6月27日、株式会社フジ・メディア・ホールディングスの株主総会が、台場駅近くのホテル日航東京で行われた。
総会開始に先立って、反リストラ産経労(労働組合・反リストラ・マスコミ労働者会議・産経委員会)と支援者によって、ビラ撒きやアピールなど宣伝活動が始まる。
ホテル日航東京入り口近くには、「フジ・メディアHD」の札を下げた、スーツ姿の男性達が横に並んでいる(写真)。彼らはなんのためにいるのだろうか? 時折、カメラをこちらに向けて写真を撮る。まるで、集会やデモの時の公安警察のようだ。
参加する株主たちは、次々にビラを受け取っていく。やはり投資家たちにとっても、会社がどんな問題を抱えているのかは、気になるところだ。

フジテレビグループ、ニッポン放送グループ、産経新聞グループなどを統括する、メディア・コングロマリットが、フジHDである。
産経新聞社とその子会社の日本工業新聞社などの従業員で組織される産経労働組合は、憲法で保障されているストライキ権を事実上放棄した、ウルトラ御用労組だ。
それに抗して結成されたのが、反リストラ産経労であるが、委員長である松沢弘氏を、会社は不当配転した末に解雇した。
『労働貴族』(鹿砦社)に、その経緯は詳述されている。

松沢氏は、会社に対して発言するために株主となっている。
松沢氏の総会での主張は、自身のことに留まらない。
実に25年もの間、会長の座に居座り、長期独裁を続けている日枝久の退任を求めたのもその一つである。同様の主張を発言した株主は、他に2人いた。

元東京電力社長の南直哉が、フジHDとその子会社であるフジテレビジョンの監査役を務めていることも、松沢氏は質した。1999年から2002年まで東電社長であった南は、29件ものデータ改竄・隠蔽が明らかになって引責辞任したのである。
データ改竄・隠蔽は、危険な状態である原子力発電を安全だと見せかけるために行われたものであり、こうした安全性への軽視が福島第一原発の事故を引き起こしたのは、改めて言うまでもない。
南を監査役にしているなど、報道機関としての見識を疑われるものだが、むしろ、報道をねじ曲げてでも電力会社と癒着するのが、フジHDの利益になっているのだろう。

「週刊ダイヤモンド」5月25日号、月刊誌『ZAITEN』4月号では、産経新聞社の売却を、牛丼チェーン「すき家」を運営する「ゼンショーホールディングス」へ持ちかけたが断られた、と報じられている。
これについても松沢氏は質した。これは事実なのか、もし虚偽報道であるなら、訴えるべきではないかと。そんなことに、いちいちかまっていられない、というのが日枝会長の答えであった。この居直りに、報道は事実だったのだ、と感じた株主も多かったのではないか。

総会会場の前列には、約200名ほどの社員株主が陣取り、発言にヤジを飛ばしたり、日枝会長の発言には一斉に拍手をする。かつて総会屋がやっていたことを、社員株主が行っているのだ。

新大久保のコリアンタウンなどで差別むき出しの嫌韓デモをやっている、在特会(在日特権を許さない市民の会)のメンバーも株主として参加しており、フジテレビは韓流に傾きすぎだ、と発言した。
自らが頼りとする、保守・右翼からも批判の刃を突きつけられ、厚顔の日枝会長も青ざめた面持ちであった。

(FY)