◆検察VS官邸

河井容疑者夫妻逮捕によって、自民党本部の犯罪・安倍総理の犯罪(「買収目的交付罪」の適用)が明らかになりつつある。いま、最もホットなテーマである安倍訴追の可能性を暴くのが、
「河井夫妻逮捕も“他人のせい”安倍晋三が退陣する日」(山田厚俊)
「安倍政権のために黒川弘務は何をしたか」(足立昌勝)
「『検察再生』が問われる“安倍犯罪”立件」(青木泰)
および「黒川前検事正と記者3人起訴でキシャクラブ解体を」(浅野健一)であろう。

『週刊文春』(オンライン)によれば、河井容疑者の捜査は7月中の『勇退』が決まった稲田伸夫検事総長、元東京地検特捜部長の堺徹次長検事、元特捜部副部長の落合義和最高検刑事部長のラインが主導する形で、現場の広島地検を動かして行われていたという。そして水面下で特捜部を動かしながら、広島地検を使って河井夫妻の捜査を実質的に指揮していたのは、実質的に最高検刑事部長の落合刑事部長だったとされる。

2010年の大阪地検特捜部証拠改竄事件、小沢一郎元民主党代表の秘書取り調べで東京地検特捜部が『虚偽』の捜査報告書を作成などで、「仮死状態」だった特捜検察が復権したのである。それというのも、安倍総理肝いりの黒川弘務の定年延長・検事総長昇進構想が、ほかならぬ黒川自身の賭博常習癖の露呈(内部リーク)によって潰えたからである。

この先、検察に「再生」の道があるとしたら、自民党本部・総理官邸の容疑にかぎりなく近づく(総理を逮捕できないまでも警鐘を鳴らす)ことであろう。安倍一強・党本部一元支配の構造がゆらぎ、自民党が「本来の分権的な多様性と寛容さ」を取りもどす可能性はそこにある。そして三権分立(報道をふくめて四権)の原則と健全さも、安倍総理の退陣とともに回復される可能性があると指摘しておこう。

◆再開発という「まちこわし」に異議申し立てする立石・十条の住民たち

「せんべろ立石・十条不屈の闘い」(取材・編集部)は、葛飾区立石の再開発との闘いを紹介したものだ。立石はわたしも自転車でとおる猥雑な街で、記事のタイトル「せんべろ」は1000円で満足できる呑み屋が連なるという意味である。近年はB級グルメガイドにも紹介され、地方からの観光客が東京スカイツリー見学の延長で観光飲みすることも多くなっていた。そしてタイトルにある「不屈の闘い」は、ながらく計画されていたタワーマンション・高層ビル化(再開発)がひとつの矛盾とともに行き詰っていることを明らかにする。

すなわち、先行する京成線の高架化によって、立石駅の南北に計画されていたバスターミナルが、高架の下に確保されることだ。阪神電鉄本線や京浜急行の例にみられるように、高架化には交通渋滞の解消とともに、多角的な駅前再開発を可能にする利点がないではない。いっぽう、タワーマンションは武蔵小山で豪雨災害にたいする脆さ、管理費の高騰によるスラム化が取りざたされている。とくに大規模修繕工事(ゴンドラ設置など)における億単位の支出が、管理組合会計を大幅にこえる例が多発しているのだ。再開発でスラム化するのでは意味がない。

立石のような再開発計画は、東京では北区十条・板橋区大山でも起こっている。再開発が「まちこわし」では、ゼネコンのためのスクラップ&ビルド。壊すための経済がはてしなく繰り返されることになる。長期にわたる住民の異議申し立てこそが、地域にとっての希望だ。

◆広告業界経験者が書く、電通の不思議

「なぜ『電通』に委託するのか 巨大化する電通と官公庁の癒着」(本間龍)は、持続化給付金をめぐる「中抜きシステム」を謎解きする。1500億円の巨額案件で、電通に抜かれたのは数十億円。全体では20%に近い金額になると推定している。通常の広告マージン20%というわけだ。しかしこれは広告ではなく、血税で中小企業を救済するたけの公的な支援事業なのである。レポートする本間氏は「彼ら(電通マン)の常識は世間の非常識である」と喝破する。

われわれの疑問は、記事中にある「なぜ広告代理店がこういう仕事を受注するのか」であろう。この疑問に、本間氏は「デンパク(電通と博報堂)」の巨大化と官庁との結びつきの強さであると解説する。それはデンパクが官僚の天下り先であり、多数の業者に事業を説明するよりも効率的に進められる、つまり官僚がラクをできるからだと。そして「週刊文春」でも明らかになった電通の「下請け圧力問題」である。徹底した公金使途の透明化が、今後のジャーナリズムの使命であろう。そして政治によるルールづくりである。

◆セックスワーカーへの視点

「セックスワーカーを含む すべての人の尊厳を守れ」(小林蓮実)は、「AWASH」代表・栗友紀子氏のインタビューで構成されている。AWASH(Sex Work And Sexual Health)はセックスワーカーの健康と安全のための、当事者によるグループだ。日本におけるセックスワーカーの法的な位置が、合法化と非犯罪化(合法化と犯罪化という法概念がある)にあることを、この記事で改めて確認できた。

非合法化とは、一般労働者と同じ権利を確保するというものだ。しかし風営法などで、一部合法化されているのも事実である。物議をかもした「岡村発言」への批判も、視点によって微妙なものをもたらす。このあたりは21世紀のジェンダーを考えるうえで、記事を手にとって欲しい。栗友氏の「労務自主管理」という提案は斬新だ。小林氏の仕事にも敬意を表したい。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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