日本野球機構(NPB)がプロ野球の1軍公式戦で使っている統一球について、今季開幕から従来より「飛びやすい仕様」にしていた事実が波紋を呼んでいる。
「昨シーズンは交流戦終了時点(6月20日)で331本だった本塁打が、今季は交流戦終盤の6月11日で512本と昨シーズンの約1.5倍となっている。
「今年は飛ぶと思っていた選手は多いが、NPBがボールを発注しているミズノに『表向きはなにもしていないことにしておこう』と口を含ませていたことも判明している。これは由々しき問題で、投手の生殺与奪をボールが握っているとしたら、投手たちは労働条件を変更されたわけで、黙っているべきではないだろう」(プロ野球関係者)
なにしろ飛びやすい仕様にしていた事情は、日本プロ野球選手会(楽天・嶋基宏会長)との事務折衝でしぶしぶ認めたというあり様だ。

「そもそも、国際大会への対応や、飛距離を抑える目的で2011年から統一球が導入されたが、ロースコアのゲームが続いて、観客の激減にもつながったと見ていたのではないか。ほかにこっそり飛ぶ仕様に変えていた理由がわからない」(ファン)
どう見ても今年の球は飛びすぎだ。ブランコやバレンティンの打球などピンポン球のようにスタンドまで飛んでいくではないか。

統一球は、メジャーリーグの球よりも飛ばないとされており、実際にメジャーリーグの公式球と統一球を同じ高さから落とした場合、メジャーの公式球がより高く弾むことが分かっている。どうして同じ球技で、まったくボールが国ごとにちがうのか理解に苦しむ。どうせなら、WBCで使用する球を世界標準にしたらどうなのか。
「ミズノ社では、メジャーリーグの球に近づける努力を重ねています。縫い目も幅を1ミリ広げ、8ミリとしていますし、高さも0.2ミリ低い0.9ミリに変更、これにより、国際大会への対応が容易になると信じられていただけに残念です」
(前出・プロ野球関係者)
NPBは「飛ぶ」ボールを使ったほうが、プロ野球がおもしろいと考えていたようだ。飛ぶボールで空中戦がおもしろいのか、息詰まる投手戦がおもしろいのかは、好みが分かれるが、今の統一球で投手たちは苦い思いをしている。
もしエンターテイメント性を追求して投手たちの生活を苦しめるのなら、確実にNPBは「アウト」である。

(鹿砦丸)