今週の『週刊新潮』(4月5日号)を見てひっくりかえった。カラー3ページで、「巨大津波から原子力を守れ 中部電力・浜岡原子力発電所に出現する海抜18メートルの壁」と題して、浜岡原子力発電所と太平洋の間に1.6キロに渡って建設中の防波壁(擁壁)の一部の写真を掲載し、その工事現場の進捗ルポをグラビアで展開している。

福島県の双葉町から埼玉へ避難してきた中年男性は語る。
「見ていて気持ちが悪くなりましたね。二重の意味で気持ちが悪くなりました。時代がこれだけ反原発ムードで、原子力なしで電力を賄うのが理想なのに、電気料金を値上げしてでも、今さら防波壁を作ってでも原子力発電所を稼働させようという中部電力と、あたかもそれを擁護しているような『週刊新潮』のルポ。ものすごい苦労して工事しているのはわかりますが、民衆レベルではだれもそんなことは頼んでいないでしょう」

記事によれば、高さが海抜18メートルに達するこの防波壁ができれば、津波に対して二重の備えになるという。ひとつは福島第一原発で食らったクラスの巨大津波(海抜15メートル程度)に対処でき、なおかつ地中の壁も6メートル間隔で埋め込まれるので原子炉そのものも守られる。

「原発を稼働させるうえでは重要な工事だと思うが、そもそも原発での発電を続けるか否かという議論をまず十分にすべきでしょう。浜岡原子力発電所がある静岡県御前崎市は、どんな地震学者だって、東海地震の危険性を指摘しています」(御前崎市民)
この記事自体が大問題である、としたうえで知人のジャーナリストは言う。
「工事にいったいいくらかかっているのか。こんなのはとっとと止めて、電気代値上げをなんとかする方向に向かうべきではないのか。中部電力も問題だが、工事のルポを浪花節で掲載する『週刊新潮』の見識も疑うね」

「正気なのか」と電話で問い詰めると中部電力の担当者がむきになって反論した。
「そうはいっても廃炉にするにも5000億円はかかる。ものごとには多面がある。感情的に物事を言うなよ」
感情的になっているのではない。
そもそも、新聞社が行った住民アンケートでは、再稼働を静岡県民の7割近くが反対している。8割以上が昨年5月の全面停止を評価しており、原発を「少しずつ減らす」と「ただちにやめる」と合わせると、脱原発を求める声は8割近くになるのだ。

浜岡原発は、震災直後の昨年5月に菅直人首相(当時)が 「30年以内にマグニチュード(M)8程度の東海地震が発生する可能性が87%ある」ことを理由に、中電に全面停止を要請した、いわくつきの発電所である。原発の再稼働について県内の全35市町の首長に質問。6割の21市町の首長がノーと言っている。

「中部電力が浜岡原発に防波壁を作るのも、それを『週刊新潮』があおるのも、少し早過ぎて生煮えの感じがします。問題は『週刊新潮』のグラビアに、ビッグクライアントとして今後も新潮社がつきあいたいであろう鹿島建設が、取材協力としてクレジットされていることでしょう。うがった見方かもしれませんが今後の広告戦略をにらんでいるような気がします」(元新潮社社員)

今もなお、原発を設計したメーカーや東電、中部電力幹部らとの接待をこっそり受けている新潮社の幹部たちの情報もこちらには入っている。これはまた別の機会にレポートしよう。
「なんせ一晩の接待予算は200万円ですから。まだバブルが続いているんじゃないかと思いましたね」(接待を受けた別の出版社の週刊誌編集者)

鹿砦社の松岡利康社長は語る。
「この期に及んで、かつて東電の広告を掲載した、かの『創』はじめ多くの雑誌が掌を返したように反原発の記事を掲載する中で、新潮社は独自のスタンスで”反・反原発”=原発容認を頑固に続けてきましたが、ここまで来ると狂気の沙汰としか言えません。カネの力とは怖いものです。新潮も、出版不況のあおりを受けて楽でもないらしく、かつてはパチスロ大手の旧アルゼ(現ユニバーサル)マネーを狙い、これと組んで女流文学賞創設などを試みましたが、これでは物足りないようで、規模が桁違いの原発マネーを狙っているとしか考えられません。私は、世の”良識派”と違い、『反人権雑誌』を自認する新潮のスキャンダリズムは嫌いではありませんが、原発容認については断固反対です」

中部電力よ! 新潮社よ!
貴社の金満社員たちは不景気と関係なく給与が高い。どうせゴールデンウィークに海外旅行にでも行くのだろうが、その前にこのグラビア記事をもって福島県被災者をまわり、「原発を再稼働させましょう」と言ってみよ!
もしもそれができないとしたら、即刻、お詫びと訂正記事を出し「民意のない記事ですみません」と誌面において謝罪すべきである。

(渋谷三七十)