昭和のビッグイベント、オープントーナメントのその後! 堀田春樹

◆お祭り騒ぎ後の静けさ

前回までに語りました、キックボクシング界の見事な結集力を見せた活気ある1000万円争奪オープントーナメントも終わってしまうと閑散とした寂しさが残りました。その後は藤原敏男に続いて富山勝治も引退し、テレビに育てられたキックボクシングは終焉を迎えた1983年(昭和58年)で、このオープントーナメントの勢いもままならず、スターは居ない、テレビは付かない、再び沈静化した時代でした。

後の52kg級域頂上決戦は松田利彦が制した(1983.5.28)
暫定的日本統一ランキングは錚々たるメンバーが揃っていたが実現せず(1983.6)

◆タイガー大久保と鴇稔之らの運命

三階級優勝者の長浜勇、松本聖については過去に格闘群雄伝でも語っており簡略しますが、松本聖は興行の不安定さから出番が無くなり、長浜勇は翌1984年5月に優勝候補の一人ながら怪我で不参加だった斎藤京二に第2ラウンドKO負け。

52kg級の優勝者、タイガー大久保はその2ヶ月後、1983年5月28日の士道館興行で、こちらも優勝候補ながら準決勝で敗れ去った松田利彦と対戦。なんと第2ラウンドあっけなくKO負けしてしまいました。混沌としていた52kg級域でしたが、松田利彦株が急上昇。優勝者が崩れ落ちるのも、まだトップスターとして定着していない中での真剣勝負の厳しさがありました。

この後、タイガー大久保はプロボクシングに転向。「キックボクシングではもっと戦う場が欲しかった」という転身でした。

当時、京成小岩駅近くの西川ジムからも近かったロイヤル川上ジムからデビューし、数戦した後、アメリカのロサンゼルスに渡るも、アメリカでの試合は不遇な目に遭ったことも後に語られていて、紆余曲折した渡米のようでした。

3回戦トーナメントは後のチャンピオン、鴇稔之、渡辺明、鹿島龍、飛鳥信也も出場していた新人トーナメントでした。52kg級に出場した鴇稔之は初戦を勝利し、「これは決勝まで行けるな!」と思ったというものの、前回述べましたとおり、トーナメントはその後、立ち消えとなりました。

56kg級においては当初の10名トーナメントの開催が遅れたまま、6名に縮小となり立ち消え、62kg級においても欠場者が増え、いずれもその後の各団体に担った運営では日程も儘ならず、新人トーナメントは当初から計画性も進んでいなかった模様である。

後の62kg級域、ライト級頂上決戦は斎藤京二が制した(1984.5.26)

◆日本統一ランキング制定

同年6月半ば、オープントーナメント実行委員会は、トーナメント(5回戦)の結果を基に暫定的日本統一ランキングを発表されました。当時としてはなかなかの層の厚い名前が連なっていたものでした。

オープントーナメントは各階級を跨る変則的3階級で行なわれましたが、ランキングは当然の正規7階級制。トーナメントに参加していない選手名もランクされていますが、それまでの実績が考慮されての反映でした。

不参加だった伊原信一は新たに開拓していた香港興行が忙しくなった時期でした。先に述べました藤原敏男の後輩、斎藤京二は1982年7月のヤンガー舟木戦で負った顎骨折の影響で不参加でした。

またトーナメント戦から外れている、同シリーズ内で行なわれた重量級交流戦も対象となっており、向山鉄也(北東京キング)vsレイモンド額賀(平戸)戦とシーザー武志(東海)vs福島晃平(高葉)戦の4名はウェルター級とミドル級に分かれてランキングされています(勝敗結果は割愛します)。

正に画期的な日本ランキングでした。なかなか興味深いカードが期待され、これが真の日本統一王座制定へ進めば理想的でしたが、すぐの実現には至りませんでした。

しかし、1000万円争奪オープントーナメントも無駄ではないその後の流れでした。このトーナメントが在ったから辞めず踏み止まる選手やジムがあり、次の時代へ活かされたことでしょう。

◆オープントーナメントの裏側

元々、低迷期脱出と再浮上を狙っての二度に渡ったオープントーナメントでした。

500万円争奪戦はテレビ放映継続へ、1000万円争奪戦は業界全体の低迷からの底上げへ。欲を出せば裏目に出る傾向から、この時はテレビ放映復活の売り込みはしなかった模様。

また、優勝賞金は500万円争奪戦も1000万円争奪戦も資金調達が間に合わなかった様子も窺えました。ここにも苦しいやり繰りがありつつ、いずれも遅延しながらも円満に支払われた模様です。

1000万円争奪オープントーナメント開催前の5回戦組み合わせ抽選では、52kg級優勝者のタイガー大久保においては、新人戦の鴇稔之同様、「これは案外楽に決勝まで行けるぞ!」と思ったところが、抽選やり直しを強行されたという話もありました。56kg級、62kg級においては決勝戦で争うカードが予想され、優勝候補がブロック分けされている工夫が読み取れます。番狂わせもありましたが好カードは幾つも実現しました。

後々に第3回オープントーナメントが行われなかったのは、高額優勝賞金調達が難しいことや、当初の企画発案者、野口プロモーションの衰退に対し、業界が低迷期を脱し、定期興行が安定した中、業界が一致団結するイベントは難しくなったことでしょう。

その後は昭和から平成、令和にかけて小規模の幾つものトーナメントは開催されて行く中、今年(2024年)11月10日のNJKF祭から2ヶ月間で行なわれているJAPAN CUP 55kg級最強決定トーナメントは錚々たるメンバーが揃っているところ、チャンピオンクラスが3回戦制とか、準決勝と決勝はワンデートーナメント(12月30日横浜武道館K.O CLIMAX)というアマチュアのような在り方に疑問点はありますが、このイベントが成功すれば他のウェイト、階級でも開催が見込まれており、来年以降もそんな規模が大きくなるトーナメント戦は増えていくと予想されます。また昭和の1000万円争奪オープントーナメントを超える開催に期待したいものです。

時代は令和へ、JAPACUP 55kg級トーナメント、昭和のオープントーナメントを知らない世代たち(2024.11.9)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年3月号

武田幸三率いるNJKF CHALLENGERは今年も過激に前進! 堀田春樹

今年もエース格、大田拓真は圧倒のKO防衛。世界へ大きく前進。
吉田凛汰朗は薄氷の初防衛、課題は残るも世界へは一歩前進。
女子試合、SAHOは攻勢を保って判定勝利。

◎NJKF CHALLENGER 7(2025.1st) / 2月2日(日)後楽園ホール17:15~21:31
主催:(株)オフィス超合筋 / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)

戦績は興行プログラムを参照、この日の結果を加えています。

◆第9試合 NJKFフェザー級タイトルマッチ 5回戦

第14代選手権者.初防衛戦.大田拓真(新興ムエタイ/1999.6.21神奈川県出身/ 57.0kg)
41戦31勝(10KO)8敗2分
      VS
挑戦者1位.TAKAYUKI(=金子貴幸/K-CRONY/1988.11.18茨城県出身/ 56.95kg)
33戦17勝(7KO)15敗1分
勝者:大田拓真 / KO 4ラウンド 30秒 /
主審:児島真人  

ローキックとパンチの様子見から大田拓真が先に仕掛け、パンチ連打で金子貴幸をコーナーに詰める攻勢。

第2ラウンドも大田が攻勢を強め、金子をロープ際に追い込み首相撲からヒザ蹴りも加えていく中、俯く金子に右フックかヒジ打ちか、側頭部にヒットさせノックダウンを奪う。圧倒する大田が蹴りから追い詰めてヒザ蹴り、コーナーに詰めると右ストレートで2度目のノックダウンを奪う。

終始圧倒した大田拓真は飛びヒザ蹴りで金子貴幸にプレッシャーを与えた

第3ラウンド、劣勢でも巻き返したい金子に、太田はペースを乱さない。右ボディーブローから右フックでノックダウンを奪い、仕留めに掛かる大田はロープに詰めて組んでヒザ蹴り、右フックで通算4度目のノックダウンを奪う。更に攻める大田はヒジ打ちで金子の右頭部をカット。インターバル中の金子は陣営に止血されながら目を瞑り疲労困憊の様子。

人生一番苦しい時間かもしれない第4ラウンド、絶対優勢の大田がパンチからヒザ蹴りでノックダウンを奪うと、レフェリーはカウントする中、終了のゴングが打ち鳴らされた。セコンドはタオルを投げてはおらず、WBCムエタイルールをNJKFルールにも起用していたということで、全ラウンドを通じての5ノックダウン制で自動的KO勝利となって初防衛となった。

大田拓真の右ハイキック、懸命に戦う金子貴幸にヒット

リング上で大田は王座返上を告げ、6月8日のNJKF興行でWBCムエタイ世界タイトル挑戦の意向を示しました。

大田拓真は金子貴幸の印象を「覚悟を持ってチャンピオンベルト狙いに来ているなという目と気迫を感じていました。僕も本当に油断せず、世界を狙って行くには誰が相手とか関係無く、しっかり追い込んで来たので、結果がしっかり出せて良かったです。」

今後については「ONE(Championship)もそうですし、WBCムエタイ世界戦もNJKFでやらせて頂きたいと意向を伝えました。」と内定したWBCムエタイ世界フェザー級王座挑戦は実現に向かう模様である。

金子貴幸は「もっといけるかなと思ったんですけど、大田選手はあまりにも強過ぎて、こんなに差があるのかビックリしちゃいました。」と完敗を認めていた。

愛息子とツーショットに収まる大田拓真

◆第8試合 NJKFスーパーライト級タイトルマッチ 5回戦

第7代選手権者.初防衛戦.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身/ 63.2kg)
28戦13勝(3KO)10敗5分
       VS
挑戦者.健太(E.S.G//1987.6.26群馬県出身/ 63.2kg)122戦68勝(21KO)47敗7分
勝者:吉田凛汰朗 / 判定2-0
主審:多賀谷敏朗
副審:宮沢49-48. 児島49-49. 中山49-48

距離を取ってのパンチとローキックで出方を探る様子見の両者。徐々に経験値優る健太が前進。ハイキック、右ストレートヒットとパンチでわずかに上回ったかに見える攻勢。

第3ラウンドには、健太のパンチか、吉田の左目尻から出血。このラウンドまでの公開採点でジャッジ三者とも第3ラウンドに差を付け30-29で健太が優勢。第4ラウンドも一進一退な展開は変わらずも、健太の手数がやや落ちたか。

流血の吉田凛汰朗が健太と打ち合う

最終第5ラウンドも倒しに行こうと吉田はパンチを振り回してもヒットしないが健太も同様に吉田を止められない。互角の展開で終了も判定は逆転した流れで吉田凛汰朗が勝利した。第4ラウンド以降はジャッジ二者は吉田にポイントが流れた模様。一者は第5ラウンドのみ吉田に与えドロー裁定。微差も振り分けるなら採点が不可解とは言えないが、見極めの難しい試合だった。

初防衛に成功した吉田は、勝ったらいろいろ言いたかったことがあった様子も、出直しを誓っていた。

健太と吉田凛汰朗、微妙な判定に明暗分かれた両者の表情

◆第7試合 53.0kg契約 ノンタイトル3回戦

S-1女子世界バンタム級チャンピオン.☆SAHO☆(闘神塾/1999.10.15兵庫県出身/ 52.85kg)
21戦19勝2敗
        VS
ダンコンファー・キヤペットノーイジム(タイ/23歳/ 52.65kg)52戦38勝14敗
勝者:SAHO / 判定3-0
主審:少白竜
副審:多賀谷30-28. 児島30-28. 中山30-28

SAHOは蹴りとパンチのリズムで距離を詰め攻勢強める。ダンコンファーは下がり気味でも怯まずチャンスを窺う。第2ラウンドも同様にダンコンファーが蹴って来てもSAHOも構わず蹴りパンチとも多彩に優っていく前進が続いた。

SAHOが圧倒したが、ダンコンファーもムエタイボクサーらしく蹴りは上手かった

第3ラウンド、首相撲になってもSAHOがダンコンファーを崩して優る。SAHOが終始圧倒する展開となったがKOには至らず、チャンピオンとして納得いく試合が出来なかったことに反省のコメントも残していた。

チャンピオンとして納得いかない内容に反省の弁もあった

◆第6試合 ミドル級3回戦

WBCムエタイ日本スーパーウェルター級チャンピオン.匡志YAMATO (大和/1993.1.29愛知県出身/ 72.25kg)28戦16勝(9KO)10敗2分 
        VS
雄也(MY/29歳/ 72.1kg)9戦2勝(2KO)7敗
勝者:匡志YAMATO / TKO 3ラウンド 1分48秒 /
主審:宮沢誠 

匡志がローキック中心の前進。更にパンチ連打で攻勢を強めていく。第2ラウンドも蹴りで雄也をコーナーに追い詰めローキックでノックダウンを奪う。更にパンチ連打で二度目のノックダウンを奪う圧倒の展開。

第3ラウンド、匡志が追ってローキックからコーナーに詰めて右ストレートでノックダウンを奪う。雄也は蹴りで反撃も疲労困憊。更に右ストレートで通算4度目のノックダウンを奪うとノーカウントのレフェリーストップとなって匡志が圧勝となった。

匡志は対戦相手(他団体チャンピオン予定)が変更された経緯もあって、雄也戦となったことに感謝の言葉を述べて、次回には他団体チャンピオンやタイ選手など強い相手を要望していた。

◆第5試合 51.5kg契約3回戦 

S-1世界フライ級チャンピオン.優心(京都野口/2002.5.28京都府出身/ 51.05kg)
17戦7勝7敗3分 
      VS
NJKFフライ級チャンピオン.西田光汰(西田/2001.2.13愛知県出身/ 51.4kg)
12戦8勝(1KO)3敗1分 
勝者:西田光汰 / 判定0-2
主審:多賀谷敏朗
副審:少白竜28-28. 宮沢28-29. 児島28-29

優心は首相撲や蹴りとパンチのコンビネーションでやや優る流れが続いた。第3ラウンドには西田光汰の右ストレートで優心がバランス崩してスリップダウンし、更に似た流れながら西田の右ストレートでスリップ気味に尻もちをつくと、レフェリーはノックダウンと見極めた。

西田光汰の右ストレートが優心にヒット、ノックダウンに至る兆しはあったか

ノックダウンではないとアピールする優心だったが、覆らぬことは分かる様子で素直に受け入れ、再開後に反撃も巻き返すには時間は少なく終了し、西田がポイント的には逆転する判定勝利となった。

“フラッシュダウン”の後の両者のアクション、レフェリーは毅然と対処した

◆第4試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級3位.髙木雅巳(誠至会/ 50.55kg)12戦7勝(5KO)5敗
        VS
NJKFフライ級4位.永井雷智(VALLELY/ 50.8kg)7戦6勝(4KO)1分
勝者:永井雷智 / 負傷判定0-3 / テクニカルデジション 2ラウンド 1分8秒
主審:中山宏美
副審:少白竜19-20. 多賀谷18-20. 児島18-20 

永井雷智がパンチ中心にやや優勢気味に進めたが、第2ラウンドに髙木雅巳の股間ローブローを受けた永井雷智がダメージを負って立ち上がれず試合終了。偶然のアクシデントによる負傷判定となって永井雷智が望まぬ展開ながらも勝利した。

◆第3試合 スーパーフェザー級3回戦

NJKFスーパーフェザー級6位.匠(KING/ 58.5kg)9戦6勝(2KO)2敗1分
      VS
豪(GRATINESS/ 58.65kg)6戦4勝(3KO)2敗 
勝者:豪 / TKO 3ラウンド 1分21秒 /
主審:宮沢誠

第2ラウンドに豪が接近戦でのパンチでノックダウンを奪い、ヒジ打ちで匠の右瞼をカットし、第3ラウンドにも豪がヒジ打ちで匠の左目尻もカットし、流血が酷くドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。

豪(左)のヒジ打ちで流血しながら戦う匠(右)

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

Ryu(クローバー/1990.1.14茨城県出身/ 60.9→60.65kg)1.68kgオーバー、計量失格、グローブハンデ、減点2
7戦3勝(2KO)3敗1分
      VS
細川裕人(VALLELY/ 58.75kg)8戦4勝3敗1分
勝者:細川裕人 / 判定0-3 (25-30. 25-30. 26-30. Ryuに減点2が加算)

前進して蹴る勢いはあるRyuだったが、細川裕人がパンチからヒザ蹴りで応戦。ボディーを徹底的に狙った細川裕人が大差の判定勝ち。

◆プロ第1試合 60.5kg契約3回戦

高橋優(CORE/ 60.4kg)1戦1勝(1KO)
     VS
井岡巧(E.S.G/ 60.25kg)1戦1敗
勝者:高橋優 / TKO 2ラウンド 1分59秒 /

高橋のボディー蹴りで井岡巧が2度目のノックダウンでカウント中のレフェリーストップ

◆アマチュア2. オープニングファイトEXPLOSION U15 -60kg 級2回戦(90秒制)

佐藤陽平(第4代EXPLOSION60kg級覇者/TAKEDA/ 59.65kg)
     VS
田中豪 (VALLELY/ 60.0kg)
勝者:佐藤陽平 / 判定3-0 (20-18. 20-19. 20-18)

◆アマチュア1. オープニングファイトEXPLOSION U15 -45kg 級2回戦(90秒制)

堀口遥輝(TAKEDA/ 43.7kg)vs吏佐(ポンムエタイ/ 44.05kg)
勝者:吏佐 / 判定0-3 (17-20. 17-20. 17-20)

《取材戦記》

大田拓真は順当に金子貴幸を圧倒するKO勝利で初防衛。更なる上位王座を目指すことにはファンや陣営、NJKF運営関係者も新たな展開に期待したいところでしょう。
敗れた金子貴幸には戦前、もし番狂わせが起こったら。ここから金子貴幸の新たなドラマが生まれればという想定も出来ましたが、そこには至らずも、大田拓真に向かって行った闘志は、撥ね返されても悔いの残らない戦いだったでしょう。

この試合、レフェリーが止めた訳でもない不自然な試合終了だったので、試合後にレフェリーや運営部に尋ねたところが、全ラウンドを通じて5ノックダウン制だったらしく、WBCムエタイルールに倣ったという、そういった細かいルールは改訂する毎に発表する必要があるでしょう。NJKFはそんな曖昧さが少ないしっかりした団体です。今後の厳格な運営にも期待です。

吉田凛汰朗は僅差判定勝利の初防衛。2年前に敗れている老獪なテクニックの健太に雪辱出来るか、年齢や吉田の成長度で健太を圧倒しなければならないといった見所がありましたが、健太に呑まれた流れの微妙な結果と「パンチ貰っちゃいました!」と苦戦の反省もしていました。まずは“防衛してこそ真のチャンピオン” を果たして、更なる防衛か上位王座へ一歩前進でしょう。

優心にノックダウン奪って判定勝利した西田光汰は、第3ラウンドに西田の右ストレートによる優心のスリップ気味のフラッシュダウンではあったが、ノックダウン扱いとなったのは、軽くてもパンチを受けた上、尻もちダウンが2度目だったことが窺えました。要は同じパターンで尻餅ついては不利な流れとなったかもしれないことでしたが、他者の意見では「あれはノックダウンではないだろう」という意見も聞かれました。また、タイムストップはせず、ラウンド終了後に審判団で審議することも可能でしょう。

女子のSAHOは攻勢を維持し内容的には大差の展開でしたが、チャンピオンとして圧倒出来なかった、KO出来なかった悔しさはあったでしょう。試合内容に納得していないというSAHOはマイクで「また強くなって帰って来ます」とコメントを残しました。

次回、NJKF CHAKKENGER.8は4月27日(日)に後楽園ホールで開催です。バンタム級とスーパーバンタム級で各4名参加のトーナメントが発表されています。詳細はまた次回に。決勝は6月8日予定です。

他、3月16日(日)に女子ミネルヴァ興行、「GODDESS OF VICTORY Ⅲ」がGENスポーツパレスで開催。同じく3月16日、大阪で誠至会興行、4月20日(日)岡山県で拳之会興行が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年3月号

2月2日、2月22日、3月2日開催のキックボクシング3興行の見どころ! 堀田春樹

今年2025年の本通信では、試合の結果だけでなく試合告知とその見どころも、限られた範囲ながら解説していければと思います。今回は2月2日、2月22日、3月2日開催の3つの興行の見どころです。


2月2日開催、NJKF CHALLENGER 7

NJKF CHALLENGER 7、大田拓真が中心に立つ堂々たるメインイベンター

武田幸三氏が2023年にニュージャパンキックボクシング連盟に移籍し、掲げていた“CHALLENGER”は今回で7回目となります。

今回の興行は王座初防衛戦が2試合、大田拓真、吉田凛汰朗が迎え撃ちます。

◎NJKF CHALLENGER 7 / 2025年2月2日(日)後楽園ホール 17:15~
主催:(株)オフィス超合筋 / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)

《主要5試合》

◆メインイベント NJKFフェザー級タイトルマッチ 5回戦

第14代選手権者.初防衛戦.大田拓真(新興ムエタイ/1999.6.21神奈川県出身)  
           vs
挑戦者1位.TAKAYUKI(=金子貴幸/K-CRONY/1988.11.18茨城県水戸市出身)

NJKFのエース格、大田拓真は2019年6月に新人(=あらと/E.S.G)に判定勝利でWBCムエタイ日本フェザー級王座奪取(防衛1度)。昨年2月にNJKFフェザー級王座決定戦で笹木一磨(理心塾)に大差判定で勝利し王座獲得。ONE CHAMPION SHIPには2023年9月から出場して4戦3勝(1KO)1敗の戦績を残し、日本・タイで注目される存在。ここでTAKAYUKIに負けることは考え難いが油断はならない。

TAKAYUKIは昨年10月20日の大阪府堺市で、NJKFフェザー級次期挑戦者決定戦3回戦で僅差ながら坂本直樹(道場373)を判定で破り挑戦権獲得。TAKAYUKIは2016年5月に雄一(TRASH)との王座決定戦でNJKFスーパーバンタム級王座獲得し、1年後に前田浩喜(CORE)に敗れ陥落。なかなか地道な努力でキック人生を送っている中で、8年ぶりの王座獲得を狙い、トップに立つ大田拓真と互角以上に渡り合えるか。

◆セミファイナル  NJKFスーパーライト級タイトルマッチ 5回戦

第7代選手権者.初防衛戦.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身)
     vs
健太(=山田健太/E.S.G/1987.6.26群馬県出身) 

両者は2023年4月に64.0kg契約3回戦で対戦し、健太が自分の距離で戦う駆引きの上手さで判定勝利しています。

吉田凜汰朗は一昨年9月に畠山隼人(E.S.G)を倒して王座獲得。

健太は2008年5月にNJKFウェルター級王座決定戦で太陽照明(インスパイヤードモーション)に判定勝利で獲得。2010年5月にも太陽照明にTKO勝利してNJKFスーパーウェルター級王座獲得2014年9月にはT-98(=今村卓也)に判定勝利でWBCムエタイ日本ウェルター級王座獲得(防衛1度)。その後、ウェイトダウンしてライト級でも戦った健太は現在のベストウェイトで王座挑戦となりました。

吉田凛太朗が健太のペースに惑わされず完全KOでもすれば一躍NJKFのトップクラスでしょう。健太は100戦を超えるベテラン技、5回戦の戦い方で吉田を上回って主導権支配出来るか。

吉田凛太朗 vs 健太、前回は健太が戦略で優って判定勝利(2023年4月16日初戦)

◆第8試合 53.0kg契約3回戦

S-1女子世界バンタム級チャンピオン.☆SAHO☆(闘神塾/1999.10.15兵庫県加西市出身)
           vs
ダンコンファー・クアットペットノーイジム(タイ/経歴不詳) 

SAHOは第3代K-1 WORLD GP女子フライ級、S-1女子日本バンタム級、WMC女子日本スーパーバンタム級、ミネルヴァ・スーパーバンタム級などの王座を獲得した女子チャンピオンとしての存在感は大きい。

◆第7試合 72.5kg契約3回戦

匡志YAMATO(大和/ 1993.1.29愛知県海部郡出身)
    vs
雄也(MY/経歴不詳) 

匡志(=まさし)は2018年5月にNJKF日本スーパーウェルター級王座獲得。2020年7月にWBCムエタイ日本スーパーウェルター王座獲得も、コロナ禍により防衛戦が長期延期された経緯があります。

◆第6試合 51.5kg契約3回戦

S-1世界フライ級チャンピオン.優心(京都野口/2002.5.28京都府出身) 
         vs
NJKFフライ級チャンピオン.西田光汰(??/2001.2.13愛知県出身) 

優心は昨年12月17日に京都でマッファン・ゲッソンリット(タイ)とS-1世界王座を争い、引分け(1-0)、チェアマン裁定で優勢を受け王座獲得。NJKFではフライ級前チャンピオンでした。

西田光汰は昨年9月に谷津晴之(新興ムエタイ)とNJKFフライ級王座決定戦を行ない、引分けも優勢支持で王座獲得。本来なら西田が優心に挑戦するNJKFタイトルを懸けた戦いがファンの観たいところだったでしょう。


2月22日開催、今年の日本キックボクシング連盟は“爆発シリーズ”!

爆発シリーズvol.1、棚橋賢二郎と蘭賀大介が中央。新旧入り混じり盛り上げる

高橋一眞(真門)が引退返上したNKBライト級王座を、棚橋賢二郎と乱牙で争われます。

◎爆発シリーズvol.1 / 2月22日(土)後楽園ホール 17:15~
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

《主要3試合》

◆メインイベント NKBライト級王座決定戦 5回戦

1位.棚橋賢二郎(拳心館/1987.11.2新潟県出身)
       vs
2位.乱牙(=蘭賀大介/ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身)

棚橋賢二郎は強打の右ストレート、右ローキックが得意で、過去2度、髙橋一眞が持つNKBライト級王座に挑戦をしていますが撥ね返され奪取成らず。3年振り3度目の挑戦で戴冠目指します。

乱牙は右ストレート、右ミドルキックで好戦的に展開し、プロデビューから2年8ヶ月で王座挑戦となります。

◆セミファイナル 66.7kg契約 5回戦

NKBウェルター級級チャンピオン.カズ・ジャンジラ(JANJIRA/1987.9.2東京都出身)
        vs
どん冷え貴哉(TOKYO KICK WORKS)

両者は、2021年4月24日に3回戦制で対戦し引分け。今回は5回戦制で決着戦を迎えます。

カズ・ジャンジラは2023年2月に笹谷淳(team COMRADE)とNKBウェルター級王座決定戦を行ない、判定勝利で王座獲得しています。

どん冷え貴哉は今回の試合からTOKYO KICK WORKSへ移籍しての出場です。

◆スーパーバンタム級 3回戦

片島聡志(元・WPMF世界スーパーフライ級Champ/Kick Life/ KickLife/1990.10.19大分県出身)
         vs
WMC日本スーパーフェザー級チャンピオン.吏亜夢(=松本吏亜夢/20歳/ZERO)

片島聡志が常連となった日本キックボクシング連盟興行では久しぶりの出場。若い吏亜夢に老獪なテクニックで翻弄出来るか、吏亜夢がベテランを喰う成長を見せるか。


3月2日開催、聖地を揺るがせるか、新日本キックボクシング協会興行!

MAGNUM.61、軽量級から重量級まで、聖地を揺るがせるか

現在の新日本キックボクシング協会の主力メンバー、瀬戸口勝也、ジョニー・オリベイラ、木下竜輔出場。他団体選手を含め、誰がメインイベンターに迫るインパクトを残すか。

◎MAGNUM.61 / 3月2日(日)後楽園ホール 17:15~
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

《主要4試合》

◆WKBA世界フェザー級王座決定戦 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/1983.8.1鹿児島県出身)
       vs
NJKFフェザー級4位.赤平大治(VERTEX/2001.10.31栃木県出身)

瀬戸口勝也は2020年2月に平塚一郎(トーエル)と日本フェザー級王座決定戦を行ないKO勝利で王座獲得。コロナ禍を経て2022年10月に瀬川琉(稲城)にTKO勝利して初防衛。昨年3月に山浦俊一(新興ムエタイ)に判定勝利。5月にはガン・エスジム(タイ)に判定負け。10月に辰樹(Y’ZD)に1ラウンドで倒されるTKO負け(王座戦以外は3回戦制)。

赤平大治は昨年7月に山川敏弘(京都野口)にKO勝利も12月に大岩竜世(KANALOA)に3回戦2-1の判定負け。連敗中の瀬戸口勝也が汚名返上と、一気に新日本キックボクシング協会の最高峰に立てるか。

◆日本スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

初代選手権者.ジョニー・オリベイラ(トーエル/ブラジル出身46歳)
       vs
挑戦者2位.木下竜輔(伊原/1996.2.12福岡県出身)

木下竜輔は2021年4月デビュー。2022年年5月15日に王座挑戦経験を持つジョニー・オリベイラを第1ラウンドに右ストレートで倒すTKO勝利で一気に脚光を浴びる存在となった。両者は昨年3月3日に日本スーパーフェザー級王座決定戦で再戦し、ジョニー・オリベイラが判定勝利で王座獲得となりました。

ジョニー・オリベイラは昨年5月にペットボーライ・チュワタナに判定負け。7月に辰樹(Y’ZD)に判定0-3負け。10月に匠(KING)に判定2-0負け。チャンピオンに成ってまだ勝利を得ていない中で存在感を示さねばならない(王座戦以外は3回戦制)。

ジョニー・オリベイラ vs 木下竜輔、2戦目となった前回はジョニーが王座奪取(2024年3月3日初戦)

NJKF発祥の女子タイトル、ミネルヴァが団体の垣根を越えて広域にタイトル戦が行われる存在となって来ました。

◆女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ 3回戦

選手権者.浅井春香(無所属/1987.1.22愛知県大府市出身)
       vs
挑戦者4位.珠璃(=安黒珠璃/闘神塾/2006生)

二度の防衛はいずれも引分け。現在フリーだが、勝って防衛したい浅井春香は勢い有る珠璃を翻弄することが出来るか。

◆女子(ミネルヴァ)ペーパー級(95LBS)タイトルマッチ 3回戦

選手権者.上真(ROAD MMA/1985.10.16石川県出身)
       vs
挑戦者1位.撫子(GRABS/2000.7.7北海道札幌市出身)

上真は昨年10月13日に王座決定戦でAIKO(AX)と引分け延長戦で勝利し王座獲得。
挑戦権を得ていた撫子は以前の最軽量級のピン級(100LBS)チャンピオンだったが王座返上し、新たに設立された最軽量級のベストウェイトでチャンピオン目指す。

※         ※          ※

以上は協会や連盟といった団体制で行なわれている興行の一部のスケジュールです。

タイトルの価値に賛否の意見や疑問符付く試合もありますが、各団体の活性化と生き残りを懸けた戦いを長い目で見て行きたいところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

2025年に輝くキックボクサーたち 堀田春樹

1月下旬になって語るテーマでもないですが、昭和の隆盛期と比べて、正月松の内のキックボクシング興行は殆ど行われないのが現状です。

キックボクサーは注目を浴びるトップ選手だけでなく、不器用でも全敗でも各々に面白い個性があります。戦う場が少ない(出場出来る興行が少ない)選手も居ますが、昨年目立った中から、今年も話題を生むであろう選手を幾名か独断で選びました。

◆今年もトップクラスで輝くエース格

デビューから順風満帆に勝ち続けられる選手は殆ど存在しませんが、今年も上昇気流に乗って活躍、仮に同等以上の相手に負けても第一線級から脱落することは無いだろうと考えられるクラスには、

・ムエタイ殿堂三階級制覇、吉成名高(エイワスポーツ)

・壱センチャイジム(=与那覇壱世/元・ルンピニージャパン・バンタム級Champ)

・ジャパンキックボクシング協会の代表的エース格、睦雅(=瀬戸睦雅/ビクトリー)

・ニュージャパンキックボクシング連盟の代表的エース格、大田拓真(新興ムエタイ)等が存在します。

若干低迷しているものの、巻き返しが期待される中では、

・大田拓真の実弟、王座から落ちてはいるが大田一航(新興ムエタイ)

・IBFムエタイ世界王座から落ちて以降、奪回が待たれる波賀宙也(立川KBA)

・WMO世界王座には撥ね返されるも再浮上狙う瀧澤博人(ビクトリー)

・壁を撥ね返して再びメインイベンターとなるかNJKFバンタム級チャンピオン.坂本嵐(キング)

◆諸々の話題性増すと見込まれる選手

チャンピオンロードを歩み出して間もない選手や、ランカー以下でもこれから飛躍が臨める選手では、

・皆川裕哉を倒して王座戴冠したJKAフェザー級チャンピオン.勇成(Formed)

・一昨年9月、畠山隼人(E.S.G)を倒して王座戴冠後、激しい試合で勝っても負けても存在感増すNJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凛太朗(VERTEX)

2025年もメインイベンターの自覚持って戦う吉田凛太朗

・王座認定され、これから実績積み重ね勝負のNJKFウェルター級チャンピオン.小林亜維二(新興ムエタイ)

・テツジムの新エース、12月に王座戴冠したNKBフェザー級チャンピオン.勇志(テツ)

・勇志の御勧めでテツジム期待の秘密兵器、NKBバンタム級ランク入り確実、雄希(テツ)

・一昨年の王座戴冠から初防衛も果たしたNKBフライ級チャンピオン.杉山空(HEAT)

王座は初防衛果たして勢いに乗るNKBフライ級チャンピオン杉山空、他団体交流戦も期待

・令和の全日本キックボクシング協会でデビュー戦から最終試合(メインイベント)出場、ぜひとも飛躍して欲しい存在、バンタム級の北川広翔(稲城)

2024年3月16日、全日本初陣デビューからこれまで4戦3勝(1KO)1敗の広翔

・広翔同様に全日本キックボクシング協会を担う期待が掛かる野竹勇生(ウルブズスクワッド)

令和の全日本キックボクシング協会で次代のエース格候補No.1、野竹勇生

・古き時代の頑固一徹、渡邉ジムから現れた今時の新星、NKBバンタム級、4戦無敗の香村一吹(渡邉)

名門・渡邉ジムで久々のチャンピオン誕生に至るか、香村一吹

・国崇の後輩、関西で人気上昇中、NJKFスーパーバンタム級6位.庄司理玖斗(拳之会)

・与那覇壱世の後輩、センチャイジム期待の佐藤蒔音

壱世を追うセンチャイジムの期待の星、佐藤蒔音

・昨年は不振だったが、大化けしそうな存在感は大きいWMOインターナショナル・スーパーウェルター級チャンピオン.モトヤスック(=岡本基康/治政館)

・昨年3月に王座認定試合に勝利、今後もJKAメインイベンターの自覚持って戦うJKAフライ級チャンピオン.西原茉生(治政館)

・瀧澤博人、睦雅をピッタリ追うビクトリージム第3の男、JKAフライ級1位.細田昇吾

睦雅、瀧澤博人先輩の背中追って王座挑戦も近い細田昇吾

・高橋一眞に挑んだ二度挑戦の王座は敵わずも、次は豪腕で戴冠成るかNKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館)

・2月22日に棚橋賢二郎と王座争うNKBライト級2位.蘭賀大介(ケーアクティブ)

・全日本キックボクシング協会を背負う責任重大のエース、スーパーフェザー級チャンピオン、瀬川琉(稲城)

・かつての名チャンピオン赤土公彦氏の御子息、まだまだ新人クラスも注目され期待値高い赤土公亮と剛琉の兄弟。

・小国ジム、かつての名チャンピオン佐藤友則、米田貴志の秘蔵っ子、吉仲悠(VALLELY)

・NKBライト3位.山本太一(ケーアクティブ)、“れいわ”の山本太郎氏並みに、耳に残る響きと、地道な努力に大器晩成型の期待感高まる存在。

今後も“太一やるじゃん”のアグレッシブな展開で魅せるか山本太一

◆ベテランの存在感

ピーク過ぎても老獪なテクニックで燃え尽きていない選手たち。メインイベンターから新人まで幅広い対戦相手と戦う元・チャンピオンが多い中、

・石川直樹(元・日本フライ級Champ/KickFul)

2023年8月に国崇からの対戦要求後にツーショットに収まった石川直樹

・国崇(=藤原国崇/元・WBCムエタイ日本スーパーバンタム級Champ/拳之会)

・片島聡志(元・WPMF世界スーパーフライ級Champ/KickLife)

・健太(=山田健太/元・WBCムエタイ日本ウェルター級Champ/E.S.G)

・藤原あらし(元・WPMF世界スーパーバンタム級Champ/バンゲリングベイ)

・オーシャン・ウジハラ(=氏原文男/元・WBCムエタイ日本フェザー級Champ)等
が若い選手の壁となって立ちはだかります。

◆生き残りを懸ける選手

第一線級を維持出来なければ引退という瀬戸際ながら、踏ん張る選手たち。

「お前、もう辞めろ!」と会長や身内から言われることはあっても、ルール的に引退勧告を受けることは無いキックボクシング界では、王座陥落や格下に連敗しても、自身のやる気次第で歳取っても、引退してもまた再起する選手も居るものです。

プロボクシング大手のジムとなると「試合の次の日、ジムに行ったら自分のロッカーが撤去されていた」という実例もあり、負ければ捨てられる厳しい世界でもある中、捨てる神あれば拾う神ありのキックボクシングは再起の道が広く開かれている業界でもあります。

そのキックボクシング界、まだ諦めてはいないという選手では、

・勝次(=高橋勝治/元・WKBA世界スーパーライト級Champ/TEPPEN)は連敗してもリベンジ精神満々でどのような完全燃焼へ進むかが見もの。

・JKAウェルター級1位.大地フォージャー(=山本大地/誠真)、政斗(治政館)に倒され初防衛成らなかったが出直しは可能、去就に注目。

・JKAフェザー級1位.皆川裕哉(KICK BOX)も初防衛成らなかったが、再浮上の期待が掛かります。

・日本フェザー級1位.木下竜輔(伊原)、現在の新日本キックボクシング協会を牽引するエース格と期待されながらジョニー・オリベイラに敗れ王座に就けずも、このままで終わるつもりは無いと闘志を燃やしています。

新日本キックボクシング協会を盛り上がられるか、右ストレートが強い木下竜輔

以上は私目線で2024年に見てきた選手たちで、今年も勝敗だけでなく、今後の試合レポートに登場することが考えられる、記録より記憶に残る話題を振り撒きそうな選手たちでした。

まだ注目株は大勢居ます。更に私が取材に行っていない大手イベントに登場する選手、去就が不明な選手も大勢居ますが、紹介しきれていないところは御容赦ください。

選手実績にはチャンピオンの肩書きが多いキックボクシング界です。それぞれはプロモーター主体の任意団体の王座で今後、国レベルのチャンピオンに成れるか、更なる上のメジャー競技に進むかも視野に入れて頑張って貰いたい2025年です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

原点回帰の一年、令和の全日本キックボクシング協会の躍進! 堀田春樹

令和全日本キック初のチャンピオン、瀬川琉がベテランのオーシャン・ウジハラに辛くも勝利。

全日本キックの将来を背負うであろう勇生はアグレッシブにヒジ打ちで圧勝。

期待の広翔も試合運びが上手く攻勢を維持して圧倒の勝利。

◎原点回帰 四ノ陣 / 12月28日(土)後楽園ホール17:30~21:24
主催:全日本キックボクシング協会 /

前日計量は27日14時より稲城ジムにて行われ、ヘビー級と女子は別格で未確認ですが、他は全員パスしています。戦績はパンフレットを参照し、この日の結果を加えています。

◆第13試合 60.0kg契約3回戦

全日本スーパーフェザー級チャンピオン.瀬川琉(稲城/1998.6.6東京都出身/59.8kg)
21戦14勝(4KO)6敗1分
         VS
オーシャン・ウジハラ(=氏原文男/無所属/1986.10.12高知県出身/59.8kg)
27戦13勝(8KO)14敗
勝者:瀬川琉 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:竜矢29-28. 和田30-28. 勝本剛司30-28

オーシャン・ウジハラは2009年9月23日にWBCムエタイ日本フェザー級初代チャンピオンとなった心・センチャジム選手です。

初回、蹴り中心の様子見からハイキックも見せる瀬川琉。首相撲に移ると氏原文男のムエタイテクニックの圧力が優るが、離れると瀬川のサウスポーからの左ストレートヒットでリズムを掴んでいく。主導権を奪うには至らない両者のもどかしい互角の蹴り合いが続く中、瀬川が僅差判定勝利を掴んだ。

瀬川琉がいきなりのサウスポーからの左ストレートヒット
瀬川琉がいきなりのサウスポーからの左ストレートヒット
氏原文男はムエタイテクニックで攻め、瀬川琉が迎え撃った
氏原文男はムエタイテクニックで攻め、瀬川琉が迎え撃った
瀬川琉のカウンター左ストレートヒット、リズム掴んで僅差ながら勝利を導く
瀬川琉のカウンター左ストレートヒット、リズム掴んで僅差ながら勝利を導く

◆第12試合 スーパーライト級3回戦

勇生(ウルブズスクワッド/2005.石川県出身/63.3kg)5戦4勝(1KO)1分
      VS
ユン・ジソン(韓国/ 61.9kg)4戦3勝1敗
勝者:勇生 / TKO 2ラウンド 3分0秒 / ヒジ打ちによる左眉カット
主審:椎名利一

勇生は前回6月13日に滝口遥輝にKO勝利。両者、性格的にもアグレッシブに攻める中、我武者羅に出るユン・ジソンに対し、勇生の距離に応じて上下の蹴りパンチ、ユン・ジソンの蹴り終わりを攻めたりとテクニックが優っていく展開。第2ラウンド終盤に首相撲に移った中で、勇生の右ヒジ打ちがユン・ジソンの左眉上をカットした様子。レフェリーがタイムストップを掛けたのはラウンド終了ゴングと同時だったが、ドクターチェックに入り、傷が深くストップ勧告を受入れ、レフェリーストップとなった。

勇生が優勢に進めた中の右ストレートヒット
勇生が優勢に進めた中の右ストレートヒット
勇生がヒジ打ちで斬った後の左ハイキック、この後すぐレフェリーがタイムストップ
勇生がヒジ打ちで斬った後の左ハイキック、この後すぐレフェリーがタイムストップ

◆第11試合 バンタム級3回戦

広翔(稲城/ 53.4kg)4戦3勝(1KO)1敗
    VS
ハリィ永田(Astra Workout/ 53.5kg)32戦13勝17敗2分
勝者:広翔 / TKO 3ラウンド 50秒
主審:和田良覚

広翔は前回、9月6日に風間祐哉に判定勝利。

初回、蹴りの攻防から広翔の蹴りパンチヒザ蹴りで攻勢を強める。長身を活かしたハリィ永田が蹴りで攻めるも、広翔も距離を掴んで蹴り返し主導権を奪うと、首相撲から転ばせる技も使って優勢を目立たせた。

アグレッシブな両者、広翔は左ストレートを活かした攻勢
アグレッシブな両者、広翔は左ストレートを活かした攻勢

第2ラウンドも広翔のリズムで進み、終盤はローキックからパンチ連打で永田を劣勢に追い込んで終了。第3ラウンド、広翔は左フックで永田をグラつかせ、ヒザ蹴りからパンチ連打でノックダウンを奪い、更に猛攻でパンチ連打で圧倒し、崩れ行くところをレフェリーストップとなった。広翔のスピーディーさ、攻めの圧力はデビューから1年足らずで成長。来年はこの団体のタイトル争いに浮上するだろう。

広翔が圧倒していく中のヒザ蹴り、更にパンチ連打で仕留める
広翔が圧倒していく中のヒザ蹴り、更にパンチ連打で仕留める

◆第10試合 58.0kg契約3回戦

杉浦昴志(キックスターズジャパン/ 57.85kg)3戦2勝1分
      VS
中村健甚(稲城/ 57.8kg)3戦1敗2分
引分け 0-1
主審:勝本剛司
副審:椎名29-29. 少白竜29-30. 和田29-29

打撃はアグレッシブに多彩に出るまだ3戦目の両者。パンチと蹴りのコンビネーションが揃わず、勝ちに行く姿勢はあるが、これで倒そうという技が無い印象のまま引分けに終わった。

◆第9試合 52.0kg契約3回戦

吉田鋭輝(team彩/ 51.85kg)3戦2勝1敗
       VS
HIROKI(AKIRA ~budo school~/ 51.7kg)4戦3勝1敗
勝者:HIROKI / 判定0-3
主審:竜矢
副審:勝本29-30. 椎名29-30. 和田28-30

アグレッシブにパンチと蹴り、首相撲で組み合う攻防も見られる中、僅差ながらHIROKIの勝利。

◆第8試合 スーパーフライ級3回戦

横尾空(稲城/ 51.9kg)3戦2勝1分
     VS
風間祐哉(WSR三ノ輪/ 51.7kg)4戦1勝2敗1分
引分け 0-0
主審:少白竜
副審:勝本28-28. 椎名28-28. 竜矢28-28

横尾空は前回、9月6日に内山朋紀に僅差ながら判定勝利。風間祐哉は同日、広翔に判定負け。

初回、横尾空が飛びヒザ蹴りを出した後、パンチの攻防から風間裕哉も飛びヒザ蹴りを出し、これが効いたか、その後パンチが当たったか、横尾がノックダウン。呼吸を整える横尾にはまだ余裕ある表情。

第2ラウンドから横尾が冷静に試合を組み立て、風間を上回るパンチと蹴りで巻き返していくと、パンチを喰らった風間は鼻血が激しくなる苦しい展開。第3ラウンドにドクターチェックを受ける風間だったが、鼻は折れてはいない様子。完全に主導権奪った横尾が巻き返すもポイント的に引分けに終わった。

◆第7試合 68.0kg契約3回戦

義人(kickboxing Fplus/ 67.3kg)3戦2勝(1KO)1敗
       VS
石塚健太(武士魂 二代目闘心塾/ 66.0kg)1戦1敗
勝者:義人 / TKO 2ラウンド 1分44秒 /
主審:和田良覚

初回、パンチ中心の攻防から第2ラウンドも義人が打って出て組んでのヒジ打ちも打って攻勢を強め、更に組んでのヒザ蹴り、パンチ連打から右フックで石塚健太を倒すとレフェリーはほぼノーカウントでストップ。石塚は担架で運ばれた。

この日KO勝利から。義人は連打から左フックで仕留めていく
この日KO勝利から。義人は連打から左フックで仕留めていく

◆第6試合 女子48.0kg契約3回戦

牛山華子(HIDE’S KICK)1戦1敗
     VS
あー子(無所属)2戦2勝
勝者:あー子 / 判定1-2 (29-28. 29-30. 28-30)

この令和の全日本キックボクシング協会に於いては初の女子試合。そして3回戦ではあるが、男子と同じ3分制で行なわれた。

蹴りはパンチへの繋ぎ技でパンチ中心に攻めた両者。採点も分かれる差の付き難い展開はジャッジ三者が揃うラウンド無くあー子がスプリット僅差判定勝利。

◆第5試合 スーパーライト級3回戦

滝口遥輝(中島道場 / 62.6kg)3戦2敗1分
      VS
NAOKI(WSR西川口/ 63.35kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:NAOKI / KO 2ラウンド 2分4秒 /

パンチと蹴りの攻防はNAOKIが圧していく展開。NAOKIの組みに行ってのヒザ蹴りで滝口遥輝が身体をくの字に、うつむいてしまうのは危なくて守りにならない。

第2ラウンドもNAOKIのパンチからヒザ蹴りの攻勢で滝口からノックダウンを奪い、踏ん張る滝口はパンチで出るが再びNAOKIのヒザ蹴りに捕まり、計3度となるノックダウンによるNAOKIのKO勝利。

この日KO勝利から。NAOKIはヒザ蹴りで3度のノックダウンを奪って圧勝
この日KO勝利から。NAOKIはヒザ蹴りで3度のノックダウンを奪って圧勝

◆第4試合 ヘビー級3回戦

オマル・ファーレス(稲城)1戦1敗
     VS
ピクシー犬飼(府中ムエタイクラブ)3戦1勝1敗1NC
勝者:ピクシー犬飼 / 判定0-3 (26-29. 26-29. 27-30)

◆第3試合 スーパーバンタム級3回戦

二宮渉(アウルスポーツ/ 54.85kg)2戦1勝1敗
       VS
馬上一樹(G-1 TEAM TAKAGI/ 55.3kg)4戦4敗
勝者:二宮渉 / 判定3-0 (28-26. 28-26. 29-26)

◆第2試合 スーパーライト級3回戦

野竹生太郎(ウルブズスクワッド/ 63.2kg)2戦2勝
      VS
小玉倭夢(無所属/ 63.15kg)1戦1敗
勝者:野竹生太郎 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-28)
主審:勝本剛司

野竹生太郎は勇生の実弟。パンチでリズム掴むと蹴りも優っていき大差判定勝利。

◆第1試合 スーパーフライ級3回戦

鬼久保海斗流(健成会/ 52.05kg)1戦1敗
      VS
井上蓮治(パラングムエタイ/ 51.95kg)1戦1勝(1KO)
勝者:井上蓮治 / TKO 2ラウンド 59秒 / カウント中のレフェリーストップ

スピーディーな両者の攻防。一つ一つの蹴りに場内両陣営の応援団の大声援に湧く。デビュー戦からこの盛り上がりはなかなか見られない光景。第2ラウンドには井上蓮治の左ストレートでノックダウンを奪うと井上が更に鬼久保海斗流をコーナーに追い詰め、連打から左ストレートで仕留めた。

《取材戦記》

「ウジハラは歳じゃん! 瀬川が圧倒しないと駄目でしょ!」というリングサイドで聞かれた試合前。

オーシャン・ウジハラは2009年9月23日にアトム山田に判定勝利し、WBCムエタイ日本フェザー級初代王座獲得した心・センチャイジムで、翌年には眼の負傷もあってキックボクシングを離れ、長期治療の後、JBCの認可を受けプロテストを受け、フラッシュ赤羽ジムよりプロボクシングデビューを果たしました。諸々の経緯あって2019年にキックボクシング復帰に至っています。

ウジハラは「今回(瀬川琉に)負けたら引退と思っていましたが、ちょっと冷静に考えます。」とまだ戦う意欲有りの中、今後のことは考え直す様子が窺えました。
元々、センチャイジムではデビュー戦から5回戦だったという。

「キックボクシングは5回戦が基本だからね。」というセンチャイ会長の言葉だった。今回の試合も「5回戦で観たかった」という応援者の声があったという。

その試合は主導権支配には至らなかったが、組み立て方は衰えておらず、ここでの引退は勿体無いところである。もう暫く王座復帰を目指す、チャンピオンを苦しめる、若手の壁になるといった存在であって欲しい。

瀬川琉は「超ダメでした。試合早々に足痛めて蹴れなくなって課題だらけの試合でした。負けたとは思わなかったけど、もっとしっかり勝って、いろいろ言いたかったところは抑えて、出直しだなと思う感じです」と多くは語れない立場という振舞いで、来年に向けては前回リング上で語ったとおり、「全日本のベルトの価値を高めていくこと。他団体のトップどころと戦うリングに立てるように上を目指して行きます」というエース格の自覚がありました。

セミファイナルの勇生は「楽しかったです。今回、リラックスして倒すこと考えてやったら上手くいった感じですね」

「タイトル挑戦があるとしたら?」の問いに「来年中にはタイトル獲りたいですね」という回答でした。

対するユン・ジソンは勇生から受けたヒジ打ちによる傷が深くて骨まで達していた様子で、医務室で傷を縫う治療を受けていました。

セレモニーでは、9月17日に脳梗塞の影響で逝去されました、平成の元・全日本ライト級チャンピオン、須藤信充氏の追悼テンカウントゴングが行われました。御子息の須藤健太氏がジーニアスジムを受け継ぎ、運営していく模様。御挨拶ではマイクが要らないぐらい力強い大きな声で感謝の言葉を述べ、“須藤~信充~!”とコールしてリングを下りました。父親の活発さを受け継ぐ健太氏がまた各所でちょっとユニークな存在で盛り上げてくれることでしょう。

2024年9月、脳梗塞で亡くなられた須藤信充氏の御子息、村松健太氏が活気ある感謝の御挨拶
2024年9月、脳梗塞で亡くなられた須藤信充氏の御子息、村松健太氏が活気ある感謝の御挨拶

栗芝貴代表の今年の総評は、
「今年(2024)一年、全日本キック立ち上げて大成功だったと思います。他(団体)がどうと言うよりは我々がどういう姿勢で向き合って来たかというところ。来年に向けて、将来に向けて、子供たちに夢や希望を持てるキックボクシング競技にする為に考えてみて、一歩ずつそこに向かっていると間違いなく実感しています。それで賛同してくれる人が本当に今、どんどん増えているので、僕の熱量をどう伝えていくかというところです。来年(2025)は更にチャンピオンを、何とか勇生を中心に仕上げていきたいですけど、そこに追随するウチの協会の選手を来年もデビュー戦からどんどん追っかける選手を作らなきゃいけないですね」と語り、
正に一から始まった全日本キックボクシング協会が、他団体と比べられながらも成長は感じるところでしょう。まず興行の一年目終了。二年目に更なる進化があるかが注目です。

今回、国内加盟ジムが5件増え、A-BLAZE KICK、武士魂二代目闘心塾、百足道場、中島道場、ONE BOXING FITNESSと更に韓国のサムサンムジムが合流。加盟ジムが20件を超えるのはかつての新日本キック並みという勢いです。

令和の全日本キックボクシング協会、2025年の興行日程は3月28日(金)、6月20日(金)、10月5日(日)、12月28日(日)、いずれも後楽園ホール夜興行で開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年2月号

キックボクシング 2024年を振り返る 堀田春樹

2024年もキックボクシング界の話題は豊富でした。選手の活躍も各々ありましたが、各団体単位でも時代の流れと共に諸々の動きがありました。世間一般には注目されない小さな出来事でも、振り返っておきたい2024年の話題を纏めました。

◆全日本キックボクシング協会の初陣興行

2023年春に新日本キックボクシング協会から離脱した稲城ジム栗芝貴代表が同年8月1日、全日本キックボクシング協会を設立。原点回帰を掲げ、今年(2024年)3月16日に初陣興行を行ないました。12月28日までに計4回の興行では大半が新人戦で、正に一から始まった新団体でした。

1月20日の設立記者会見で栗芝貴代表は、「三年で全日本キックボクシング協会の名前を全国に轟かせる。三年でスター選手作る。後楽園ホールを満員にして、この三年で作り上げていくのが僕の責任と思っています。」と語りました。

デビュー戦からメインイベンターを目指す自覚を持たせ、試合をアグレッシブな展開に導いて新人にも大きい成長も見られました。

9月6日には初のタイトルマッチ、全日本スーパーフェザー級王座決定戦を行ない、瀬川琉(稲城)が仁琉丸(ウルブズスクワッド)を倒して最初のチャンピオン誕生となりました。二人はすでに新日本キックボクシング協会での戦歴ある選手でしたが、今後は各階級で全日本キックボクシング協会からデビューした選手らが王座を争っていくことでしょう。

2025年は設立から3年目。初陣興行から2年目。まだ全国どころか格闘技界にも存在感は薄い現在。2025年はどこまで浮上することが出来るか、まだまだ険しい道程が続きます。

令和の全日本キックボクシング協会初陣興行出場選手と栗芝貴代表(2024.1.20)

◆新日本キックボクシング協会の変化と江幡塁引退

新日本キックボクシング協会の一時代を担った江幡ツインズの塁が、前年2月に患った脳腫瘍の影響からドクターストップによる引退に踏み切りました。

選手として引退も、「新日本キックボクシング協会から世界を獲れるような強さ、そして自覚を持った選手を輩出していけるように力を尽くしていきます!」と昨年10月のリング上で語ったとおり、後進の指導には今後も続けて行く模様。

その一年前の時点では、「選手を諦めていない」という語りから、復帰して現役続行かと期待しましたが今後、願わくばプロモーターとして興行を担っていけば、また新日本キックボクシング協会の再浮上もあるかもしれない僅かな可能性も期待したいものです。

その新日本キックボクシング協会は選手層の薄さが表れる中、外国人選手によるメインイベンター起用や、Mixed Martial Arts(MMA)の試合もテスト的に開催されました。

今後、どのように進展していくかは未定ながら動向が注目されます。

江幡塁、清々しい引退式にて、愛娘と一緒に(2024.10.6)

◆武田幸三の一年

2023年10月にニュージャパンキックボクシング連盟に加盟し、主力プロモーターとして団体を率いる存在となった武田幸三氏。「NJKFをトップ団体に引き上げる」と宣言し、以前から掲げていた“CHALLENGER”というコンセプトの下、ここまで計6度の興行を前日計量と記者会見から盛り上げ、それまでのNJKF色をすっかり変えてしまい、以前のNJKFに無いインパクトある興行が続きました。

「本気でトップ狙って本気でトップの団体にしようと思っています。」と語った武田幸三氏。一年を経過した今後、更に世間にどれだけ選手の存在感、NJKFの存在感が訴えらるかが期待されるところでしょう。

武田幸三、NJKFでの所信表明演説(2023.11.12)

◆長江国政さん永眠

昭和の全日本キックボクシング協会隆盛期で、一時代を築いた長江国政さんが6月11日に肺癌の為、永眠されました。すでに述べた部分ではありますが、2018年頃から神経性の難病との戦いが続いていましたが、難病の悪化とは直接の関係は無い模様で、煙草を吸う姿を何度も見たことありますが、こんな影響もあったのかもしれません。

キックボクシングの主力関係者の訃報が聞かれること多くなった近年、それまではキックボクシング生誕から関わって来た選手、興行関係者が若かったことに尽きるでしょう。競技そのものが新興格闘技だった為、二十代で活躍した名選手らも今や七十代以降に突入している時代です。でもその七十代でジム復興や立ち上げも計画している若々しいレジェンドも居て、今後もどう展開するか注目したいところです。

長江国政メモリー、会場での展示にて(2024.7.28)

◆2025年に何を期待するか

各団体の興行の少なさ。ランキングの層の薄さが見られる各団体。過去には統一に向けた動きや、団体統一は目指さなくても、一定の団体が集まる統一チャンピオン制定がありました。

現在のNKBも初期は4団体が集まったものでした。WBCムエタイ日本統一ランキングも立ち上げから活発だった時期もありました。いずれも現在も継続されていますが、キックボクシング界を先頭切って率いるほどの注目度はありません。

近年の選手が目指すものはONE Championnship、KNOCK OUT、RIZINといったリングで勝負することへ方向転換されている現在です。本来の活性化した日本タイトルには至らないのか。そこに既存の団体の纏まりに希望を持ちたいところで、武田幸三氏や全日本キックボクシング協会の飛躍に期待が掛かります。

私が関わる独断による団体編の纏まりの無い語りとなり、他にも日本キックボクシング連盟やジャパンキックボクシング協会の活動もありますが、次回は選手編で2024年に勝ち負け関係無く、各団体の目立った選手の動向を拾ってみようと思います。

令和の全日本キックボクシング協会最初のチャンピオンは瀬川琉(2024.9.6)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

冠鷲シリーズ最終戦、勇志が王座戴冠となって今年を締め括る! 堀田春樹

テツジムから6人目のチャンピオン誕生。勇志が鎌田政興を圧倒して王座決定戦を制す。

次なるテツジム期待の雄希はランカーの佐藤勇士を倒す急成長。

蘭賀大介は苦戦の始まりから持ち直しの判定勝利。

◎冠鷲シリーズFINAL(vol.7) / 12月14日(土)後楽園ホール17:30~20:48
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第10試合 第17代NKBフェザー級王座決定戦 5回戦

2位.勇志(テツ/2000.4.28大阪府出身/ 57.05kg)15戦11勝(5KO)2敗2分
          vs
4位.鎌田政興(ケーアクティブ/1990.5.6香川県出身/ 56.8kg)22戦10勝(3KO)10敗2分
勝者:勇志 / 判定3-0
主審:前田仁
副審:鈴木50-45. 高谷50-45. 笹谷50-44

両者は2020年12月に3回戦で対戦し、勇志が初回にノックダウン奪って判定勝利しています。前回10月19日の一人欠場による三名抽選準決勝戦を経て、この日迎えた王座決定戦。

手の内を知る中、初回早々から勇志の突進が凄かった。上下の蹴り、後ろ蹴り、右ストレート、間を置いて飛びヒザ蹴りやバックハンドブローと鎌田政興を倒さんばかりの圧力を掛けた。鎌田は反撃しても巻き返すような勢いは足りない。

勇志が多彩に攻めた中の飛びヒザ蹴りが鎌田政興にヒット

第2ラウンドには勇志が不意を突いた左ハイキックでノックダウンを奪った。攻めの勢いは衰えぬもタフな鎌田に攻め倦む流れに移り、勇志の攻勢は変わらずも後半に入ると疲れも見えて来てノックアウトには至らないだろうという空気が漂う。それでも大差で危なげなく進んだ。鎌田はパンチで逆転狙うが、クリーンヒットせず勇志に躱された。勇志は王座初戴冠。

ノックダウンを奪った勇志の左ハイキック、この後、鎌田政興は後方に倒れた
勇志が多彩に攻める中のローキックで鎌田政興を追い詰める

勇志は試合後、「鎌田はタフでしたね」

後ろ蹴りは何発かボディーヒットもあったが、アゴを狙ったか?の問いに、
「後ろ蹴りは適当です。ちょっと技見せようかなと思ってやったらあんな風になりました。まだまだ出してない技もあります」

圧倒に至った展開について、「スタミナはあったけど後半はちょっとしんどかったです。ノックダウンはあと2回ぐらいあったと思うんですけど、レフェリーがとってくれへんかったですね」

後輩を売り込み、「次、雄希がベルト狙って行きます」と、この日のアンダーカードでランカーの佐藤勇士に圧勝したバンタム級の雄希を称えた。

テツジム大阪のチームワークの勝利でもある

◆第9試合 62.0kg契約3回戦

NKBライト級2位.乱牙(=蘭賀大介/ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 62.0kg)
10戦7勝(3KO)2敗1分
        vs      
スックワンキントーン・スーパーフェザー級5位.須藤誇太郎
(フジマキックムエタイ/2001.8.12神奈川県出身/ 61.85kg)10戦5勝(1KO)4敗1分
勝者:乱牙 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:加賀見29-28. 高谷29-28. 前田29-28

開始15秒程に須藤誇太郎の投げ落としに近い崩しで乱牙は後頭部を打ったか、脚が覚束ない動きになって劣勢に陥った。須藤誇太郎はチャンスでありながら乱牙を仕留めるに至らず、乱牙はダメージを引き摺りながらも徐々に巻き返しに掛かった。

抱え上げられ落とされた流れの乱牙は後頭部を打った


第2ラウンド終盤には須藤をコーナーに追い詰めパンチ連打で主導権支配する攻勢。第3ラウンドも圧力掛けて出た乱牙がパンチで須藤を追い詰め、倒すに至らずも形勢逆転の判定勝利となった。

盛り返す中の乱牙の連打

乱牙は来年2月22日、棚橋賢二郎とNKBライト級王座決定戦が予定されています。

◆第8試合 ライト級3回戦

NKBライト級3位.山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/ 61.0kg)
20戦7勝(4KO)9敗4分
         vs
利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/ 61.1kg)7戦6勝(2KO)1敗
勝者:利根川仁 / TKO 3ラウンド 1分57秒 /
主審:鈴木義和

初回、パンチを軸にローキックを加えた交錯が続くと、利根川仁の右ストレートヒットし、山本太一がノックダウン。再開後直ぐ、利根川仁が飛びヒザ蹴り、ハイキック、パンチ連打で再びノックダウンを喫する山本太一。

利根川仁が優ったパンチの交錯、山本太一は距離感が狂ったか

第1ラウンドは凌いだが、第2ラウンド早々にも利根川仁の前進からパンチ連打でノックダウンを喫する山本太一。ところがここから山本太一が左ストレートで逆転ノックダウンを奪い反撃に転じた。経験値の差かと思われたが、追い込んでいく中、またも利根川仁の右ストレートがヒットするとゆっくりしたモーションで倒れ込む山本太一。立ち上がるが第2ラウンドは終了。

第3ラウンドも利根川仁が連打でノックダウンを奪い、打ち合いに出る山本太一と一進一退の攻防を続けながらカウンターパンチでこのラウンド2度目のノックダウンを奪うとレフェリーがカウント中の試合をストップし、利根川仁がTKO勝利となった。

劣勢の山本太一が逆転ノックダウンを奪った左ストレートヒット、会場を盛り上げた

竹村哲マッチメイカーは山本太一に対し、「ダメージ貰った中であそこからダウン取り返したことは凄く良かった。“太一やるじゃん”と、あれで会場がワーッと盛り上がった。試合としては凄く良かったよ!」と絶賛。

山本太一は「勝ち上がるには今後もこのスタイルで行くしかない。ステップ使って無難に勝っても、あんまり観衆の印象に残らずダメな試合になっちゃうし、今日は倒しに行こうかなと思ったけど、結果負けちゃったし。気持ちは弱かったです」

竹村氏に戦略的アドバイスを受け、今後も倒しに掛かる試合を見せればタイトル戦やビッグマッチ起用へも可能となって来る山本太一である(興行終了後、たまたま見つけた山本太一にインタビュー)。

◆第7試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級3位.佐藤勇士(拳心館/1991.8.12新潟県出身/ 53.1kg)
22戦6勝(2KO)13敗3分
        vs
雄希(テツ/2002.9.3大阪府出身/ 53.1kg)7戦5勝(3KO)2敗
勝者:雄希 / KO 2ラウンド 2分30秒 /
主審:高谷秀幸

初回は両者、ローキックで距離感を探る様子見の中、雄希の蹴りの勢いで佐藤勇士にプレッシャーを与える。左ストレートでスリップダウンを奪うが、更に蹴りで誘ってパンチでノックダウンを奪い、攻勢を維持して効果あるヒットを繰り出した。
第2ラウンドも雄希の勢い止まらず、パンチ連打で2度ノックダウンを奪った後、勢い乗ったまま最後はヒザ蹴りをアゴ辺りにヒットさせ、3ノックダウンとなって圧倒のKO勝利。

雄希のヒザ蹴りが佐藤勇士にヒットしノックアウト勝利、ランカー破りの飛躍となった

◆第6試合 バンタム級3回戦

香村一吹(渡邉/2007.2.22東京都出身/ 52.5kg)4戦4勝(1KO)
        vs
涌井大嵩(アルン/1997.3.2新潟県出身/ 53.2kg) 4戦3勝(1KO)1敗
勝者:香村一吹 / 判定3-0
主審:加賀見淳
副審:前田30-29. 鈴木30-28. 高谷30-28

初回早々は涌井大嵩が先手を打って組んでのヒザ蹴りを入れるが、香村一吹は慌てることなく離れて蹴りとサウスポーからの左ストレートで攻勢に転じる。

第2ラウンド、蹴りとパンチの攻防も香村のパンチと蹴りのコンビネーションが冴え、やや優った流れも相手を見てしまう間合いもあり、終了間際にはヒジかパンチかバッティングか、右頭部を斬る負傷をしてしまったが続行可能とされ、第3ラウンドも差は付き難い中、サウスポーからの左ストレートとすぐ蹴りに繋ぐ攻撃力優った香村が圧し切り判定勝利。

流血しながら攻勢を維持した香村一吹、渡邉ジム久々の新星である

◆第5試合 バンタム級3回戦

兵庫志門(テツ/1996.4.14兵庫県出身/ 53.52kg)15戦6勝(1KO)7敗2分
        vs
ベンツ飯田(TEAM Aimhigh/1997.4.17群馬県出身/ 53.25kg)17戦3勝(1KO)11敗3分
勝者:兵庫志門 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:前田30-27. 鈴木30-27. 加賀見30-27

兵庫志門がやや優る攻勢の中、最終第3ラウンドに兵庫志門ハイキックでノックダウンを奪ったが、引退試合のベンツ飯田は踏ん張って終了ゴングまで耐え切った。

◆第4試合 62.5kg契約3回戦

ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/ 62.25kg)
41戦7勝(3KO)30敗4分
        vs
辻健太郎(TOKYO KICK WORKS/1984.3.13東京都出身/ 62.45kg)6戦2勝(1KO)1敗3分
引分け 三者三様
主審:高谷秀幸
副審:前田30-29. 加賀見29-30. 笹谷30-30

蹴りとパンチの決め手の無い攻防は差が付き難い展開で修了。第2ラウンドが三者三様になった以外は互角の採点だった。

◆第3試合 ウェルター級3回戦

石原尚斗(テツ/1997.9.10岡山県出身/ 66.4kg)2戦1勝(1KO)1分
        vs
マナチャイ・エイムハイ(TEAM Aimhigh/1995.9.14群馬県出身/66.55kg)10戦2勝7敗1分
引分け 0-0 (28-28. 28-28. 28-28)

初回、パンチ連打でノックダウンを奪った石原尚斗だったが、巻き返していくマナチャイ。結果的にポイント追い付いて引分けとなった。

◆第2試合 51.5kg契約3回戦

緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/ 51.4kg)3戦3勝
        vs
真虎(kick life/2002.6.28埼玉県出身/ 51.15kg)16戦1勝13敗2分
勝者:緒方愁次 / 判定3-0 (30-26. 30-27. 29-28)

初回、飛びヒザ蹴りでノックダウン奪った緒方愁次。真虎は劣勢から立ち直り、そこから互角に渡り合うも巻き返すには至らず、緒方愁次の判定勝利。

◆プロ第1試合 ライト級3回戦

龍一(拳心館/1995.11.17新潟県出身/ 60.95kg)10戦9敗1分
        vs
リョウヤ・ハリケーン(テツ/2002.10.20兵庫県出身/ 60.25kg)2戦1勝(1KO)1分
勝者:リョウヤ・ハリケーン / TKO 1ラウンド 35秒

初回早々のパンチのクリーンヒットでノックダウンを奪ったリョウヤが更に連打で龍一を倒すとレフェリーがノーカウントで試合ストップした。

◆3.アマチュア(オヤジキック提供) 81.0kg契約2回戦(90秒制)

天狗ちゃん(テツジム東京/ 80.05kg)
        vs
ナオマサ・ルトタナモンコンスック(D-BLAZE/77.55kg)
勝者:天狗ちゃん / 判定3-0 (20-17. 20-28. 20-17)

◆2.アマチュア(オヤジキック提供) 66.0kg契約2回戦(90秒制)

菅野裕宜(無所属/ 65.1kg)vs 昂介(D-BLAZE/65.8kg)
勝者:昂介 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)

◆1.アマチュア(オヤジキック提供) 61.0kg契約2回戦(90秒制)

まさる(Labore spes/ 60.35kg)vs 長友亮二(KING/ 60.2kg)
勝者:まさる / TKO(RSC)2ラウンド 35秒

《取材戦記》


ベストファイトは勇志 vs 鎌田政興と山本太一 vs 利根川仁でしょうか。タイトルマッチの重みで勇志 vs 鎌田政興。一進一退の攻防で盛り上げたのは山本太一 vs 利根川仁でしょう。

勇志のパワフルな攻撃力は見事でしたが、後半バテる様子も窺えました。やはり3回戦制の戦い方で5回戦を戦っているのかもしれません。スタミナが足りない訳ではなく、前半飛ばし過ぎなのでしょう。

山本太一 vs 利根川仁戦の第2ラウンドはノックダウンの応酬となり、山本太一が二度、利根川仁が一度となりました。このラウンドの採点は10-8が一者と10-9が二者で利根川仁を支持でした。この二度対一度のノックダウンの在り方で採点はどう付けられるか。これはプロボクシングに於ける解釈として参考まで。ノックダウンの順は関係無く、両者一度分のノックダウンは相殺され、残る一つのノックダウンが採点されることになり、10-8となるのが基準。キックボクシングに於いても採点基準はプロボクシングに倣うことは重要でしょう。

蘭賀大介は今回からリングネームを“乱牙”と改名。本名で充分カッコいいと思いますが、その変更理由は聞くには至りませんでした。平成以降は姓と名が揃っていないリングネームが多い時代です。

人名はその名字の由来やその人柄を表すものとして、少ない文字で多くの情報が詰められている俳句のようにと言っては語弊があるかもしれませんが、あらゆるスポーツ選手も本名が多く(大相撲は別格)、日本人が使う漢字名はカッコいいものです。

2025年の日本キックボクシング連盟シリーズ名は「爆発シリーズ」です。爆発って過激な響きがあります。これも漢字の力。今年は冠鷲シリーズでした。あまり冠鷲とは関係無かったような気はしますが、毎年のシリーズ名も漢字のインパクトは大きいものです。

興行日程は2月22日(土)、4月26日(土)、6月21日(土)、8月3日(日)大阪175BOX、8月9日(土)新潟・大かま、10月18日(土)、12月13日(土)、8月以外は全て後楽園ホール夜興行です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DPPQF4ML/

DUELから駆け上がるチャンピオンへの道! 堀田春樹

計量は前日の昼12時よりVALLELYジムにて、カード変更はありましたが、出場者は体調万全で全員が計量をクリアーしました。

メインイベントと位置付けられた赤平大治vs大岩竜世戦は大岩が辛うじて勝利。
悠vs明夢も期待される中の勝利を導けない厚い壁。

女子としてのメイン位置、齋藤千種が祥子JSKを破り王座獲得。

◎DUEL.32 / 12月8日(日)GENスポーツパレス18:00~20:50
主催:VALLELYジム / 認定:NJKF

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第11試合 56.5kg契約3回戦

NJKFフェザー級7位.赤平大治(VERTEX/ 56.3kg)8戦5勝(3KO)2敗1分
        VS
大岩竜世(KANALOA/ 56.4kg)6戦4勝2敗
勝者:大岩竜世 / 判定1-2
主審:マット(テーチャカリン・チューワタナ)
副審:松田29-30. 中山30-29. 多賀谷29-30

初回、両者のローキックとパンチ中心の牽制で様子見。赤平大治がパンチをややヒットすると、大岩竜世も返していく。第2ラウンドも両者、パンチと蹴りで激しくなるが怯まぬ前進で、どちらも主導権支配には至らない展開。第3ラウンドには首相撲も加わった攻防。多彩にアグレッシブな展開は続くが差は付き難く、ジャッジ三者揃ったラウンドは無い僅差だった。

リング上のコメントでは「僅差だったんですけど、勝つことが出来て良かったです。来年もっと勝ち進んで行って王者に近付けるよう頑張る年にします。」とマイクで語った。

リングを下りてから「本当僅差で勝ったとは思わんかったですけど、結果勝ちで次に繋がって良かったです。赤平選手はパンチで来ると思って警戒していたんですけど、やっぱり貰っちゃいました。蹴りで返した感じで、結果は勝てたんですけど反省しています。」と語り、リング上で語ったとおり、来年も勝ち進んで王座に迫ることを宣言した。

攻勢を導きたい両者、大岩竜世がローキックで攻める

パンチの見映え良かったのは赤平大治だが攻勢を維持出来ず

◆第10試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級7位.悠(=吉仲悠/VALLELY/ 50.8kg)11戦4勝(2KO)5敗2分
        VS
NJKFフライ級10位.明夢(新興ムエタイ/ 50.45kg)13戦4勝(1KO)6敗3分
引分け 三者三様
主審:椎名利一
副審:松田29-29. マット30-29. 多賀谷29-30

パンチと蹴り、やや前進は悠。明夢も蹴り返し、一進一退の差が付かない攻防。第2ラウンドもパンチ、ローキックとアグレッシブな展開。明夢が悠をコーナーに追い詰め、ヒザ蹴りが効果的で、第3ラウンドも首相撲は明夢が攻勢も悠のパンチで前進も効果的。初回はジャッジ三者とも互角。第2ラウンドは2-1に分かれる採点、第3ラウンドには悠に付けるジャッジは一人。採点では難しい見極めだった様子。

明夢陣営坂上顕二会長は「作戦どおりだったんですけど、勝ったかなという印象もドローも仕方ないところですね。」という声。

悠陣営米田貴志会長は「前回勝ってる相手だったんですけど、悠の悪いところが出て、ちょっと躊躇したり、ブチ切れて行く気迫が足りなかったかな。相手を飲み込むような力強さがあれば勝てたでしょう。」と精神的な部分を語られました。

明夢のミドルキックが悠にヒットも怯まぬ攻防戦が続いた

明夢のミドルキックにパンチを合わせる悠

◆第9試合 女子ミネルヴァ・ピン級(100LBS)王座決定戦3回戦 (撫子王座返上による)

1位.斎藤千種(白山道場/1985.10.25新潟県出身/ 45.4→45.35kg)10戦6勝4敗
        VS
2位.祥子JSK(治政館/1983.12.3埼玉県出身/ 44.9 kg)28戦8勝19敗1分
勝者:斎藤千種(新チャンピオン) / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:松田30-28. マット30-29. 椎名30-28

蹴りとパンチの様子見からサウスポーの斎藤千種の左ストレートがヒット。斎藤千種が自分の距離を掴んだ流れで、祥子は蹴りたくても蹴れない、蹴ってもクリーンヒットし難い距離感があった。斎藤はこの自分の距離感で左ストレートを多発。しっかりダメージを与えるには至らずも、攻勢を維持して判定勝利。王座獲得となった。

敗れた祥子は「ちょっと距離感が遠かったですね。もっとガンガン来られると思っていたので、相手がパンチで来るところに蹴りを合わせる練習をして来たので、こっちが出るのを待ってる感じで警戒してたので、ちょっと駆引きし過ぎちゃったかなと思います」

距離の掴み方は斎藤千種の方が上手かった流れについて、「その辺が敗因という中でも手数で行かなきゃいけないのに、それが出来なかったという反省はありますね」と語られました。

全試合後のインタビューで、齋藤千種選手は見付けられずでした。

祥子が蹴れば齋藤千種のパンチが襲って来る

祥子の蹴りに合わせて齋藤千種の距離感掴んだ左ストレートヒット

ピン級王座獲得した齋藤千種、感動の言葉とファンへ感謝を述べる

◆第8試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級8位.大久保貴宏(京都野口/ 50.8kg)6戦4勝2敗
        VS
渡部蕾(クロスポイント大泉/ 50.5kg)2戦2勝
勝者:渡部蕾 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:中山28-30. マット28-29. 椎名28-30

◆第7試合 スーパーバンタム級3回戦

古山和樹(エス/ 54.7kg)4戦2勝2敗
     VS
ミツル(AX/ 54.8kg)1戦1敗
勝者:古山和樹 / 判定2-0
主審:松田利彦
副審:中山29-28. 多賀谷29-29. 椎名29-28

◆第6試合 フェザー級3回戦

伊達(GRABS/ 56.35kg)2戦2勝(1KO)
      VS
山本龍平(拳粋会宮越道場/ 56.75kg)2戦2敗
勝者:伊達(赤コーナー) / TKO 3ラウンド 2分56秒
主審:マット(テーチャカリン・チューワタナ)

アグレッシブな攻防も伊達が圧し気味に主導権を支配。第3ラウンドには更にパンチとローキック中心に攻勢を強めてカウンターの左フックでノックダウンを奪うとレフェリーがノーカウントで試合をヅトップ。伊達がTKO勝利。

伊達がパンチでKOのタイミングを掴んで行く(KOシーンはレフェリーが被り)

◆第5試合 フライ級3回戦

植田琥斗(E.S.G/ 49.75kg)2戦1勝1敗
      VS
煌(KANALOA/ 50.65kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:煌(青コーナー) / TKO 2ラウンド 2分16秒
主審:椎名利一

初回に煌の右ローキックで植田琥斗が軽いノックダウン。まだ動ける左脚ではあったが、すでに弱点を晒したか、徐々に攻められ第2ラウンドにも煌の右ローキックでノックダウンを喫した植田琥斗。明らかにダメージある左脚を狙われ、ローキックでノックダウンするとレフェリーがノーカウントで試合をストップした。

煌が初回からローキックで植田琥斗にダメージを与えて行きTKOに繋げた

◆第4試合 女子ミネルヴァ 45.0kg契約3回戦(2分制)

金子杏奈(ウエストスポーツ/ 44.5kg/代打) 友菜(Team ImmortaL)怪我により欠場
VS
港町なぎさ(ワイルドシーサー前橋元総社/ 43.15kg)1戦1勝
勝者:港町なぎさ / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:マット27-30. 椎名28-29. 松田29-30

◆第3試合 女子ミネルヴァ47.5kg契約3回戦(2分制)

KANA(Bombo Freely/ 46.65kg)2戦2勝
        VS
DJナックルハンマーyokko(team Almerrick/ 47.3kg)5戦5敗
勝者:KANA / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:マット30-26. 椎名30-26. 松田30-26

◆第2試合 女子ミネルヴァ56.0kg契約3回戦(2分制)

MIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/ 55.7kg)5戦5敗
        VS
妃芽奈(ワイルドシーサー高崎/ 54.9kg)1戦1勝
勝者:妃芽奈 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:マット27-30. 椎名26-30. 中山27-30

◆第1試合 49.0kg契約3回戦

赤土剛琉(D-BLAZE/ 48.75kg)2戦2敗
       VS
庄司翔依斗(拳之会/ 47.0kg)1戦1勝
勝者:庄司翔依斗 / 判定0-3
主審:松田利彦
副審:多賀谷28-29. 椎名28-29. 中山28-29

赤土剛琉はややスロースターターか、攻めの勢いは庄司翔依斗。初回は庄司がリード。第2ラウンドは赤土が蹴りと組み合ってもやや優勢気味でリード。第3ラウンドには庄司もパンチと蹴りで巻き返して僅差で判定勝利。各ラウンド、ジャッジ三者とも揃っていた。

赤土剛琉と庄司翔依斗の攻防、圧して出た庄司がわずかに優った

《取材戦記》

元・全日本フライ級、バンタム級チャンピオン、赤土公彦さんの御子息、次男の剛琉くんがプロ2戦目を行ないました。デビュー戦は9月に別興行で行われている模様です。この日は手数で圧され判定負けでしたが、父親そっくりの風貌と攻めのスタイルも似たところがありました。タイで試合も重ねて経験を積んでおり、10月5日にはタイ国ラジャダムナンスタジアムで1ラウンドKO勝利し、現地戦績は3戦2勝(1KO)1敗。

この日相手の庄司翔依斗はアマチュア経験を経てのデビュー戦のようでしたが、剛琉にとってタイでの経験は自信を持ち過ぎると、帰国後の試合でのリズムが噛み合わなくなるパターンも多く、過去の名チャンピオンも陥るスランプだったりします。今後、壁を打ち破る浮上が期待されます。

赤土氏の御子息、長男は公亮。2023年3月26日プロデビューで国内3戦2勝1分。タイ現地試合は2戦1勝1敗。兄弟ともデビュー当時の目付き鋭い公彦父さんソックリである。過去、親子二代チャンピオンは何組か誕生しているが、向山鉄也前キングジム会長に続いて赤土公彦氏も狙っている快挙は実現に至るか。

庄司翔依斗はNJKFスーパーバンタム級6位、庄司理玖斗の弟で、こちらも兄弟でチャンピオンを目指す関西期待の星。キックボクシングに限らず、兄弟選手が多い時代です。

第1試合の話だけになってしまいましたが、メインイベント、セミファイナルの僅差の結果ながら、赤平大治、大岩竜世、悠、明夢らも2025年にどこまで駆け上がるか期待されます。

NJKFの2025年関東エリア本興行は現在、

2月2日(日)後楽園ホール、4月27日(日)後楽園ホール、5月11日(日)PITジム興行、

6月8日(日)後楽園ホール、9月28日(日)後楽園ホール、11月30日(日)後楽園ホールが予定されています。他、2月9日(日)DUEL興行、3月16日(日)女子ミネルヴァ興行

関西で3月16日(日)誠至会興行、4月20日(日)拳之会興行、7月20日(日)誠至会興行の興行予定が入っています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

KICK Insist 21 メインイベンターは今が旬の瀬戸睦雅! 堀田春樹

ルンピニースタジアムのONE FRIDAY FIGHTS(ONE Championship)で2連勝の睦雅は堂々たるメインイベンターとして力強いTKO勝利。

瀧澤博人は再起戦を飾れず、元・ムエタイ2大殿堂上位ランカーに屈す。

皆川裕哉、期待の初防衛は成らず。19歳の新星、勇成が王座奪い獲る。

細田昇吾、先を見据えた大舞台に向けて前進の大差判定勝利。

KICK Insist 21 / 11月17日(日)後楽園ホール17:15~20:49
主催:VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第12試合 63.0kg契約 5回戦

JKAライト級チャンピオン.睦雅(=瀬戸睦雅/ビクトリー/ 1996.6.26東京都出身/63.0kg)
25戦19勝(12KO)4敗2分
vs
ユッタカーン・コー・プラサートジム(チェンマイStadiumライト級Champ/タイ/ 62.9kg)
76戦55勝19敗2分(推定)
勝者:睦雅 / TKO 2ラウンド 2分50秒
主審:西村洋

初回、睦雅はローキックで牽制とパンチを打ち込む距離を探る展開で、ヒジ打ちを狙っていそうな相手の出方を覗いつつ、前進気味にローキックでプレッシャーを与えていく。首相撲になっても組み負けないバランスを保つ。

第2ラウンドも睦雅が距離を詰め、ユッタカーンをロープ際に追い詰めローキックを蹴り込む展開が続くと効いてきた様子が窺え、パンチやヒジ打ち、ローキックでダメージを与え、空いたボディーへヒザ蹴りでノックダウンを奪って圧勝ムード。

ユッタカーンに圧力掛けて後退させる睦雅

最初のノックダウンを奪った睦雅の左ヒザ蹴り

再開後にボディブローを決め、カウント中のレフェリーストップに追い込んだ。睦雅は今年KICK Insistに於いて3勝(2KO)とONE FRIDAY FIGHTSで2勝(2KO)と5連勝を築いた。

フィニッシュブローは空いたボディーへ左フック炸裂させた睦雅

睦雅は「今日はコンデション的には、勝ったから言えるとことですけど、あんまり良くなくて、ずっとここ3週間ぐらい体調不良で、あまり追い込めなかったところもあったのですが、“5ラウンドまで長期戦でいく”、そういう崩し方も出来るというのを見せたくて、相手のリズムで敢えて戦ってみようかなと、自分のギアではなくて相手のリズムで1ラウンド終わって、“ヒジもパンチも見えるな”と思ってまあ大丈夫だなと、このまま相手のリズムで倒してやろうという流れで、結果、倒せました。」

ボディーブローについては、「下(脚)を凄く意識されていたので、ローキック対策されているのかという感はありましたが、その分、腹が残るので狙えるとなと。」と語り、会長からの対策もあって試しながらの結果がKOに繋がった様子でした。

ONEが行われるルンピニースタジアムの雰囲気について=「ONEは満員に近いぐらい入っているので、昔のムエタイと違う雰囲気でもあり、独特な選手が立つ場という感じがして僕は好きです。皆が目指す舞台になっていくと思います。」と語られました。

 
ノックダウンの後に、似た形のヒジ打ちを喰らった瀧澤博人

◆第11試合 58.0kg契約3回戦

WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/1991.2.20埼玉県出身/ 57.8kg)
42戦26勝(14KO)12敗4分
vs
ファーモンコン・タエンバーンサエ(元・ラジャダムナン系バンタム級2位/タイ/ 58.0kg)
151戦103勝46敗2分(推定)
勝者:ファーモンコン / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:椎名28-29. 西村28-29. 中山28-29

瀧澤博人は7月28日のWMO世界フェザー級王座決定戦でペットタイランドに僅差の判定負けで目指していた王座を手にすることは成らず。9月にはラジャダムナンスタジアムでも判定負けの模様。

初回の蹴りの応酬の様子見は瀧澤博人もハイキックを加えた蹴りで前進。

第2ラウンドはファーモンコンが距離を詰めて来てパンチを打ち込むファーモンコン。更に相打ち気味に右縦ヒジ打ちを顔面に打ち込み、瀧澤博人はノックダウンを喫した。

鼻血を流しながら立ち上がる瀧澤博人。ヒジ打ちで倒しに掛かるファーモンコン。組み付くとヒザ蹴りで攻め込む。

第3ラウンドには瀧澤のパンチか、ファーモンコンも鼻血を流し、蹴りの距離に戻った流れで瀧澤が追うが、ファーモンコンも逃げ切って終了。瀧澤は再起戦を飾れず。

ファーモンコンの右ヒジ打ちを喰らってノックダウンを喫した瀧澤博人

◆第10試合 ジャパンキック協会フェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン初防衛戦.皆川裕哉(KICKBOX/1997.4.11東京都出身/ 57.0kg)
27戦14勝(2KO)11敗2分
vs
挑戦者1位.勇成(Formed/2005.8.17福岡県出身/ 57.15kg)9戦8勝(5KO)1敗
勝者:勇成(新チャンピオン) / KO 3ラウンド 2分42秒
主審:少白竜

初回は蹴りとパンチの探り合いの様子見から勇成が右ストレートでノックダウンを奪う。しかしこのラウンドは無理に出ず冷戦な皆川裕哉。何が当てられるか試しながら後半に持ち込む5回戦の戦い方を理解している流れだったが、第2ラウンドも静かな戦いとなってパンチの交錯は見られたが、ジャッジは揃って勇成を付け、ここまで3ポイント差が付く流れ。

第3ラウンドには勇成がパンチで攻めて来た。皆川裕哉も応戦しながら蹴りで攻める。勇成は前蹴りからパンチで攻め、右ストレートでノックダウンを奪うと、皆川は足下フラ付く状態でテンカウントを聞いた。

勇成と皆川裕哉の一触即発のヒジ打ちと右ストレートの交錯

◆エキシビジョンマッチ2回戦

ラジャダムナン系スーパーフライ級Champion.名高・エイワスポーツジム(吉成名高/エイワスポーツ)
EX
キヨソンセン・ビクトリージム(元・WMCインターコンチネンタル・スーパーフェザー級Champ/タイ)

12月1日にムエタイ王座防衛戦を控える吉成名高がエキシビジョンマッチを行ない、身軽なフットワーク見事な蹴り合いのコンビネーションで調整具合を披露した。

吉成名高が終了間際に最高の仕上がりを見せた飛び前蹴り

◆第9試合 スーパーフライ級3回戦

JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/1997.6.4埼玉県出身/ 51.9kg)
22戦14勝(3KO)6敗2分
vs
ローマペット・プロムロブ(ジットムアンノンStadiumライトフライ級5位/タイ/ 51.7kg)
59戦40勝17敗2分
勝者:細田昇吾 / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-28. 西村30-28. 勝本30-27

様子見の蹴り中心のせめぎ合いもリズム掴んでローキックからパンチ当てるのが上手い細田昇吾。早々に主導権奪った展開で終盤まで勢い付いていく。ローマは蹴り技持っているが細田にペース奪われて出し切れない困惑気味の表情。相手の持ち味を殺して主導権支配した細田昇吾が内容的にも大差判定勝利。

細田昇吾が圧倒してローマペットのリズムを完全に崩していく

細田昇吾は「1ラウンドから行けるかなと力んでしまって、ちょっと倒しに行こう、倒そうとし過ぎたなという印象でした。100の力で打っちゃったんで、そこの緩急の付けがちょっと甘かったなという反省です。」

当てるのが上手かったなと言う声については、「まだまだです。先輩方に比べたら全然なので。」

来年王座挑戦は?
「やりたいですね。交渉事もあるので時期は分かりませんが。」

目標とするものは?
「睦雅さんがONEに出ているので、そういう背中追って行きたいなと思っています。ああいう勢い有る団体は世界の強い奴が集まっている団体で本当に世界一と言えると思うので、まずは一歩ずつ獲っていく思いです。」と語られました。

◆第8試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級2位.樹(治政館/2004.10.12埼玉県出身/ 57.0kg)
15戦7勝(4KO)7敗1分
vs
同級6位.石川智崇(KICKBOX/ 57.0kg)7戦3勝3敗1分
勝者:樹 / TKO 1ラウンド 2分27秒
主審:少白竜

蹴りの様子見の両者、石川智崇がやや前進気味も樹は冷静に捌き、一瞬の左フックでノックダウンを奪うと石川は立ち上がるがしっかり立てずカウント中のレフェリーストップ。

樹 vs 石川智崇は、蹴りから繋ぐパンチへ流れを掴んで行く樹

◆第7試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級2位.細見直生(KICKBOX/ 66.1kg)4戦4勝(1KO)
vs
同級5位.我謝真人(E.D.O/ 66.6kg)15戦3勝(1KO)10敗2分
勝者:細見直生 / 判定2-0
主審:西村洋
副審:椎名30-29. 中山30-29. 少白竜29-29

初回、細見直生は重い蹴りとパンチでやや優勢も、後半は接近戦での蹴りを交えた打ち合いは我慢比べの互角の展開が続き、細見直生が序盤の勢いを維持してポイントを譲らず判定勝利。

◆第6試合 ライト級3回戦

JKAライト級2位.貴雅(治政館/ 60.9kg)33戦19勝(3KO)14敗
vs
同級5位.菊地拓人(市原/ 61.1kg)7戦5勝(3KO)2敗
勝者:菊地拓人 / KO 2ラウンド 31秒
主審:勝本剛司

貴雅は蹴りで前進の中、菊地拓人の正面に立った辺りで右ストレートを受け、ノックダウンし立ち上がれずテンカウントを聞いた。

◆第5試合 バンタム級3回戦

JKAバンタム級3位.紫希士(Formed/ 53.2kg)4戦3勝1分
vs
花澤一成(市原/ 53.45kg)9戦1勝(1KO)5敗3分
引分け 三者三様
主審:椎名利一
副審:西村29-30. 勝本29-29. 少白竜29-28

ハイキックやミドルキック、前蹴りは花澤一成の蹴りのリズム。第2ラウンドから紫希士が首相撲で強く出て来て接近戦のペースを掴む。パンチは貰いたくない花澤一成との攻防は一進一退で終了した。

◆第4試合 女子スーパーフライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級3位.YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/52.4→52.4→52.1kg)
13戦5勝5敗3分
vs
同級7位.響子JSK(治政館/ 51.6kg)11戦3勝5敗3分
引分け 三者三様
主審:中山宏美
副審:椎名30-29. 勝本29-29. 西村29-30

◆第3試合 アマチュア61kg以下2回戦(90秒制)

竹森万耀(JKAアマチュア・フェザー級初代覇者/治政館) vs 篤志(team JSA)
勝者:竹森万耀 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

◆第2試合 アマチュア55kg以下2回戦(90秒制)

草野大翔(ビクトリー) vs 古川在冴都(ONE LINK)
勝者:草野大翔 / 判定2-0 (20-18. 19-19. 20-19)

◆第1試合 アマチュア65kg以下2回戦(90秒制)

木村大夢(KIX) vs 隈澤匠永(BURNING)
勝者:木村大夢 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

 
昨年の新人賞受賞の勇成が新チャンピオンとなった

《取材戦記》

ビクトリージム3羽烏の瀧澤博人、睦雅、細田昇吾はそれぞれの明暗は分かれるも、持ち味を発揮した試合でした。瀧澤博人は相手をどう攻略するかが期待される中の、相打ち気味の1瞬先を打たれた流れの悔しい敗戦だが、睦雅は今話題のONE FRIDAY FIGHTに出場して2連勝という勢いが存在感を示しました。

細田昇吾は先輩方に負けない練習量で、相手を圧倒する展開での判定勝利。皆川裕哉は目黒の教訓、“防衛してこそ真のチャンピオン”を成し遂げようと以前から宣言していたが、あっさり倒されてしまう大失態。改めて防衛の難しさが表れる一戦でした。

新チャンピオンの勇成は今年3月24日興行で、このジャパンキックボクシング協会の2023年の新人賞を受賞。7月28日に挑戦者決定戦で樹(治政館)に判定勝利して挑戦権獲得。

樹は5月に市原で皆川裕哉とノンタイトル戦で対戦。そこでは皆川裕哉が余裕の判定勝利しています。

今年3月24日に王座決定戦で櫓木淳平(ビクトリー)を倒して新チャンピオンとなった皆川裕哉。同日、ジャパン・ウェルター級王座初防衛戦で政斗(治政館)に倒され、防衛成らなかった大地フォージャー(誠真)がいました。今年はジャパンキックボクシング協会に於いては2人のチャンピオンが初防衛成らず。倒されて陥落という結果が残りました。

王座が入れ替わる瞬間とは物悲しくもあり、新たなチャンピオンが誕生する新鮮さがあり、昔は日本の頂点におけるタイトルマッチで、こんな衝撃の王座交代劇が幾つもあったものである。最近は防衛しないで返上が多く、こんな記憶に強く残る交代劇が少なくなった時代です。

この日はエキシビジョンマッチながら吉成名高の存在も大きいものでした。一昨年、昨年とKICK Insist、11月興行には2年連続で出場していた吉成名高は、今年は2週間後の12月1日、横浜大さん橋ホールで、ペットヌン・ペットムエタイジム(フランス)と王座3度目の防衛戦を控える中でのエキシビジョンマッチ出場で、身軽なフットワーク、技の切れ味を披露しました。

来年のジャパンキックボクシング協会は、3月23日(日)会場未定、7月13日(日)後楽園ホール、9月15日(月・祝)新宿フェース、11月23日(日・祝)後楽園ホールが予定されています。他、日時未定ながら市原ジム主催興行も予定されています。

睦雅がどこまで躍進するかが2025年の見所でしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

NJKF祭JAPAN CUP 55kg級トーナメント、壱世が嵐を破る! 堀田春樹

NKJF祭として行われたKICK BOXING JAPAN CUP 1st ROUND 55kg級トーナメント、8名参加の初戦(準々決勝)4試合は与那覇壱世、森岡悠樹、古村光、前田大尊が準決勝へ進出。

◎NJKF CHALLENGER 5th / 11月10日(日)後楽園ホール17:20~21:43
主催:NJKF、(株)オフィス超合筋 / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

戦績はパンフレット参照にこの日の結果を加えていますが、一部省略しています。

◆第10試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

KNOCK OUT-REDスーパーバンタム級チャンピオン.壱センチャイジム
(=与那覇壱世/センチャイ/ 54.85kg)39戦29勝(10KO)9敗1分
VS
NJKFバンタム級チャンピオン.嵐(KING/ 55.0kg)17戦12勝(6KO)3敗2分
勝者:壱センチャイジム / 判定3-0      
主審:中山宏美
副審:和田30-28. 多賀谷30-29. 秋谷29-28

開始早々は蹴り中心の牽制、嵐はローキックで前進する中、股間ローブローを受けて中断が認められて回復を待つと、壱世陣営のセンチャイ会長が激怒し「やれよ!」と抗議するシーンもあった。

壱世は様子見の間は下がり気味ではあったが再開後、前蹴りで嵐のアゴ狙って繰り出し前進を止め、嵐の出方を見極めると次第に蹴りで前進を強め、嵐がロープ際に詰められるシーンが増えていく。

主導権を奪った壱世の左ミドルキックが嵐に炸裂、巻き返しは難しかった劣勢の嵐

第2ラウンド後半には壱世が主導権支配した流れで、蹴りもパンチも組み合っても壱世が優り、焦る嵐を上回った。試合終了すると嵐は負けを確信して蹲り、壱世は勝利を確信してロープに駆け上がって歓声に応えた。

次第にロープ際に詰められる嵐、壱世のパンチが襲う

◆第9試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

NJKFスーパーバンタム級チャンピオン.真琴(誠輪/55.65→55.65kg/計量失格、減点2)
15戦10勝(1KO)3敗2分 
      VS
スックワンキントーン・スーパーバンタム級チャンピオン.森岡悠樹(北流会君津/ 54.9kg) 
26戦15勝(8KO)9敗2分
引分け 0-1 / (森岡悠樹が準決勝進出)
主審:和田良覚
副審:多賀谷27-28. 中山28-28. 秋谷28-28 (真琴に計量失格減点2含む)

初回、ローキックとパンチが中心の牽制の様子見。真琴が右ストレートヒットで主導権を奪った流れに移る。

第2ラウンドにはパンチで出て来る森岡悠樹に右ストレートヒットでノックダウンを奪った。調子付いて攻めの前進した真琴だったが、森岡悠樹の右ヒジ打ちが真琴の側頭部にヒットし、マットに膝を着いたがロープにも救われスリップ扱い。

不利な展開ながら森岡悠樹の蹴りも勢いがあった

森岡が更にヒジ打ちも含めた攻勢で巻き返したいところだったが、一進一退の攻防が続いて終了。

最終第3ラウンドについては三者三様だった。結果は引分けとなったが、真琴は計量失格の為、森岡悠樹が準決勝進出となった。

コーナーに追い詰めつつある中、真琴のこの右ストレートヒットでノックダウンを喫してしまった森岡悠樹

◆第8試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

古村光(FURUMURA/ 54.75kg)14戦9勝(7KO)4敗1分 
      VS
WMC日本スーパーバンタム級チャンピオン.佐野祐馬(創心會/ 54.35kg)
17戦9勝(3KO)8敗 
勝者:古村光 / TKO 2ラウンド 1分47秒
主審:秋谷益朗

初回、ローキックで牽制の両者は古村光が徐々に優ると脚にダメージを負う佐野祐馬。首相撲とパンチで追う古村光は組んでからのヒザ蹴りでノックダウンを奪った。

第2ラウンドも古村光の攻勢は続き、ローキックでノックダウンを奪い、更にヒジ打ちで佐野祐馬の右瞼を斬り、コーナーに詰め、パンチからヒザ蹴りで攻めたところでレフェリーストップとなった。

古村光が攻勢を維持し、佐野祐馬をコーナーに追い詰めてミドルキックをヒット

古村光のヒジ打ちで右瞼を斬られた佐野祐馬はより苦しい展開に陥る

◆第7試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

NJKFスーパーバンタム級1位.大田一航(新興ムエタイ/ 54.9kg)  
      VS
WBCムエタイ日本フェザー級4位.前田大尊(マイウェイ/ 54.85kg)
引分け 三者三様 (前田大尊に優勢支持、準決勝進出)
主審:多賀谷敏朗
副審:和田29-29(9-10). 宮沢29-30(9-10). 秋谷29-28(10-9) / 延長戦は1-2

両者は昨年7月23日に対戦し、前田大尊がノックダウンを奪って判定勝ちしている。今回も互角に進む展開で、軽いローキック中心の牽制から徐々に激しさが増して行く。

第1ラウンドはジャッジ三者とも前田大尊が取り、第2~3ラウンドは三者は揃わないながらもやや大田一航が優った。延長戦も1-2と分かれるほど差が出ない展開。どちらの戦略が優って勝利を導くか微妙な攻防の中、前田大尊の成長を見せた踏ん張りが印象的だった。

一進一退の攻防の中、前田大尊の右ローキックヒット

前田大尊の左ミドルキックが大田一航の脇腹にヒット、気力で戦う両者

◆第6試合 64.0kg契約 3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX/ 63.75kg)
27戦12勝(3KO)10敗5分 
       VS
サムランチャイ・エスジム(元・ルンピニー系スーパーバンタム級2位/タイ/ 63.5kg) 
引分け 三者三様
主審:中山宏美
副審:児島29-29. 宮沢29-30. 少白竜30-29

吉田凛汰朗は相手の出方に合わせてローキックからパンチ、パワーと手数で前進し、サムランチャイをロープ際に下がらせる時間は増えていく。サムランチャイは徐々にスタミナ切れの様子で吉田のパンチでの攻勢が続くが、サムランチャイは返す技は上手く、第3ラウンドにはヒジ打ちで吉田の左眉尻辺りを斬った。アグレッシブな吉田の攻勢は目立ったが、ベテラン、サムランチャイを倒すには至らず、ヒジ打ちを喰らってしまうのは勿体無い展開だった。

◆第5試合 ウェルター級3回戦(PRO-KARATEDO達人ルール) 

WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.青木洋輔(大和/ 67.7kg)
       VS
掠橋SAVAGE秀太(PRO-KARATEDO連盟達人日本ウェルター級1位/理心塾/ 67.8kg) 
無判定引分け
主審:ながいひろあき(正式名不明)

この試合はPRO-KARATEDO達人ルールでオープンフィンガーグローブ使用。投げ技、グラウンド状態での10秒間の打撃も有効。

初回、両者ともパンチからローキックの様子見から組み合うと投げ技で寝技に入る体勢。手数は出ているが、あまり激しい攻防とはならない。

第2ラウンドは組み合ってから崩しや投げからグラウンドが多くなるが、青木洋輔が蹴りとパンチヒザ蹴りと攻勢を強めていくと掠橋はスタミナも切れて劣勢に陥った。立ち技でもグラウンドでも青木が優っていく展開で終了。採点は付けない為、規定どおりの引分け。

グラウンドの展開で顔面蹴りも見せた青木洋輔、総合系の在り方は賛否両論である

◆第4試合 スーパーバンタム級3回戦

NJKFスーパーバンタム級3位繁那(R.S/ 55.3kg) 14戦11勝(6KO)1敗2分
      VS
藤井昴(KING/ 54.95kg)4戦2勝(1KO)2分
引分け 三者三様
主審:児島真人
副審:多賀谷29-30. 少白竜30-29. 中山29-29

◆第3試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級8位.愁斗(Bombo Freely/ 50.65kg)10戦5勝(3KO)3敗2分
        VS
NJKFフライ級9位.永井雷智(VALLELY/ 52.35→52.2kg/計量失格、減点2)
6戦5勝(4KO)1分
勝者:永井雷智 / TKO 2ラウンド 2分37秒
主審:宮沢誠

◆第2試合 59.0kg契約3回戦

NJKFフェザー級10位.和斗(大和/ 58.75kg)8戦5勝(2KO)3敗
        VS
Ryu(クローバー/ 58.9kg)6戦3勝(2KO)2敗1分 
勝者:和斗 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:多賀谷30-26. 児島30-27. 宮沢30-28

◆第1試合 女子(ミネルヴァ)53.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーバンタム級1位.SHIORIN(GRATINESS/ 53.0kg)6戦4勝2分
       VS
スックワンキントーン・スーパーフライ級チャンピオン.Mickey (Y’s Promotion/ 52.9kg)
10戦8勝(3KO)1敗1分
引分け 1-0 (29-29. 30-29. 29-29)

※アマチュアU15 EXPLOSIONルール2試合は割愛します。
予定カードにあったNJKFスーパーフェザー級王座決定戦は中止となりました。

《取材戦記》

試合翌日の「KNOCK OUTプロモーション」記者会見では12月30日、横浜武道館での「K.O CLIMAX 2024」に於いてのKICKBOXING JAPAN CUP 55kg級トーナメント準決勝の組み合わせが発表。壱・センチャイジムvs前田大尊、古村光vs森岡悠樹が決定しています。

正式イベント名は「KICK BOXING JAPAN CUP 1st ROUNDヒジあり、55kg最強決定トーナメント」です。

今回のNJKFは各試合インパクトを残しながらもプロ10試合中、6試合が引分け。大田一航vs前田大尊戦はNJKF坂上顕二代表に二度確認しましたが、公式記録は引分け、延長戦は上位進出を決めるもので、優勢ポイントを得た前田大尊が準決勝進出です。

ただ、リングアナウンサーによって「勝者、前田大尊」とコールされているので、前田大尊が勝利したと解釈しているファン、関係者は多いでしょう。そうアナウンスされているので仕方ないことです。これは事前に確認して運営関係者には徹底しておくべき項目だったでしょう。

この大田一航vs前田大尊戦の試合結果はNJKFホームページにおいても規定の3ラウンドまでの公式戦は引分けとなっています(11月21日現在)。

壱世はリング上でコメントし、放送インタビュー等もあったかと思いますが、何度も同じ振り返りさせては申し訳ないところ、「試合開始後は出鼻を挫かれたという感じですね。嵐くんがパンチコンビネーションで来ると見て、それに合わせてヒジ打ちとかパンチを準備していたんですけど、嵐くんが意外と小技で勝負して来たので、その作戦は出来なかったなあという印象です。」と語った。

それでも嵐の出方に合わせて上回る戦略を練って出たのは経験値から来るものだろう。

今回の興行について、坂上顕二代表は「他団体との交流戦のトーナメントで盛り上がったとは思います。反省点はいろいろありますけど、嵐くんの煽りの件もそうですし、総合系もルールを曖昧にやってしまったことも反省点ですね。」と語った。

リングに敷かれたキャンパスマットの下にはシュートボクシングから借りて来たというジョイントマットが敷かれていました。ジムでも使われること多いジョイントマットなので、「ジムと同じ感覚だ!」と言うウォーミングアップ中の選手もいました。後楽園ホールのリングとしてはいつもより軟らかいキャンパスで、青木洋輔vs掠橋SAVAGE秀太戦に合わせた対策でしたが、過激なルールながら激しさはあまり無かった試合でした。今後も取り入れられる訳ではない模様で。NJKF祭として開催される興行での試みではありました。

嵐はマッチメイクが決まる8月8日から壱センチャイジムを挑発していましたが(YouTubeの記者会見)、2月11日の甲斐元太郎戦でも同じように、挑発しながら試合は荒れることなくクリーンファイトを展開します。

年齢的にも気性が激しい血気盛んな年頃ですが、煽ったのは彼一人の仕業ではない。そして嵐ファンが、勝った壱センチャイジムに罵声を浴びせたり、前日のMuayThaiOpen興行では穏やかな対応をしていたセンチャイ会長が、嵐がローブローを受けてインターバルを取る試合中に感情的になり、観衆の前で怒鳴るのもやめておいた方が良かっただろう。

昭和50年代からキックボクシング界に関わる年配者が19歳の挑発に乗ってはいけない。そんな各陣営からファンを巻き込む悪循環が増して行きました。話題を振り撒いて煽って盛り上げても一時的なもので、競技を確立させるならスポーツマンシップに則った運営が必要でしょう。

NJKF年内興行、関西ではは12月1日(日)大阪市平野区の平野区民ホールで、13時より「NJKF 2024 west6th Young Fight 」が開催されます。

関東では12月8日(日)GENスポーツパレスに於いて18時より新人の登竜門「DUEL.32」が開催予定です。

2025年は2月にNJKF2025 1stが予定されています。おそらくCHALLENGERシリーズでしょう。

準決勝へ駒を進めた4名と武田幸三プロモーターと山口元気プロモーター

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」