沖縄で、ほとんどガイドブックなどにも載っていないが、久高島という島がある。
ここでは、絶対にリゾート開発ができない。
なぜなら、土地の私有制がないのだ。村有地などを除いてすべて島民の共有地なのだ。
土地は「久高島土地憲章」に基づいて、島の委員会が、島民に貸し与える。島民はそこに家を建てたり、農地などとして活用するのだ。

土地の私有制がないなど、おそらく、日本でここだけだろう。
明治6年の地租改正で、全国的に、土地に対する私的所有権が確立している。
久高島だけ、琉球王朝時代の地割制度が唯一残っているのだ。

なぜ、そうなっているのか、島の図書館で調べてみたが、はっきりとは分からない。
久高島は、琉球の始祖アマミキヨが最初に降臨し、五穀をもたらした「神の島」だ。
今でも島には、御嶽と呼ばれる神域が多くある。
一般人の立ち入りは禁じられているので、ビデオで見ただけだが、原っぱに、香炉が一つポツンと置いてあるだけだ。
きわめてシンプルな宗教だが、琉球王国時代には国王が島に渡り礼拝を受けていたほど権威があった。
その「神の島」の威厳で、地租改正が行えなかったのだろうか。

久高島の存在は、知られていないどころか、なんだか隠されている、という気がする。
琉球の歴史をひもとくと、首里城には、久高島の遙拝するための部屋があった、と書かれている。
しかし、再建された首里城に行っても、そんな記述はどこにもない。
案内嬢に聞いて、やっと、「この部屋から久高島が見えたのではないか」という場所を教えてくれた。

何もないところが好き、という旅の通には、久高島は最適だ。
観光地的なものは何もなく、周囲8キロの小さな島なので、歩いて一周できてしまう。

民宿もあるが、私は知り合いのつてを辿って、民泊した。
連絡した時に、宿泊はできるが、食事が用意できない、と聞いていた。
島に唯一のレストランで、エラブウナギ丼を食べていると、その家から電話がかかってきた。食事が用意できたから、早く帰ってくるように、とのことだった。

久高島で神事を司るのは女性だ。ノロと呼ばれる専業の祝女の下で、普通の主婦がカミンチュ(神人)と祭事を行う。
カミンチュは70歳で定年となるのだが、泊まった家のおばあさんは、元カミンチュでとても貴重な話を聞かせてくれた。

夜、敵に打ち勝つ夢を見た。
久高島。お勧めである。

(FY)

★写真は、島で唯一のレストラン