本誌でこの間、重点的に採り上げてきたコロナワクチンの問題。前号(11月号)では立憲民主党・原口一博衆院議員が、昨年の自身のがん発症・公表と、ワクチンの関係について語っています。今月号ではさらに踏み込み、いわゆる「ワクチン後遺症」についてレポートしました。9月に「XBB1.5対応」として7回目接種が始まっていますが、追加接種が推進されているのは日本だけ、という事実にまず、目を向けなければなりません。

それでも、政治の世界を含め、ワクチンの危険性に関する言及は、だんだんと増えているように見えます。“コロナブーム”も一時期と比較すれば落ち着きつつある現在、わざわざ接種を受ける人は減るのではと思っていたのですが、「接種会場の予約がとれない」との報道やSNSコメントが相次ぎました。しかし、7回目接種人口は10月末時点で人口の7%ほど。今月号記事では、「接種希望者殺到の報道に惑わされるべきではない」と指摘しています。そうしたネットを含めた情報・報道のあり方についても、11月号で原口議員が元総務相としての経験をもとに警鐘を鳴らしています。近年、インターネット上で“フェイク”が横行しているとして、総務省が音頭をとって「ファクトチェック」を推進しています。しかし、そのやり方を見れば、プラットフォームによるユーザーへの規制と監視。メディアが自己検証するのとは異なる「検閲」にほかならないと言わざるをえません。

また今月号では、水稲新品種として秋田県が2025年の全面切り替えを発表した「あきたこまちR」についてレポートしました。「あきたこまちR」は、放射線を当てて一部の遺伝子を破壊した「コシヒカリ環1号」を「あきたこまち」と交配することで作った新品種。自民党がその安全性をPRするものの、これを常食することに問題はないのか、本当に日本の農業に寄与するのか、多くの疑問が投げかけられています。秋田県がこの夏に行なったパブリックコメントには過去最多の6000件もの意見が寄せられ、計画の延期と見直しを求める署名8038筆が県に提出されました。しかも、“風評被害”を避けるとして、切り替え後も販売されるにあたり、表示義務はありません。本誌レポートでは、「あきたこまちR」の実態と、予想される事態に迫りました。ぜひお読みいただければと思います。

増税しながら減税、増税しながら給付金の岸田政権。中抜き企業をまた儲けさせるのはもちろん、かかる手間も国民にとって大きな負担であり、決して見逃せるものではありません。そして、その間にも巨額を投じた軍拡は着実に進みます。ただの“増税メガネ”ではないということです。そうして市民が自らの生活を守るのもままならない状況で、2027年までに航空自衛隊が「航空宇宙自衛隊」に改称することを発表しました。「宇宙作戦群」なる防衛省のホームページがまさに示すように胡散臭いことこの上なく、「宇宙」が軍需のネタとなっているのは事実のようです。一方、「地上」の日本では、防衛医大が「戦傷医療センター」新設を8月末に公表(こちらも先月号参照)。今月号では軍事要塞化する馬毛島の模様をレポートしていますが、もはや政府は「戦争準備」を隠さなくなった感があります。

ほか、12月号では旧ジャニーズ“NGリスト”でも話題となった本間龍氏が2030年札幌冬季五輪「招致断念」の背景事情を解説。イスラエルと“国際社会”の「罪」、超円安を克服する“秘策”など、盛りだくさんの内容をお届けします。全国書店で発売中です。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号

『紙の爆弾』2023年12月号

放射線育種米交配種「あきたこまちR」が開く食と農業の悲劇的な最終幕
五輪も万博も日本ですべきではない 札幌五輪招致断念という「正しい判断」
患者が語る“症状”と“治療”「コロナワクチン後遺症」の実態
「基地反対」で再選の朝日新聞出身市長が容認
岸田大軍拡の最前線 馬毛島基地建設の現場
「細田博之会見」は“ジャニーズ以下”“増税メガネ”岸田政権のヒサンな内幕
「参院徳島・高知」「衆院長崎四区」衆参2補選が象徴する岸田政権の凋落
イスラエルの「罪」を見逃してきた米国による「国際秩序」
“NGリスト”は本質ではない ジャニーズ問題の背後にある芸能界の“闇”
「航空宇宙自衛隊」誕生へ 宇宙軍拡競争に巻き込まれた日本
「対米隷属」から「日本自立」への活路 超円安を克服する“秘策”
これは宗教紛争ではない イスラエルが潰した「パレスチナ和平」
政治家の不正蓄財が見逃される理由「政治献金」をめぐる法律の抜け穴
新文部科学事務次官の天下り斡旋「停職」歴
旧統一教会解散命令請求で揺らぐ創価学会
女こどもを食いものにする自民党の女衒政治を嗤う
シリーズ 日本の冤罪44 元講談社「妻殺害」事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵


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◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

◆「清く 正しく 美しく」とは一体何だったのか!? 

ジャニーズとタカラヅカについての出版を始めたのは、共に1995年だった。爾来28年、ジャニーズは、30数点の告発系、スキャンダル系の本を出し続けて来たが、ご承知の通り事実上解体した。

一方、タカラヅカも、ジャニーズには及ばないまでも『タカラヅカ秘密の花園』以来20点ほどの本を出した。特に2010年に出した『ドキュメント タカラヅカいじめ裁判 ── 乙女の花園の今』が今、話題になっている。将来を嘱望されていた歌劇団員が、先日9月30日にイジメに追い詰められて自宅のあるマンションから飛び降り自殺したからだ。タカラヅカは創設100年余り経って初めての自殺者である。改めて問いたい、「清く 正しく 美しく」とは一体何だったのか!? と。13年前に同書を出して警鐘を鳴らしたが、一顧だにされなかった。

ジャニーズにしろタカラヅカにしろ、未成年性虐待やイジメは長い間ささやかれてきたが放置され、意図的に隠蔽されてきた。死者を出したタカラヅカは、こと一歌劇団の問題ではなく、親会社の阪急電鉄が厳と介入し根本的にイジミ一掃を図らねばならない。マスメディア(特に関西の)は、阪急資本に忖度するのではなく、昨今のジャニーズ並の報道を望みたい。

私たちの、そうした出版活動、当時はトリックスターのように見られたが、今思うと、自分で言うのも僭越ながら、現在のジャニーズやタカラヅカの問題を予見していたところもあると自負さえする。

◆ジャニーズとタカラヅカ ── 長年放置、隠蔽してきたマスメディアの責任は大きい

ところで、くだんの『ドキュメント タカラヅカいじめ裁判』だが、問い合わせも多く、少部数ながら復刻出版することにした。

当該のジェンヌSさんにもイジメが続き、また寮内には盗難も相次いでいたが、遂には盗難犯の濡れ衣を着せられ退学処分になる。これに対しSさんは処分取り消しの訴訟を神戸地裁に起こし勝利的に和解し終結した。その上でSさんは退団し生まれ故郷の岩手に帰郷する。しかし、地方都市では宝塚音楽学校に合格したら大きく報じられる。Sさんも同様だった。Sさんは、わけあって退団したことで冷たい視線に耐えられず東京に出る。しばらくは平穏な日々を送っていたかと思われていた。

しかし、私たちを驚かせる出来事が……なんとSさんが大手AVメーカー「ソフト・オン・デマンド」からAVデビューしヘアヌード写真集も出すというのだ。AVは発売直前に中止となる(写真集は発売され資料として購入し今手元にも残っている)。ここのところは旧版にはない部分で「その後の顛末」として追加した。

Sさんは飛び切りの美人だといい、本来なら宝塚歌劇でスポットライトを浴びたかったはずだが、なんともいえない気持ちになる。 ── 哀しい物語の終わり方である。

今回、イジメで自殺者を出すという前代未聞の悲劇的な事件が起きた。人ひとりがなくなったのだ、歌劇団や親会社の阪急電鉄は責任を取り、死に物狂いで事実経過を調査し抜本的な対策を講じなければならないことは言うまでもない。

ジャニーズとタカラヅカ、「少年愛の館」と「秘密の花園」 ── 共に1995年に出版を開始した2つの問題が今、一つは崩壊の危機に瀕し、もう一つも解体的危機にある。非常に感慨深い。これまで長年放置、隠蔽してきたマスメディアの責任は大きい。

株式会社鹿砦社 
代表取締役
松岡利康

11月16日発売!『[復刻新版]ドキュメント タカラヅカいじめ裁判 ── 乙女の花園の今』B6判、200ページ、ソフトカバー装、定価1650円(税込み)

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315355
オンライン書店 e-hon

 

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

私は冤罪事件というと狭山事件の石川一雄さん、袴田事件の袴田巌さん、和歌山カレー事件の林真須美さん、それぞれの支援運動の末席におらせてもらい、そして原発反対運動の中で滋賀の仲間から西山美香さんのことをその都度教えてもらって、この国ではそういうことが警察、検察、裁判所の手によって起こっていることを知ってきました。

その私にとっても、尾﨑さんのレポートは驚きの連続でした。これだけの「取材」をされたご苦労を感心します。

読んだ感想というか、一言で言って日本の警察、検察、裁判所の悪どさ、というのでしょうか。別にこれら司法に関わる人々は「正義の人」でもなんでもない、権力を自らの手に持ちながら、自らの出世に汲々とする普通の大人だということでしょうね。

同時に、戦前からの歴史の中で、敗戦という事態の中で何一つ変化することもなく制度として明治以来の権力機構としての体制が維持され、「おい!こら!」の精神で、とりわけ組織防衛にその忠義心を投入することを暮らしの生業とする人たちなんだと改めて思いました。

日本の権力機構が、裁判所も含め、軍隊を除いて(自衛隊が生まれるまでの事ですが)、戦前の機構をそのまま残して戦後の政治の中で生き残ってきた、人的にも戦前、戦後が連続的に維持されてきたという私なりの想いをある意味確認する書でもありました。

「冤罪」は、こんな支配体制のもとであれば、その体制を維持するために、どんどん起こされていく。それがある意味、理の当然ではないでしょうか。こんな歴史の先に、私たちの未来はないとあらためて思います。

(松原康彦)

日本の冤罪
尾﨑美代子=著
四六判 256ページ カバー装 定価1760円(税込み)

「平凡な生活を送っている市民が、いつ、警察に連行され、無実の罪を科せられるかわからない。
今の日本に住む私たちは、実はそういう社会に生きている。」(井戸謙一/弁護士・元裁判官)

労働者の町、大阪・釜ヶ崎に根づき小さな居酒屋を営みながら取り組んだ、
生きた冤罪事件のレポート!

机上で教条主義的に「事件」を組み立てるのではなく、冤罪事件の現場に駆け付け、
冤罪被害者や家族に寄り添い、月刊『紙の爆弾』を舞台に長年地道に追究してきた、
数々の冤罪事件の〈中間総括〉!

8月に亡くなった「布川事件」の冤罪被害者・桜井昌司さんが死の直前に語った
貴重な〈遺言〉ともいうべき対談も収める!

【主な内容】
井戸謙一(弁護士/元裁判官) 弱者に寄り添い、底辺の実相を伝える
《対談》桜井昌司×尾﨑美代子 「布川事件」冤罪被害者と語る冤罪裁判のこれから
[採り上げた事件]
湖東記念病院事件/東住吉事件/布川事件/日野町事件/泉大津コンビニ窃盗事件/
長生園不明金事件/神戸質店事件/姫路花田郵便局強盗事件/滋賀バラバラ殺人事件/
鈴鹿殺人事件/築地公妨でっち上げ事件/京都俳優放火殺人事件/京都高校教師痴漢事件/
東金女児殺害事件/高知白バイ事件/名張毒ぶどう酒事件

[著者略歴]尾﨑美代子(おざき・みよこ)1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。


◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

10月も半ばを過ぎ、日ごとに肌寒くなってまいりました。

 

本日発売 尾﨑美代子著『日本の冤罪』

さて、このたび小社は『日本の冤罪』を刊行しました。著者の尾﨑美代子さんは、労働者の町・大阪釜ヶ崎に根づき、小さな食堂を営みながら、かねてからの自身の追求課題として冤罪事件の取材を続け、月刊『紙の爆弾』を舞台に継続してレポートを発表してきました。それらに補強取材を行い最近の経過を加え一冊の単行本『日本の冤罪』としてまとめ上梓されました。「日本の冤罪」の連載は毎号『紙の爆弾』の基幹企画として複数のライターによって現在も継続しています。それだけ世の中に冤罪が多いということですが……。

尾﨑さんのレポートは、連載開始以来好評で多くの読者から書籍化することが望まれてきました。特に本書の完成を待たずに8月に亡くなられた「布川事件」の冤罪被害者・桜井昌司さんはそうで、本書での対談は、まさに〝遺言〟ともいえる貴重なものです。

そのように本書は、机上で教条主義的スコラ的に「事件」を組み立てるのではなく、法律の専門家でも学者でもなく、日々労働者と共に在る一人の市民として時間を見つけては四方八方冤罪被害者の元を訪ね、冤罪被害者と家族・関係者に寄り添って取材を続け、生きた記録として書き綴ってあります。「冤罪」問題を扱った類書は少なからずありますが、その点が類書と根本的に異なるところです。

何卒、本書を紐解いていただき、知人や友人、メディア関係者の方々に薦められご紹介の労を執っていただきたくお願い申し上げます。

株式会社 鹿砦社
代表取締役
松岡利康

日本の冤罪
尾﨑美代子=著
四六判 256ページ カバー装 定価1760円(税込み)

「平凡な生活を送っている市民が、いつ、警察に連行され、無実の罪を科せられるかわからない。
今の日本に住む私たちは、実はそういう社会に生きている。」
(井戸謙一/弁護士・元裁判官)

労働者の町、大阪・釜ヶ崎に根づき小さな居酒屋を営みながら取り組んだ、
生きた冤罪事件のレポート!

机上で教条主義的に「事件」を組み立てるのではなく、
冤罪事件の現場に駆け付け、冤罪被害者や家族に寄り添い、
月刊『紙の爆弾』を舞台に長年地道に追究してきた、
数々の冤罪事件の〈中間総括〉!

8月に亡くなった「布川事件」の冤罪被害者・桜井昌司さんが死の直前に語った
貴重な〈遺言〉ともいうべき対談も収める!

【主な内容】
井戸謙一(弁護士/元裁判官) 弱者に寄り添い、底辺の実相を伝える
《対談》桜井昌司×尾﨑美代子 「布川事件」冤罪被害者と語る冤罪裁判のこれから

[採り上げた事件]
湖東記念病院事件/東住吉事件/布川事件/日野町事件/
泉大津コンビニ窃盗事件/長生園不明金事件/神戸質店事件/姫路花田郵便局強盗事件/
滋賀バラバラ殺人事件/鈴鹿殺人事件/築地公妨でっち上げ事件/京都俳優放火殺人事件/
京都高校教師痴漢事件/東金女児殺害事件/高知白バイ事件/名張毒ぶどう酒事件

[著者略歴]尾﨑美代子(おざき・みよこ)1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。


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◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

すっかり秋めいてまいりました。

このたび小社は28年にわたるジャニーズ問題(創業者ジャニー喜多川による未成年性虐待と事務所の横暴など)追及の〈集大成〉として『ジャニーズ帝国 60年の興亡』を刊行いたしました。

 

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』

本書は私たちにとって感慨深いものがあります。今から28年も前の1995年、ジャニーズ事務所から出版差し止めを申し立てられて以来、私たちは3度の出版差し止めにも屈せずジャニーズ問題を告発し続けてまいりました。

このかんのジャニーズ問題のヒートアップには驚くばかりですが、ずっと悲観的な想いでいたところ28年にわたる執念が実ったことだけは確かです。「蟻が象を倒すこともある」「針の一穴がダムを決壊させる」と嘯いてまいりましたが、現実のものとなりました。

現在、すべてと言っていいほどのマスメディアが日々ジャニーズ問題に狂奔していますが、「死人に口なし」で、なぜもっと早い時期、少なくとも『週刊文春』訴訟でジャニー喜多川の未成年性虐待が認定され最高裁で確定した時点からでも取り組むべきだったと思います。文春以前と以後、さらにジャニー喜多川が存命中と死後では、取材や記事の値打ちに天地雲泥の差があります。

毀誉褒貶はあるかと思いますが、まずは私たちの闘いの記録でもある本書をご覧になり、取材の参考にされたり、またご意見、ご批判などお寄せください。こういう記録書は他にはないことだけは確かであり、手前味噌ながら、これだけでも価値があると自負いたします。

まずは『ジャニーズ帝国 60年の興亡』刊行のご挨拶にて失礼いたします。

株式会社鹿砦社 
代表取締役
松岡利康

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
  2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
  文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
  文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
 [資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

10月23日発売 鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』A5判 320ページ 定価1980円(税込み)

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315290/

◆冤罪はきょうも続いている

 

尾﨑美代子『日本の冤罪』(鹿砦社)10月23日発売

警察に「逮捕する!」といわれ、手錠をかけられる。最近あるのかどうか知らないが「刑事ドラマ」は二世代ほど前には人気番組だった。しかしあの番組群は、警察権力に迎合し過ぎた。やりたい放題な拳銃の発砲や警察権力の過剰な暴力を英雄化・美化して視聴者の感覚を鈍化させる作用を担っていた。

そういったエンターテインメントで描かれる、警察の正義性や、苦闘、あるいはヒューマンドラマの裏面に「作り物」ではない現実として、冤罪は悲しい旋律を奏でながら現在進行形、きょうも続いている。

冤罪とは事件・事故の加害者ではないのに、まずは警察に加害者と決めつけられ、ほどなく、被疑者と呼称を変えられ(かつては「被疑者」とも呼ばれず氏名呼び捨てであった)、警察発表に従いマスコミが「こいつが犯人だ」、「こいつは劣悪非道な人間だ」と散々喧伝され、最悪の場合、無期懲役や死刑が言い渡された犠牲者を示す単語である。そこには司法の暴走・暴虐・組織防衛の力学が必ず働く。

◆著者は大阪市西成区の飲食店「はな」のママ

『日本の冤罪』著者の尾﨑美代子さんは、大阪市西成区に飲食店「はな」を経営する女性だ。西成といえば「釜ヶ崎」。「釜ヶ崎」はご存知の通り、日雇労働者が多く暮らす地域だ。著者は「どこにそんなエネルギーと発想が蓄えられているのか」と驚嘆させられる情熱の持ち主である。その情熱が『日本の冤罪』で二つ結実した。

一つ目は布川事件冤罪犠牲者桜井晶司さん(本年8月23日にご逝去)と著者の対談だ。この対談はおそらく桜井さんが遺された最後のまとまった意見表明だろう。二つ目は冤罪事件解決、原発訴訟や福島原発事故被害者救済の裁判など広範な分野で最先頭に立ち、闘う井戸謙一弁護士からの寄稿「弱者に寄り添い 底辺の実相を伝える」である。桜井さん井戸弁護士お二人の力添えが『日本の冤罪』の価値をより高めていることは間違いない。

本書に推薦文を寄稿してくれた井戸謙一弁護士(左)と著者

◆16の事件の冤罪犠牲者たち

『日本の冤罪』には16の事件、18本の取材報告が収録されている。殺人事件から1万円の窃盗そして痴漢事件まで。「事件の軽重にかかわらず幅広く冤罪は作られる」ことを知るために、本書が有益であることを著者は意識したであろうか。さらにこれまで一度として報道されたことのない「京都俳優放火殺人事件」まで取材・執筆の幅が広がっていることが数ある冤罪関連書籍の中で本書を際立たせるのだ。読者は驚かれるかもしれないがと「京都俳優放火殺人事件」の冤罪犠牲者は現在も獄中に囚われたままだ。

著者の冤罪事件取材の方法は独特だ。対談した桜井さんや他の冤罪犠牲者から「こんな事件がある、冤罪だ」と紹介を受け、当該事件の冤罪犠牲者や、弁護士、関係者に取材に赴く(冤罪犠牲者が獄中に居れば手紙を書く)。多くの場合取材のきっかけに冤罪犠牲者の紹介や、要請があり、それが次の事件取材へと繋がる。

『日本の冤罪』筆者の主たる生業は執筆ではない。著者は20年続く飲食店「はな」の店主である。つまり著者は少なくとも「二足の草鞋」を履いているのであるが、それだけではない。「はな」はしばしば勉強会、講演、音楽ライブの会場として地域だけではなく全国から人が集まる場所として機能する。仕切るのはいつも著者、でも必ずたくさんの人が手伝ってくれるという。

冤罪の犯罪性を市井の視点から解き明かし、その射程を未だに誰もが触れぬ領域にまで広げていった。本書のエッセンスと価値はそこにある。

◆取材者の洞察力

 

布川事件冤罪犠牲者桜井晶司さん(本年8月23日にご逝去)。本書収録の対談が桜井さんによる生前最後の意見表明となった

ひとつだけ『日本の冤罪』手に取る未来の読者に警告しておこう。冤罪取材は事実の確認作業が第一歩だが、その先にどんな恣意が隠されていたのかを洞察するのは取材者の洞察力に委ねられる。

さらには事件を文章化するにあたってはときに、凄惨な事件を描写しなければ全様を説明し尽くせない。冤罪を解き明かすには取材者が事件の全体像に踏み込む勇気が求められるわけだ。著者はどんな事件であっても全容を納得することなしには、文章を書いていない。冤罪の犯罪性同様、事件のむごたらしさも描かれていることを心して、読者は本書を手にしてほしい。

なお、著者は故桜井さんに「尾﨑さん、あの事件も書いてよ」と言われている冤罪事件をかなりの数抱えている。その取材が終わるまでは、桜井さんにお別れはできないという。ということは、冤罪事件がある限り、著者が桜井さんに「さようなら」を言える日は来ないのかもしれない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

[著者略歴]尾﨑美代子(おざき・みよこ)1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

◆優美な文体による悲劇と描写のコントラスト

『広島の追憶』は悲しく痛みに満ち溢れた物語であるが、全編優しい表現で描かれている。物語の激烈さを優美な筆致で書き上げる、内容と表現の見事なコントラストにより、この物語が発するメッセージはさらに輝きを増している。

 

1梓 加依『広島の追憶 原爆投下後、子どもたちのそれからの物語』(鹿砦社)四六判、上製カバー装、本文192ページ+巻頭カラー4ページ、定価1650円(税込み)0月12日発売

物語の登場人物には、ついぞ意地悪や性根の曲がった人物が見当たらない。子ども、大人を問わず一人も現れない。他方情景や食べ物、心理の描写は、輪郭が明確で色鮮やか、しかも繊細である。まるで万華鏡を覗くようだ。わたしはさながら追体験をしているかの如き感覚を抱きながらページをめくった。この作品が児童文学への造詣が深い著者の実経験と筆力、そして力強い意思で貫徹された物語だからであろう、美しくも繊細でありながら重大なメッセージを込めた作品の力量と、構想の精緻さに読者は圧倒されるだろう。

本書の帯には「担当編集者が何度も泣いた。」とある。わかる。素直に悲しく、可哀そうで落涙したり、優美な文体による悲劇と描写のコントラストに涙する読者は少なくないだろう。

◆苦痛や煩悶を丁寧で穏やかに描写

物語は、原爆投下後12年を経た広島市(現広島市南区あたりだと思われる)で同じクラスの小学校6年生4人がまず登場する。物語で主役を演じ、おそらくは著者の実体に基づくであろう「由美子」、八百屋の父親を手伝う元気な「和也」、細身で音大進学を望む「裕」、勉強も運動も得意、優等生の「進」。

小学校6年生の4人に「病」と「死」は容赦なく近づく。苦しかっただろう、怖かっただろう、悲しかっただろう。が、物語の中で著者は死者にも生き残った者にも、ほとんど強いトーンの発言や行動をとらせることがない。押し殺したわけではない。苦痛や煩悶が丁寧で穏やかに描写される情景こそが、かえって読むものに惨状の実態を強く感じさせるのだ。

近年わたしは映像でも文章(物語)あるいは音楽、つまりは文化一般における、揶揄競争、激烈さ競争、さらには圧倒的な痴呆化に飽きてしまっている。『広島の追憶』はそんなわたしの欠乏感と欲求を、ものの見事に埋めてくれるどころか、驚くべき展開を見せてくれた。漢字さえ読めれば年齢に関係なく誰にでも読む価値があるし、心が揺らされるのは必至だ。数十年ぶりに文学の名著に出会うことができて、わたしは満たされた。

◆「由美子」はおそらく幼少時代に長崎で被爆している

上記が『広島の追憶』への一般的な感想である。以下は『広島の追憶』とわたしの個人的接点だ。

一般的に読者が文学作品に接する際、個人的経験との接点(共有・または共振)が作品への同一感を強化することはありがちである。本書とわたしの間にもそれは生じた。

まず物語冒頭の主たる舞台である広島市南区翠町。そこは1945年8月15日にわたしの母及びその家族の居宅があった場所である。当時5歳の母は疎開しており原爆投下の日、同所には居なかったが、叔父たちは近所に下宿していて原爆の直撃を受けた。

直後に死んだり大怪我した叔父は居なかったが、50歳を超えると不思議なことに叔父は癌を発病し、短い治療期間で死んでいった。被爆と癌発症の因果関係を科学的には証明できないのかもしれないが、彼らが「被爆手帳」を持って事実は重たい。

そして物語の主人公「由美子」が転居する道程である。「由美子」は長崎から大阪そして広島から再び大阪へ移動する。「由美子」はおそらく幼少時代に長崎で被爆している。

わたしの母は長崎で生まれ下関を経て広島そして神戸へと転居を重ねた。上記の通り広島原爆投下の日には広島市内に家がありながら疎開して直撃弾は免れた。しかし、祖母から聞いた話によれば原爆投下からほどなく家のあとかたずけに一家総出で翠町に赴いている。母は100万人に1人と言われる珍しい癌に数年前罹患した。つまり、本書のテーマである原爆、被爆とわたしは無関係ではいられないのである。

まだ存命であるが最近母の見当識は相当に怪しい。

わたしの母の名は由美子だ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315258/

新刊おすすめ『広島の追憶』
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1944年にナガサキに生まれ、小学校から高校までヒロシマで過ごした著者による「明日へと生きる若い人たち」への物語です。著者は「長崎青海」というペンネームで鹿砦社から松岡社長の編集で「豊かさの扉の向こう側」という本というより小冊子を著したことを契機に、大学非常勤講師や家裁の調停委員なども務めることになり、一念発起。図書館のアルバイト職員から大学に入学して司書資格を取得、修士課程も修了したという努力家でもあります。今回、30年ぶりに松岡社長の編集でまた本書を出されることになったそうです。

◆仲良し小6・4人組を次々襲う悲劇をリアルに描く

 

梓 加依『広島の追憶 原爆投下後、子どもたちのそれからの物語』(鹿砦社)四六判、上製カバー装、本文192ページ+巻頭カラー4ページ、定価1650円(税込み)10月12日発売

原爆投下から12年がたった広島での由美子、和也、進、裕の小学校6年生4人組とその後を描く物語です。

運動能力の高い和也、勉強抜群の進、そして歌がうまい裕。この中で由美子だけは長崎生まれ、大阪経由で広島に引っ越してきたという経歴の持ち主です。絵がうまく、国語は得意だけど、算数は不得手。体が弱く、イントネーションが関西弁だったために、クラスでもからかわれ、進、裕は由美子を庇うけれども、和也は由美子をからかう側という展開があるところまで続きます。しかし、他のクラスの男子が由美子を筆頭にクラスの女子にちょっかいを出してきたのに和也が反撃してヒーローになるという事件を契機に変わってきます。

中学進学を前に、夏休みに四人が将来を話し合う。広大付属(湯崎英彦・広島県知事を輩出するなど現在もトップ進学校)中を志望する進。音大を将来志望するために市外の中学を志望する裕。公立中から卒業後に八百屋を継ぎたい和也。思いもかけず先生から受験を勧められた由美子。

その後、悲劇が次々と襲う。まず、原爆症で和也のお父さんが夏休みの終わりに亡くなり、中学卒業後には家業の八百屋を継ぐという計画が崩れてしまいます。小学校卒業後は八百屋をたたみ、おばさん(広島県廿日市市)の大きな店を継ぐために大学まで行くことになるという怒涛の展開。

ついで、裕が白血病で入院。さらに、由美子によく絵を教えてくれた担任の上内先生も入院。年明けに二人とも亡くなってしまいます。さらに、進の二番目のお母さん(もちろん、被爆者でお父さんの再婚相手)も妊娠したまま自死するという事件が起きてしまう。進はこのため、おばあちゃんの家に行くため広島を離れることになります。

「原爆を落とされた広島は、今まで由美子が想像もしなかった悲しみの街だった」という叙述。その前後に、今までは「ナイト」として由美子をかばってきた裕が亡くなり、同じく「ナイト」だった進が広島から出ていく。そういう状況で和也が由美子の(3人目の)「ナイトになってやる」というところで、小学校生活は終わります。

◆「なんで、こんとに人が死ぬん?」「ヒロシマじゃから」そして「私は死なない!」

由美子は広島市内でも名門とされる進学校の女子中高・N学園に見事に合格し、進学。江波(現中区南部)に引っ越し、和也と一年に一度、夏に会います。

長崎生まれながら、大阪で育ち、他の三人に比べれば広島を良く知らない由美子は和也に、「なんで、こんとに人が死ぬん?」と質問し和也は、「ヒロシマじゃから」と答えます。

物語中で描写されているように、それなりに街が復興している状況にある戦後12年。カープの本拠地、旧広島市民球場もこの年の7月完成しています。そんな状況でも、次々と原爆の影響で子どもも大人も亡くなっていく。子どもも、クラスの友達や先生が亡くなっていく中で、いつ、自分が原爆症を発症してもおかしくない。悲しみだけでなく、自分事である。そういう状況におかれていた。そのことが強く伝わってくるセリフです。

いつしか、高3を迎えた二人。由美子は広島大学を志望し、和也は野球の名門・広商から大阪の有名私大への推薦入学が決まります。それまで二人で毎夏、亡き裕の家を訪ねていましたが、裕のお母さんの申し出で、それもこの年で終わり。

しかし、今度は由美子自身の体調が悪化してしまいます。実は、幼いころに入院経験があり、「18歳まで生きられるかどうか」と宣告されていた由美子。由美子自身が長崎生まれでお母さんは被爆したが由美子は佐世保にいたから被爆していないというのが表向きでした。だが、和也は由美子のお母さんから重大な告白を聞き出してしまう。原爆を受けていることを隠さないといけないのか。差別されないといけないのか。和也の憤りが伝わってきます。和也を見送った後の由美子の「私は死なない!」という決意は泣かせます。

由美子は結局受験せず。和也は大阪の私大へ進学。そして、18歳を超えて19歳になった夏。由美子は通信制の大学、それも和也と同じ大学へ行くことが思いもかけず、決まりますが、また入院してしまいます。そうした中で、和也が帰省して入院中の由美子に再会し、瀬戸内海の島に行って由美子からの手紙に改めて目を通し、「元気になれよ、風になんかなってどこかへ行くなよ」とつぶやき、ハーモニカを吹き始めたところで物語は終わります。

◆大人にこそ読んでほしい

「戦後80年に届く日が来た。でも、地球から核の脅威はなくならない。戦争もなくならない。風よ、届けてほしい。被爆地ヒロシマから世界中の子どもたちへ。この80年前の物語が、子どもたちの未来、いいえ、近い将来の物語にならないように。」

筆者もその思いを心から共有しました。まさにそれぞれの人生のある一人一人が、放射能によって命を奪われていく悲惨さ。被爆しているというと差別される理不尽さ。そのリアルを伝えていく必要があります。

それとともに、この本は、子どもたちだけでなく、特にこれから将来、各国を指導していくことになる若手政治家ら大人にも読んでいただきたいものだと痛感しました。この本の著者も「世界中のおとなたちへのお願いです。どぞ、これからも放射能によって子どもたちを死へと向かわせないでください。おとなの責任を子どもたちに背負わせないでください。」とあとがきで述べておられます。

本書は、『はだしのゲン』など従来の本と比べれば具体的な被爆シーンなどはなく、ソフトな描き方ではありますが、人が次々と亡くなっていくという恐怖、そして、それが自分自身もそうなるかもしれないとずっと背負い続ける恐怖。これらをリアルに描き出すことに成功しています。はだしのゲンなど従来の本は大事にしつつ、本書も広げていきたい。

被爆から78年たった今となっては、大人も広島でこういうことがあったことを、頭では勉強していても、きちんと認識している人は少ないと思われるからです。

それも広島においてさえも、です。和也君や裕君の家だったと思われる場所周辺(下写真=広島市南区的場町)。でも原爆からの復興で建てられた建物はもちろん、その後建て替えられたモダンなビルもまた壊され、ポストモダンな高層建築物がニョキニョキとそびえています。ついつい忘れてしまうことがある。だけど、忘れてはいけないことがある。筆者自身には子どもはいませんが、その分、周りの大人に伝えていきたいと思います。

和也君や裕君の家だったと思われる場所周辺(広島市南区的場町で筆者撮影)

新刊おすすめ『広島の追憶』
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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。

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1人ひとりが、その人らしい人生を送り、最期を迎える。そのために、わたしたちは具体的に何ができるのか。今回も、地域医療に尽力する医師・松永平太氏の著書、『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』(幻冬舎)の書評の第3回目をお届けする。

第2回目では、認知症の独居をも在宅で看取るという松永氏の覚悟が表現されたメッセージを紹介。また、孤独死を除く在宅死亡率は1割未満であって現在でも病院で亡くなる人が多いが、松永氏は予防医療も導入し、「穏やかな最期」の実現を目指していることも伝えた。

今回は、本書を追いながら、わたしの友人である看護師たちの言葉も紹介したい。それにより、理想の実現の尊さを感じてほしいのだ。

◆看護師の友人の話と、地域の山エリアの取り組み

 

松永平太『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』(幻冬舎)

先日、がんの闘病中のS氏と、友人で看護師のM氏と話していた際、S氏は全国を巡ると語っていた。離婚はしていないが、妻への「財産分与」も終えたという。つまり、病院でも自宅でもない場所で最期を迎えたいのだろう。

後日、別の友人で看護師のY氏と話したときには、「まず、家族が高齢者を引き取りたがらない。また、本人も在宅で最期を迎える覚悟はなく、家族とそのような話もしていない」と言っていた。個人的には、いつでも自分の最期にまつわる希望を書き連ねて残しておきたいところだが、死について考えたり語り合ったりすることは現在もなおタブーであるか、本人も家族も向き合おうとしないものなのかもしれない。

本書で松永氏は、「診療所に自分の携帯番号を張り出し、患者にもその家族にも、困ったらいつでも電話をしてほしいと伝えて」もいることに触れていた。

南房総市内の山エリアの区長は、災害時には孤立するうえに高齢者が多いエリアだからと、押せば区長につながるブザーを各家庭に設置している。また、どこが災害にあっても、それぞれの家が避難所になるように設定しているのだ。さらにこの行政区は、太陽光の活用や水道の種類の多さなども誇り、テレビの取材も受ける先進エリア。地域には、本当に頼もしい存在や対策があり、学ぶことが多い。

◆デンマークの「高齢者福祉の3原則」を千倉でも実現

本書では、2017年のデンマーク視察についても書かれている。2022年の1人当たり名目GDPを調べてみると、デンマークが66,516米ドル、日本が33,822米ドルで、2倍近くの差があるのだ。デンマークの人は、25%の消費税を、「信頼」と「尊敬」を背景に支払っていると語る。

デンマークは2023年の世界幸福度ランキングでも第2位に輝いており、47位の日本との差は歴然。ここにも「信頼」と「尊敬」の有無が表れているのではないかと、松永氏は考える。そして、デンマークの高齢者福祉の3原則は、1. 人生、生活の継続の尊重 2. 自己決定の尊重 3. 残存能力の活性化 とのこと。独居の高齢者宅にもケアスタッフが1日数回訪れるという。

デンマークから千倉に戻った松永氏は、1. 病院に入院した高齢者を元気にし、優しく地域に突き返す 2. 地域全体で少しずつ弱っていく高齢者を見守り、支えていく 3. 本人が望めば、自宅で最期を看取れる地域をつくる の3つを実践することにした。その中で、家族を呼び寄せ、漁師町の酒盛りに包まれて旅立つことを支援していったわけだ。

◆「ひとりぼっちでは死なせない」ために、施設とサービスを拡大

QOL(Quality of life:生活の質・生命の質)が唱えられて久しいが、これについて「命の輝きは、笑うこと、食べること、そして愛されることに表れ」ると松永氏は述べている。特に「愛される」とは、「ひとりぼっちでは死なせない」ということだという。

前出の看護師のY氏は、「病院から高齢者を家に返せないのは、訪問看護・介護などを手がける施設がないエリアが地域に多いせいもあるのではないか」と口にした。そこでわたしは早速、松永医院について説明したのだ。

以前も触れたが、ここには外来・訪問で診察をおこないながらリハビリも手がける診療所、地域の人が集まって食事や入浴をするデイサービスセンター、高齢者を元気にして家に帰す老人保護施設、認知症の人を支える認知症専用デイサービスセンター、そして在宅療養者の生活支援から看取りまでを担う訪問看護・介護ステーションをそろえている。ここに住む人、そして移住してきたわたしは幸運だ(笑)。

また、地域通貨風の施設内通貨を用い、好みのサービスを提供している。やはり先進的なのだ。そして、老人保護施設は、「利用者の過去6カ月の在宅復帰率が50%以上、過去3カ月のベッド回転率が10%以上、入退所後の訪問指導割合が30%以上」の施設として「超強化型」老健に指定されている。

◆「夢人さん」も「夢追い人」にも施される「無色透明のごちゃまぜケア」

しかも、認知症にかかった人を「夢人さん」、かかっていない人を「夢追い人」と呼ぶ。適切で優しいケアにより、他の施設では大声で暴れていた人が、穏やかになって笑顔が増えていくそうだ。日々、したいこととしたくないこと、人生経験や思い出話に耳を傾けるとのこと。さらに、待つことの重要性も説く。

前出の看護師でM氏のほうは、認知症の人に手を上げたことのない看護師・介護士はいないだろう」とわたしに話したことがある。彼女は1人、認知症の人の話を聞き、ほかの人は距離を置くそうだ。その話を聞いたときに感じた悲しみと絶望は、本書によって癒やされる。互いに希望をいだくことは不可能なことではないのだ。

実際、松永氏は1日8軒をまわり、すれ違う高齢者にも声をかける。もちろん、多職種の連携も重視する。読み進めるほど、わたしの友人の看護師や作業療法士はみな、松永医院で働いてほしくなる。

そして、地域包括ケアシステムを提供していくうえで、在宅看取りを強化するため、看護小規模多機能サービスと定期巡回、臨時訪問介護看護サービスの充実を必要なものとして考えているという。これらであれば、利用料が包括的に決まっているため、必要なサービスを提供できるそうだ。松永氏は、これらの「無色透明のごちゃまぜケア」を通じ、「すべての人が人権と尊厳を保ちながら生きられる社会に変えていかなければ」と綴るのだ。(つづく)

◎地域医療の最先端モデルに学ぶ ──《書評》松永平太著『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』

〈1〉笑顔で自分らしく生き、自宅で人生の最期を迎えるための地域医療
〈2〉命を輝かせ、独りぼっちにさせないための施設と取り組み
〈3〉看護師の言葉から辿る実践の「奇跡」

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター。東京で二十数年暮らし、DIY、医療・看護、代替補完療法、落語、園芸、料理、パソコンをはじめとする実用書・雑誌・フリーペーパー、省庁や大・中小企業のツールの執筆や編集のほか、Webのコンテンツの執筆・ディレクションなども手がけてきた。2019年、南房総エリアに、Uに近いJターン。地域の高齢者と友情を育むことを松永氏は推奨しており、わたしも勝手に実践している(つもりだ)。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

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ジャニーズ帝国 60年の興亡 鹿砦社編集部=編

ジャニーズ帝国 60年の興亡
鹿砦社編集部=編
A5判 320ページ カバー装 定価1980円(税込み)

少年愛の館、遂に崩壊! ジャニーズ問題追及28年の執念、遂に実る!

本年(2023年)3月7日、英公共放送BBCが、わが国だけでなく全世界に放映した故ジャニー喜多川による未成年性虐待のドキュメント映像が話題を呼び、これをきっかけに、ジャニーズ問題が報じられない日はない。本年最大の大事件で2023年の重大ニュースのトップとなるだろう。

今やジャニーズ事務所に対するメディアタブーが一気に溶けた感がある。これまでジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川の未成年性虐待(性犯罪)やジャニーズ事務所の横暴を、ジャニーズ事務所に忖度し報じず、むしろ癒着しその所属タレントを重用してきたNHK、朝日新聞をはじめとする、わが国トップクラスの巨大メディアまでもが掌を返し連日大きく報じている。

しかし、これまで黙認、放置、隠蔽してきた(文春を除く)マスメディアの責任は大きい。

鹿砦社は、遙か28年も前、1995年にジャニーズ事務所から出版差し止めを食らって以降、多くの書籍でジャニー喜多川による未成年性虐待の問題やジャニーズ事務所の横暴などを報じてきた。一時期、芸能スキャンダルの一つとしてそれなりに報道されたりもしたが、ほとんどのマスメディアは無視した。わが国の代表的週刊誌『週刊文春』が1999年に追及を開始するまでに15点の告発系の書籍を出版し、今回の騒動でも、その中のいくつかの書籍が話題になった。

本書はその〈集大成〉としてジャニーズ60年の詳細な歴史、28年間の言論活動で経験してきたことなどをあますところなく記述し、これ一冊でジャニーズの歴史がすべて解るようにした。

今では貴重な資料も復刻・掲載、ジャニーズの60年の出来事を直近(10月2日の記者会見)まで詳細に記載し、ジャニーズ問題の本質をまとめた待望の一冊! ジャニーズ事務所からの3度の出版差し止めにも屈せず28年間の言論・出版活動を継続してきた鹿砦社にしかできない、類書なき渾身の書、緊急出版!

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
 2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
 文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
 文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
[資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

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日本の冤罪 尾﨑美代子=著

日本の冤罪
尾﨑美代子=著
四六判 256ページ カバー装 定価1760円(税込み)

「平凡な生活を送っている市民が、いつ、警察に連行され、無実の罪を科せられるかわからない。今の日本に住む私たちは、実はそういう社会に生きている。」(井戸謙一/弁護士・元裁判官)

労働者の町、大阪・釜ヶ崎に根づき小さな居酒屋を営みながら取り組んだ、生きた冤罪事件のレポート!

机上で教条主義的に「事件」を組み立てるのではなく、冤罪事件の現場に駆け付け、冤罪被害者や家族に寄り添い、月刊『紙の爆弾』を舞台に長年地道に追究してきた、数々の冤罪事件の〈中間総括〉!

8月に亡くなった「布川事件」の冤罪被害者・桜井昌司さんが死の直前に語った貴重な〈遺言〉ともいうべき対談も収める!

【主な内容】
井戸謙一(弁護士/元裁判官) 弱者に寄り添い、底辺の実相を伝える
《対談》桜井昌司×尾﨑美代子 「布川事件」冤罪被害者と語る冤罪裁判のこれから
[採り上げた事件]
湖東記念病院事件/東住吉事件/布川事件/日野町事件/泉大津コンビニ窃盗事件/長生園不明金事件/神戸質店事件/姫路花田郵便局強盗事件/滋賀バラバラ殺人事件/鈴鹿殺人事件/築地公妨でっち上げ事件/京都俳優放火殺人事件/京都高校教師痴漢事件/東金女児殺害事件/高知白バイ事件/名張毒ぶどう酒事件
[著者プロフィール]
尾﨑美代子(おざき・みよこ)
1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。

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