SOUL IN THE RING 13 / 12月13日(日)後楽園ホール17:00~
主催:目黒藤本ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆日本ヘビー級チャンプ松本哉朗がついに現役引退

松本哉朗テンカウントゴング

日本ヘビー級チャンピオンの松本哉朗が現役引退しました。今年2月11日の「NO KICK NO LIFE」でノブ・ハヤシと対戦、第1ラウンドでヒジ打ち一発でノブの額を切りTKO勝利。重量級での対戦相手の少なさ、“ヒジ打ち有効5回戦”を受けてくれる選手は少なく、40歳を過ぎてモチベーションも低下していきました。

それでも過去、2005年5月にはタイ国ラジャダムナンスタジアムでミドル級王座挑戦経験もありました(ラムソンクラーム・スワンアハーンジャーウィーに判定負け)。日本ミドル級王座は6度防衛。体の成長で減量が苦しく7度目の防衛戦で敗れ転級も、ヘビー級では軽い体で、100kg級の選手との対戦は体格差で劣る場合もありましたが、それを感じさせないパワーでKO勝利を増やしました。

日本ヘビー級王座は1度防衛。純粋なキックボクシングに拘り、他競技枠となるヒジ打ち禁止や3回戦は極力拒みつつ、それでは試合が無い状況になるので、受けざるを得ない試合が多いようでした。

古代ムエタイ演舞

この日行なわれた引退式は中盤第7試合後に行なわれ、伊原信一代表をはじめ、6人の協会役員から記念品と御祝儀が渡され、松本哉朗の御挨拶とスポットライトを浴びてテンカウントゴング。役員と記念撮影をしてリングを下りました。その時間17分。前日の竹村哲引退式の約半分の時間だったのは、後半の試合を控えてのセレモニーで長引かせられない状況だったため。松本哉朗もその実績、その存在感から重みある引退式となりました。振り返れば多くの実績有る選手と対戦し、後悔無くリングを去ることが出来たようです。

またアトラクションとして古代ムエタイ演武が披露されました。「現在のスポーツ競技となる前の、古き時代のムエタイの原点となる技が芸術的に披露されました。

◆高橋勝次 vs 山田春樹 ──チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン!

日本ライト級タイトルマッチ5回戦
チャンピオン.勝次(=高橋勝次/目黒藤本/61.2kg)vs 挑戦者同級3位.春樹(=山田春樹/横須賀中央/61.2kg)
勝者:勝次 / 3-0 (主審 椎名利一 / 副審 仲 50-48. 桜井 50.48. 宮沢 50-48)

勝次vs春樹、単発ながら緊迫感あり

先月の黒田アキヒロ(フォルティス渋谷)に逆転判定負けしたショックが心配された勝次でしたが、その影響は無く、しかし初防衛戦の追われるプレッシャーはあった様子で、試合は単発の攻防に盛り上がらず、勝ちに徹することを意識するあまり、見た目は不細工な試合になってしまいました。

「“チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン”と藤本ジムでは言われているので、そのプレッシャーはキツかったです。」と試合後、勝次は語りました。

鴇稔之トレーナーとラウンドガールに囲まれる勝次

目黒藤本ジムで勝次を指導してきたトレーナーの鴇稔之氏も、自身が日本バンタム級チャンピオンになった1987年(昭和62年)7月以降、先代会長の野口里野さんに常に言われていた言葉がそれでした。

里野会長はキックボクシング創設者・野口修氏の実母で目黒ジム会長職を創生期から1988年5月に亡くなられるまで長く務めた人でした。鴇氏はその里野会長が残した、純粋なチャンピオンの義務を引継ぎ、指導してきたジムだけに、チャンピオンになってすぐ王座返上する者はいませんでした。

「次の防衛戦は倒しにいきますよ」と早くもV2宣言。「その上の目標は、チャンスを貰えるならラジャダムナン王座を視野に、与えられるものならWKBA王座も狙えればいいです。まず日本王座を防衛していかないと認めてもらえないので一つ一つ勝ち上がっていきます」とコメント。

対する春樹はランカー対決で星を落とすことも多かったですが、ライト級で地道に成長してきた選手。一発で倒すパワーは無いが若さと前蹴りから繋ぐパンチやミドルキックの突進力でまたタイトルに絡んで欲しい選手です。

◆江幡睦 vs ルークタオ・モー・タマチャート ──2016年に4度目のラジャダムナン王座挑戦を目指す江幡睦

54.0kg契約5回戦
WKBA世界バンタム級チャンピオン 江幡睦(伊原/53.3kg)vs ルークタオ・モー・タマチャート(タイ/54.0kg)
勝者:江幡睦 / TKO 2R 3:02 / ノーカウントのレフェリーストップ / 主審 仲俊光

ローキックでルークタオの動きを弱らせる江幡睦

目黒藤本ジム興行ながら、メインイベントに登場したのは江幡睦(伊原)。9月のWKBA世界王座奪回後、初試合でしたが、毎度攻略は難しい相手が来日する中、ルークタオはミドルキックが速く強く、崩し難い感じながら徐々に弱点を見つけ、ローキックが効いている様子が伺えると上下打ち分け、得意の左フック一発でボディを効かせ、倒して勝利しました。来年は睦にとって4度目のラジャダムナン王座挑戦へ向けて今度こそ失敗は許されないプレッシャーとの戦いになるでしょう。

新日本キックの“殿堂選手”緑川創(目黒藤本/70.0kg)は70.0kg契約3回戦で、スーパーバーン・ホーントーンムエタイジム(タイ/68.9kg)に3ラウンド1分9秒、TKO勝利。同じく“殿堂選手”石井達也(目黒藤本/63.2kg)は63.5kg契約3回戦で、成合SATORU(若松セキュリティ/62.5kg)に大差判定勝利しました。来年は江幡ツインズより先にムエタイ王座を狙うほどの飛躍して欲しい目黒藤本ジムコンビです。

1973年のプロスポーツ大賞は王貞治を抑えて沢村忠が受賞した!

ところで2015年のプロスポーツ大賞表彰式が12月25日に都内ホテルで行なわれました。キックボクシング界では功労賞をWKBA世界スーパーバンタム級チャンピオンの江幡塁(伊原)が受賞(昨年は江幡睦)。新人賞を日本バンタム級チャンピオンの瀧澤博人(ビクトリー)が受賞しました(昨年は翔栄)。

新人賞は各競技加盟団体から15名選ばれ、そこから最高新人賞が一人選ばれますが、キック界からはさすがに難しい壁となっています。キックボクサーがプロスポーツ大賞に輝いたのは1973年の王貞治氏を抑えて沢村忠氏が受賞した年のみです。いつの日かまた、プロスポーツ大賞と最高新人賞が獲れるメジャー人気とスターを生み出して欲しいものです。

松本哉朗が協会役員に囲まれて記念撮影

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

◎強くなるためにタイへ行く!日本キックボクサー「ムエタイ修行」今昔物語
◎キック新時代を牽引するRIKIXジムの「NO KICK NO LIFE」
◎ルール変更の紆余曲折から辿る日本キックボクシング界の栄枯盛衰クロニクル

月刊『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン