ニュージャパンキックボクシング連盟からチャンピオン二人を迎えた今回の新日本キックボクシング協会興行「MAGNUM 53」。

勝次はタイミング悪いスリップ気味ノックダウンを奪われ判定負け。勝てる試合を落とした印象が残る。

高橋亨汰はベテラン健太から効かせたノックダウンを奪う判定勝利。新日本キックボクシング協会の新しいメインイベンターに迫りつつある存在となった。

アルゼンチンから来日、伊原ジムに所属し、2018年5月、デビュー1年で王座獲得したリカルド・ブラボは、その後もムエタイ・ラジャダムナンスタジアム出場も経験し、着実に力を付けて来た中、パンチの連打で順当にイベント「TENKAICHI」からの刺客、幸輝を仕留めた。

女子キックの七美 vs KAEDEは男子に劣らぬ高度な蹴り合いを見せる展開で、女子キック界そのものの実力向上が感じられる試合となった。

◎MAGNUM 53 / 10月25日(日)18:00~20:06
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第8試合 63.6kg契約3回戦

WKBA世界スーパーライト級チャンピオン.勝次(藤本 / 63.5kg)
    VS
NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G / 63.05kg)
勝者:畠山隼人 / 判定0-2 / 主審:少白竜
副審:椎名28-28. 宮沢28-29. 仲28-29

勝次の右ストレートも畠山隼人の顔面をかするところまで

飛びヒザ蹴りを読まれたか、畠山隼人の右ストレートでノックダウンを奪われる勝次

開始早々から畠山のパンチの幾つかが勝次の顔面にヒットし、左コメカミ辺りが赤く腫れ始め、勝次はやや印象悪いスタートから畠山のパンチに合わせて蹴りとやパンチで探りを入れていく。勝次は飛びヒザ蹴りで畠山をコーナーに追い込むが、畠山は想定内と見えるディフェンスでパンチを返す。

第2ラウンドには勝次のローキックが畠山の左足にヒットし始め、畠山の動きを弱める効果が出てきたが、畠山も勝次の動きに合わせて蹴りとパンチで返し、明らかな差は出ない展開。

第3ラウンド、勝次はパンチと蹴りで畠山をコーナー付近に追い詰めたが、飛びヒザ蹴りを放って着地する辺りで連打から右ストレートを浴びてしまい、ノックダウンを取られてしまった。押されて尻もちを付くようにダメージは無く、勝次は立ち上がり反撃をするも、残り時間は少なく畠山は凌いで終了した。

畠山隼人に打たれて下がるシーンも幾度か見られた勝次

反撃もヒットしない勝次、焦りが見え始める

◆第7試合 70.0kg契約 5回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(伊原 / 69.9kg)
    VS
幸輝(インター/ 69.5kg)
勝者:リカルド・ブラボ / TKO 2R 1:35 / 主審:桜井一秀

第1ラウンドに様子見からリカルド・ブラボが左フックでノックダウンを奪い、その後、連打でスタンディングダウンを奪うが、両者のローキックの攻防は強く速く、幸輝がリカルド・ブラボを下がらせる展開も見られていた。第2ラウンドにはリカルド・ブラボが再び連打から左フックで幸輝を仕留めると、強いダメージを負った幸輝をレフェリーストップされて終了。

パンチ力ではリカルド・ブラボが優った

リカルド・ブラボが連打で倒すと幸輝は立ち上がれず

◆第6試合 62.0kg契約 5回戦

日本ライト級チャンピオン.高橋亨汰(伊原 / 61.85kg)
    VS
健太(前WBCムエタイ日本ウェルター級C/E.S.G / 61.65kg)
勝者:高橋亨汰 / 判定2-0 / 主審:椎名利一
副審:宮沢48-47. 少白竜48-48. 桜井48-47

距離を取った中でのパンチと蹴り中心の展開は互いに主導権を奪うに至らないが、高橋亨汰は顔面前蹴りもあり、健太に調子付かせない圧力があった。後半に向かうにつれ徐々に健太がベテランの読み深さがある接近戦で、プレッシャー与えるように出てヒジ打ちの圧力で巻き返しも見られる。

最終ラウンドで健太がパンチやヒジ打ちで攻勢を掛けたところで高橋亨汰の右フックがカウンターでヒット。健太からノックダウンを奪うと更に顔面前蹴りで圧倒するも健太は組み合って凌ぎ、高橋亨汰が判定勝利を掴む。

高橋亨汰のカウンター右フックが健太にクリーンヒット

ベテラン健太からノックダウンを奪って勝利を決定づけた高橋亨汰

高橋亨汰がノックダウンを奪った後の前蹴りが健太のアゴにヒット

◆第5試合 53.0kg 契約3回戦

泰史(元・日本フライ級C/伊原 / 53.0kg)
    VS
景悟(LEGEND / 52.5kg)
引分け0-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名29-29. 少白竜29-29. 桜井29-29

泰史が追い、多彩に攻めてロープ際に追い込む展開も、景悟もヒジ打ちやヒザ蹴りの的確なヒットで劣勢を免れる。印象点は泰史の前進にあるが、景悟のヒットは泰史を上回り、差が付き難い終了となった。

泰史の前進する圧力でのハイキック、この後、景悟も多彩に返していく

◆第4試合 女子スーパーバンタム級3回戦(2分制)

七美(真樹オキナワ / 54.95kg)
    VS
KAEDE(LEGEND / 55.2kg)
勝者:KAEDE / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名28-30. 仲28-30. 桜井28-29

◆第3試合 女子54.0kg契約3回戦(2分制)

アリス(伊原 / 52.3kg)
    VS
上野hippo宣子(ナックルズ / 53.5kg)
勝者:アリス / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-27. 仲30-29. 宮沢30-28

◆第2試合 女子49.0kg契約3回戦(2分制)

オンドラム(伊原 / 48.8kg)
    VS
ERIKO(ファイティングラボ高田馬場 / 48.75kg)
勝者:ERIKO / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:仲27-30. 少白竜27-30. 宮沢28-30

◆第1試合 ジュニア女子43.5kg契約3回戦(2分制) 当日計量

曽我さくら(クロスポイント大泉)
    VS
安黒珠璃(闘神塾)
勝者:安黒珠璃 / 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

《取材戦記》

年頭から3興行連続でメインイベントを務めた勝次。いつものスポンサー名入り赤いダウンは纏わずタオルを肩に掛けてリング下まで入場。トランクスもシルバー一色。初心に帰った意気込みが感じられたが、先月の潘隆成戦に続き判定負け。

コロナ禍の中、勝次は藤本ジム所属のまま、伊原プロモーションとマネージメント契約を結んだ練習場という意味での“ジム移籍”当初は、例え今までに無い綿密な指導を受けていたとしても、それはまだ身体が心理面と共に馴染んでいない可能性があった。潘隆成に敗れたことで後が無い焦りも加わったかもしれない。2月2日のロンペット・ワイズディー(タイ)戦の敗戦含めれば3連敗となってしまった勝次。この先行きどうなるか。崖っぷちから足を滑らせ、まだ崖から手でぶら下がっている状態なら這い上がることは可能かもしれないが、キックボクシングだからこそ続けられるサバイバルマッチ。その厳しい境地は今後も続くのだろう。

新日本キックボクシング協会としてもコロナウイルス蔓延対策によるソーシャルディスタンスを保つ興行が続き、こんな苦戦が続くのはどこの団体も同じ。他団体との交流戦体制も得ながら生き残りの戦いも続きます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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