公園を出ようというところで電話が鳴る。弁護士事務所の事務の女性だ。
「離職票を発行するにあたりまして、先に解雇通知をお送りします。住所は××市でよろしいですか?」
「いやよろしくないよ。解雇の日付はまだ決まってないんだから。いつの日付で通知出そうとしているんですか。8月末なんて認めませんよ」
「でも、8月末で決まったとのお話でしたが」
「決まってないって言ってるの。会社と社員の合意がなければ、解雇は出来ないはずでしょう。私も、他の社員も8月末に辞めていないんだから」
「既に合意されている方もいらっしゃいまして……」
社長が逃げて早々、会社に来なくなった社員が数名、8月末で合意して解雇通知を受けたという。複雑な感情が湧いてくる。何故そんな簡単に、労働対価を放棄するのか。どうせ支払われないと思って、早めに失業給付を受け取ることを選んだのか。それとも既に、どこかのツテを頼って再就職でも決まって、さっさと縁を切ることにしたのか。

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