台はなかったろう。

◆「安倍の本心」を代弁してみた

「本心を申し上げるとですね、解釈改憲も既に終わっているのですから、安全保障法制の成立の如何に関係なく、アメリカからの要請があれば直ちに日本は自衛隊をですね、その要請に従って出動することが出来る訳であります。現在審議をお願いしております安保関連法制は、本音を申し上げれば、『どうでも良い』、のでありまして、いざと、と言う場合には『解釈改憲』でもお示ししました通り、いかなる法令も憲法も無関係に、ひたすらですね、自衛隊を派兵し、堂々と戦闘を行うと。国際社会からの要請云々ではなくですね。わたくしがこの国の最高責任者でありまして、選挙で国民の負託を全面的に受けておるわけでありますから、そこのところはしっかりご認識を頂き、国民の皆様には相応の覚悟と、場合によっては犠牲といったものもですね、可能性としてはありうると、そういったお願いをしているわけでございます」

安倍は上記の発言をしてはいない。重ねて断るが安倍の発言ではない。しかし私が想像する「安倍の本心」が必ずしも的を遠くはずしているとも思えない。


◎[参考動画]東京・日比谷野外音楽堂での安保法案「強行採決反対」集会(2015年7月14日朝日新聞社公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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