傷痍軍人。今はほとんど使われない言葉だ。戦争による戦闘によって、障害を負ってしまった軍人である。
私が小学生であった頃、1960年代。傷痍軍人が施しを求めるているのを見かけることが、稀にあった。
家の近くのちょっとした丘があり、公園になっていた。
傷痍軍人が座して、前に缶を置き、施しを求めていた。今のように義足の技術が発達していない。膝から先は、むき出しの金属の棒だった。
一緒にいた母は、私に耳打ちした。
「ああいう人にだって、できる仕事はあるはずだ」
なんの施しもせずに、母は通り過ぎた。

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