「道の駅かでな」から見える沖縄の断片

 
 
 
 
 
 

嘉手納基地のすぐ横に4階建ての建物「道の駅かでな」がある。道の駅は各地で特産品を取り扱う場所としてドライブ旅行をする人にとっては、地域の独自性を楽しむのに人気の場所である。「道の駅かでな」はそういった意味を持ちながら、米軍基地を眺め降ろせる場所として、特別な場所であり、また視点を変えれば、現在沖縄の1断面が凝縮されている場所だとも言えよう。

◆4階展望スペースから嘉手納基地を眺める

1階は建物の外で食べる軽食の販売と土産店がある。ここでは沖縄土産として知られている御菓子やキーホルダーなど一般の土産物店と陳列物はそう変りないが、米軍を意識したTシャツやグッズも販売されている。琉球語でいう「チャンプルー」(まぜこぜ)状態だ。

2階には食堂があり、この食堂の入り口にはあまた有名人のサイン色紙が飾られている。食堂に入ったことはないが、訪れた人によるとこの食堂は概ね好評を得ている。3階には嘉手納町学習展示室があり、基地を中心とした嘉手納町の現状や基地にまつわる事件事故、戦闘機の離発着音を航空機、トラックの発する騒音との聞き比べなど、押しつけがましい理屈ではなく、事実を羅列することによって嘉手納基地の弊害が学べるようになっている。

そして4階は展望スペースである。ここからは、嘉手納基地を離発着する全ての米軍機を直接見ることできる。観光客だけでなく、日本テレビ、フジテレビのカメラクルーは常駐しており、折々国際的な事件に際し嘉手納基地に飛来する米軍機、または嘉手納基地から飛び立つ米軍機を観察し、米軍行動の意図を探る1つの要素としている。休憩用の机と椅子があるのだが1つの机には「報道・関係者専用」と書かれた紙が貼られている。近年中国からの旅行者も多いようで中国語で同様の内容も書かれている。

この日嘉手納基地に目立った動きはなかったが、ご覧の通りF16や、各種輸送機が駐機している様子は伺えた。またヘリコプターの離着陸は頻繁にあった。待機しているテレビ局のスタッフによると、「朝鮮半島や中国情勢が動いた時にグアムなどから飛来する軍用機が増えますね。その機種を観察すると米軍の作戦規模や意図を推測することができます」ということだった。

◆基地より観光

おそらくは米軍飛行場の内部がもっとも見渡しやすい場所としての「道の駅かでな」は騒々しく語らずとも、そこに立ち寄る旅行者に(一定の感性があれば)米軍基地の暴力性を訴える場所として機能している。

しかし前述のとおり、1階土産物屋では米軍グッズも取り扱っている。沖縄県はかつて「米軍がなければ、経済的に立ち行かない」という論法で抑え込まれていた時期があった。だが現在、沖縄県が基地経済に依存する割合はあまり知られていないが5%にまで下がっている。沖縄を訪れる観光客数は2015年度793万人に達し前年比10.7%プラスで、とくに海外からの訪問者は69.4%増と際立った増加を見せている。観光業の総収入は6000億円で、このまま成長すれば近く1兆円産業になるとの見方もある。あながち外れてはいないだろう。

過去沖縄への観光客が激減した時期が何回かあった。それは第一次湾岸戦争と第二次湾岸戦争のときで、観光業に従事する人の自宅待機や解雇も相次いだという。つまり観光にとって米軍基地の存在は迷惑以外の何物でもないことが証明されたわけだ。

沖縄に米国の基地を見に来る人が全くいないわけではないだろうが、観光客の多くは豊かな自然や文化にふれることを楽しみにやってくる。そこへ立ちはだかる米軍基地は経済的な面からも「邪魔者」になりさがった。そのことを「道の駅かでな」は存在で示している。土産店で売られる米軍関連グッズの売り上げもおそらく施設全体の収入からすれば5%もいかないだろう。沖縄の日常のある種の凝縮がここにある。

 

(鹿砦社沖縄取材班)

在庫僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)
在庫僅少『ヘイトと暴力の連鎖 反原連-SEALDs-しばき隊-カウンター』(紙の爆弾2016年7月号増刊)
『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン