「戦争推進法案」反対の人々は連日国会前を埋め尽くし、力の限り反対の声を上げたが、ファシズム自公政権によりこの最悪法は可決されてしまった。多くの人びとのさまざまな抵抗や闘いがあった。その中で9月16日夜に13名が一挙に逮捕されるという事件があった。現場にいた人の情報によると、逮捕は16日21時頃から22時頃まで断続的に行われたようだ。

そして、被逮捕者の中には本コラムで紹介してきた「学生ハンスト実行委員会」関係者3名が含まれることが、先日明らかになった。

◆「言いがかり逮捕」の後にやってくるあまりに不当な「ガサ入れ(家宅捜査)」

関係者と連絡を取り状況を整理してみると、機動隊がこの種のデモや集会でお得意とする「言いがかり逮捕」にほぼ間違いないことがわかった。さらに昨夜「学生ハンスト実行委員会」メンバーの数人が共同生活する場所に「明日ガサ入れ(警察による家宅捜査)が入りそうだ」との確度の高い情報を得た。でっち上げの公妨(公務執行妨害)でも家宅捜索を強制し、当たり前の権利である悪政への抗議活動を委縮させ、反対運動や抗議の分断を画策する権力のデタラメ極まる態度は過去にもこのコラムでも紹介したが、またしても同様の「不当ガサ入れ」が行われるという。

私はたまたま、東京に滞在していてこの報に接した。このコラムでも紹介した学生の仲間たちが行なっていた正当な「抗議活動」に対する悪辣極まる弾圧は許せない。そこで24日午前9時頃から「学生ハンスト実行委員会」関連の学生も居住する「りべるたん」と呼ばれる2階建ての住居に赴いた。1階は居間と台所、風呂、2階が共同スペースと寝室となっている「りべるたん」は、この時代にあってはなかなか珍しい空間だろう。個性豊かな居住者とさまざまな若者が集まるコミュニティーとなっているようだ。しかし若者のたまり場だけあり、2階の散らかり振りは半端ではない。

午前中から私同様、「危険情報」を聞きつけた人びとが集まっており、広くない居間は座る場所もないほどだ。

ガサ入れは朝一(早朝含む)の場合もあれば、午後3時頃のこともある。仕事に出かける人や大学に行く学生などの出入りが激しいが、常時一定人数以上の人が「万が一」に備え準備していた。とはいうものの、路地に面した窓は網戸のままだし、人の出入りが激しいからときに玄関の施錠を忘れることもある。今から考えれば「ちょっとのんびりした」待ち受け体制だったかもしれない。

正午を回り、午後1時を過ぎるとただ待っている我々もくたびれてきた。「3時を回ってこなかったら、今日はないでしょう」。そんな話をして、ただ待機していると眠気が襲ってくる。

◆捜査令状も見せずに突然、土足で家に入り込んできた総勢約20人の「暴力装置」たち!

目が覚めたのは午後2時頃だ。窓に面した細い通路に多数の「不審人物」が現れた。マスクをしている奴も多い。

「来たぞ!」誰が叫ぶでもなく声を上げる。私は玄関の施錠を確認に向かったが、そのときすでに「国家の暴力装置」数名は捜査令状を示すこともなく、網戸を開けて土足で家に飛び込んできた。私はそのうち1名から意図的かどうかわからないが、アゴを殴られた。「警察」と呼ばれる公営「暴力集団」は勝手に玄関の鍵を開錠しなだれ込んで来ようとする。玄関に立ち「令状を見せろ」と応じる住民や支持者と警察の間で激しいやり取りが続く。警察の行列の奥ではテレビカメラが回っている(後で判明したがテレビ朝日だった)。

警官押し入る(写真提供=藤倉善郎さん他)

警官押し入る(写真提供=藤倉善郎さん他)

「警察」と呼ばれる公営暴力集団は「令状」を見せろと要求しても全員に見せようとしない。「立会人を決めろ」と勝手な理屈を並べる。だいたい令状を示さずに居住空間に土足で上がり込み多数がなだれ込むなどという行為は完全な「住居侵入罪」だ。この夏、経産省前で3人が「建物にも入っていないのに」「建造物侵入」容疑で逮捕された(その後不起訴)が、今日の「公営暴力集団」の最初の犯罪は「住居侵入」若しくは「建造物侵入」さらに私に対する「特別公務員暴行陵虐罪」だ。

住人や支援者と警察のやりとりが激化し、新たな「言いがかり逮捕」の危険を感じたので、私は「公営暴力団」の指揮官に「こちらで話し合って立会人を決めるから、まずは外へ出て待て」と要請した。その間にも「公営暴力団」の実態を記録しようと、カメラを向ける人を、特に言葉も行為も乱暴な輩が階段上で押し倒し、押さえつけている(ちなみにその人は私同様フリーのジャーナリストだった!大間抜けな公安よ!)。

テレ朝が支援者を撮影する(写真提供=藤倉善郎さん他)

◆「その場」に居合わせた責務として、私が「立会人」となった

「りべるたん」は20人以上はいたであろう「公営暴力集団」全員が入れるような広い場所ではない。暴力団は1階と2階を分けて調べるから「立会人」を2人出せという。ここで傍観していては何のために馳せ参じたのか意味がなくなるので、関係者の1名が1階の、私が2階の「立会人」になることとした。「立会人」を決めると他の家屋内部にいる人には外へ出るように命じられる。女性がカバンを持ち出す際には雑な手つきで下着まで物色してた。下衆な連中である。

その後ようやく令状が示された。「令状を撮影させろ」と要求するが「暴力団」は一切聞かない。仕方ないので1階の立会人が声を上げて内容を読み上げる。細かい記録がないが、被疑事実が実に笑わせてくれるものだった。

それはなんと「被疑者は背中で機動隊員の胸部を押して暴行した」とかいう内容だった。つまり、殴ってもいなければ、前向きで押したのでもない。「背中で機動隊の胸を押した」ことが「暴行」ってどういうことだ?

マスク軍団の侵入(写真提供=藤倉善郎さん他)

学生ハンスト実行委員会の学生たちが居住する「りべるたん」(写真提供=藤倉善郎さん他)

◆バカげた捜査令状を錦の御旗に粛々と違法強権を発動し続ける辻則夫=警視庁公安部公安1課警部補

あまりの馬鹿さ加減に私は捜査の指揮を執る警視庁公安部公安1課警部補の辻則夫に、「ちょっと待って、軽く体に触れるけど、これは確認のためだから。要するにこの被疑事実はこういう形で接触したということか」と私の背中を辻に押し付けてみた。

「この令状ではそういうことになっています」と辻は否認しない。

こんなバカな容疑があるか! 満員電車で毎日繰り返されるラッシュの何分の1にもならない体の接触しか「でっち上げられない」のか。もう少し偽造するならそれらしい「容疑」を偽造して持ってこいや!

と内心あきれたが、ここでキレてはいけない。やがて「家荒らし」が始まった。2階には4人の若手を中心とした体格は良いが、人相の悪い連中が上がってきた。私はそこで「弁護士に相談したいことがあるので電話をしたい」と告げた。すると人相の悪い中年男は「それは出来ない」という。「法的根拠は」と聞くと「どの法律のどこに書いてあるというものではないが、私たちはそうしている」となめた口をきく。「何言ってるんだ法的根拠がなければ、通信・交通の自由制限できないだろう」と追及すると、指揮官辻則夫がやってきて「過去の最高判例で捜査中は弁護士に電話をかける制限をしても良いというものがある。それに従って捜査をすすめている」という。怪しい。実に怪しい。

「いつのどの裁判での判決だ?」と聞くと「そこまでは覚えていない、あとで調べてください」と開き直る。「馬鹿言うな。判例を根拠にするなら最低限事件名と何年の判決かくらいは開示できなければ信用できないだろう」と追及するが、出まかせを並べて逃げようとする。因みに「ガサ入れ」後、知り合いの弁護士に「そんな判例聞いたことあるか」と連絡し調べてもらったが、「そのような判例はない」との回答を得た。

だとすれば警視庁公安部公安一課長警部補辻則夫をはじめとして、複数の「暴力団」が語っていたことは完全に「嘘」ではないか!

私はさらに難問をぶつけた。「私はここの住人ではない。ここへ来たのも初めてだ。立会人として今外出している居住者に対しては、一定の責任がある。仮に捜査後に令状と関係ない私物がなくなっていた場合、あなたたちは関係なく、立ち会った私が責任を問われる、つまり「民事上」の債務者とされる恐れがある。だからその対策を弁護士と相談したいのだ『警察は民事不介入』だろ。それでも私の電話を阻止するのか」と別の指揮官を問い詰めると、奴は「自分の一存では判断できないから相談してくる」と言い残し、その場を去ったが、行方をくらませ二度と姿を現さなかった。

真ん中の男が辻則夫=警視庁公安部公安1課警部補(写真提供=藤倉善郎さん他)

◆「機動隊に背中を寄りかからせて」逮捕されたとする被疑者の立件などありえない!

令状によると「機動隊に背中を寄りかからせて」逮捕されたとする被疑者(否逮捕被害者)の立件なんてできるはずがない。しかもこの無茶苦茶ガサと公営暴力団「警察」のやりたい放題と、「判例がある」との明らかな虚偽による弁護士との連絡妨害。正確に数えるといったいいくつの違法行為が積み重なることだろうか。

戦争に反対する真っ当な若者のたちの意思を国家権力は「暴力」と「虚構」で押さえつけようとする。

この島国で進行している無法狼藉をいやというほど思い知らされた。

他方、住民をはじめとする学生や支援者の態度は実に立派だった。不法行為や乱暴狼藉にひるむことなく、的確な批判と抗議を貫いていた。

どちらに非があるかは語るまでもない。不当逮捕された関係者は即刻解放されるべきだ。不当逮捕、不当捜査断乎糾弾!!

弁護士への電話連絡を押さえつける辻則夫=警視庁公安部公安1課警部補(写真提供=藤倉善郎さん他)

★学生ハンスト実行委員会 ? ?twitter Facebook Blog
学生ハンスト実行委員会:9.16国会前弾圧に対する抗議声明(レイバーネット2015年09月21日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎快挙は国会前デモだけじゃない!──6日目124時間を越えた学生ハンスト闘争
◎8.27反安倍ハンストの大きな意味──開始直後の学生4人に決起理由を聞いてみた!
◎「戦争法案」阻止で街頭の前衛に躍り出た若者たちが「安保闘争」を越える時
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎「目が覚めた」人たち──抗議行動はいろんなカタチがあっていい
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎愛国者たちはなぜ「対米売国」血脈の安倍政権にNOと言えないのか?

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号!

月刊『紙の爆弾』10月号絶賛発売中!

[総力特集]安倍晋三の核心!
体調悪化、原発回帰、カルト宗教、対米追従、芸能人脈、癒着企業の深層と真相