前田和男さんは鹿砦社創業に関わり、最初の出版『マルクス主義軍事論』などの編集をされました。最近では『続・全共闘白書』も編纂されています。

その前田さんが新著『昭和街場のはやり歌──戦後日本の希みと躓きと祈りと災いと』を上梓、A5判、300ページの大著です。

『マルクス主義軍事論』から『昭和街場のはやり歌』へ ── 現在の鹿砦社も硬派(社会問題書)から軟派(芸能本)まで同じ位相で出版しています。

とりいそぎ、三波春夫と美空ひばりの項目の一部を紹介しておきます。なお、ご注文の際には松岡の紹介とお書き添えください。

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

前田和男さんの新著『昭和街場のはやり歌 ── 戦後日本の希みと躓きと祈りと災いと』

お笑いと格闘技という語りたがりが多い2大ジャンルが誌上で激突する、お笑い語り本『お笑いファンvol.2』(鹿砦社)が7月31日に発売されました。

『お笑いファンvol.2』(鹿砦社)7月31日発売開始!

2022年12月に発売された前号は、吉本興業ホールディングスの前会長・大崎洋氏のインタビューでも話題となりましたが、今回のテーマは「お笑い×格闘技・プロレス」。ニューヨーク・嶋佐和也さんが「プロレス・格闘技」について熱く語っています。

そのほかにも、サバンナ・八木真澄さんと極真会館中村道場・松岡朋彦さんの対談や、チェリ―大作戦による極真会館体験入門や、「月刊プロレスファン」元編集長である伊藤雅奈子さんによるコラム「全女とFMWと、ときどき吉本。」など企画も盛りだくさん。

インタビューも多彩で、巻頭を飾るのは、M-1王者・ウエストランド。井口浩之さんと河本太さんが、誌面でも舞台さながらの絶妙な掛け合いを見せてくれます。マユリカには東京進出への思いなどを、あぁ~しらきさんには女芸人の生き様について語ってもらっています。

注目は、島田紳助さんとともにM-1グランプリの立ち上げに関わった“お笑い界のレジェンド”谷良一さんによるコラム『「天才列伝」ぼくの出会った芸人さんたち』。横山やすし師匠との思い出を語ってもらいました。前号にはなかった新機軸として、谷河良一さんの哀愁漂う小説『湖上の月』も必読です。

前号とはテイストを変え、パワーアップした『お笑いファン』。ニューヨーク嶋佐さんの迫力ある表紙が目印です。お求めは、お近くの書店またはAmazonでお願いします。(文=日刊サイゾーより転載)

サーロー節子氏が「失敗」「原爆犠牲者を冒涜している」と批判した5月のG7サミット。広島の地と市民を存分に政治利用し、さらにゼレンスキー来日効果もあって岸田文雄政権の支持率を押し上げました。その直後の岸田長男・翔太郎氏の「官邸忘年会」スキャンダルで支持率上昇は帳消しとなったとはいえ、被爆地・広島で行なわれたG7をマスコミが「成功」と報じ、多くの国民がそれを鵜呑みにすることが、岸田軍拡を大きく後押しすることになります。同時に、中国の脅威も煽り、米国の核を日本に配備する下準備もさらに進むことに。自衛隊の敵基地攻撃能力保有に加え、同志国軍事支援「OSA」が紛争の可能性をさらに高めてもいます。

 

6月7日発売! 月刊『紙の爆弾』2023年7月号

まず、その状況を正確に伝える報道が皆無であることが問題で、そうである限り、この流れをどう食い止めるかといったことは、論じようがありません。そんな現状にあって、今月号では憲法について、小西洋之参院議員にインタビューを行ないました。小西氏は3月2日に、安倍晋三内閣が、放送法が規定する「政治的公平」の解釈改変を試みていたことを示す総務省の内部文書=安倍政権の言論統制の証拠を公表するも、衆議院の憲法審査会について「毎週開催はサルのやること」との発言が問題視され、参院憲法審の筆頭幹事を更迭。総務省が認めた文書を「ねつ造発言」と言い放った自民党・高市早苗元総務相は経済安保相として政権に居座っています。そんな小西氏が、改憲派による壊憲戦略である、憲法審の「毎週開催」の問題を具体的に解説しつつ、その策動を止める戦略を明かしています。また、これもマスコミは大きく報じませんでしたが、3月17日に総務省は高市氏らの放送法解釈改変を全面撤回しています。ならば安倍解釈改憲も撤回させることは可能。そもそも解釈改憲が、嘘と曲解によってなされたものであり、撤回しなければならないものだということを、本誌で明かしています。

とはいえ、「騙され改憲」が現実化する可能性は否定できず、政治における闘いがすべてと言えないのもまた現状です。6月号で電通の洗脳利用を採り上げたAIやChat GPTを挙げるまでもなく、自分の意思や思考に基づき生きることが、意識しなければ難しくなっているような気もしています。5月30日には研究団体「Center for AI Safety(CAIS)」が、AIによる人類絶滅のリスクに対する声明を発表、当のAI関連企業CEOをはじめ数百人に及ぶ専門家らが署名するなか、日本の能天気なAI信奉ぶりは、まるで日本国内がAI実験場にされているように見えます。さらにアップルの「AirTag」をはじめ、スマホを自動的に相互監視させる仕組みも、すでに社会に投入されています。警察庁に「サイバー特別捜査隊」が発足して1年以上経過したなか、警察と自衛隊を動員した国家による「ネット監視体制」についても7月号で解説しています。

ほか、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)「合同結婚式」現地ルポ、企業の「マスク・ハラスメント」など、7月号も盛りだくさんの内容です。『紙の爆弾』は全国書店で発売中です。ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年7月号

『ジャニーズ帝国崩壊』とは四半世紀も前に鹿砦社が出版した書籍のタイトルである(本多圭・著、1997年)。本年3月に放映された英国BBC放送が制作したドキュメント『PREDATOR』以降、まさに堰を切ったかのように、ジャニー喜多川による性加害の証言、批判、そしてジャニーが創設し、今やわが国屈指の芸能プロダクション・ジャニーズ事務所に対する批判が溢れ返っている。ここ半世紀余り権勢を誇ったジャニーズ帝国が、今まさに「崩壊」するかのようである。

 

在りし日のジャニー喜多川

わが鹿砦社は1995年、『SMAP大研究』出版差し止め以降、対抗上、告発系、スキャンダル系の出版物を陸続と世に送ってきた。『週刊文春』がジュニアの告白を中心にキャンペーンを張る以前からであるが、私たち以前にも北公次・著『光るGENJIへ』はじめジャニー喜多川未成年性加害について多数の告発本を出した「データハウス」を嚆矢としつつも、同社はしばらくしてジャニー告発系の出版をやめている(これは同社の名誉のために付言しておくが、決してジャニーズ事務所などからの圧力や懐柔があったからではない)。ここでも何冊かの企画・製作に関わったとする人物らが、『SMAP大研究』出版差し止めに対し裁判闘争に打って出た鹿砦社に企画を持ち込んできた。

以降鹿砦社は、平本純也『ジャニーズのすべて』(全3巻)、原吾一『二丁目のジャニーズ』(全3巻)、本多圭『ジャニーズ帝国崩壊』、豊川誕『ひとりぼっちの旅立ち』、鹿砦社編集部『ジャニーズの欲望──アイドル資本主義の戦略と構造』『ジャニーズの憂鬱──アイドル帝国の危機』『ジャニーズの躓き──壊れ始めた少年愛ビジネス』、伊藤彩子『ジャニーズ・プロファイリング──犯罪心理捜査』などが文春のキャンペーンまでに出版し、ささやかながら世に警鐘を鳴らし続けた。

この間に、社会的に大きな話題となった、いわゆる「おっかけマップ」シリーズがあり、このシリーズのうち『ジャニーズ・ゴールドマップ』(事前差し止めのため未刊)、『ジャニーズおっかけマップ・スペシャル』が出版差し止めとなり、最高裁まで争われた。むしろ、こちらのほうは大きく報じられたが、告発系の書籍のほうは、私たちの広報力不足のため、残念ながら、さほど話題にはならなかった。

そうして、対ジャニーズ訴訟がほぼ収束するのを前後して文春のキャンペーンと訴訟が始まったのである。

今、これらの書籍を、あらためて紐解くと、当時の、そして今に至る私たちの“奇妙な情熱”が想起される。その後も細々ながら告発系、スキャンダル系の出版を続けてきた。いまだ集計していないが、数十点にものぼる。その中の一つ『ジャニーズの憂鬱』では関連会社まで調査していて、現ジャニーズ事務所代表取締役・藤島ジュリー景子は、98年の時点で、このうち4社で取締役に就き、「ジャニーズ・エンタテイメント」では代表取締役を務めていることが、あらためて判った。

文春告発以前の鹿砦社のジャニーズ告発本の一部。左から平本純也『ジャニーズのすべて』(1996年)、本多圭『ジャニーズ帝国崩壊』(1997年)、伊藤彩子『ジャニーズ・プロファイリング ── 犯罪心理捜査』(1999年)

若き日の藤島ジュリー景子(右)と、古参の幹部ながら藤島メリー泰子から放逐された飯島三智(みち)

そうした調査、取材、編集、出版の経験により、メディアの中心・東京から遠く離れ、現在のマスメディアの狂騒状態を冷静かつ客観的に見てくると、今では違和感を覚えるし、マスメディアのご都合主義には呆れ果てる。当時は一切といっていいほど(『噂の眞相』や、その後告発に踏み切った文春など一部を除いて)全く無視した。それでいて、今頃になって「猫も杓子も」状態である。私たちの警鐘を無視し、未成年性的虐待を放置してきた大手メディアの責任は重大であり、取材・編集・製作に関わった記者・スタッフらの矜持こそが、まずもって強く問われるのではないだろうか?

ところで、ジュリー社長の動画での「謝罪」の翌々日の朝日新聞は社説で「ジャニーズ謝罪 これで幕引き許されぬ」と激しく批判している。いわく、
「多くの未成年が長期にわたって重大な人権侵害にさらされていた可能性のある深刻な事態である。広く大衆を相手に影響力の大きい事業を手がけてきたジャニーズ事務所には、ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべきだ。」

同 5月16日掲載「社説」

うむうむ、なるほど。文春の告発キャンペーンと訴訟、それに至る私たち、データハウス、『噂の眞相』などの相次ぐスキャンダル暴露や告発──朝日(及びマスメディア)は、これらに真摯に耳を傾けて来たのか!? 「ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべき」なのは、20年も放置してきた朝日新聞(及びマスメディア)だ。文春裁判でジャニー喜多川による未成年性加害が明らかにされながら(文春や小なりと雖も鹿砦社らわずかなメディア以外に)放置していた間にも性加害がなされていたことへの「ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべきだ」。今になって、あたかも知りませんでした、初めて知りましたなどというような姿勢こそ、まずは改めるべきだ。「これで幕引き許されぬ」!? この言葉は、ジャニーズ事務所と共に朝日新聞(及びマスメディア)に鋭く問われている。

◆「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」なる団体の正体と政治利用主義を断罪する!

ジャニー喜多川による未成年性虐待と事務所追及がメディアで沸騰しつつあるさなか、「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」なる正体不明の団体が突如現われ署名活動を開始した。記者会見に登場した「ジャニオタ」と称する2人、単なる素人のジャニーズファンではできそうにもない手際の良さ、賛同人に名を連ねた“いつもの人たち”などから、純然たるファンによる団体ではなく、なんらかの政治的目的、つまり政治利用主義に基づくものである匂いがする。記者会見に出た2人については、すでに氏素性が判明しジャニーズファンでないことも明らかになっている。


◎[参考動画]ジャニーズファン記者会見"ファンやめずに…"/1.6万人抗議署名に事務所が返答(2023年5月12日)

賛同人に名を連ねた人たち、仁藤夢乃、北原みのり、李信恵、辛淑玉らの名を見るだけでも、なんらかの政治的目的があることが判る。

仁藤夢乃は、この問題に関わるより前にColabo問題(つまりいまだにすっきりしない公金の使途についてもっときちんとすべきだ)に真摯に向き合うべきだし、北原みのりは草津温泉の冤罪事件や大学院生リンチ事件などに謝罪、釈明すべきだろう。李信恵は大学院生リンチ事件の大阪高裁判決で判示された、リンチに連座した「道義的責任」について責を果たすべきだし、この姉貴分の辛淑玉も大学院生リンチ事件に対して血の通った人間としての誠実な対応が待たれる。こうしたことなくして、いくら死んだ人間の責任や事務所の対応を批判してもダメである。

「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」の賛同人

それから、素朴な疑問として、仁藤夢乃のグループがこぞって、「PENLIGHT」に名を連ね関わっているのはなぜだろうか? 彼女ら4人が、これまでジャニーズ問題について言及したか? なにかしら邪な目論見を感じざるをえない。例えば、彼女らの要求の一つに「第三者委員会の設置」があるが、あわよくば自分らがその委員に収まろうとでもしているのか、といった邪推さえ浮かんでくる。

私たちは上記したように四半世紀に渡りジャニー喜多川の未成年性虐待、ジャニーズ事務所の諸問題などについて、一冊一冊は小さな部数だが、こつこつと多くの書籍、雑誌で言及、批判してきた。この誇りぐらいはある。バカはバカなりに四半世紀も続けてくれば、それなりに得る所はあろうというものだ。(松岡利康)

【追記】
5月26日、ジャニーズ事務所は再犯防止のために社外取締役を任命すると共に「心のケア相談窓口」の設置を発表した。後者のメンバーに林眞琴弁護士(元検事総長)がいる。この林弁護士は、Colabo理事でもある奥田知志牧師が理事長を務めるNPO法人「抱樸(ほうぼく)」が運営する「希望のまちプロジェクト」の「応援団」に名を連ねている。繋がっている!

PENLIGHTが第三者委員会に入り込もうとしているのではないかとの話もあながち馬鹿にできないようだ。なにやら信憑性が出てきたような感がある。注視していく必要がありそうだ。

◎[関連記事]

《急報!》明日3・7、英BBCが、ジャニー喜多川の性的児童虐待問題を放映! 鹿砦社が先鞭を切って暴露したジャニーズ・スキャンダルが遂に全世界に発信!
 
ジャニー喜多川未成年性虐待問題はどうなっておるのか?

20年遅れのジャニー喜多川未成年性虐待報道に違和感あり!

月刊『紙の爆弾』2023年6月号

本年3月7日に英BBCが故ジャニー喜多川の未成年性虐待問題をドキュメントとして報じて以来、『週刊文春」が20数年前にシリーズでこの問題を採り上げてからようやく日本のマスコミも重い腰を上げ取材に動き出して来た。

BBCにしろNHKにしろ朝日新聞にしろ、また弁護士ドットコムにしろ、私たちは最大限協力してきた。おそらくこれが最後のチャンスだとの想いからである。

若き日の藤島ジュリー景子(右)と、古参の幹部ながら藤島メリー泰子から放逐された飯島三智(みち)

もう18年も前になるが月刊『紙の爆弾』創刊直後の2005年7月、大手パチンコメーカー・アルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)等からの刑事告訴により「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧で私が逮捕され会社は壊滅打撃を受けた。にもかかわらず、読者やライター、取引先のみなさんのご支援で復活し現在に至っている。

その話はここではこれ以上触れないが、アルゼに関する取材で4冊の書籍を出し、この過程で集積した資料を、フィリピンにおけるカジノホテル開発で政府高官への贈収賄容疑を追っていたロイター通信の要請に応じ惜しみなく提供し、業界の様子やアルゼの実態等についてレクチャーしたりした。この甲斐もあってか、ロイターはアルゼ追及の記事をたびたび発信し、創業者オーナー岡田和生は海外で逮捕され、ついにはみずからが作り育てた会社からも放逐された

鹿砦社のアルゼ告発書籍

BBC、NHKなどから協力要請があった時、このことを想起し、最大限協力を惜しまなかった。

勿論、記者の方々の奮闘はあろうが、少しは役に立ったのであれば嬉しい。ジャニー喜多川がすでに亡くなった中で、今後、どう転回するかわからないが、将来的に有益な結果をもたらすことを望んでやまない。

周知のように去る5月14日夜、ジャニー喜多川の未成年性虐待について、ジャニーズ事務所現社長・藤島ジュリー景子(ジャニーの姪、、元副社長・藤島メリー泰子の長女)が動画と書面で見解を明らかにした。

これに対し、メディアは即反応した。NHKは翌朝のニュースのトップで報じた。それまでは数分報じたと聞いたが、これだけでも大変なことなのに、ニュースのトップで報じるとは想定外だった。民放もこぞって報じた。

大手新聞は、翌日朝刊は休刊日だったため、テレビよりも遅れ夕刊での報道になった。私が購読している朝日は夕刊一面トップ、翌々日の16日朝刊は、一面、二面全頁、社説(2度目)、中面2分の1頁と、これまでになく大々的に報じた。

朝日新聞5月15日夕刊

同 5月16日掲載「社説」

そうしてNHKは、17日夜の「クローズアップ現代」で報じた。わざわざやって来た記者ら複数から連絡もあり視聴した。このかん100人ほどに取材し、6人が性被害に遭ったそうで、番組で実名、顔出しで証言した者もいた。さらに性被害を訴えた書籍4冊の画像が写っているが、うち3冊は鹿砦社刊行のものである。

5月17日夜のNHK「クローズアップ現代」。性被害を訴えた書籍4冊の画像が写っているが、うち3冊は鹿砦社刊行のものだった

しかし、ここで私は違和感を覚えざるをえなかった。最も大きいことは当のジャニー喜多川が亡くなっており、まさに「死人に口なし」で反論も弁明もできない。マスメディアは生前に追及はできなかったのか? なぜしなかったのか?

噂のみならず、20年余り前に『文春』が連続してキャンペーンを行い訴訟も事実上勝訴している(一部敗訴)。さらには国会でも質疑がなされている。にもかかわらず、当の『文春』以外に今回のように大々的に報じたマスメディアは皆無と言ってよかった。わずかにミニコミに近い鹿砦社の書籍と雑誌のみが細々と報じ続けてきたにすぎない。

[左]『ジャニーズに捧げるレクイエム』表紙[中央]唯一ジャニーズの歴史を詳述した書籍『ジャニーズ50年史』(増補新版。鹿砦社刊)[右]たびたび出版されたジャニーズのスキャンダルをまとめた書籍『本当は怖いジャニーズ・スキャンダル』(増補新版。鹿砦社刊)

当事者のジャニー喜多川本人が亡くなってから、いくらやんややんやと騒ぎ立てても詮無いことである。

せめて『文春』が告発キャンペーンを始めた時期、また訴訟が、東京高裁で事実上の逆転勝訴(一部敗訴)が確定した時でもきちんとその意義など報じるべきだったのではないか。

1995年からジャニーズ事務所(原告は所属タレント名だが)を相手に、まさに巨象に立ち向かう蟻のように3件の訴訟を闘い、うち2件は最高裁まで闘ったが、以来ずっと告発系、スキャンダル系の書籍を出し、ジャニーズ事務所の問題点を明らかにしてきた。関連書籍は数十点、1冊も残っていない本もあり正確な出版点数は数え切れない。いちど数えてみたい。

賠償金も含め1億円を越す訴訟費用(対ジャニーズだけではないが)を使った身として、こういう転回になるとは感慨深いものがあるが、マスメディアに対しては大いに違和感がある。20年前に、今回のように頑張ってくれたら、少なくともその後の被害者はなかったはずだ。今、メディア総出でジャニーズ叩きに狂奔している。こういうのを「メディアスクラム」と言うのかどうかは知らないが、最近では、なにか苦々しいもの、違和感を覚えるようになった。

いまや孤立無援の感があるジャニーズはどこへ行くのか? これをこぞって追及するマスメディアは20年も放っていたことをどう考えるのか? この問題はどういう形で収束するのか? 私も、かつてと異なり老境に入り、ここに至って新たにヒトとカネを投じて取材に動けないので、せめてしかと見極めたいと思っている。(松岡利康)

◎[関連記事]ジャニー喜多川未成年性虐待問題はどうなっておるのか?

『週刊現代』誌上で90年代半ばからの経緯を語る(『週刊現代2018年5月5日・12日合併号』)

月刊『紙の爆弾』2023年6月号

本年3月7日に英国営放送BBCが、生前のジャニー喜多川の未成年性虐待の実態をドキュメンタリー映像として報じ、この反響が時折日本のメディアでも報じられている。


◎[参考動画]Why is J-Pop’s Johnny Kitagawa still revered in Japan despite being exposed for abuse? – BBC News

 

在りし日のジャニー喜多川

BBCからは3年ほど前に協力要請の連絡があり、即快諾、これまで出版してきた書籍などを送ったり簡単なレクチャーを行ったりした。秘密の厳守を指示されたが、その直後コロナで英国からの取材班の来日ができず企画は止まっていた。そのまま、なし崩し的にうやむやになるかと思っていたら、昨年突然企画の再開の連絡があった。そうして今年に入り作品が完成し放映になったわけだが、今回は、これまでになく反響があった。

その後にNHK、朝日新聞から取材要請があり、NHKは記者2人がわざわざ東京からやって来た。私は未見だがNHKは数分ほど放映し、朝日は社説で採り上げている。今後も取材を続けるとのことだが、水面下でどう動いているのかはわからない。

そうこうしているうちにGW前に「弁護士ドットコムニュース」からも取材協力要請があり、求められる書籍を送ったり取材を受けた。それが、5月12日の同サイトに私の発言と共に掲載されている。数回記事にしている。なかなか力の入った記事だった。

弁護士ドットコムの記者から指摘されて気づいたのだが、「ジャニーズの問題を追及する本を長年継続的に出しているのは鹿砦社だけですよ」ということだった。スキャンダル系だけで数十冊出している。ジャニーズ、あるいはジャニー喜多川のスキャンダルを知ろうとしても、普通だったらどこから始めたらいいのかわからないだろう。彼らが異口同音に言う所だが、例えば『ジャニーズ50年史』を紐解けばジャニーズの歴史の概略を知ることができる。『本当は怖いジャニーズ・スキャンダル』を読めば、最近のジャニーズ・タレントの不祥事やスキャンダルを知ることもできるだろう。だから、まず私に連絡してくるわけだ。思い返せば、1995年、出版差し止めされた『SMAP大研究』以来、われながらよくやってきたものだ(苦笑)。四半世紀以上だ。

たかが一地方小出版社がここまでやれたのだから、『週刊文春』以外の大手メディアも頑張ってほしいところだね。

[左]『ジャニーズに捧げるレクイエム』表紙[中央]唯一ジャニーズの歴史を詳述した書籍『ジャニーズ50年史』(増補新版。鹿砦社刊)[右]たびたび出版されたジャニーズのスキャンダルをまとめた書籍『本当は怖いジャニーズ・スキャンダル』(増補新版。鹿砦社刊)

鹿砦社や文春が頑張ったのはジャニー喜多川がピンピンしていた頃で、これだけでも価値があると自負している。BBCにしろNHK、朝日にしろ、ようやく採り上げたのはジャニー喜多川の死後だ。「死人に口なし」で、直接本人に当たり追及できないので、このままうやむやになりそうな気がする。今後の動きに注目していきたい。

そうこうしているうちに、ジャニーズ「ファン」4名で「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」をいう会を作り署名活動を開始、1万6千筆余りを集めジャニーズ事務所に提出したという(下記朝日新聞記事参照)。

2023年5月12日付け朝日新聞


◎[参考動画]元ジャニーズJr.の男性らが性被害証言 ジャニーズ事務所「今週末公式にお伝えする」(TBS NEWS DIG)

ところが、この「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」なる団体、”なにか臭う”ので調べてみた。

当初の署名を求めるアピールでは、
「賛同人
北原みのり(作家)
仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)
太田啓子(弁護士)
辛淑玉
李信恵(フリーライター)
安積遊歩
三井マリコ
小川たまか(ライター)
石田郁子
塚原久美
青木正美(医師)
坂井恵理(漫画家)
長田杏奈(ライター)
雨宮処凜(作家)
賛同団体
フラワーデモ東京」
らの名前がずらり並んでいる。

なあんだ、”例の人たち”か。雨宮処凜は、なぜか即日離れたという。おそらく、なにか“嫌な空気”を感じたからだろう。

「ファン」4人を表に出し、バックに控えているのか。大学院生リンチ事件に連座した李信恵、彼女を支持した辛淑玉らが、いつからこの問題に関わったのか? いま話題になっているから? ご都合主義としか言いようがない。

いやしくも四半世紀余りに渡りジャニーズと創始者ジャニー喜多川の問題について追及してきた私(たち)からすれば噴飯物だ。

(松岡利康)

【追記】上記を寄稿した後(14日夜)にジャニーズ事務所社長・藤島ジュリー景子が、叔父で先代の創業者社長ジャニー喜多川による未成年性虐待問題について動画と書面でコメントを出した。これに対しても追って私見を述べるつもりです。


◎[参考動画]【速報】性加害問題でジャニーズ事務所・藤島ジュリー景子社長“謝罪”(日本テレビ)


◎[参考動画]BBC《獵食者:日本流行音樂的秘密醜聞》- BBC News 中文

月刊『紙の爆弾』2023年6月号

地方都市のベッドタウン、団地に暮らす中学生にとって、ラジオから流れる音楽やそれらを演奏するミュージシャンは、間違いなく「別世界」。都市で開催されるコンサートにでも出かけない限り、直接メロディーを耳にしたり、本人の姿を目にするチャンスは皆無だった。日本のミュージシャンであれ、外国のミュージシャンであれ等距離で「別世界」。レコード屋かラジオ、テレビだけが接点として「別世界」と繋がっている日々の記憶を共有できる読者は少なくないのではないだろうか。

「別世界」の住人はどんな人たちなのだろう。「別世界」ではどんな人間関係が織りなされているのだろう。もう少し年齢を重ねたら、あるいは「別世界」の片隅でも覗くチャンスが訪れるのだろうか。それとも「別世界」は太陽と地球のように等距離を保ちながら、永遠に接点を持つことはないものか。

「別世界」には多種多彩なひとびとが暮らしているのを知っていても、その中で坂本龍一氏は、わたしにとって別格の存在だった。どうして坂本氏がわたしにとって別格の位置を占めるに至ったかの経緯は、この際省こう。でも坂本氏が「別世界」住人の象徴的存在であったとしても、多くの読者は疑問には思われないのではないか。70年代半ばからあっという間に「世界のサカモト」に上りつめた人物、いったい何を言いたいのかほとんど訳が分からなかったが『戦場のメリークリスマス』でデビッド・ボウイと共演し、有名なあの旋律を産み出した坂本氏。

坂本氏のステージではなかったが、たしか矢野顕子のコンサートでキーボードを弾いている姿を目にしたのが、初めてだっただろうか。わたしは大阪の私立大学に通う大学生だった。ステージと客席の間に物理的な仕切はないが、やはりステージ上のミュージシャンと数千人観客の間には、太陽と地球同様の距離があるものだな、と感じた記憶がある。

時は流れて1999年10月10日、千葉県成田市の某ホテルである著名人を囲むパーティーが開催されていた。わたしは当時の職場の同僚二人と一緒に、そのパーティーの末席に座っていた。参加者は200名ほどであっただろうか。ところどころに政財界や芸能界の著名人の姿を確認できたが、予期しないことにいわば主賓席に当たる位置に坂本氏の姿があった。わたしは当時の同僚に「このパーティーが終わったら、わたしが坂本龍一を口説くから」と小声で伝えた。

いったい当時のわたしは何を考えていたのだろうか。しかし、迷いはなかった。パーティーが終了すると坂本氏は数人の政治家や、財界人と歓談していたがやがて会場の外に向けて歩み始めた。わたしは名刺を手渡し手短に自己紹介を済ませると「数分だけお時間を頂けませんか」と坂本氏にお願いをした。坂本氏はきょとんとしながらもわたしの要望に応じて、わたしの「お願い」を聞く時間をわたしに与えてくれた。わたしの要求は乱暴極まるものだった。簡単にいえば「わたしの職場にお越しいただきピアノ演奏をしてください」だ。こんなことをよくぞ誰にも相談もせず急に思い立ち、ずうずうしくもご本人に頼んだものだな、と今になってはあきれ返るばかりだが、あの時のわたしにはそれが不可能には感じられなかった。

坂本氏と筆者

「世界のサカモト」にはタイトなスケジュールが組まれているのが常識で、わたしの依頼は半年強あまり先のこととはいえ、唐突に過ぎるものだ。なんの所縁も、知人もいない、片田舎の大学職員が突然現れてそんな要求をして坂本氏の方がむしろ驚いていたのではないだろうか。即答はなかったが坂本氏はわたしのお願いをしっかり聞いてくれ、後日連絡するからと約束してくれた。

それから坂本氏のマネージャーと幾度かメールのやり取りをして、ピアノ演奏は諸般の事情で難しいが、「全面的に協力をする」との答えを頂いた。太陽と地球の距離が急速に変化した瞬間だった。結果わたしは約1週間近くかなりの時間坂本氏にお世話になることができた。そう多くの時間話をしたわけではないが、下世話な話「ノーギャラ」でわたしのお願いに応じて頂けた。

あれはわたしの空想の時間だったのだろうか。23年が経て現実感は限りなく薄い。しかし空想ではなかった。思い起こせば「何だ!この音響は!」と怒られもしたし、機嫌がいい時には「僕にはフィールドが好きだから、ここの学生さんと一緒にフィールドワークをするのも面白いよね」と持ち掛けてくれたり…。

中学生時代の「別世界」がいっときわたしの人生の実時間と合流した。そこには坂本氏の絶大なご好意があった。

数年前にがんに罹患しても坂本氏は治療時以外仕事を休んでいた様子はない。昨年「これが最後になるかもしれない」とみずから語ったNHKで収録をしたコンサートを世界配信していた。部分的に視聴したがわたしは最後まで、見ることができず、途中で視聴を止めた。

田舎の中学生が憧れた「別世界」を実時間に転嫁してくれた坂本氏が逝った3月28日わたしは強烈な胃痛と体調不良にあえいでいた。わたしの体はときにそのような反応をするのだ。坂本氏のTwitter、Facebookには“January 17 1952-March 23 2023 “ が。

わたしの中に残っていた、アドレッセンスの全史と残滓がMarch 23 2023で完結した。


◎[参考動画]Merry Christmas Mr. Lawrence / Ryuichi Sakamoto – From Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『季節』2023年春号(NO NUKES voice改題)福島第一原発事故 12年後の想い

テレビから引っ張りだこだったアメリカの有名大学准教授の男性が、「(高齢者は)集団自決みたいなことをすればいいんじゃないか」という発言により炎上し、この男性がテレビに出るたびにネット上で「テレビに出すな」という声が渦巻く事態となっている。この騒動には、実は言論の本質がよく現れている。

この騒動を深掘りして考えるうえで、まず踏まえておかねばならないのは、そもそも、テレビで高齢者をいじったり、貶めたりする発言は「笑いを取る手法の1つ」として社会に許容されてきたということだ。

最たる例は、世界的な映画監督としても知られる大物芸人だろう。この大物芸人が80年代、「赤信号 バァさん 盾にわたりましょう」などと高齢者を徹底的にこき下ろしたギャグにより一時代を築いたことは、筆者と同じ50代以上の年齢の人ならたいていご記憶のはずである。

また、「ジジイ」「ババア」という毒舌トークで人気を集めたウルトラマンシリーズ出演俳優や、舞台では中高年をいじって笑いをとり、著書も次々に上梓してきた毒舌漫談家なども長く人気者であり続けてきた。この現実に照らせば、「高齢者が集団自決」程度の発言が今さら物議を醸すのは、バランス的におかしい。

だが、こうした「毒舌お笑い市場」の現況をよく見ると、はたと気づくことがある。高齢者をいじるなど不謹慎なことや、反教育的なことを言って笑いをとるのは、かつては芸人の独断場だった。しかし現在、そのようなやり方で笑いをとる芸人はテレビでほとんど見かけなくなっているのである。

現在、テレビで物議を醸す発言をして炎上するのは、もっぱら弁護士や小説家、元IT起業家、インターネット上の巨大掲示板の創設者、国際政治学者など、テレビが本業でない人ばかりだ。「集団自決」発言で物議を醸したアメリカの有名大学の准教授の男性もまたしかりである。

つまり現在、テレビで物議を醸す発言ができるのは、テレビに出ることが本業の人ではなく、テレビは副業や趣味、遊びで出ている人だということだ。芸人のようにテレビに出ることが本業もしくは主要な収入源である人は、コンプライアンスが厳しい現在、テレビで物議を醸す発言はできないわけである。

この事実が示しているのは、要するにテレビに出るなどして発信力を持ち、自分の言いたいことを言おうと思えば、言論以外の活動で生きていける経済力が必要だということだ。言論自体で生計をたてようと思えば、生活の糧を失わないようにするために言論が委縮せざるをえないからである。

本気で言論活動をするなら、まず経済力を整えないといけない。「集団自決」発言で炎上し、テレビに出るたびにネット上で多くの人に批判されながら、何事もなかったようにテレビに出続けるアメリカの有名大学の准教授の男性の存在がそのことをはからずも証明している。

◎片岡健の「言論」論 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=111

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。編著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(リミアンドテッド)、『絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―』(電子書籍版 鹿砦社)。stand.fmの音声番組『私が会った死刑囚』に出演中。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―」[電子書籍版](片岡健編/鹿砦社)

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前回、『戦争は女の顔をしていない』の書評の第1回目から日が経ち、申し訳ない。続きを書く前に、上映しているうちに早めにアップしておきたい『REVOLUTION+1』完成版の映画評を先にお届けしたい。

 

足立正生監督(左)

◆瑞々しい「足立節」を堪能せよ!

これは足立正生監督の6年ぶりの新作で、2022年8月末に密かにクランクインし、8日間の撮影から制作されたという。ピンク映画の手法の経験なしでは、このスピード感で誕生しえなかった作品だ。クランクインから1月後、強行された安倍晋三国葬当日にダイジェスト版の緊急上映をおこなった。今回の上映は、完成版となる。

安倍晋三元首相を撃った山上徹也氏を主人公に、「民主主義への挑戦」ともいわれた彼の行動の背景を、それでも足立監督ならではという表現によって描写した。監督は83歳になるそうだが、瑞々しい感性は変わらない。わたしは実は、足立・若松ファン歴がおそらく30年ほどとなるが、どの作品を鑑賞したことがあるかの記憶は曖昧だ。

『REVOLUTION+1』も、もちろん足立節が炸裂。山上氏は、わたしの周囲では直後から「テロリストの鑑」といわれていたし、育った家庭がややこしさを抱えながらロスジェネと呼ばれて搾取され続ける世代としても、理解できるような気がする部分があった。報道を眺めても、その後の影響は膨大と考えざるを得ず、SNSでは「山神様」などという表現も目にする。

足立監督が山上氏を撮ると耳にした際、「やはり」と感じた。なぜなら、1972年5月30日の「リッダ闘争」3戦士の1人である岡本公三氏を支援する「オリオンの会」でも、「テロとは何か」「現在の革命にどのような形がありうるか」というような話題が常にのぼっていたからだ。まさに、その先にあって、なおかつ誰も予想できなかったかもしれないのが、山上氏の登場だった。彼自身の語りとは無関係かもしれないが。

◆社会や世界を変革する「星」たれ!

3月11日、東京上映初日のユーロスペースでの舞台挨拶兼トークには、足立正生監督、主演のタモト清嵐氏、イザベル矢野氏、増田俊樹氏、飛び入りのカメラマン・髙間賢治氏が登場。司会進行は太秦の代表・小林三四郎氏で、増田氏が足立監督の「映画表現者は、現代社会で起こる見過ごせない問題に、必ず対時する」という言葉を紹介していた。

監督は作品を観た人には「これまでの作品とは異なり、わかりやすいといわれる」と語っており、実際わたしも本や絵はそのような方向性が意識されていたようには思う。足立監督といえばシュルレアリスム(【Interview】「僕らの根っこはシュルレアリスムとアヴァンギャルド」~『断食芸人』足立正生(監督)&山崎裕(撮影))。シュルレアリスムとは、「思考の動きの表現」であり、「奇抜で幻想的な芸術」だ。

ただし、本作から何を読み取るのかは、観る側に委ねられているはずだ。主人公・川上達也の苦悩の本質、彼が抱く「星になる」という希望、暗殺の実行によって彼が得たものなどには想像の余地がある。

個人的には、安倍どころか中曽根以降、否、戦後、否、明治以降に、彼の苦しみは翻ると改めて考えさせられた。1人が銃弾によって、そこに風穴をあける。「星になる」こととは、復讐を果たすことであるいっぽうで、社会や世界を変革する1人になることでもあるだろう。そして彼は、「生きるということ自体」を取り戻したのではないか。いっぽうで、わたしが復讐を果たすべき相手は誰なのか(比喩的にでも)。

主演のタモト氏は、若松孝二監督『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』にも出演していた方。初日のトークでも、森達也さんの『福田村事件』に主要キャストなどを連れ去られた話がすぐに出るが(笑)、井浦新氏ファン歴がさらに長いわたしでも、『REVOLUTION+1』の主演はタモト氏でよかったと思う。観る者に雑念を混入させない、シンプルに没頭させてくれる演技が魅力的だ。

とにかく足立監督は、「やはり、こういうのが好きなのだよな」と、なんというか自由でクリエイティブで少々デタラメな気分を共有させてもらえること請け合いだ。楽しそうに出演する監督やスタッフさんたちも、ウォーリーのように見つけよう。ぜひ、ご覧いただき、何に対して自分は立ち上がるのかを考えたりしてもらえれば幸いだ。

3月11日、東京上映初日のユーロスペースでの舞台挨拶兼トークの様子


◎[参考動画]映画『REVOLUTION+1』 予告篇

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター。労働・女性運動を経て現在、農的暮らしを実現すべく、田畑の作業、森林の再生・保全活動なども手がける。月刊『紙の爆弾』4月号に「全国有志医師の会」藤沢明徳医師インタビュー「新型コロナウイルスとワクチン薬害の真実」寄稿。映画評、監督インタビューの寄稿や映画パンフレットの執筆も手がける。

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遂にジャニー喜多川(故人)の性的児童虐待問題が世界に配信される。3月7日、英国国営放送のBBCが全世界に向け取材映像を放映、その直後からネットでも視聴可能であると同社のサイトに予告された。https://www.bbc.co.uk/programmes/m001jw7y

BBCのサイト

 

在りし日のジャニー喜多川

報道タブーとされていたジャニーズ事務所から出版差し止め(発禁)の訴訟を起こされたのは鹿砦社が初めてのことだった。1995年のことだ。書名は『SMAP大研究』、原告はジャニーズ事務所所属のSMAPのメンバー6名(当時。ジャニーズ事務所は訴外)と、これに付和雷同する学習研究社、扶桑社、マガジンハウス、主婦と生活社(のちにジャニーズと決裂、訴訟合戦を繰り広げる)らだった。日本の芸能界を代表する芸能事務所に加え日本を代表する大出版社vs一地方零細出版社の争いで、今でいうSLAP訴訟のはしりである。

訴訟は、仮処分(東京地裁)、本訴(同)、控訴審(東京高裁)と続き鹿砦社敗訴で466万円の賠償を課せられた。ただし、SMAPメンバーの請求(パブリシティ権・肖像権)は棄却、学習研究社ら出版社の請求(著作権)のみが認容された。ジャニーズ事務所の目的は、むしろパブリシティ権・肖像権だったようだが、これは認められなかった。

この提訴を契機として、鹿砦社VSジャニーズ間で死闘が開始され、次いで2件の出版差し止め訴訟を最高裁まで争うことになる。ジャニーズ事務所から3件もの出版差し止めを起こされ徹底抗戦したのは昔も今も鹿砦社だけだ。特に『ジャニーズ・ゴールド・マップ』出版差し止め事件では、本はおろかゲラも何もない中で裁判所は発行の事前差し止めの判断を下したが、判決内容には大いに疑問が残る。しかし、なぜかその2件の訴訟は、当初から賠償請求はなかった。

そうしたわれわれの闘いを継いで、次に『週刊文春』(文藝春秋)、かつては鹿砦社への提訴に名を連ね、カレンダー利権を持つほどジャニーズと親密な関係にあった『週刊女性』(主婦と生活社)が、よほど酷い仕打ちがあったのかカレンダー利権を棄て告発に走り、ジャニーズに対する報道タブーは解き放されたかと思われた。

『ジャニーズに捧げるレクイエム』(鹿砦社刊)より

[左]『ジャニーズに捧げるレクイエム』表紙[中央]唯一ジャニーズの歴史を詳述した書籍『ジャニーズ50年史』(増補新版。鹿砦社刊)[右]たびたび出版されたジャニーズのスキャンダルをまとめた書籍『本当は怖いジャニーズ・スキャンダル』(増補新版。鹿砦社刊)

しかし、BBCの取材班スタッフが首を傾げるように、ジャニーズに対する報道タブーは今も続いている。ジャニー喜多川による性的児童虐待は、欧米では明確な犯罪なのに、なぜ日本では問題にならないのか、これをなぜ日本のメディアは報じないのか、BBC関係者は驚く。文春がせっかくシリーズで告発し、社会的に一定の発信効果があったのに、いつのまにか忘れ去られていった。海外に発信されたこともなかった(部分的にはあったかもしれないが)。

ジャニーズ事務所創業者で「ジャニーズ帝国」といわれるほど事務所を拡大させたジャニー喜多川が死去した際には、文春訴訟で認定された性的児童虐待は語られず、逆に「日本の芸能界に大きな足跡を残した」とか「惜しい人を亡くした」など、本質から離れた報道一色だった。

 

星野陽平著『【増補新版】芸能人はなぜ干されるのか?──芸能界独占禁止法違反』(鹿砦社刊)

実は新型コロナが襲来する前後、鹿砦社にはBBC関係者から内々に協力の打診があった。われわれがどう振る舞ったかは信義上言えないが、協力要請はジャニー喜多川による性的児童虐待を報じた文春はじめ多方面に渡った。コロナ禍が長期化し、企画はペンディングとなり、そのまま没になるのかと思っていたところ復活、遂に昨夏取材クルーが遙々イギリスより来日して多くの人たちに調査・取材したようである。その結果が、明日いよいよ報じられるドキュメント番組として結実した。興味津々である。これが、このかん報じられているジャニーズ事務所内の内紛にどう影響するのか、公正取引委員会(公取委)に警告される日本の芸能界を変えるきっかけとなるのか──。

ちなみに、芸能界の寡占状態や奴隷労働などを問題視した公取委が注目したのが星野陽平渾身の大著『芸能人はなぜ干されるのか?──芸能界独占禁止法違反』(鹿砦社刊)だった。公取委は星野を講師として招き研究会を行い、その後ジャニーズ事務所などに指導に入ったのだ。鹿砦社の本もたまには社会的に貢献することもある。

ところで、これに先立ち、パチンコ・パチスロ・ゲーム業界のガリバー企業「アルゼ」(現ユニバーサルエンターテインメント)の、フィリピンにおけるカジノ汚職疑惑を追っていたロイター通信から協力要請があり、持てる限りの資料を提供したり聴き取り取材にも応じた。この結果、創業者オーナーでパチンコ・パチスロ・ゲーム業界に君臨してきた岡田和生を逮捕(香港で)に至らしめ、なんと実の息子、前妻、子飼いの社長らによって、自らが作り育てた会社から放逐されるに至ったのだ。われわれが返り血を恐れず、4冊の本を世に送り、鹿砦社代表・松岡逮捕、半年余りの長期勾留、有罪判決と600万円余の賠償金を課され一時は会社も壊滅的打撃を受けつつも闘ったことが実ったといえよう。逆に、岡田の告訴を受け連携して鹿砦社弾圧に加担した神戸地検・大坪弘道特別刑事部長(当時)も別の汚職事件で逮捕され失職、松岡に手錠を掛けた主任検事・宮本健志検事も深夜泥酔し街中で暴れ降格の懲戒処分を受けている。

時代は確かに変わってきている──全世界に放映される、日本の芸能界の暗部を抉る今回のBBCのドキュメントが、日本の芸能界関係者やメディアがどう捉えるのか、そして改革のきっかけとなるのか、興味は尽きない。われわれの問題提起が、四半世紀を超えて世界的なニュースとして採り上げられる。是非ご注目頂きたい。(文中敬称略)

※この記事に関連して掲載されている『ジャニーズ50年史』(増補新版)などの書籍は在庫僅かです。ご関心のある方は早めにご購読されることを望みます。鹿砦社販売部(sales@rokusaisha.com)までお問い合わせください。
また、『芸能人はなぜ干されるのか?』は増補新版は品切れ、旧版が少し在庫有ります。

(ジャニーズ特別取材班)

7日発売! 月刊『紙の爆弾』2023年4月号

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