以前、アメリカに本部を置く動物権利擁護団体PETAが、任天堂のゲームキャラのマリオに対して「タヌキの格好をしたマリオは、タヌキの毛皮を着ている」などと抗議した事があった。この団体は同じく任天堂のゲーム、ポケモンに対しても「ポケモンは人間に虐待されている」と抗議をした事もある。アメリカには極端な思想団体が多くあるから、またそんなのが、と思う程度のことだが、これが喫煙問題になると日本でも極端な団体が出てくるようだ。

宮崎アニメの新作映画「風立ちぬ」で、喫煙シーンが多いと日本禁煙学会が要望文を提出した。世界中で批准されている「タバコ規制枠組み条約」の「メディアによるタバコ広告・宣伝を禁止」に違反しているというものだ。抗議ではなく要望だったのは、宮崎アニメの人気と影響力を考慮してのことだろうか。宮崎駿氏のスタジオジブリは当然、タバコメーカーではない。広告も宣伝もする意味がない。ただ喫煙シーンが多かったというだけだ。これに対し、スタジオジブリではなく喫煙文化研究会が反論するコメントを出している。

日本禁煙学会の要望は的外れとの意見が多く、非喫煙者からも異論が上がっている。しかし、これを喫煙者が反論するのは大変だ。喫煙者が何を言っても近年は受け入れてもらえない風潮になっている。国、企業、社会とタバコ規制に前向きな現状では、少数派の喫煙者はタバコが値上がりしようが、喫煙所が撤去されようが、泣き寝入りする以外にはない。
(喫煙所の撤去は、吸うところがなくなり逆に路上喫煙が増えるのではないかと思うが、そんなことは人前では言えない)

だから喫煙文化研究会の反論は大変ありがたいものだ。かといってこれで喫煙者の立場が上がることもないし、禁煙ムードに何ら変化もないだろう。今回はたまたま日本禁煙学会が不利だが、世間では同じような主張を公然としている場面をよく目にする。
「俺の会社ではタバコを吸う奴の給料は上げない」
「私の周りから、一人の喫煙者も居なくさせることが私の夢だ」
どちらも就職活動時に、入社面接で言われた言葉だ。2つとも小さな会社だったので、社長の一言で何もかもが決まる、というのがすぐにわかってしまった。職場で飲みに誘われた時「酒を飲むとタバコを吸ってしまうんですが宜しいですか?」と確認し、OKをもらった上で行ったところ、いざ吸おうとしたら説教が始まり、延々と喫煙者の批判を聞かされたこともあった。喫煙者に対して、殺意のようなものすら向けてくる人もいる。
せめて、あなたには迷惑をかけませんから私はタバコを吸います、ぐらい認めて欲しいものだ。

そういえば冒頭の、任天堂のマリオには、こんな話もある。以下は、海外の掲示板で一時期話題になった書き込みだ。
「差別主義はやめよう。マリオのようになろう。彼はイタリア人の配管工で、日本人により創り出され、英語を話し、メキシコ人のように見えるんだ」
「そしてジャマイカ人のように走る」
「そして黒人のようにジャンプする」
「そしてユダヤ人のようにコインを拾う」

最後はちょっとジョークが効いているが、マリオ一つとっても見る人が違えば違う面が見えてくるものだ。

(Tachibana)