江幡睦の挑戦を受けるバンタム級チャンピオン、サオトーのインタビュー!

サオトー・シットシェフブンタム(撮影:山本有佐)

江幡睦が、10月20日(日)の後楽園ホールで開催される新日本キックボクシング協会MAGNUM.51に於いて、タイ国ラジャダムナンスタジアム・バンタム級王座へ4年半ぶり4度目の挑戦が予定されています。

現・チャンピオンは、サオトー・シットシェフブンタム(Saotho Sitchefboonthum)で、今年1月23日に当時のチャンピオン、ゴーンサック・ソー・サータラーに判定勝ちして王座獲得してから、現在まで6連勝中。6月27日にはゴーンサックにヒジ打ちでTKO勝利し返り討ち。江幡睦戦が2度目の防衛戦となります。

サオトー・シットシェフブンタム 
1997年8月16日、バンコク出身(22歳)
現・ラジャダムナンスタジアム・バンタム級チャンピオン 
約120戦をこなし80ほどの勝利(約10のKO)

噂の範疇ですが、サオトーは幼い頃、家が凄く貧乏な暮らしだったという。現在は経済発展著しいタイ国ではあるが、貧富の差はより激しくなった中、そんなハングリー精神は昔からあるムエタイボクサーの本能を持っているだろう。

双子の兄は、サオエーク・シットシェフブンタム。現在、スーパーバンタム級で、元・ラジャダムナンスタジアム・スーパーフライ級チャンピオン。

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レックトレーナーのミットに打ち込むサオトー(撮影:山本有佐)

◆サオトー・シットシェフブンタムインタビュー(9月21日現地 / 聞き手:山本有佐)

── 今回初めての海外遠征で日本での試合ですが、どうですか?

サオトー 日本に行くことが嬉しいです。

── 相手のことは知っていますよね?

サオトー はい。以前、(江幡陸が)シェフブンタムジムに練習に来ていたので知っています。

── その時、相手を見てどんな感じでしたか?

サオトー さほどの印象はないですね。でも、油断だけはしないようにします。

── 特に相手の攻撃で注意することはありますか?

サオトー 全部です。特にパンチと肘です。

前蹴りで相手の動きを止めるサオトー(撮影:山本有佐)

── 首相撲でも組み合ったと思いますが、どうでしたか?

サオトー なかなか強かったです。

── サオトー選手の得意技は何ですか?

サオトー 肘打ちです(右の肘打ちのポーズ)。

── 今回は肘でKOを狙いますか?

サオトー チャンスがあれば狙いたいと思いますが、それはタイミングだと思います。

── 初めてムエタイをしたのは、いつですか?

サオトー 6歳の時、ノンタブリーでしました。

―― 通常体重はどのくらいですか?

サオトー 59キロです。118パウンドでの試合は全く問題ありません。

── 10月の日本は涼しいですが、調整は大丈夫ですか?

サオトー タイで体重は調整して行きます。前日計量なので、試合は全く問題ありません。

── 今まで一番の強敵はだれでしたか?

サオトー ノーンヨットです(2019年8月15日、判定勝ち)

── 最後に日本のファンに一言お願いいます。

サオトー 10月20日は全力で戦います!

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左がサオトー、右が兄のサオエーク(撮影:山本有佐)

サオトーのトレーナーのレック氏は、江幡陸が今年タイ遠征し、シットシェフブンタムジムで練習していたのを見ているので、しっかり対策を立て、相手を想定してシュミレーションしながらミット打ちを指導していた様子。江幡陸にとって過去最強の難敵襲来、厳しい戦いが予想されます。

双子の兄、サオエークは11月1日、「KNOCK OUT」興行に於いて、睦の弟、塁に敗れている小笠原瑛作との対戦が予定されており、江幡兄弟とサオエーク・サオトー兄弟を絡む、興味を引く対戦が増えそうな日本のリングである。
 
WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦は1991年1月10日生まれの28歳。2013年3月10日にラジャダムナンスタジアム王座初挑戦も、当時のチャンピオン、マナサック・ピンシンチャイに3-0の判定負け。同年9月16日には江幡ツインズ弟の塁とラジャダムナン王座ダブル挑戦(睦は2度目の挑戦)で、当時のチャンピオン、フォンペット・チューワタナに2-1の判定負け。3度目の挑戦は、2015年3月15日にまたもフォンペット・チューワタナに3-0の判定負けの返り討ちに遭い、ここから4年半、タイのテクニシャン相手に待ち続ける戦いの年月を送った。

長年追い続けたムエタイ最高峰の王座、特に軽量級の50kg台のフライ級からスーパーフェザー級域は、本場タイでの激戦区で、外国人が絡むことが難しい階級であり、最軽量級(105LBS)では今年、吉成名高が二大殿堂制覇を果たしたが、この激戦階級では江幡睦が歴史を変える快挙を達成したいところだろう。更には現地での防衛を果たし、弟・塁との同時チャンピオンや二大殿堂制覇など、ファンが望む終わりなきトーナメントは続くのである。

左が挑戦する江幡睦、右が塁(2018.9.2)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

IBFムエタイ世界戦、波賀宙也が接戦を制す!

波賀宙也は、圧倒は出来ず採点も際どくも、我武者羅に攻めた前進が世界王座獲得に導いた。

波賀宙也が前進強めて蹴って出る。トンサヤームは下がり気味
トンサヤームの転ばす技は冴えていた

S-1トーナメント55kg級は4名が前日計量時に、くじ引きで対戦相手が決まる方式。勝ち上がった馬渡亮太と大田拓真が次回興行で決勝戦が行なわれます。

前日の大阪・旭区民センター大ホールに於いて行なわれた誠至会主催興行で、NJKFウェルター級チャンピオン.中野椋太(誠至会)がチョ・ギョンジェ(韓国)を破り決勝進出を決め、畠山隼人は中野椋太と次回、65kg級決勝戦を争います。

鮮やかな彩りで舞うPPP

アトラクションとして歌のゲスト、川神あいさんが新曲の「愛の漂流船」と、出場選手へのエールとして「栄光の架け橋」を唄われました。

NJKFラウンドガールとして今後一年間の登場が決まった、PPP(トリプルP)の三名が披露されました。

◎NJKF 2019.3rd / 2019年9月23日(月・祝) 後楽園ホール17:00~21:15
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF、IBFムエタイ本部

◆第11試合 IBFムエタイ世界ジュニアフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.波賀宙也(立川KBA/55.3kg)
    vs
2位.トンサヤーム・ギャッソンリット(タイ/55.2kg)
勝者:波賀宙也 / 判定2-1 / 主審:ソムサック・プラサート
副審:チャッチャイ48-49. 竹村49-48. 宮本49-48

ローキックで攻める波賀宙也
組み合っても波賀宙也のヒザ蹴りが優った

トンサヤームがミドルキックやヒザ蹴りは波賀を上回るが勢いはあまり無い。組み合ってのバランスを崩して転ばす技はムエタイらしさを見せるテクニシャンぶりを発揮。

第3ラウンドに入ると押され気味だった波賀が、我武者羅に出始めた。追う波賀に下がり気味のトンサヤームは、組み合ってのヒザ蹴りは波賀が多くなっていくが、トンサヤームの蹴りが、どう採点に表れるかは分かり難い展開。

波賀のローキックや衰えぬヒザ蹴りのしつこさが堪えたか、インターバルではやや曇りがちな表情だったトンサヤーム。

四名の審判構成は主審がタイ人、副審二名が日本人、副審一名がタイ人で採点が割れる結果となり、キックボクシングとして見極めれば確かに波賀の勝利は間違いないところ、タイ人だけの審判構成だったら結果は逆になっていたかもしれない際どさだった。

下がるトンサヤームに追う波賀宙也、ローキックは効果ある蹴りだった

◆第10試合 S-1ジャパントーナメント65kg級初戦3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G/64.4kg)
    vs
WMC日本スーパーライト級チャンピオン.栄基(エイワS/64.7kg)
勝者:畠山隼人 / 判定3-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:神谷30-26. 竹村30-26. 宮本29-26

蹴りでの探り合いからパンチの距離に移っていくと畠山のパンチがヒットし、これでリズムを作った畠山。栄基は重い蹴りがあり、時折、ハイキックを繰り出し畠山の勢いを止める。

第3ラウンドには打ち合いが増すと、栄基のパンチもヒットし、相打ちも起こるほど激しくなる。栄基が打たれ気味に陥ったところで畠山の連打で栄基はノックダウンを喫する。畠山が勢い強めて出ると更にパンチで栄基をロープ際まで吹っ飛ばすようにロープダウンに繋げる。栄基は残り少ない時間でも巻き返しに出るが逆転成らず。

栄基の蹴りに合わせて右ストレートを打ち込む畠山隼人

◆第9試合 S-1ジャパントーナメント55kg級3回戦

JKAバンタム級チャンピオン.馬渡亮太(治政館/54.95kg)
vs
WMAF世界スーパーバンタム級チャンピオン.知花デビット(エイワS/54.9kg)
勝者:馬渡亮太 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:多賀谷30-28. 竹村30-28. 宮本30-28

馬渡亮太のハイキックが何度も知花デビットを捕らえた
知花デビットの負傷した額に前蹴りをヒットさせた馬渡亮太、足の裏に血が残る

蹴りの様子見から馬渡が長身で手足の長さを活かしハイキックでリズムを掴む。知花はパンチとローキックで出るが、主導権を手繰り寄せることが出来ない。

馬渡のヒジ打ち、ヒザ蹴りの圧力が増していくと、一瞬のヒジ打ちで知花の額をカットする。

ヒットを増やし、更に負傷箇所を深くしたが、2度のドクターチェックもレフェリーは続行を認め、知花は逆転を狙って打ち合いに出て行く。

第3ラウンドも馬渡の主導権は譲らぬまま進み、知花は打ち合いに出るも負傷箇所への更なる悪化は免れ終了まで攻めて出た。  

流血激しくなった知花デビットを再度ドクターチェックへ導く
打ち合う両者、知花デビットも最後まで諦めなかった

◆第8試合 S-1ジャパントーナメント55kg級3回戦

WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.大田拓真(新興ムエタイ/54.95kg)
    vs
JKIスーパーバンタム級チャンピオン.岩浪悠弥(橋本/54.9kg)
勝者:大田拓真 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:多賀谷30-29. 竹村29-28. 和田29-28

互いのパンチと蹴りの交錯が続き、第2ラウンドはやや距離が詰まるとパンチとヒザ蹴りが増える。

第3ラウンドに入って岩浪がパンチの圧力を強めるも、太田もパンチと蹴り、ヒザ蹴りのコンビネーションでややペースを上げて岩浪の手数を減らすと、太田の攻勢的印象が残った。

大田拓真の右ミドルキックが岩浪悠弥にヒット
攻めのリズムが上回っていった大田拓真
シンダムの重心はブレず、ヒザ蹴りのバランスが良かった

◆第7試合 58.0kg契約3回戦

MA日本フェザー級チャンピオン宮崎勇樹(相模原S/58.0kg)
    vs
シンダム・ゲッソンリット(タイ/57.85kg)
勝者:シンダム / 判定0-2 / 主審:宮本和俊
副審:多賀谷29-29. 神谷28-30. 和田28-30

体幹しっかりしたシンダムのバランス良い蹴り、組み合ってもヒザ蹴りが目立ち、パンチで勝負を懸ける宮崎を上回って判定勝利。

◆第6試合 63.0kg契約5回戦

NJKFライト級チャンピオン.鈴木翔也(OGUNI/62.9kg)
    vs
晃希(team S.R.K/62.65kg)
勝者:鈴木翔也 / TKO 5R 1:32 / カウント中のレフェリーストップ
主審:竹村光一

5回戦ならではの総合力が試された展開。晃希にヒジで切られた鈴木翔也のジワジワ巻き返しが活きた計3度のノックダウンを奪った逆転TKO勝利。

後半の鈴木翔也のしぶとさが活きていった
川神あいさんの歌声が響いた後楽園ホールのリング

◆第5試合 57.2kg契約3回戦

NJKFスーパーバンタム級チャンピオン.久保田雄太(新興ムエタイ/57.2kg)
    vs
J-NETWORKフェザー級チャンピオン.一仁(真樹AICHI/57.15kg)
勝者:一仁 / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:宮本27-30. 神谷28-30. 竹村28-29

◆第4試合 66.0kg契約3回戦

NJKFライト級1位.野津良太(E.S.G/65.9kg)
    vs
NJKFウェルター級10位.洋輔YAMATO(大和/65.6kg)
勝者:洋輔YAMATO / 判定0-3 / 主審:和田良覚
副審:宮本28-29. 多賀谷28-30. 竹村28-30

◆第3試合 60.0kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級3位.梅沢武彦(東京町田金子/59.85kg)
    vs
NJKFスーパーフェザー級7位.吉田凛汰朗(VERTEX/59.7kg)
勝者:梅沢武彦 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:和田30-28. 多賀谷30-27. 竹村29-28

◆第2試合 バンタム級3回戦

雨宮洸太(キング/53.35kg)vs 七海貴哉(G-1 team TAKAGI/53.2kg)
勝者:七海貴哉 / TKO 1R 2:08 / 主審:宮本和俊

◆第1試合 ライト級3回戦

慎也(ZERO/59.9kg)vs 蓮YAMATO(大和/59.9kg)
勝者:蓮YAMATO / TKO 1R 2:06 / 主審:竹村光一

決勝戦で対戦する大田拓真と馬渡亮太

《取材戦記》

新しいテーマが加わったNJKF興行。2005年のWBCのムエタイ進出に加え、IBFも2年前にムエタイ界進出し、タイで立ち上げられた世界タイトル。

S-1トーナメントはタイの大物プロモーターで長年名を馳せるソンチャイ・ラタナスワン氏が掲げるイベントで、今回の日本版が開催。この優勝者はタイでのS-1トーナメント出場やIBFムエタイ世界ランキングにランクされるなど、好待遇が得られるという。近年、いろいろなビッグイベントが立ち上げられてきましたが、いずれも3年後に存続しているか、活性化しているかが注目点でしょう。

キックボクシングとムエタイ界で世界機構は幾つも誕生してきた過去に対し、プロボクシング主要団体がムエタイ界に進出してきた近年、元からあるキックボクシングとムエタイの世界機構より優らなければ意味が無いところで、WBCやIBFブランドだけが一人歩きしている感もある中、数ある世界機構の中に埋もれてしまわないよう願いたいところです。

波賀の防衛戦は期限が9ヶ月で、「来年の6月に初防衛戦を予定しています」と言う伊藤会長(立川KBA)。IBF傘下として、プロボクシングの規定を継承し、指名試合も明確に行なって欲しいところ。強い相手と防衛していかねば王座の価値が上がらないし、波賀宙也には過酷な防衛ロードをこなしてこそ世界の頂点に立つ証となるでしょう。

次回、NJKF興行は11月30日(土)に後楽園ホールで「NJKF 2019.4th(ファイナル)」が開催、S-1 55kg級と65kg級決勝戦が5回戦で行なわれます。

PPP登場、左からKANAさん、岬愛奈さん、星紗弓さん

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私の内なるタイとムエタイ〈63〉タイで三日坊主! Part.55 藤川ジジィ再来襲!

◆人生懸けた取組み!

藤川さんは巣鴨に数日滞在した後、京都の娘さんのところへ行き、巣鴨に戻って来られてからタイへ帰られたが、またまた話題を振り撒いて行ってくれた数日間だった。

滞在目的は昨年と同様だが、テーラワーダ仏教普及に務める関係者との交流と、御自身が仏陀に惚れ込んだ想いを、私のような頭の悪い騙され易い人物?に広める活動の一環であるが、日本人各々が抱える社会問題の悩みに救いの手を差し伸べてやろうという藤川さんの残りの人生を懸けた真面目な取組みがあるのも事実であった。

巣鴨駅前付近を歩く藤川さん
巣鴨の街を歩く藤川さん

◆朝の早くから成田空港へ

6月9日(1995年)は朝早くから起きるも、眠たくて行くのやめようかと思う。しかし飯食わせに行かねば。「俺ってお金無いのに何しに行くんだろ!」と思う。

日暮里から京成電車に乗って成田空港に7時過ぎに1時間以上早く着いた。バングラディッシュ航空便で朝8時10分着と言っても到着ロビーに出てくるのは30分ぐらい後だろうとのんびり待ってたら、出てきました一際目立つ黄色い悪魔が。いや、やっぱり茶色かった。ワット・タムケーウからネイトさんとバンコクに向かわれてから4ヶ月半ぶりの再会。そんな懐かしさを持って藤川さんに近づいていくと、先に女子大学生風の美女二人が藤川さんに近づいて挨拶した。

はあ? 比丘に美女? しかしそれは出家前の藤川さんならありそうな、タイ人水商売風ではない清楚な美女。やがて藤川さんは私に気付き、「おお、お前、顔つき変わったなあ、雰囲気が前と違う、やっぱり成長したんやなあ!」と余計なお世辞から来た。

「そんな訳ないでしょ、髪は伸びたし俺は相変わらず三畳間暮らしの借金抱えた貧乏人に戻りましたよ!」とは応え、改めて「こちらの女性は?」と聞くと、以前、俗人時代にタイで会ったことがあって、昨年泊まった巣鴨のアジア文化会館のロビーのソファーに座っていたら、ここの泰日経済技術振興協会のタイ語学科に通う女子大生姉妹と偶然再会し、こんなタイの坊主の格好している驚きから話が弾んだらしい。

そしてこの縁を逃がすまいと思ったか、「今年も同じアジア文化会館に泊まるから迎えに来てくれへんか!?」と連絡していたようだ。去年は町田さんが待っていたし、「何だ、こんな段取りがあるなら俺、来なくてもよかったじゃないか、2年連続して!」と文句言うと、「まあええやろが、何人かに声掛けとけば誰か来るやろ!」相変わらず勝手な言い分である。

この女子大生姉妹も藤川さんのオモロイ話に惹かれ、食事を捧げに行ってやらねばと思ったのだろう。でも今に分かるだろう、引っ張り回される鬱陶しさを。

とにかく先に朝食をと思ったら、この姉妹、お金持ちなのか、ベンツで迎えに来て居られた。

「食事は朝昼兼用で一回でええよ!」という藤川さん。高速を走り、都内に入ってから営業しているお店を見つけどこかのレストランに入った。店内の「何だこの組み合わせは!」というような視線。親子でも兄妹でも恋人にも見えない我々4名である。食事を捧げる儀式は姉妹に任せてみた。慣れないなりにも藤川さんが広げたパープラケーン(寄進用黄色い布)の上に興味津々に食事のトレーを載せてタンブン。姉妹とオモロイ存在の藤川さんとは相性がいいようだ。

アジア文化会館前から裸足になっての出発前

◆巣鴨で剃髪

この翌日のこと、「今日は満月の前日やさかい頭剃らなイカンのやが、お前剃れるか?」と言う藤川さん。

「どこで剃るんですか? そんな場所無いでしょ、床屋でやってくれるんじゃないですか?」と言うと「ホンナラそこでええわ、行こ!」とこの巣鴨の通りにある床屋さんに入った。すると小奇麗なオバサンがやって来たところで、「ワシ、タイで坊主やっとるんやけど、戒律で女性に触れること出来んのや、男の人に頼めるけ?」

“なんか怪しいオッサン”と思ったかどうか分からないが、嫌な顔はせず、男性店員さんが出て来てくれた。店長風の気品あるオジサン。バリカンで刈った後、シェービングクリームを頭に塗って、眉毛も含めてカミソリで剃り始めた。“速い上手い”である。少々、滲む程度の出血はあったが、メンソレータムをちょいと塗ってくれて終了。ここは藤川さんが自腹で払った。

「ワシらタイの坊主は頭に虫食われるし、ワシは小さい吹き出物傷はあるから切れるのは当然や、でもあの床屋のオッサン上手いわ、剃り味がワシらと全く違う、“ジョリジョリ”やなく“スススーッ”と滑るような剃り味やった。気持ち良かったあ、さすがプロやな!」。毎月タイの寺に来て欲しそうな顔である。

床屋さんで気持ち良さそうに剃髪する藤川さん
巣鴨でサイバーツを受ける藤川さん

◆巣鴨で托鉢

更にその翌朝6時半頃、アジア文化会館に向かうと、藤川さんは托鉢に向かう準備をしていた。これは予定したものだが、これを撮影させて貰う。藤川さんの托鉢を撮影するのは2回目だな、これが日本でのことになるとは。

巣鴨の早朝の街を托鉢して、サイバーツ(寄進)に出会う確率は1パーセント未満だろう。巣鴨住民が見れば、「また頭のおかしいオッサンがおかしいことやってる」としか思わないかもしれない。

でもそんな他人の目など気にする藤川さんではない。そんな托鉢を待ち構える“ヤラセメンバー”は揃っていた。裸足になってアジア文化会館を出て、巣鴨駅周辺まで歩き、戻って来るコース。成田空港まで出迎えた女子大生姉妹の妹さんの方とその友達、そしてもう一人、タイ仏教に関心を持ち、すでにタイで一度出家経験があるオジサンが道端でサイバーツを待ち構えた。最後に私もカメラを置いてサイバーツ。

藤川さんの歩く姿はワット・タムケーウ周辺を托鉢する姿と変わらなかった。やや俯き気味でも足下気にすることなくやや早足で進む。私は道路にガラス片など危険なものが落ちていないか気になった。日本の道路は舗装はキレイだが、細かいガラス片や洗濯挟みの砕けた破片やホッチキスの針など落ちている可能性がある。

タイの道路は汚れがあったり、舗装は徹底されていなくても散乱物は少ない。それはペッブリーでの托鉢で、毎朝掃き掃除しているオジサンや手伝っている子供をよく見かけていた。托鉢する比丘の為、習慣化した配慮があるのだろう。幸い、巣鴨の道もキレイだった。

サイバーツを受ける、通行人から見れば異様な光景
道はキレイだった巣鴨の道

もう少し東南アジア系の外国人が喜んで寄って来ないかなとわずかな期待を掛けたが、このメンバー以外にサイバーツする人はいなかった。これが新大久保だったらまた違った状況になっていたかもしれない。

サイバーツされた食材は、しっかりしたお弁当風の包み。アジア文化会館ロビーに帰って皆を集めて朝食に着いた藤川さん。お得意の説法(雑談)をしながら食事を進めた。その辺が楽しめる会話ではある。

私は帰国直後の4月下旬に、得度式を撮影してくれた春原俊樹さんには電話して帰って来たことを報告し、得度式のフィルムを頂く為に、都内のタイ料理屋で再会していた。そこで、

「春原さん、6月に藤川さんが日本に来ますが、会いますか? 無理しないでね、利用されるだけだから!」と言ったが、「行く行く、オモロイから!」と再会にノリノリであった。

そしてこの托鉢した日の御昼前、昨年と同じ巣鴨駅前で待ち合わることになっていた。私の出家反省会となって、また私のこと笑って盛り上がるのだろう。私は「藤川ジジィを懲らしめる会!」を(冗談だが)立ち上げてやろうかと思うところだった。

振り返る人もいる異様な姿

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

初秋のチャンピオンカーニバル! 好ファイト続出のTITANS NEOS!

重森の前蹴りを掴んで凌ぐシラー
重森の右ミドルキックをキャッチし、パンチを打ち込むシラー

好ファイトが続出したTITANS NEOS、新メインイベンター重森陽太は苦戦を導く引分け。続くHIROYUKI、髙橋亨汰、喜多村誠、泰史も上位に繋がる結果となる勝利。いずれラジャダムナン王座を狙うリカルド・ブラボは他団体チャンピオンに痛い判定負け。

◎TITANS NEOS 26 / 9月1日(日)後楽園ホール17:00~20:35
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第11試合 61.5kg契約 5回戦

WKBA世界ライト級チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/61.2kg)
VS
シラー・ワイズディー(元・ラジャダムナン系バンタム級C/タイ/61.45kg)
引分け1-0 / 主審:椎名利一
副審:桜井48-48. 宮沢49-48. 少白竜48-48

いつもの前蹴り、ハイキックの鋭さを見せる重森は初回、すでに主導権を導く勢いがあった。しかし、シラーは怯まずローキックを中心にパンチを振って前進してくる。

時折、ボディーブローを炸裂させたシラー、重森は動じなかったが、やや効いたか
重森のしなやかなミドルキックは勝利を導く技、前半は調子良かったが・・・
時折、派手な技を繰り出す御茶目なHIROYUKI、回転後ろ蹴りを見せる

第2ラウンドには、長身の重森も更に出てくるシラーにヒジ打ちを合わせ、額(右眉上)をカットさせた。ここから逆転に勢いを増してきたシラーは重森の前蹴りやミドルキックを掴んでかわし、徐々に距離を詰めパンチを打ち込む流れに変わっていく。

度々ボディーブローも貰ってしまう重森。第4ラウンド以降、前進止まないシラーを調子付かせてしまい、結果は引分け。48-48の二者は2・3ラウンドが重森、4・5ラウンドがシラーの前蹴り対策がそのまま採点に表れていた。

◆第10試合 55.5kg契約3回戦

日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(=茂木宏幸/藤本/55.2kg)
VS
KING強介(元・レベルスムエタイ・スーパーバンタム級C/fighting bull/55.4kg)
勝者:HIROYUKI / TKO 3R 1:11 / 主審:仲俊光

パンチとローキックが軸の攻防で、KING強介の出方を伺いながら、自分の技を試すHIROYUKI。

第2ラウンドには接近したところでヒジ打ちがヒットし、強介は左目尻を小さくカット。

次のラウンドに繋ぐとパンチで出てきた強介に右ヒジ打ちを同じ箇所に当てると強介の傷が深くなり、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。

正攻法の左ミドルキックでもKING強介を圧倒したHIROYUKI

◆第9試合 67.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/66.75kg)
VS
J-NETWORKウェルター級チャンピオン.峯山竜哉(WSR・F西川口/66.85kg)
勝者:峯山竜哉 / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:椎名28-29. 宮沢28-29. 仲28-29

このクラスになると蹴りの重さが際立つ交錯。リカルドのミドルキックに対し、峯山の返す蹴りも重く、互いの攻防の中にも峯山の左ミドルキックが引き立つ勢いがあった。

第2ラウンドには接近したところで峯山の左ストレートがヒットしてリカルドがノックダウンを喫する。巻き返しに出てくるリカルドに応戦する峯山。リカルドは必死の形相でパンチや組み付いてヒザ蹴りを連打。猛攻を掛けたリカルドだったが巻き返しならず、判定負けを喫した。

リカルド・ブラボからダウンを奪い勝利した峯山竜哉

◆第8試合 61.5kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.髙橋亨汰(伊原/61.45kg)
VS
ラックチャイ・ジャルンクルンムエタイ(タイ/61.25kg)
勝者:髙橋亨汰 / 判定3-0 / 主審:少白竜         
副審:椎名29-28. 桜井29-28. 仲30-28

ラックチャイは前回、重森陽太に敗れるも前進衰えないタフさが印象付いた。高橋は前蹴りやハイキック中心に先手を打って攻める。

接近するとヒジを振って来るラックチャイには油断ならないが、ヒザ蹴りやハイキック、ヒジ打ちの応酬となっても高橋は怯まず応戦し、ラックチャイのバランスを崩し競り勝つ。

高橋の攻める手数は重森陽太に負けない勢いを見せた。

重森戦では敗れたが、タフなラックチャイを追い詰めた髙橋亨汰
ラックチャイの前進を止めた前蹴りが顔面を捉える
喜多村のヒジ打ちが連打されていく

◆第7試合 70.0kg契約3回戦

喜多村誠(前・日本ミドル級C/伊原新潟/69.8kg)
VS
LBSJウェルター級チャンピオン.喜入衆(NEXT LEVEL渋谷/69.7kg)
勝者:喜多村誠 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:桜井30-28. 少白竜29-28. 仲30-28

第1ラウンドの蹴り中心の攻防から喜多村が徐々に前進を強める。第2ラウンドにパンチの応酬で喜入は右目下を小さくカット。喜入も前進し、ヒジ打ちで圧力を掛けるも、冷静な喜多村はヒジ打ちを返していくと喜入の額の辺りも大きくカット。

第3ラウンドには喜入がラッシュを掛けてくるが、喜多村は接近すれば叩きつけるヒジ打ちで何度も喜入の前頭部を攻め込むと、喜入の額の負傷は3箇所ほどに増え、かなりの流血。

更にパンチや蹴りで圧倒する喜多村だが、諦めない喜入はスピード、パワーが鈍っても攻め返してくるが、喜多村の圧倒した展開は変わらず判定勝利した。

叩きつける喜多村のヒジ打ちの嵐
顔面の数箇所から出血した喜入衆
喜入が流血しながらバックハンドブローを打つ

◆第6試合 スーパーフライ級3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/52.1kg)
VS
老沼隆斗(レベルスムエタイ・スーパーフライ級C/STRUGGLE/52.0kg)
勝者:泰史 / KO 2R 2:57 / 主審:椎名利一

両者好戦的な蹴り合いから、老沼が先手を打って出る流れ。しかし泰史が徐々にパンチで追いはじめ、第2ラウンドにボディーブローからヒザ蹴りでノックダウンを奪うと、更にヒジ打ちを折り混ぜながら右ストレートで2度目のノックダウンを奪う。

諦めない老沼はリズムを変えたいが泰史が更に接近してパンチ連打を打ち込むと老沼は力尽きたように崩れ落ちたところで3ノックダウン。泰史のKO勝利。

老沼を追い込んだ泰史のパンチ

◆第5試合 フェザー級3回戦

日本フェザー級2位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/56.75kg)
VS
NJKFフェザー級7位.小田武司(拳乃会/57.0kg)
勝者:瀬戸口勝也 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-26. 少白竜29-26. 宮沢30-26

第1ラウンドに小田がローキックで出るも、瀬戸口が得意の重いパンチ連打が圧倒し、2度のノックダウンを奪うが、ノックアウトには至らず。第2ラウンド以降も小田は打たれながら打ち返す踏ん張りも目立ったが逆転には至らず、瀬戸口の大差判定勝利となった。

◆第4試合 ミドル級3回戦

日本ミドル級1位.本田聖典(伊原新潟/72.4kg)
VS
ポーンパノム・ペットプームムエタイ(タイ/70.45kg)
(プーケット県パトンスタジアム・ウェルター級C)
勝者:ポーンパノム / TKO 3R 0:39 / 主審:桜井一秀

◆第3試合 フライ級3回戦

日本フライ級2位.空龍(伊原新潟/50.6kg)vs阿部秀虎(鷹虎/49.85kg)
勝者:空龍 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-27. 仲30-28. 桜井30-27

◆第2試合 フェザー級3回戦

日本フェザー級6位.平塚一郎(トーエル/56.9kg)
VS
JKIフェザー級8位.千羽裕樹(スクランブル渋谷/56.95kg)
勝者:千羽裕樹 / TKO 3R 1:21 / 主審:宮沢誠

◆第1試合 70.0kg契約3回戦

大久和輝(伊原/69.75kg)vs NJKFウェルター級3位.JUN Da雷音(E.S.G/68.25kg)
勝者:大久和輝 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:少白竜29-27. 29-28. 30-26

《取材戦記》

「初秋のチャンピオンカーニバル」というサブタイトル。日本のキックボクシング界、どこに行ってもチャンピオンだらけのカーニバルという印象があるが、この日のマッチメイクに於いても激しい戦いが続きました。

重森陽太にとっては後半追われての引分けは悔しい結果。「どんな強い選手でも必ずKO勝ちをして興行を締めなければならないという使命感はありました。このような結果になってしまったのはまだまだ不甲斐ないと思っています。次は必ず結果を残したいと思います」とマイクで語った重森陽太。結果を残す次なる強豪相手は誰になるか、プロモーター次第だが、できればWKBA王座を、防衛期限を待たずにこなしていって欲しいと願うところ。これは全ての現・チャンピオンに言えることで、これが老舗王座の価値を高めることでしょう。

次回新日本キックボクシング協会興行は、10月20日(日)に後楽園ホールに於いてMAGNUM.51が開催。勝次(=高橋勝治)が一階級上げて、WKBA世界スーパーライト級王座決定戦に出場。対戦相手はリカルド・ブラボと同じアルゼンチン出身のアニバル・シアンシアルー選手に決定した模様。

3月3日のWKBA世界ライト級王座決定戦でノラシン・シットムアンシーに敗れ、4月20日のREBELS興行での宮越慶二郎にも敗れて2連敗中の中、次戦で結果を残せるか。そしてその先を視野に期待したいものです。

メインイベントは当初の予定どおり、江幡睦がタイ国ラジャダムナンスタジアム・バンタム級王座に4年ぶり4度目の挑戦。チャンピオンのサオトー・シット・シェフブンタムは1月23日に当時のチャンピオン、ゴーンサック・ソーサタラーから判定で王座奪取し、6月27日にはゴーンサックを3ラウンドTKO勝利で返り討ちにし、現在6連勝中で、江幡睦戦は2度目の防衛戦となります。

江幡睦にとって過去最強の難敵襲来のかなり厳しい予想となるも、“どんな技でも倒せる”という勢いで、“今度こそ奪取”の期待も高まる江幡睦です。

今回のサオトーは双子の弟で、兄は現在スーパーバンタム級のサオエークで、元・ラジャダムナン系スーパーフライ級チャンピオンの実力者。この先、江幡ツインズとサオエーク・サオトーツインズのタイトル絡みの対決も期待されます。

塁が戴冠の「KNOCK OUT」ベルトとWKBAのベルトを持つ江幡ツインズ、ラジャダムナン王座へ向けた二人の挑戦が続く

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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WBCムエタイジュニアリーグ開催、優勝者決定! MVPはU15の山口瑠選手!

小学校低学年31kg未満 宮崎遼二vs稲田滉大
MVP 山口瑠

8月24日(土)豊島区立雑司が谷体育館にて開催されました、『WBCムエタイジュニアリーグ第5回全U15、第4回U18全国大会』の全19階級の王者が決定。

熱戦を繰り広げた選手の中から、最優秀選手(MVP)にはU15中学生50kg未満で優勝した山口瑠選手が獲得し、タイ国政府観光庁より3泊4日バンコク観光・ムエタイ観戦ツアーが贈呈。他に敢闘賞、各クラス1名計4名、フェアプレー賞各クラス1名計4名が受賞。

◎WBCムエタイジュニアリーグ第5回全国大会 / 8月24日(土)12:00~
会場:豊島区立雑司が谷体育館
主催:WBCムエタイジュニアリーグ実行委員会

◆WBCムエタイジュニアリーグ、第5回U15、第4回U18全国大会決勝

◆U15 小学校低学年(3年生、4年生)

25kg未満決勝   ×中森琉海vs駒木根稔和○

28kg未満準決勝  ○小野琥大vs大出琥太郎×
     決勝  ○中山幸亮vs小野琥大×

31kg未満準決勝  ×戸部汐汰vs稲田滉大○
     決勝  ○宮崎遼二vs稲田滉大×

34kg未満決勝   ×高山翔星vs大矢凉夏○

小学校高学年31kg未満 竹中悠獅vs大久保世璃

◆U15 小学校高学年(5年生、6年生)

28kg未満決勝   ×松本来人vs島田晋作○

31kg未満準決勝  ○大久保世璃vs上窪聖 ×
     決勝  ×竹中悠獅vs大久保世璃○

34kg未満準決勝  ×細美樹斗vs曽我昴史○
         ○小林栄絢vs沖井朔斗×

     決勝  ○曽我昴史vs小林栄絢×

37kg未満     ×鈴木咲耶vs竹内征汰○
     決勝  ×岩本慎vs竹内征汰○

40kg未満準決勝  ×成尾歩斗vs高橋ルキヤ○
         ×志賀野真人vs宮里阿連○
      決勝  ○高橋ルキヤvs宮里阿連×

45㎏未満優勝   生田瑠玖

小学校低学年28kg未満 中山幸亮vs小野琥大
中学生37kg未満 比嘉暖人vs藤井昴
中学生50kg未満 山口瑠vs坂本嵐

◆U15 中学生

34kg未満準決勝  ○小佐野航vs辻畑元気×
         ○桜井嵐vs清水龍月×
     決勝 ○小佐野航vs桜井嵐×

37kg未満準決勝  ○比嘉暖人vs岡林昊×
         ×杉浦輝vs藤井昴○
決勝 ×比嘉暖人vs藤井昴○ 

40kg未満準決勝  ×井上大和vs酒寄珠玲葵○
決勝 ×長洲優人vs酒寄珠玲葵○

45kg未満準々決勝 ○大久保琉唯vs前田大尊×
          ×安野竜信vs林裕人○

      準決勝 ○大久保琉唯vs林裕人×
          ○下地絃斗vs佐藤勇波×
       決勝 ×下地絃人vs大久保琉唯○

50㎏未満準々決勝  ×浦田拓真vs山口瑠○
      準決勝 ×齋藤龍之介vs山口瑠○
          ○坂本嵐vs下地奏人×
      決勝  ○山口瑠vs坂本嵐×

中学生55kg未満 小林亜維二vs上田咲也
高校生57kg以下 田中大翔vs山内歩希

55kg未満準決勝  ○小林亜維二vs片原樹×
         ×桜井竜馬vs上田咲也○
     決勝  ○小林亜維二vs上田咲也×

60kg未満決勝   ○川崎海宗vs左近颯大×

◆U18 高校生

52kg以下準々決勝 ×谷川瑠太vs阿部温羽○
     準決勝 ○若原聖vs阿部温羽×
         ×酒寄珠璃vs加藤真○
      決勝  ×若原聖vs加藤真○

57kg以下準決勝  ○田中大翔vs松岡優太×
         ×横山太一郎vs山内歩希○
     決勝   ○田中大翔vs山内歩希×

高校生52kg以下 若原聖vs加藤真

《各表彰者》

MVP
山口瑠(拳心會館)中学生50kg未満

敢闘賞
宮崎遼二(日本空手道 拳竜会)小学校低学年31kg
高橋ルキヤ(日本空手道 拳竜会)小学校高学年40kg未満
藤井昴(治政館 江戸川道場)中学生37kg未満
加藤真(魁塾)高校生52kg以下

敢闘賞=左から高橋ルキヤ、宮崎遼二、加藤真、藤井昴

フェアプレー賞
中山幸亮(team AKATSUKI)小学校低学年28kg未満
大久保世璃(K-1GYM WOLF)小学校高学年31kg未満
小林亜維二(新興ムエタイ)中学校55kg未満
田中大翔(不死鳥)高校生57kg以下

フェアプレイ賞=小林亜維二、中山幸亮、大久保世璃、田中大翔

《取材戦記》

幼少期から始まる戦いと、35歳から始まるオヤジファイトやキックなど、幅広い選択肢のある時代です。

今回のイベントは、プロのリングに立つ前の、ジュニアキックの全国大会。他のアマチュアジュニア大会で、10年前から始まったWINDY SuperFightでは、那須川天心や吉成名高が活躍し、プロ入り後、十代のうちからメインイベンターとなり、ムエタイ殿堂王座や世界のトップクラスの王座を獲得するなどの活躍の裏には、幼少期からキック・ムエタイに馴染む戦いの場があったことに由来します。

WBCムエタイ日本傘下に於いては2015年から始まったU15大会、翌年はU18も開催、ここから近い将来のプロでのメインイベンターの出現が期待されます。

判定結果が下される前、とりあえず勝ちをアピールする者。勝者コールの瞬間、歓喜の雄叫びを上げる者。接戦の末、勝者となって驚く者。負けて泣いてリングを降りる者。プロでも見られる喜怒哀楽が、このジュニアたちにも表れる人間模様でした。しかしこのジュニアたちはまだ十代でのアマチュア段階。ここで挫けることなく、負けることも重要な糧として、また鍛え直されることでしょう。

表彰選手と役員集合

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私の内なるタイとムエタイ〈62〉タイで三日坊主! Part.54 最後の波乱!

◆ムエタイ選手の事故

やがて日本へ帰る日も近くなった頃、タイの正月に当たる4月中旬のソンクラーン祭(水掛け祭り)に入る前、選手たちは田舎へ帰る者が多かった。このアナンさんのジムは御夫婦ともタイ南部のスラータニー県出身で、その縁から選手も南部出身者が多いが、そんな頃、アナンさんが「オーム、ターイレーオ!」と言ってきた。

スラータニー県に帰る選手らのトラックバスが事故を起こし、15歳ほどの有望な選手、オームくんが転覆したトラックの荷台から投げ出され頭部を打って亡くなったという。ジムの練習やアナンさん宅で立嶋アッシーと話していた姿を思い出すと、やっぱり可哀想な運命だった。これは誰にでも起こり得る現象が刻々と流れる時間の中で起きたこと。

左から3番目、小柄な赤いトランクスがオーム(ニックネーム)くん。おとなしく優しい選手だった。一番左がアナンさん。1993年の撮影なので事故から2年ほど前です
御神輿に乗ったように担がれ、寺に向かう出家者

オームくんは田舎でソンクラーン祭を楽しんで来るつもりだったろう。そしてまた苦しくもムエタイとの戦いに励む。そんな日々がやってくるはずだった。それが突然、人生を打ち切られるのだ。何が因でなぜ果に繋がったのだろう。どこかでちょっとでもタイミングがずれていれば事故など起きなかったか、命は助かったろうに。

そんな感情とは裏腹に「うわっ、俺のせい?」とも思った。黄衣を持ち帰った祟りか。そんなことを指摘されるかと思ったが、アナンさんらは一切そんなことは言わなかった。それは遠慮している空気ではない。元から関連は無いというタイ人思考なのだろう。散々不愉快な思いをさせたのに。

◆続く不吉な出来事

ソンクラーンも過ぎて数日後、チャンリットさんに預けっぱなしの黄衣を放っておくわけにはいかない。帰国に合わせて日本へ送る為、チャンリットさん宅を訪れた。この空港近くの地域に来るとホッとするなあ。初めてタイに来た頃のチャイバダンジムがある馴染んだ土地だし。

出会って間もなく、チャンリットさんは「妻が入院した!」と言う。何、またか。また私のせいで不吉な思いをさせてしまったか。不浄な黄衣はそんな魔力があるのか、「それって、黄衣預かってくれたせい?」なんて聞いてみると、「ハッハッハッハ!関係無いよ。気にするな。前から調子悪かったんだ!」

しかし何でこんなことが続けて起こるのか。単なる偶然にしても何が因で事故や病気の果になるのだろうか。チャンリットさんの奥さんは気管支炎のようで、幸い病状は軽い様子だった。

そんな不浄な黄衣類はチャンリットさんに手伝って貰い、郵便局で貰った箱に詰め、そのまま練馬のお祖母ちゃん家へ自分宛に航空便で送った。その先の祟りは自分が被ろう。

寺に到着
黄衣を授けられる出家者
長老が多いお寺で和尚さんより黄衣を授けられる

◆最後の儀式

チャンリットさんから新たに「近所の知人の友達が、アントーン県で出家するんだが、その得度式に一緒に行かないか、ハルキも知ってる人だよ!」と誘われて、ほんの2日後、1泊2日で前日の出家祝いパーティーから参加させて貰うことにした。

出家志願者は私の以前の彼女の弟だった。タイ滞在の最後に大波乱である。経緯は省くが、気心知れた一家との再会。これも仏陀の導く縁。ここで徳を積んで修行の足りない自分の厄払いをしておこう。

出家の前夜に行なう大宴会。藤川さんも再出家の際は盛大にやって、ビール大瓶5~6本飲んだとか。最後の晩餐だったのだろう。私の場合はタイに親族はいないし、極秘でやりたかったから前夜祭は無しだった。ネイトさんも外国人として突然の出家で、そんな余裕は無かった。

そんな過去を思い出しながら、高床式の家が建つ部落に着くと、こんな盛大にやるのかと思うほどのスピーカーが置かれ、ディスコになるほどの音楽が掛かるドンチャン騒ぎ。お金の掛かる一大事業に、参列者へは出家に肖る徳を得られる機会を与えるのだろう。

出家祝い前夜祭、藤川さんもこんな前夜だったろう

深夜まで騒ぎは続き、部落の各家に大勢が板の間のスペースに泊まり、朝方には陽も昇らぬ暗いうちから大音響の音楽が周囲に鳴り響いた。誰か酔った勢いのイタズラかと思ったが、“寺に向かう準備せよ”という目覚ましだったようだ。出家者は二人で、剃髪は前夜祭の前に終っていたが、白い衣を纏い、二人はそれぞれが仲間に肩車され、親族が囲こみ、列を成して寺に向かった。過去に見た得度式の流れ。寺や地域、寄進によってやり方は違うが、彼らは自分で問答に応え、口移し無しで立派にやり終えた。聞けば出家は7日間だけで、すぐ還俗すると言う。勿体無いなあ。グルークチャイのような試合が迫っている訳でも無いだろうに。

得度式が始まる前までは彼らの傍らに彼女らしき綺麗な女性が付き添っていたから、結婚を控えて、男として一人前になる為の終えておかねばならない成人式のような儀式だったのだろう。彼らの未来が前途洋々であることを願った。

出家が認められ、黄衣に替わり、更なる戒律の問答へ
二人並んでの誓いの言葉

◆旅の終わりに

帰国の日、アナンさんは「またタイに来たらウチに泊まれよ、近いうち新しくジム建てるからな!」と言ってくれた。不愉快な思いをさせたことや長く居候したことなど関係なく、また泊めてくれる気遣いには感謝するのみ。日本から来た選手や私など、毎度空港まで見送ってくれるアナンさん。温かい見送りだった。

帰国は問題なく、送った黄衣以外の蚊帳用傘とバーツ(お鉢)も持って成田空港入国審査も通過。

練馬への帰り道も、タイへ向かう日の朝を思い出した。通り掛かる都立家政駅前商店街の風景も変わらず、比丘として体調崩しながらラオスからノンカイに戻った時も、この道を思い浮かべたのだ。後は何とかここまで帰れると。苦しかったなあ。不安だったなあ。でもここに帰って来れてよかった。そんな想いを持って、お祖母ちゃんのアパートに到着。早速怒られた。

「長いことどこに行っとったんや!」と。家族として一緒に生活していた訳ではないが、タダで泊めて貰っていた上に借金しての旅だったから怒られることは仕方無い。

「金返せ!」とは一度も言われないが(言う人ではないが)、ガタガタ(だらしないと)言われないよう早く返そうと思う。

そして、自分宛に送った航空便はしっかり封を開けられていた。「腐るモンでも入っとったらイカンと思うて!」と言うお祖母ちゃん。同居する叔母が「腐ろうがどうなろうが人の物開けるもんじゃないでしょ!」と怒っていたが、私も「日数掛かるのに腐りやすい物など入れる訳ないだろうよ、それより祟りがあるぞ!」と思ったが、何も言い返さなかった。でも黄衣を見ても、ただの黄色い布切れとしか思わなかったようだ。

◆お礼参り

また戻った荷物ギッシリの三畳間暮らし。そんなある日、藤川さんから手紙が届く。本当に頼みもしないのにやって来るようだ。またセコくバングラディッシュ航空便で6月9日(1995年)朝8時10分成田空港着。春原さんにも連絡したらしく、「春原さんを巻き込まないでくれよ!」と思う。

放っておいてやろうかとも思うが、でも朝早くに成田空港に着いたら腹が減っているだろう。前日の昼過ぎ以降は何も食べていないのだ。私も腹が減っても勝手に飯を食えない苦しさは経験したし、昨年は出家への“お願い参り”としてお世話したが、本当にお世話になったことだし、やっぱり“お礼参り”に行ってやろうかな。

飯を食わせに行かねば。そんな心遣いから当日は朝5時に起きて向かうことにした。手紙を読みながら狭いアパートの三畳間に暮らし、引越しも企てる5月末のある日だった。

得度証明書が授けられた出家者

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私の内なるタイとムエタイ〈61〉タイで三日坊主! Part.53 想い出の地と藤川さんからの手紙

ニーモンに出掛ける比丘達が用意されたトゥクトゥクで向かう

◆最後のワット・ミーチャイ・ター

ビエンチャンからノンカイに戻るとナンマラタナさんと一緒に再びワット・ミーチャイ・ターの門を潜った。もう慣れた寺の雰囲気。堂々と入って行くと、クティの玄関前を掃いていたバーレーくんと出くわした。「オッ、来たか!」と早速私のカメラバッグを奪って以前の倉庫部屋へ運ばれてしまう。

「オイ、精密機械だからソッと持て!」と言う間も無く、それよりも「2階の和尚さんの部屋がいいんだが」と言う前に、バーレーくんは「和尚さんは留守で今日は帰らないよ」と言う。それは仕方無いが、まあ倉庫部屋でも問題は無い。ナンマラタナさんは「明日の朝出発してバンコクに帰る」と言い、ノンカイ駅へ列車の切符を買いに出掛けた。

ここではバーレーくんが、はしゃいで「ペン回しが出来るようになったぞ!」とやって見せる。以前、英語を教えていたネイトさんが何気なく右手で指を弾いて手の甲でペンを1回転させて再び持つ、単純な遊びだが、「オオ、何だそれ、どうやってるんだ!」と興味津々だったバーレーくん。ほんの3分ほどでコツを掴みつつあったが、探究心があり、「こいつは覚えるの早いぞ」と思ったし、「学校で自慢するだろうなあ」とも思っていた。若いキーリーという比丘やネーン達も興味津々に加わって来て賑やかなもんだ。今やバーレーくんが先生だ。私はこれより10年前に職場で教わったが、不器用で何年経っても出来ない。

キーリーくんの部屋。大人しいが明るく真面目な比丘だった
三輪自転車で出掛けるキーリーくん

翌朝、ナンマラタナさんは、予定通り、皆が托鉢に行っている間に早々とバンコクへ向けて引き上げて行かれた。ワット・チェンウェーで出会ってからずっと見て来たが、物静かで藤川さんのような高笑いもせず、修行僧と言うに相応しい比丘だった。

そこへ入れ替わるようにプラマート和尚さんが帰って来た。再びワイをして「もう少しだけここに居させてください」とお願いするとそこは問題無く了承して頂いた。

ここでも最後に尋ねてみた一番候補のこの寺での再出家の可能性。
やる訳にはいかない立場とは思うもこの問い掛けに、
「再出家は出来るよ。還俗も出来るよ。でももっとタイ語を勉強してからにしなさい。」

優しい言い方で、唯一許可してくれた比丘であるプラマート和尚さんではあったが、遠回しには好ましくないから諦めさせようとするニュアンスが含まれている対応であったかとは感じられた。

市場で出会ったTシャツ屋の兄ちゃんに住所を書いて貰う

◆想い出の地

旅の最後の想い出に、一人でノンカイの街を歩き市場にも出掛けると、屋台ではオバチャンが「美味しいか? 美味しかったらまたおいで!」と声掛けてくれたり、サパーンミタパープの近くでTシャツ屋をやっているという、ちょっと怪しい雰囲気の兄ちゃん2人に、「一緒に飯食おうよ!」と勧められてテーブルについてみた。「心のいい日本人に会ったことがある」という彼らが奢ってくれたが、彼らも心のいい奴らだった。私も心いい人で居て、心いいタイ人に繋がなければと思う。こんな人達ばかりではないけれど。

バンコクでもこういう屋台では何度も訪れると、声掛けられたことがよくあった。こんな地元の人との触れ合いが楽しい。そんな和気藹々とした中、メコン河から見える対岸のラオスを眺めていると、ビエンチャンの街が思い出される。また行きたいな。来年また行こうかな。寺の皆や信者さんの綺麗なお姉さんに会いに。オカマのオジサンは要らんが。

そんな想いに耽りながら、今はもう比丘ではない。藤川さんもいない。修行の成果は何も無いが、髪も伸びたし、そろそろ社会復帰しようと思う時期に来ていた。

ビエンチャンの街、古い車、自転車の庶民

◆藤川さんへ御礼の手紙を書く

三日ほど滞在した後、夜行列車でバンコクに帰ると、アナンさんに「何だ、再出家しなかったのか?」とからかわれた。「お願いして歩いたけど、まずタイ語覚えなさいって、やるのは無理だったよ!」と笑ってやり過ごす。

でも将来的には藤川さんと同じ道を歩むかもしれない。そんな気持ちが少しは沸いてきたノンカイ・ビエンチャンの再訪問だった。

そして数日後、ネイトさんとカンボジアに行った藤川さんは、おそらくもうワット・タムケーウに帰っているだろうと思う3月下旬、手紙を書いてみた。

出家に誘ってくれたこと、ラオスまで旅できたこと、無事に還俗できたこと、修行とは言えぬ日々でムカつく日々でもあったが、いろいろ忠告してくれたこと、感謝の気持ちを書き、宛名だけ貶して「ジジイへ」と書いた。

もう会うことも無いだろうが、最後のけじめの礼状をポストに投函した。返事など来ないだろう。私も頼りない出家で藤川さんから見れば失望したろうし、今後もネイトさんみたいな弟子が現れたら受け入れて旅すればいい。私のことはやがて忘れるだろう。

コンビニエンスストア(?)が立ち並ぶビエンチャンの街
メコン河沿いの道、今も歩いてみたくなる

◆次の悪企みか!

そのわずか4日後、アナンさんが持って来てくれたのは藤川さんからの手紙だった。返事が来るとは驚いた。しかもこんな早く。嫌な予感がしたが、封を開けて、以前のとおり“字が下手だから”とタイプライターで打ってある、それでも誤字だらけで所々手書きの下手糞な文字が入っている手紙を開いてみると、「ジジイで悪かったなあ。まだ居ったんけえ~」と拍子抜けする笑える出だし。

そして以前のように朗らかな内容の中にも、「出家したことは、春樹の生涯の良い経験としていつまでも心に残ると思うよ。そしていつかあの経験が役に立つ時があると思う。やっぱり出家のチャンスを与えてくれたこの寺や、和尚、サイバーツして下さった皆さんに感謝する必要があると思うけど、幾らお金を積んでもチャンスが無ければ出家はそう簡単には出来ないと思う。そう考えればこの寺で出家したのも何かの縁。仏陀の言われる『この世の総ての現象には必ず因があり、それが何かの縁により、果となる。因なしに、また縁なしに果のあるものは絶対にない』ということだと思う。人がやらない経験をしたんやから、ここから更に自信を持って仕事を増やして行けや。またいい結果に繋がるぞ。」との励ましには愛情すら感じ、そんな文章の最後には、「6月に日本へ行くからまた面倒見てや!」

はあ? 人を散々貶しておいて勝手なこと言いやがって。また俺を利用しようという魂胆見え見え。誰がまたあんな遠い成田空港まで迎えに行くものか。東京に来たって誰も面倒見てくれる人は居ないだろう。ザマアミロ!と手紙は破って捨てたいところだが、相手が藤川ジジィだろうと可愛い女の子だろうと私は貰ったものは捨てない性格なのであった。

さて、ムエタイ選手の日本招聘手続き等があって滞在が長引き、4月半ばのタイの正月、ソンクラーン祭(水掛け祭り)が終わったら本当に帰国しようと思うが、その前にチャンリットさんに預けっぱなしの黄衣を何とかしなければならない。そして何の因果かソンクラーンに向けて、ある可愛そうな事故が起きてしまうのだった。

メコン河沿いでカメラを向けると恥ずかしがったビエンチャンの学生達

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

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上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

波乱の幕開け、ジャパンキックボクシング協会、石川直樹は倒される!

5月12日のジャパンキックボクシング協会プレ旗揚げ興行に続いて、正式旗揚げ興行が開催。お笑いトリオのジャングルポケットの太田博久さん、斉藤慎二さんのお二人がリングアナで登場。

ジャパンキック協会設立御挨拶は武田幸三氏、ドスの効いた力強い声が響いた

◎KICK ORIGIN / 2019年8月4日(日)後楽園ホール 17:00~21:05
主催:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第12試合 メインイベント 52.5kg契約 5回戦

石川直樹の左ヒジ打ちはかすった程度、カウンターで大崎孔稀の左フックがヒット

JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/32歳/52.15 kg)
   VS
WMC日本スーパーフライ級チャンピオン.大崎孔稀(OISHI/19歳/52.5kg)
勝者:大崎孔稀 / TKO 3R 1:22 / 主審:仲俊光

大崎孔稀の実兄・一貴は、ルンピニースタジアム王座にも挑戦した経験を持ち、兄弟揃ってムエタイ技術を持つテクニシャンで、石川直樹は大崎孔稀との首相撲争いが注目されていた。

序盤、大崎が強い前蹴りで石川を突き放し転ばす。石川の返しの前蹴りはやや浅く、大崎の距離の取り方が上手い。石川は大崎のリズムに付き合ってしまい、首相撲からのヒザ蹴りへ繋いでもバランス良く蹴るに至らず、いきなりの大崎の左ボディーブローを貰ったり、組み合った瞬間、大崎の転ばしに掛かかるなど、ムエタイ技で苦戦してしまう。

第3ラウンドにはヒザ蹴りに出たところへ大崎の右ストレートでノックダウンを喫し、更に接近して左ヒジ打ちに合わされた大崎のカウンターの左フックで2度目のノックダウンを喫すると、ダメージ大きい石川は、カウント中に止められ、新団体における認定チャンピオンベルトを巻かれたばかりで屈辱TKO負けとなった。

大崎孔稀の前蹴りで石川直樹を突き放す
いきなりの左ボディーブローも狙っていた大崎孔稀
大崎孔稀が石川直樹を倒した

◆第11試合 ジャパンキック協会バンタム級王座決定戦 5回戦

1位.馬渡亮太(治政館/19歳/53.52kg)vs5位.阿部泰彦(JMN/41歳/53.5kg)
勝者:馬渡亮太 / KO 2R 2:24 / 主審:椎名利一

阿部泰彦も王座挑戦の経験は2度あるが、2003年と2007年のこと。「若くて勢いのある馬渡に向かっていく姿を見て欲しい」と言う。昇り龍の馬渡と親子ほどの年の差がある阿部では勢いの差は有り過ぎたが、阿部は成長著しい馬渡に試練を与えられるか、そんな期待も持たれた試合ではあった。

試合は馬渡が早くからスピード差で主導権を握った展開。阿部を上回る蹴りパンチヒジのヒット。組み合えば阿部にもヒザ蹴りがあるが、馬渡を慌てさせるには至らない。馬渡は第2ラウンドもスピーディーにヒットを決め、2度右ヒジ打ちで阿部からノックダウンを奪い、このラウンド、何とか持ち堪えたい阿部だったが、再度、馬渡のヒジ打ちを貰って崩れ落ち、3ノックダウンによる馬渡のノックアウト勝利となった。

斉藤慎二さんのコールに乗って、ジャパンキックの若きエース格、馬渡亮太登場
馬渡のヒザ蹴りは何度も阿部を襲った
馬渡がノックダウンを奪ったのは効かせるヒットのヒジ打ち
不覚にも新人のヒジ打ちを喰らった瀧澤がノックダウン

◆第10試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級1位.瀧澤博人(ビクトリー/28歳/57.15kg)
   VS
WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.新人(E.S.G/30歳/57.0kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 2R 2:24 / 主審:松田利彦

国内フェザー級トップクラス同士で、互いに負けられない立場。初回、様子見の蹴りやパンチに強烈なヒットは無いが、接近戦で新人のヒジ打ちが入ると瀧澤はノックダウン。

呼吸を整え立ち上がり、瀧澤はやや下がり気味の展開が続くも、当て勘鋭いのは瀧澤の方。時折、接近すると瀧澤の距離を計るようなヒジ打ちが軽くヒット。

第2ラウンドには接近して来る新人の額に、瀧澤の狙った強いヒジ打ちがヒットすると、新人の額から流血しドクターがストップ勧告するとレフェリーが受入れ試合終了。2試合連続で瀧澤博人が“ヒジ打ちの名手”と言える貫禄の勝利となった。

ヒジ打ちが優っていたのは瀧澤の方、この後、額を切る強いヒットになる
瀧澤のヒジ打ちで深い傷を負った新人の額から勢いよく出血

◆第9試合 73.5kg契約3回戦

JKAミドル級1位.今野顕彰(市原/36歳/73.4kg)
   VS
NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK/41歳/73.4kg)
引分け0-1 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 仲28-29. 松田29-29

昨年10月に日本キックボクシング連盟興行で対戦した両者で、西村清吾が2-1判定で勝利しているが、今回も差が付き難い展開が続いた。単発ながら互いにパンチのヒットが多かったが、距離を詰めての主導権を奪う強いヒットは無い静かな戦いが続き、ポイント振り分け難い引分けとなる。重量級においては交流戦が充実している団体間で再々戦が期待される。

度々ヒットがあった今野と西村だが、差の付き難い展開だった

◆第8試合 62.0kg契約3回戦

JKAライト級4位.興之介(治政館/30歳/61.5kg)
   VS
キム・ボガン(韓国/22歳/60.8kg)
勝者:興之介 / 判定2-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-29. 桜井29-29. 松田30-29

◆第7試合 バンタム級3回戦

JKAバンタム級3位.翼(ビクトリー/23歳/53.2kg)
   VS
NKBバンタム級4位.海老原竜二(神武館/28歳/53.2kg)
勝者:翼 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:松田29-28. 桜井29-27. 少白竜30-27

初回のパンチとローキックの攻防から翼のヒザ蹴りでノックダウンした海老原だったが、凌ぎきるとパンチのヒットを増やし始める。

翼も打ち返し、ダブルノックダウンに繋がりそうな互いの強いヒットが続くが、やがて打ち疲れでスタミナ切れそうな中、このまま判定まで持ち堪えた。

新団体設立に伴ない5月のプレ興行から始まった、前半戦のベストファイターに贈られるヤングライオン賞はこの両者に贈られた。

ヤングライオン賞獲得となった海老原竜二と翼の攻防

◆第6試合 スーパーバンタム級3回戦

JKAバンタム級4位.田中亮平(市原/29歳/55.2kg)
   VS
WMC日本スーパーバンタム級2位.加藤有吾(RIKIX/19歳/55.25kg)
勝者:加藤有吾 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-30.桜井28-30. 少白竜29-30

◆第5試合 ライト級3回戦

JKAライト級5位.大月慎也(治政館/33歳/60.7kg)vs野崎元気(誠真/24歳/61.23kg)
勝者:野崎元気 / KO 2R 2:22 / 3ノックダウン / 主審:松田利彦

◆第4試合 ヘビー級3回戦

JKAヘビー級1位.ショーケン(山田/33歳/94.2kg)
   VS
ゴリ・セノオ(月心会チーム侍/44歳/89.8kg)
勝者:ショーケン / KO 1R 1:17 / 3ノックダウン / 主審:桜井一秀

ヘビー級として力強いノックアウトシーンを見せ付けたショーケン。この新団体ヘビー級ではトップに立つ選手。

※前座3試合は割愛します。

直闘の涙の理由は“勝って獲りたかった”

《取材戦記》

新たに分裂して出来た団体とは感じ難い、新日本キックの名残ある雰囲気。しかしそこは元からある治政館ジム主催の活気ある興行でもあった。

また、他団体首脳陣の顔触れがリング周りにあり、新団体としての姿勢、協力態勢が表れている、今後の興行でも新日本キックを上回る交流戦を充実させていく印象があった。

新日本キックではランカー中堅クラスだった直闘が、この新団体で王座決定戦へ抜擢されるも、対戦予定だった永澤サムエル聖光が脱水症状による体調不良で出場不可能となり、戦わずしてチャンピオンベルトを巻かれてしまった。

国内王座が更に乱立するのは仕方無いにしても、初代から早々にチャンピオンに任命される“認定チャンピオン”も作られるなど、団体レベルで都合のいいルールを作り上げるから、反対論が出てももう止めようがない。

いずれにせよ、国内すべての団体タイトルは、日本の国レベルタイトルには追いつかないローカルタイトルであり、他の認定団体チャンピオンとの対戦や「KNOCK OUT」などのビッグマッチ興行へ選出される出場権でしかないが、そういう立て構造の図式が成り立つのも自然の成り行きかもしれない。

そんな直闘がチャンピオンベルトを腰に巻いて貰い、涙を流したのは、うれし涙ではない、くやし涙だった。勝ってチャンピオンベルトを巻きたかったのだろう。永澤選手には「体調戻して早くこのリングに戻って来て欲しいです。」と語り、真のタイトルマッチにおける決着戦を願ったが、この日、戦わずしてベルトを巻くより、後日へ延期して改めて王座決定戦をやることがプロスポーツのやり方だと思う。

ジャングルポケットのトリオのうちの御二人、太田博久さん、斉藤慎二さんはリングアナウンサーとしての存在感は大きかった。低い太い声で力強い。毎回やればいいと思うが、本業が忙しければそうはいかないのが芸能人。ジャパンキック協会も短期で新顔に替わるリングアナでなく、団体の、興行の顔となるメインリングアナウンサーを育てる方がいいだろう。

ジャパンキックボクシング協会の次回興行は、11月9日(土)新宿フェースに於いて昼夜の2部制で行なわれる予定です。新日本キックにおける昨年組まれた今年分の年間スケジュールで会場が押さえられているので、来年はジャパンキック協会としての年間予定が多く組まれることでしょう。

KO賞とMVP賞を獲得した大崎孔稀
勝ってチャンピオンとなった馬渡亮太、ジャパンキック協会初代バンタム級王座獲得

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
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ムエタイオープン45、次なる大舞台へ繋げるか、3つのタイトル戦!

上原真奈が圧倒的に攻める

NOWAYは昨年7月22日に獲得した王座の初防衛成る。馬木愛里と、女子の上原真奈が新たに王座獲得。でもまだまだ中間点の国内下位王座である。

8月18日開催の「KNOCK OUT」興行へ、出場予定選手5名(ぱんちゃん璃奈、今村卓也、安本晴翔、与座優貴、壱センチャイジム)の紹介がありました。このイベントは国内トップ選手が集結する中、皆、「いちばん目立つ良い試合したい」と、ほぼ共通したトップ争いとともに、そこには選ばれてビッグイベントのリングに立つことへの責任感を持つ意識がありました。

各プロモーターが独自路線を行く、世間からは知られ難い小さな興行から、それぞれの兵が選抜されて、大企業がスポンサーとなり、テレビ局が取り上げるほどのビッグイベントのリングに上がり、名を売るパターンが定着した現在。その大舞台を目指す前段階のひとつ、MuayThaiOpenでも、壱(いっせい)は完勝して、このビッグイベント「KNOCK OUT」へ出場し、火出丸(クロスポイント吉祥寺)と対戦予定。

この日、本場タイの二大殿堂のひとつのルンピニースタジアム管轄下となる、ルンピニージャパンの、更に下部となるMuayThaiOpenタイトルを獲得した馬木愛里と上原真奈も、当然更なる上位とビッグイベント出場を目指すことでしょう。

◎MuayThaiOpen45 / 2019年7月28日(日)新宿フェース16:00~20:05
主催:センチャイジム / 認定:ルンピニージャパン(LBSJ)

圧倒する壱だが、ミンクワンも逃げ技のひとつ

◆第12試合 54.0kg契約3回戦

LBSJバンタム級チャンピオン.壱センチャイジム(センチャイ/53.85kg)
   VS
ミンクワン・チュンクエージム(タイ/53.9kg)
勝者:壱(=いっせい)センチャイジム / 判定3-0 / 主審:河原聡一
副審:北尻30-29. 少白竜30-28. 神谷30-28

ミンクワンは下がり気味に、壱(=いっせい)の出方を窺がいながら、接近戦ではヒジをタイミングよく振って来たり組んで転ばそうとして、さすがにムエタイテクニックに長けているが、壱は積極的にパンチと蹴りで前進してミンクワンをロープに追い詰める展開が続き、攻撃力で圧倒し判定勝利を掴む。

先手を打ったり打ち終わりを狙ったり、壱の攻めは強かった
ロープ際でパンチを打ち込む壱

◆第11試合 MuayThaiOpenフェザー級タイトルマッチ 5回戦

左ストレートを打つNOWAY

チャンピオン.NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/57.05kg)
   VS
千羽裕樹(スクランブル渋谷/57.1kg)
勝者:NOWAY / 判定3-0 / 主審:田中浩明
副審:河原49-47. 少白竜49-47. 神谷49-48

千羽がローキックを蹴ってきても、奥足へ強く蹴り返すNOWAY。更に手数多く攻める勢いが上回ると、ヒジ打ちで千羽の額を切ることにも成功。

千羽も突破口を開こうとアグレッシブに打ち合いに出るが、NOWAYは冷静にかわし、攻勢を維持したまま判定勝利し、初防衛成功。

常に前進し続けたNOWAYの左ミドルキック

◆第10試合 MuayThaiOpenウェルター級王座決定戦 5回戦

最後の前蹴りでセーンケンのボディーを突き刺す

馬木愛里(岡山/66.2kg)vsセーンケン・ポンムエタイジム(タイ/66.0kg)
勝者:馬木愛里 / TKO 2R 0:56 / 前蹴り、カウント中のレフェリーストップ
主審:北尻俊介

1ラウンドから馬木愛里がハイキック、ローキックのけん制から突き刺すような前蹴り主体で様子を探り、パンチと蹴りの交錯の中、セーンケンは馬木の威力に圧されたまま。前蹴りはかなりプレッシャーを与え、セーンケンは表情に表れずもボディーがやや効いた様子。

第2ラウンドには馬木愛里は狙いを定めたか、再び強い前蹴りをボディーに突き刺すと、セーンケンは耐え切れず倒れ込み、レフェリーがカウント中にストップした。

前蹴りでセーンケンを突き放す馬木愛里
堪らず倒れ込んで追い討ちかける馬木、割って入る北尻レフェリー
まだ通過点の馬木愛里、まだ上位を目指すのは当たり前

◆第9試合 ライト級3回戦

下東悠馬(TSKJapan/60.9kg)vs亜努(新宿スポーツ/63.4kg)
勝者:下東悠馬 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:河原29-28. 北尻30-28. 田中30-28

亜努が2.17kgオーバーにより試合中止が検討されるも、特別ルールで行なわれることになった模様。試合は手数足数多いが、強烈なヒットは無い緩やかな攻防の末、順当に下東悠馬が判定勝利。

◆第8試合 スーパーフライ級3回戦

バンサパン・センチャイジム(タイ/51.55kg)vsMASAKING(岡山/51.65kg)
引分け0-1 / 主審:少白竜
副審:神谷29-30. 北尻29-29. 田中29-29

◆第7試合 スーパーフライ級3回戦

白幡裕星(橋本/51.8kg)vsペットウボン・チュンクゥエージム(タイ/51.85kg)
勝者:白幡裕星 / 判定3-0 / 主審:河原聡一
副審:神谷30-29. 北尻29-28. 少白竜30-29

◆第6試合 ウエルター級3回戦 

高木覚清(岡山/66.55kg)vs斎藤敬真(インスパイヤード・モーション/65.85kg)
勝者:高木覚清 / KO 1R 2:26 / 3ノックダウン / 主審:田中浩明

◆第5試合 スーパーバンタム級3回戦 

稔之晟(TSK・Japan/54.55kg)vs森岡悠樹(北流会君津/55.1kg)
勝者:稔之晟 / 判定2-1 / 主審:北尻俊介
副審:田中30-29. 河原29-28. 少白竜29-30

◆第4試合 MuayThaiOpen女子ピン級(100LBS)王座決定戦 5回戦(2分制)

上原真奈(NEXTLEVEL渋谷/45.3kg)vsミレー(ペルー/HIDE/45.35kg)
勝者:上原真奈 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:田中49-48. 河原49-48. 北尻49-48

上原が積極的に出て、徐々にパンチと蹴りが増していき、ミレーも諦めない打ち合いに出るが、僅差ながらも展開は上原真奈が攻勢に攻め続け王座獲得。

諦めないミレーとの攻防が続く

◆第3試合 女子フライ級3回戦(2分制)

ルイ(クラミツ/50.5kg)vsRAN(MONKEY☆MAGIC/50.55kg)
勝者:ルイ / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:田中30-28. 神谷30-28. 北尻30-28

◆第2試合 62.0kg契約3回戦 

加藤雅也(TSK・Japan/61.5kg)vs飯島直己(キック・フィットネスOZ/61.7kg)
勝者:飯島直己 / 判定0-2 / 主審:河原聡一
副審:少白竜29-29. 神谷29-30. 北尻28-29

◆第1試合 フェザー級3回戦

山下勝義(クラミツ/56.9kg)vs青木大(キック・フィットネスOZ/56.85kg)
勝者:青木大 / TKO 1R 2:24 / ハイキックでダウン後、右ストレートから連打、ノーカウントのレフェリーストップ / 主審:田中浩明

初防衛し、協力者や応援団に感謝を述べるNOWAY

《取材戦記》

NOWAYは本名の井上の頭の“イ”を後ろにもっていくと“ノウエイ”となることから、バンドマン時代のこのアーティストネームを使っているという。

昨年7月にヒジ打ちTKO勝利でチャンピオンとなり、ベルトを巻いてもらう時、センチャイプロモーターに、「ベルトに相応しいムエタイ戦士になる」と約束したという決意が今回もアグレッシブな前進とヒジ打ちを見せた38歳NOWAYの成長。

日本の統一した王座が存在しない中、この日本国の下部タイトルとしか言えない国内王座は10以上(認定組織)。ひとつの団体で2段階に分かれた上位と下位の王座や、ルール分けした王座があるのはもう異常な状態。

その中で強者を集結させた「KNOCK OUT」のようなビッグイベント興行が幾つか存在するが、段階的に目標となるものが存在して盛り上がることは、昭和の低迷期には想像できない世界が広がっている訳で、時代を経たキックボクシング界の成長なのでしょう。しかし、決して順風満帆とはいかない業界であることは確かなキックボクシング界である。

MuayThaiOpen.46は9月29日(日)新宿フェースにて開催されます。

センチャイジムの若きエース、壱はKNOCK OUT出場

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
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飯村誓に続く試練! NJKF若武者会主催DUEL.19

新人の域を越え、日本ランカーを倒すまでの出世は早くても、ムエタイの壁には撥ね返される選手は多い。今年、飯村誓はタイ選手に2連敗して更に今回、タイでの戦歴が多い儀部快斗と対戦。

◎DUEL.19 7月21日(日)大森ゴールドジム17:15~19:35
主催:NJKF若武者会 / 認定:NJKF

◆第9試合 メインイベント スーパーフライ級3回戦

誓の前蹴りをキャッチする儀部快斗

NJKFフライ級2位.誓(=飯村誓/ZERO/51.8kg)
   VS
儀部快斗(エクシンディコンJapan/51.75kg)
勝者:儀部快斗 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:少白竜28-30. 宮本28-30. 君塚29-30

初回のパンチとローキックの様子見から、誓の打つタイミングを見計らって儀部快斗が蹴るタイミングなどリズムを作っていく。

第2ラウンドには儀部快斗がヒジ打ちで誓の右目尻を小さくカットさせ、誓にやや心理的に影響あるかに見えたが、誓はアグレッシブに攻めるも、儀部快斗が主導権を握った展開は変わらず、的確さで優った判定勝利。

儀部快斗の右ハイキックと誓のローキックが交錯
しぶとさではマリモーが上、パントリーが攻め倦む

◆第8試合 セミファイナル スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級5位.マリモー(キング/63.4kg)
   VS
NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/62.75kg) 
勝者:パントリー杉並 / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:少白竜28-29. 宮本29-30. 竹村29-30

パンチとローキックのアグレッシブなパントリー杉並の攻勢も、しぶといマリモーの打たれ強さと返し技のローキックがしつこい。

第2ラウンドにはマリモーがヒジ打ちをヒットさせ、パントリー杉並の右目尻を小さくカットしたが、影響はほぼ無さそうで攻防は激しくなり、パントリー杉並の連打で出る勢いは衰えず、僅差ながら判定勝利。

パントリー杉並の連打でマリモーを圧倒
パントリー杉並がアウェイで勝利

◆第7試合 68.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級3位.JUN DA雷音(E.S.G/67.35kg)vs渡邊知久(Bombo freely/67.6kg)
勝者:JUN DA雷音 / 判定3-0 / 主審:君塚明
副審:少白竜30-29. 中山30-29. 竹村30-29

◆第6試合 フェザー級3回戦

NJKFフェザー級7位.小田武司(拳之会/56.75kg)vs?太朗(DTS/57.1kg)
勝者:小田武司 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:君塚30-29. 中山30-28. 竹村29-28

◆第5試合 フライ級3回戦(2分制)

EIJI(E.S.G/50.8kg)vsRISING力(己道会/50.6kg)
勝者:RISING力 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:君塚28-30. 中山29-30. 宮本28-30

◆第4試合 58.5kg契約3回戦(2分制)

上田祐也(E.S.G/58.45kg)vs田中崚(VALLELY/58.05kg)
勝者:上田祐也 / TKO 3R 0:45 / 主審:竹村光一

互いの左ストレートの相打ち気味に、上田がクリーンヒットさせ、田中を一発で沈めレフェリーがストップした。田中崚は暫く立ち上がれないダメージで、一瞬で終わる怖さの試合だった。

上田祐也と田中崚のパンチが交錯した瞬間
倒された田中崚は暫く動けなかった

◆第3試合 女子キック(ミネルヴァ)スーパーバンタム級3回戦(2分制)

菅原麻子(トイカツ/55.1kg)vsKAEDE(LEGEND/55.05kg)
勝者:KAEDE / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:竹村28-30. 少白竜27-30. 宮本27-30

◆第2試合 女子キック(ミネルヴァ)45.0kg契約3回戦(2分制) 

ピーポー梨乃(STRIFE/44.1kg)vs七瀬千鶴(138KICKBOXING/44.95kg)
勝者:七瀬千鶴 / TKO 1R 0:28 / 主審:君塚明

七瀬の左ミドルキックで苦痛の表情を浮かべた梨乃はしゃがみ込むとそのままレフェリーストップされた。

七瀬千鶴の左ミドルキックがピーポー梨乃のボディーにヒット

◆第1試合 女子キック(ミネルヴァ)アトム級3回戦(2分制)

亜美(OGUNI/46.0kg)vs愛裟(PON/45.5kg)
勝者:亜美 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:竹村30-28. 君塚30-28. 中山30-27

儀部快斗もアウェイで判定勝利

《取材戦記》

この日、都内でビッグイベント興行が重なる中、単にいちばんお付き合いの縁が深いだけのNJKF若武者会主催のDUELプロ興行に訪れました。

しかし、16時30分開始予定のプロ興行が45分遅れの17時15分開始。アマチュア試合が朝10時開始で108試合あったようで、タイムスケジュールの組み方に最初から無理があるように感じられました。

先月の松谷桐vs仲山大雅戦同様に、年齢的に高校生vs大学生の構図となる誓vs儀部快斗戦。歳の差は3歳差でも18歳と21歳では大きな人生経験の差があるように感じられました。

その儀部快斗は、5月12日の石川直樹にヒザ蹴りの猛攻で敗れた試合から復活。飯村誓にとってはすぐ先の目標となるNJKF王座は、今年18歳となる者同士の松谷桐がNJKFフライ級チャンピオンである以上、挑戦する日までこれ以上の連敗は避けたいところ。“誓”が正式リングネームですが、文中、意味を間違いやすいので本名で載せています。

パントリー杉並は、ホームリングとなる日本キック連盟興行でもパンチ主体のアグレッシブな試合で、徐々にランクを上げていた。マリモーは華やかさは無いがシブとく打たれ強い。こんなタイプは昔にも居たなあと思う二人の戦いだった。

リングネームの由来をいつか聞こうと思っていたが、この日の試合を前にNJKFの公開インタビューで、「“パントリー”はお笑いの養成所に通っていた頃のコンビ名」と発表されていた。昨年はKOによる連敗があり、トップクラスに躍り出ることはなかなか難しいが、打たれないこと重視して今後の上位挑戦に期待したい。

マリモーのリングネームは“何となく”付けたそうだが、これはキングジムの向山鉄也会長の仕業っぽい気がする。変なリングネームいっぱい付けてきた人だから。今度改めて聞いておきましょう。

NJKF次回興行は9月23日(月・祝)に後楽園ホールで「NJKF 2019.3rd」が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号
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