武田幸三率いるNJKF CHALLENGERは今年も過激に前進! 堀田春樹

今年もエース格、大田拓真は圧倒のKO防衛。世界へ大きく前進。
吉田凛汰朗は薄氷の初防衛、課題は残るも世界へは一歩前進。
女子試合、SAHOは攻勢を保って判定勝利。

◎NJKF CHALLENGER 7(2025.1st) / 2月2日(日)後楽園ホール17:15~21:31
主催:(株)オフィス超合筋 / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)

戦績は興行プログラムを参照、この日の結果を加えています。

◆第9試合 NJKFフェザー級タイトルマッチ 5回戦

第14代選手権者.初防衛戦.大田拓真(新興ムエタイ/1999.6.21神奈川県出身/ 57.0kg)
41戦31勝(10KO)8敗2分
      VS
挑戦者1位.TAKAYUKI(=金子貴幸/K-CRONY/1988.11.18茨城県出身/ 56.95kg)
33戦17勝(7KO)15敗1分
勝者:大田拓真 / KO 4ラウンド 30秒 /
主審:児島真人  

ローキックとパンチの様子見から大田拓真が先に仕掛け、パンチ連打で金子貴幸をコーナーに詰める攻勢。

第2ラウンドも大田が攻勢を強め、金子をロープ際に追い込み首相撲からヒザ蹴りも加えていく中、俯く金子に右フックかヒジ打ちか、側頭部にヒットさせノックダウンを奪う。圧倒する大田が蹴りから追い詰めてヒザ蹴り、コーナーに詰めると右ストレートで2度目のノックダウンを奪う。

終始圧倒した大田拓真は飛びヒザ蹴りで金子貴幸にプレッシャーを与えた

第3ラウンド、劣勢でも巻き返したい金子に、太田はペースを乱さない。右ボディーブローから右フックでノックダウンを奪い、仕留めに掛かる大田はロープに詰めて組んでヒザ蹴り、右フックで通算4度目のノックダウンを奪う。更に攻める大田はヒジ打ちで金子の右頭部をカット。インターバル中の金子は陣営に止血されながら目を瞑り疲労困憊の様子。

人生一番苦しい時間かもしれない第4ラウンド、絶対優勢の大田がパンチからヒザ蹴りでノックダウンを奪うと、レフェリーはカウントする中、終了のゴングが打ち鳴らされた。セコンドはタオルを投げてはおらず、WBCムエタイルールをNJKFルールにも起用していたということで、全ラウンドを通じての5ノックダウン制で自動的KO勝利となって初防衛となった。

大田拓真の右ハイキック、懸命に戦う金子貴幸にヒット

リング上で大田は王座返上を告げ、6月8日のNJKF興行でWBCムエタイ世界タイトル挑戦の意向を示しました。

大田拓真は金子貴幸の印象を「覚悟を持ってチャンピオンベルト狙いに来ているなという目と気迫を感じていました。僕も本当に油断せず、世界を狙って行くには誰が相手とか関係無く、しっかり追い込んで来たので、結果がしっかり出せて良かったです。」

今後については「ONE(Championship)もそうですし、WBCムエタイ世界戦もNJKFでやらせて頂きたいと意向を伝えました。」と内定したWBCムエタイ世界フェザー級王座挑戦は実現に向かう模様である。

金子貴幸は「もっといけるかなと思ったんですけど、大田選手はあまりにも強過ぎて、こんなに差があるのかビックリしちゃいました。」と完敗を認めていた。

愛息子とツーショットに収まる大田拓真

◆第8試合 NJKFスーパーライト級タイトルマッチ 5回戦

第7代選手権者.初防衛戦.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身/ 63.2kg)
28戦13勝(3KO)10敗5分
       VS
挑戦者.健太(E.S.G//1987.6.26群馬県出身/ 63.2kg)122戦68勝(21KO)47敗7分
勝者:吉田凛汰朗 / 判定2-0
主審:多賀谷敏朗
副審:宮沢49-48. 児島49-49. 中山49-48

距離を取ってのパンチとローキックで出方を探る様子見の両者。徐々に経験値優る健太が前進。ハイキック、右ストレートヒットとパンチでわずかに上回ったかに見える攻勢。

第3ラウンドには、健太のパンチか、吉田の左目尻から出血。このラウンドまでの公開採点でジャッジ三者とも第3ラウンドに差を付け30-29で健太が優勢。第4ラウンドも一進一退な展開は変わらずも、健太の手数がやや落ちたか。

流血の吉田凛汰朗が健太と打ち合う

最終第5ラウンドも倒しに行こうと吉田はパンチを振り回してもヒットしないが健太も同様に吉田を止められない。互角の展開で終了も判定は逆転した流れで吉田凛汰朗が勝利した。第4ラウンド以降はジャッジ二者は吉田にポイントが流れた模様。一者は第5ラウンドのみ吉田に与えドロー裁定。微差も振り分けるなら採点が不可解とは言えないが、見極めの難しい試合だった。

初防衛に成功した吉田は、勝ったらいろいろ言いたかったことがあった様子も、出直しを誓っていた。

健太と吉田凛汰朗、微妙な判定に明暗分かれた両者の表情

◆第7試合 53.0kg契約 ノンタイトル3回戦

S-1女子世界バンタム級チャンピオン.☆SAHO☆(闘神塾/1999.10.15兵庫県出身/ 52.85kg)
21戦19勝2敗
        VS
ダンコンファー・キヤペットノーイジム(タイ/23歳/ 52.65kg)52戦38勝14敗
勝者:SAHO / 判定3-0
主審:少白竜
副審:多賀谷30-28. 児島30-28. 中山30-28

SAHOは蹴りとパンチのリズムで距離を詰め攻勢強める。ダンコンファーは下がり気味でも怯まずチャンスを窺う。第2ラウンドも同様にダンコンファーが蹴って来てもSAHOも構わず蹴りパンチとも多彩に優っていく前進が続いた。

SAHOが圧倒したが、ダンコンファーもムエタイボクサーらしく蹴りは上手かった

第3ラウンド、首相撲になってもSAHOがダンコンファーを崩して優る。SAHOが終始圧倒する展開となったがKOには至らず、チャンピオンとして納得いく試合が出来なかったことに反省のコメントも残していた。

チャンピオンとして納得いかない内容に反省の弁もあった

◆第6試合 ミドル級3回戦

WBCムエタイ日本スーパーウェルター級チャンピオン.匡志YAMATO (大和/1993.1.29愛知県出身/ 72.25kg)28戦16勝(9KO)10敗2分 
        VS
雄也(MY/29歳/ 72.1kg)9戦2勝(2KO)7敗
勝者:匡志YAMATO / TKO 3ラウンド 1分48秒 /
主審:宮沢誠 

匡志がローキック中心の前進。更にパンチ連打で攻勢を強めていく。第2ラウンドも蹴りで雄也をコーナーに追い詰めローキックでノックダウンを奪う。更にパンチ連打で二度目のノックダウンを奪う圧倒の展開。

第3ラウンド、匡志が追ってローキックからコーナーに詰めて右ストレートでノックダウンを奪う。雄也は蹴りで反撃も疲労困憊。更に右ストレートで通算4度目のノックダウンを奪うとノーカウントのレフェリーストップとなって匡志が圧勝となった。

匡志は対戦相手(他団体チャンピオン予定)が変更された経緯もあって、雄也戦となったことに感謝の言葉を述べて、次回には他団体チャンピオンやタイ選手など強い相手を要望していた。

◆第5試合 51.5kg契約3回戦 

S-1世界フライ級チャンピオン.優心(京都野口/2002.5.28京都府出身/ 51.05kg)
17戦7勝7敗3分 
      VS
NJKFフライ級チャンピオン.西田光汰(西田/2001.2.13愛知県出身/ 51.4kg)
12戦8勝(1KO)3敗1分 
勝者:西田光汰 / 判定0-2
主審:多賀谷敏朗
副審:少白竜28-28. 宮沢28-29. 児島28-29

優心は首相撲や蹴りとパンチのコンビネーションでやや優る流れが続いた。第3ラウンドには西田光汰の右ストレートで優心がバランス崩してスリップダウンし、更に似た流れながら西田の右ストレートでスリップ気味に尻もちをつくと、レフェリーはノックダウンと見極めた。

西田光汰の右ストレートが優心にヒット、ノックダウンに至る兆しはあったか

ノックダウンではないとアピールする優心だったが、覆らぬことは分かる様子で素直に受け入れ、再開後に反撃も巻き返すには時間は少なく終了し、西田がポイント的には逆転する判定勝利となった。

“フラッシュダウン”の後の両者のアクション、レフェリーは毅然と対処した

◆第4試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級3位.髙木雅巳(誠至会/ 50.55kg)12戦7勝(5KO)5敗
        VS
NJKFフライ級4位.永井雷智(VALLELY/ 50.8kg)7戦6勝(4KO)1分
勝者:永井雷智 / 負傷判定0-3 / テクニカルデジション 2ラウンド 1分8秒
主審:中山宏美
副審:少白竜19-20. 多賀谷18-20. 児島18-20 

永井雷智がパンチ中心にやや優勢気味に進めたが、第2ラウンドに髙木雅巳の股間ローブローを受けた永井雷智がダメージを負って立ち上がれず試合終了。偶然のアクシデントによる負傷判定となって永井雷智が望まぬ展開ながらも勝利した。

◆第3試合 スーパーフェザー級3回戦

NJKFスーパーフェザー級6位.匠(KING/ 58.5kg)9戦6勝(2KO)2敗1分
      VS
豪(GRATINESS/ 58.65kg)6戦4勝(3KO)2敗 
勝者:豪 / TKO 3ラウンド 1分21秒 /
主審:宮沢誠

第2ラウンドに豪が接近戦でのパンチでノックダウンを奪い、ヒジ打ちで匠の右瞼をカットし、第3ラウンドにも豪がヒジ打ちで匠の左目尻もカットし、流血が酷くドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。

豪(左)のヒジ打ちで流血しながら戦う匠(右)

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

Ryu(クローバー/1990.1.14茨城県出身/ 60.9→60.65kg)1.68kgオーバー、計量失格、グローブハンデ、減点2
7戦3勝(2KO)3敗1分
      VS
細川裕人(VALLELY/ 58.75kg)8戦4勝3敗1分
勝者:細川裕人 / 判定0-3 (25-30. 25-30. 26-30. Ryuに減点2が加算)

前進して蹴る勢いはあるRyuだったが、細川裕人がパンチからヒザ蹴りで応戦。ボディーを徹底的に狙った細川裕人が大差の判定勝ち。

◆プロ第1試合 60.5kg契約3回戦

高橋優(CORE/ 60.4kg)1戦1勝(1KO)
     VS
井岡巧(E.S.G/ 60.25kg)1戦1敗
勝者:高橋優 / TKO 2ラウンド 1分59秒 /

高橋のボディー蹴りで井岡巧が2度目のノックダウンでカウント中のレフェリーストップ

◆アマチュア2. オープニングファイトEXPLOSION U15 -60kg 級2回戦(90秒制)

佐藤陽平(第4代EXPLOSION60kg級覇者/TAKEDA/ 59.65kg)
     VS
田中豪 (VALLELY/ 60.0kg)
勝者:佐藤陽平 / 判定3-0 (20-18. 20-19. 20-18)

◆アマチュア1. オープニングファイトEXPLOSION U15 -45kg 級2回戦(90秒制)

堀口遥輝(TAKEDA/ 43.7kg)vs吏佐(ポンムエタイ/ 44.05kg)
勝者:吏佐 / 判定0-3 (17-20. 17-20. 17-20)

《取材戦記》

大田拓真は順当に金子貴幸を圧倒するKO勝利で初防衛。更なる上位王座を目指すことにはファンや陣営、NJKF運営関係者も新たな展開に期待したいところでしょう。
敗れた金子貴幸には戦前、もし番狂わせが起こったら。ここから金子貴幸の新たなドラマが生まれればという想定も出来ましたが、そこには至らずも、大田拓真に向かって行った闘志は、撥ね返されても悔いの残らない戦いだったでしょう。

この試合、レフェリーが止めた訳でもない不自然な試合終了だったので、試合後にレフェリーや運営部に尋ねたところが、全ラウンドを通じて5ノックダウン制だったらしく、WBCムエタイルールに倣ったという、そういった細かいルールは改訂する毎に発表する必要があるでしょう。NJKFはそんな曖昧さが少ないしっかりした団体です。今後の厳格な運営にも期待です。

吉田凛汰朗は僅差判定勝利の初防衛。2年前に敗れている老獪なテクニックの健太に雪辱出来るか、年齢や吉田の成長度で健太を圧倒しなければならないといった見所がありましたが、健太に呑まれた流れの微妙な結果と「パンチ貰っちゃいました!」と苦戦の反省もしていました。まずは“防衛してこそ真のチャンピオン” を果たして、更なる防衛か上位王座へ一歩前進でしょう。

優心にノックダウン奪って判定勝利した西田光汰は、第3ラウンドに西田の右ストレートによる優心のスリップ気味のフラッシュダウンではあったが、ノックダウン扱いとなったのは、軽くてもパンチを受けた上、尻もちダウンが2度目だったことが窺えました。要は同じパターンで尻餅ついては不利な流れとなったかもしれないことでしたが、他者の意見では「あれはノックダウンではないだろう」という意見も聞かれました。また、タイムストップはせず、ラウンド終了後に審判団で審議することも可能でしょう。

女子のSAHOは攻勢を維持し内容的には大差の展開でしたが、チャンピオンとして圧倒出来なかった、KO出来なかった悔しさはあったでしょう。試合内容に納得していないというSAHOはマイクで「また強くなって帰って来ます」とコメントを残しました。

次回、NJKF CHAKKENGER.8は4月27日(日)に後楽園ホールで開催です。バンタム級とスーパーバンタム級で各4名参加のトーナメントが発表されています。詳細はまた次回に。決勝は6月8日予定です。

他、3月16日(日)に女子ミネルヴァ興行、「GODDESS OF VICTORY Ⅲ」がGENスポーツパレスで開催。同じく3月16日、大阪で誠至会興行、4月20日(日)岡山県で拳之会興行が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年3月号