9月12日(土)、石川県金沢市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
主催したのは、石川県内の若者たちが集まって作った「CHOOSE OUR FUTURE, DON’T LET ‘EM」だ。


[動画]戦争法案に反対するサウンド・パレードin金沢 – 2015.9.12 石川県金沢市(12分11秒)

参加者は250人、金沢で行われた無党派デモとしては過去最大規模の人数だった。普段行なわれているデモの参加者は50~80人程度なので、いつもの3倍以上だ。主催者もこの想定外の人数に驚いていた。
更に言えば、金沢のデモは年齢層もわりと高めなのだが、今回のデモは若者率が高く3割以上が若い人だった。各々が隊列の中でばらけていて行進中は分からなかったものの、デモ解散地にいた若者の多さには正直ビックリした。
今回のデモの若者率が高かったのは、コースが長く高齢者が少なかったというのもあったのだが、やはり普段デモに来ない若者が実際に多く参加していたというシンプルな理由によるものだった。中には隣の富山県から、この若者主催のサウンドデモに参加しに来た若者もいた。これまで集まれる場が無かっただけで、北陸の若者たちも「安全保障関連法案」に関心があり、反対の意思表明をしたいと思っていたのだ。

また、若者を多く集めた要因の一つには「サウンドデモ」という手段を選んだこともあったはずだ。
サウンドカーを使ったデモは金沢では初めてで、「若者デモ」「サウンドカー」「安保法案」というホットなエレメントが揃っていて、マスコミの注目度も高く取材の人数も多かった。
それは取材陣だけに留まらず、街の人々からの注目度も非常に高かった。いつものデモだと街の人たちにスルーされることが少なくないのだが、今回のサウンドデモは手を振ってくれたりする人が多くいた。

これが金沢のデモのフライヤーだ。
「カッコイイなぁ」「オシャレだなぁ」とも思ったが、それよりも何よりも「生活の延長線上にデモが位置づけられているんだ」と、私はまずそんな感想を持った。フライヤーに写っている人物がサウンドカーに乗ってプレイしていたDJで、自分のセンスで作ったそうだ。
クラブミュージックが好きな人が安保法案に反対していることを分かってもらいたくて、フライヤーにデモっぽさを無くしたという。私が感じた「生活の延長線上」というのはそこにあったようだ。

実のところ、サウンドデモはスベる事もあるのだが、金沢では普段のデモより街の反応が良かった。一体、何故だったのだろうか。そんな疑問を、主催者の一人に尋ねてみた。
「地方は特にデモコースが限られるので、わりと通行人にデモへの慣れがあったことが土台かもしれません。そのうえで今までにないサウンドパレードという形態が古くからのデモと180度雰囲気が違ったことが大きな要因でしょう。沿道から見て若い人がガチで多いのも好印象だったと思います。そして事前にデモコース周辺の店に告知に回ったのが大きかったですね。それと金沢は保守的ですが、他の土地と違って文化や芸術への理解があり、わりと進歩的な芸術家やミュージシャンが多いのです。そういう人たちのちからもあったと思います」
「基本的に、SEALDsとか反原連の流れはあると思いますが、僕たち地方の人間としたら『東京のコピー』と取られるのが一番嫌なので、金沢に合う運動形態を常に考え続け、東京をギャフンと言わしてやりたいと思ってるのが一番大きいですね」

今回のデモは、色鮮やかなピンク色をしたバナーが非常にキレイだったし、シュプレヒコールより音楽がメインという印象だったのだが、それも一つのポイントだったのかもしれない。つまりは「怒っていない」こと、怒りの表明の少なさがその答えだったのではないか。
金沢は保守的で、デモで声をあげにくい土地柄だ。それはデモに参加する人だけでなく、それを目撃する街の人も同じで、デモに対する反応さえもしにくい。その点、怒り少なめのサウンドデモには反応がしやすかったのだろう。
もちろん、主催者の方々の気配りやセンス、参加者の真剣な姿、それらが根本にあったから良いデモができたのだ。そこを忘れてはいけない。

「CHOOSE OUR FUTURE, DON’T LET ‘EM(=私たちの未来は私たちが選ぶ、彼らには決めさせない。)」、そのような心強いグループ名の若者たちが金沢で声をあげた。彼らは北陸の希望だ。



[2015年9月12日(土)・石川県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。
11月21日には全国の路上でヘイト・スピーチと闘うカウンターの姿を追った初写真集『ANTIFA アンティファ ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』(鹿砦社)が全国書店にて発売決定!

《ウィークリー理央眼》
◎《025》戦争法案に反対する若者たち VOL.19 川越
◎《024》戦争法案に反対する若者たち VOL.18 郡山
◎《023》戦争法案に反対する若者たち VOL.17 弘前
◎《022》戦争法案に反対する若者たち VOL.16 仙台
◎《021》戦争法案に反対する若者たち VOL.15 秋田