関西電力(以下、関電)の旧経営陣の八木誠前会長、森詳介元会長ら9人の金品受領問題、報酬闇補填問題(※)などすべての容疑について、11月9日、大阪地検特捜部は「嫌疑不十分」で不起訴とした。旧経営陣らは事情聴取で「(金品は)預かり保管していた」と主張、一方、渡した側の森山栄治氏(元高浜町助役)が死去していることから、会社法の収賄罪の立証は困難とした。翌日10日正午より、「関電の原発マネー不正還流を告発する会」のよびかけで、地検前での緊急抗議行動が行われた。

※「報酬闇補填問題とは」ー関電は3・11後、電気料金の値上げに伴い、役員報酬を減額していたが、役員の退任後、相談役などに就かせ報酬を補填していた。

大阪地検への緊急抗議行動に集まった人たち

◆このような不起訴決定は許すことは出来ない
 末田一秀さん(告発する会共同世話人/はんげんぱつ新聞編集委員)

冒頭、はんげんぱつ新聞編集委員で「関電の原発マネー不正還流を告発する会」共同世話人の末田一秀さんから経過報告がなされた。 

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昨日、大阪地検の担当検事から、弁護団の大河弁護士に不起訴にした、理由は嫌疑不十分だという連絡がありました。夕方五時からWEBで記者会見を行い、「不当だ!」とマスコミにも訴えました。今日のマスコミ報道を見ると、地検の特捜部長が「これは社会的に注目を集めている事件だから」ということで記者会見し、50分にわたって説明を行ったとのことです。

私たちはいくつかの事件について告発していますが、結局、被告発人である関電旧経営陣の言い分を認めたとなっているみたいです。(旧経営陣の)「金は預かっていただけ」(高浜町元助役サイドに)「便宜供与はしていない」、そして「闇補填ではなく、実態的な仕事があった」と被告発人は、任意の事情聴取で受け答えていて、私たちが起こしている株主代表訴訟でもそのような主張をしているわけですが、それを「突き崩せなかった」という特捜部長の説明であったという記事になっています。

中でも、金品を受け取っていたことよりも、役員の給与の闇補填に関しては、非常に明白な事実なので、それに関しては、産経新聞は「きわめてグレーだ」と警察関係者が述べていると書いているし、京都新聞は「金品授受は厳しいので、そっちは見切りをつけて、闇補填に関して集中的な捜査を続けてきた」と書いてあります。闇補填に関しては、なぜ不起訴になるか理解できないが、業務の実態がなかったと、裁判で証明することは難しいと判断したとあります。大阪国税局は税務調査に入ってきちんと調査して「これは悪質な所得隠しだ」と認めたわけです。それに対して大阪地検は一度も強制捜査をしなかったということですから、地検は嫌疑不十分で立証できなかったということでいうと、彼らは無能なのかと問いたいと思います。

考えてみると、4月28日に毎日新聞が、不起訴の方針を固めたと報道しました。それから何か月か経っていますが、この間、起訴すべきかどうかで、検察のなかでも綱引きがあったということです。ほかにも、この事件を不起訴にすると、市民の信頼を得られないと述べる検察内部関係者もいたという記事もあります。本当に起訴か不起訴かの綱引きがあったなかで、大阪地検は上級検察庁と協議をして、結果的に不起訴になってしまった。そうなったら、検察審議会に訴えるぞと前から私たちは言っていますから、それに耐えられるように、捜査を尽くした形を作りたかったのだと思われます。どちらにしても、このような不起訴決定は許すことは出来ないので、ここで抗議の声を上げていきます。

末田一秀さん(「関電の原発マネー不正還流を告発する会」共同世話人/はんげんぱつ新聞編集委員)

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◆「金品を預かっていただけだ」では許されない
 長澤啓行さん(大阪府立大名誉教授/若狭ネット資料室長)

大阪府立大名誉教授で若狭ネット資料室長の長澤啓行さんからのアピール。

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長澤啓行さん(大阪府立大名誉教授/若狭ネット資料室長)

 今回、大阪地検の姿勢が変わるではという期待がありました。問題は、関電の原発利権構造が変わったのかどうか。変わってないんです。今朝の朝日新聞で暴露されていましたが、贈収賄の原資を工面した「吉田開発」(福井県高浜町)が、関電の特重施設、いわゆるテロ対策施設の敷地造成などで出た残土を山に捨てにいき、そこでトラブって、受注した金額で賄えないということになったが、その賠償金を誰が払ったか?関電が発注額に上乗せして払っているんですよ。

これはあの、贈収賄の発注額に毒まんじゅうを上乗せして、贈収賄資金に回った、あの構造とまったく一緒じゃありませんか。このような利権構造が、地検が不起訴をしたとたんに暴かれてくる。これは一体どうなっているんだ! 大阪地検はこのような実態を、目の当たりにして、今回の不起訴にして、関電の利権構造が少しでも変わるのか? これを助長するのではないか。それをはっきり自覚して、今回の不起訴を撤回すべきではないかと思います。

しかし、我々が進むべき道は、東電を起訴したあの過程を関電に対してもやるしかないということです。東電は、地震調査研究推進本部の津波評価について、「これは信頼性がない」と御用学者にいわせた。それを地震学会の多数の意見であるかのようにやった。これで東京地検は不起訴にした。ところが、それを市民が許さなかった。2回の検察審査会をやって、起訴にもちこんだ。その結果、東電の幹部は無罪になりましたが、裁判の過程で、彼らが津波の危険性を無視し、津波対策を行わなかったという具体的な証拠が積みあげられた。とてもこの積み上げられた証拠を見直せば、無罪は出せないだろうと思った。ところが悪徳裁判官は無罪にしてしまった。そこで、今、控訴審に入っています。控訴審では、明らかにされた証拠を再度積みあげて、有罪にもっていくのではないかと期待されます。

関電もおなじです。関電は贈収賄をやった、受けた、収賄された金は回ったのでなく「預かっただけ」という。こんなことが許されるなら、贈収賄事件はすべて起訴できない。贈収賄をやった人は「お金を預かっていただけだ」では許されない。このような事態を我々は断固として許すことはできない。市民の力で地検の不当な決定というものを、具体的に裁判に持ち込み追及し、暴いていかなければならにだろうと思います。そうしなければ、関電の利権構造を潰すことはできない。これを潰すことが、私たちの今の使命ではないかとおもいます。今度の不当決定に屈せず、検察審査会を含めて闘い、関電の利権構造を潰すまで闘っていきましょう。

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◆再び末田さんの訴え

最後に再び末田さんがマイクを握り、関電と大阪地検のズブズブの関係を明らかにし、今後、検察審査会に申し立てを行って闘おうと訴えられた。

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「金品は預かっていただけ。そして便利供与はしなかった」という、被告発人の主張を指南したのは、元大阪高検検事長の佐々木茂夫です。2018年に国税局が査察に入ったということを聞いたときに、関電は佐々木を呼んできて、検察対策をやった。そしてそういう主張に整理された。当時事件が発覚したとき、八木会長が記者会見で思わず「便利供与はなかったと整理されています」と答えています。まさに佐々木の指導によって「整理をした」。そして検察庁OB佐々木の忖度によって、大阪地検は不起訴にすることしかできなかった。そういう構造です。佐々木は今、関電の取締役です。大阪地検は関電への天下りを今後も続けていきたい。関電とズブズブの関係の大阪地検と私たちは思っています。告発人の方には、検察審査会への手続きを弁護士にお願いする委任状がメールか郵便で送付されます。署名捺印して告発する会事務局まで郵送してください。よろしくお願いします。

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最後は大阪地検へ向かってシュプレヒコールをあげて抗議行動を終えた。大阪地検とずぶずぶの関係で利権を漁り続ける関電を今後も徹底的に追及していこう!

 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)「西成青い空カンパ」
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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