新春黄金キック! WINNERS 2018.1st

パカイペットの隙を突いて鋭く入る左ストレート
パカイペットの壁を乗り越えたい波賀宙也、積極的に攻める

パカイペットは元・BBTVバンタム級チャンピオンで、2016年1月、瀧澤博人を左ミドルキックで圧倒TKOし、昨年1月は志朗とファイトマネー総取りマッチを行ない、志朗を蹴りで苦しめながらラストラウンド残り1秒で倒されるも、名は知れ渡る激闘を展開。

波賀宙也は元・WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオンで、昨年からの4連敗中から脱出したいところ。波賀は相手を研究し狙った右ヒジ打ちで少々額カット成功。波賀が距離を詰める圧力をパカイペットがいなし、要所要所でのパンチと蹴りは、隙を狙う上手さを感じさせます。互いが相手の持ち味を封じた展開でしたが、僅差でパカイペットが勝利。

パカイペットの突進を止めた波賀宙也の前蹴り
右ローキックから石川直樹の主導権支配が始まる
組んだら離さない力で捻じ伏せてヒザ蹴りでダウンを奪う石川直樹

 

石川直樹は離れた距離での蹴りから次第に得意の首相撲に移ると、相手を捻じ伏せるように押さえ、顔面へのヒザ蹴りで2度のダウンを奪って判定勝利。タイ選手相手に得意の体勢で圧勝出来たことには存在感はより大きくなった石川直樹、今後のムエタイランカー戦となっても組み勝つ姿は見られるでしょうか。

石原將伍はスウィーレックの蹴りや首相撲の距離であっても怯まない術を持っての戦い。組まれても強引にパンチの距離を取り戻し打ち込む強引さで圧倒。チャンピオンになってよりアグレッシブさが増した勝利でした。

初回早々からパンチでラッシュしたOD・KENが一気にダウンを奪い、ダメージ残る柴田を仕留めて完勝。何も出来ずに終わった柴田春樹、ブランクが空く影響もあったか、今後も他団体交流戦でなければ対戦相手が居ない中、巻き返しに期待です。

2000年生まれで、やがて18歳になるバンタム級の馬渡亮太(治政館)は、長身からくる足技と左のヒジ打ちで10歳年上の田中亮平(市原)と激戦の末、ダウン奪って判定勝利。1位で前チャンピオンの瀧澤博人(ビクトリー)との対戦や、現チャンピオンのHIROYIKI(藤本)への挑戦も期待される今いちばん注目の新人上位ランカーです。

下がり始めたパカイペットをパンチで追う波賀宙也

◎WINNERS 2018.1st /
2018年1月7日(日) 後楽園ホール 17:00~20:35
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.5kg契約 5回戦

パカイペット・JSK(タイ/55.7g)VS 波賀宙也(立川KBA/56.5kg)
勝者:パカイペット・JSK / 判定2-0 / 主審:椎名利一
副審:仲49-49. 桜井50-49. 少白竜50-49

◆52.0kg契約3回戦

日本フライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/51.9kg)
VS
ラタケット・パンダクラタナブリー(タイ/51.0kg)
勝者:石川直樹 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-25. 宮沢30-26. 少白竜30-26

本領発揮した石川直樹、2度目のダウンを奪う
左ストレートで仕留める石原將伍、ゆっくり倒れるスウィーレック

◆59.0kg契約3回戦 石原將伍

日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー/59.0kg)
VS
スウィーレック・パンダクラタナブリー(タイ/59.0kg)
勝者:石原將伍 / TKO 2R 1:56 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

◆ヘビー級3回戦

日本ヘビー級チャンピオン.柴田春樹(ビクトリー/93.0kg)
VS
J-NETWORKライトヘビー級4位.OD・KEN(ReBORN経堂/90.0kg)
勝者:OD・KEN / TKO 1R 0:50 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:宮沢誠

スウィーレックの蹴りに対し、構わずパンチで攻めた石原將伍
開始早々からパンチで圧倒したOD・KEN、何も出来ないまま終わった柴田春樹

◆63.0kg契約3回戦

ヨーペットJSK(タイ/62.8kg)
VS
日本ライト級1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/62.8kg)
勝者:ヨーペットJSK / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-28. 仲30-28. 宮沢30-28

◆68.5kg契約3回戦

日本ウェルター級1位.政斗(治政館/68.15kg)VS 憂也(魁塾/68.5kg)
勝者:憂也 / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:宮沢29-30. 仲29-30. 少白竜28-30

◆ライト級3回戦

日本ライト級2位.直闘(治政館/61.0kg)VS 同級3位.内田雅之(藤本/61.0kg)
勝者:内田雅之 / 判定0-3 /主審:椎名利一
副審:宮沢27-30. 桜井27-30. 少白竜27-30

◆54.0kg契約3回戦

日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館/53.9kg)VS 同級6位田中亮平(市原/53.6kg)
勝者:馬渡亮太 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-27. 桜井30-26. 少白竜30-27

◆62.0kg契約3回戦

日本ライト級10位.興之介(治政館/61.6kg)
VS
まさきラジャサクレック(ラジャサクレック/62.0 kg)
勝者:まさきラジャサクレック / KO 2R 3:02 / 主審:宮沢誠

◆55.0kg契約3回戦

日本バンタム級3位.阿部泰彦(JMN/55.0kg)
VS
NJKFバンタム5位.古村匡平(立川KBA/最終計量55.65kgで減点1)
勝者:古村匡平 / KO 2R 0:46 / ハイキックで10カウント / 主審:少白竜

上記はランカー以上の結果。
他、2回戦2試合は割愛します。

《取材戦記》

「新春黄金キックだ!」がパンフレットに書かれていた興行タイトルでしたが、正月は連日続くタイトルマッチの緊張感があった昭和のキック、あの時代の正月が本当の“新春黄金キック”だったように思います。

ライト級に上げて事実上の初勝利となる40歳になったばかりの元・日本フェザー級チャンピオン.内田雅之(藤本)。ダウン奪って判定ながら快勝し、勝利して2人の幼いお子さんをリングに上げての撮影、以前から触れる話ではありますが、リング上でこんな親子の撮影を多く見るようになりました。

アンダーカードでは、過去に王座挑戦経験もある阿部泰彦(JMN)は、やがて40歳になり、現在2歳のお子さんが居て、試合中の騒然とした中でも我が子の声がはっきり聞こえると言います。そして父親の戦う姿が一生記憶に残るまで戦いたい気持ちを持っているそうですが、この日は残念ながら、一発のハイキックで珍しくもKOで敗れ去ってしまいました。あと2年ほど頑張れば夢は叶うか。そんな些細な応援もしたくなる差し迫った阿部選手の戦いです。

2018年の新日本キックボクシング協会は、年間10回興行の中で、次の興行は3月11日(日)17時より後楽園ホールに於いてMAGNUM.45(現在カード未定)が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈18〉タイで三日坊主PART.10 新弟子の仕事

ワンプラ(仏陀の日)は寄進の多い日。いちばん左はデックワットやっていた中学生、お父さんが亡くなったばかりで供養の為の出家、ネーン(少年僧)になりました。(1994.10.27)

◆態度が変貌した藤川さん!

ペッブリーへ向かうバスが到着近くになると、藤川さんが車掌さんを促し、寺近くの交差点で降ろして貰うと、寺まで歩いて3分ほどの距離。歩きながら藤川さんに「網走刑務所に入るような気分か?」と聞かれ、刑務所という発想は無いものの、中学生の頃の短期ながら合宿生活に入るような、憂鬱な気分で寺の門を潜り、正に“入門”となった瞬間でした。

まずは自分の部屋が無いので藤川さんの部屋にお邪魔します。持って来た荷物を広げると、「狭いんやから、よう考えてやれ!」と機嫌悪いようなキツイ言い方が始まる藤川さん。元々仏陀の教えに反するような、贅沢な物が溢れる部屋で狭いのだから仕方無いだろうに、どうやら門を潜った途端、指導のスイッチが入ったような今迄と違う変貌に戸惑ってしまいました。

「来月、5日過ぎたら還俗者が増えて部屋が空くからそれまでここに居れ!」と言われるも、こんな口煩い藤川ジジイと1日だっていっしょに居るのは嫌でした。

◆デックワットの仕事!

夕方になると、「デックワット(寺小僧)と一緒に掃除しとけ!」と藤川さんに指示され、早速のデックワットとしての仕事が待っていました。出家前は数日前に寺に入り、比丘のお手伝いをするのが常識で、新弟子のような存在。そして日々デックワットがやっている仕事を私もやることになります。広いクティ内の板の間をモップを使って他の中学生ほどのデックワットとともに掃除を始めました。そんなモップがけをしながらフッと考え込んでしまい、「俺、30歳越えてこんなタイの田舎の寺で何でモップがけやっているんだろう。日本でもっとカメラマン出来ただろうに」と何か悶々としながら掃除を終え、やっと一人になれる時間を作って寺周りに散歩に出て、ようやく心休まる時間を作りました。

寺に帰り、藤川さんの部屋へ戻っても、特に話すことはない何とも窮屈な空間。すると突然、「よし、座禅組もう」と言い出す藤川さん。もう鬱陶しいこと言うやら、やらせるやら。逆らおうかとも思うも、ここに来ている意味を考えれば仕方ありません。

その頃にまた隣の部屋にデックワットが遊びに来ている様子が伺えました。また壁の穴からの視線を感じ、こちらは覗き部屋の見世物的対象。

「また日本人が変なことやってるぞ」と何やら言ったか言わないか、気になること落ち着かない。それに対し平然と身動きせず座禅を組む藤川さん。修行者と未熟者の違いがはっきり現れる座禅でした。約30分超えの座禅も意外とキツくはない。「これなら毎日やらされても耐えられるかな」とちょっとした自信にもなりました。午後9時過ぎ、我々は就寝。刑務所のような寺一斉に消灯ということはなく自由なもので、相変わらず両隣の部屋からはテレビの音やデックワットの笑い声が聞こえてくるのでした。

比丘の朝食風景(1994.10.27)

◆ワンプラ(仏陀の日)!

翌朝5時、まだ外は暗く鶏が鳴く中、藤川さんとともに起床。眠りは浅かった。コーヒーを飲みながら黄衣を纏う藤川さんの巻き方を見て覚えようとするも、なかなかすぐ覚えられるものではありません。もう一度、藤川さんの托鉢を撮りたいところ、「デックワットと一緒に掃除しとけ」と昨日と同じ指示して托鉢に向かう藤川さん。ここはもう私をカメラマン扱いしていない寂しさを感じました。

後から起きて来た若い比丘らが部屋の外で黄衣を纏うのを見ていると、「わかる?」と言われて「難しそう!」と応えると「大丈夫、すぐ出来るよ!」と慰めてくれる一回りほど年下の先輩僧たち。

藤川さんが托鉢から帰ってくると、「今日はワンプラ(仏陀の日)でサイバーツ(お鉢に入れる寄進)が多うて重かったあ~!」と腕も痺れる一苦労を、少々優しく報告してくれました。

“ワンプラ”は1週間に1回ぐらいの割合でやってくる仏教徒としてのお努めの日。在家信者さんも特にこの日は仏教の戒律を重視する日で、普段あまりやらない人も、この日は徳の“ポイントお得デー”かのようにお布施に力を注ぎます。托鉢での寄進だけでなく、信者さんが大勢寺にやって来て寄進する日でもありました。

大勢の比丘が座る目の前に、皿に盛られた大量の料理が並び、先導者に続いて5分ほどの読経が始まりました。そして5僧のグループ6つぐらいに分かれて朝食が始まりました。そんな時、信者さんと一緒に居る和尚さんに呼ばれました。

「どのくらいの期間出家するつもりか?、日本で何しているのか?」などと聞いてくるので、「日本ではボクシングやいろいろなスポーツのカメラマンやっています。」とやってもいないハッタリ含めて大袈裟に言っておくと、「こいつは日本で有名雑誌のカメラマンやっている優秀な奴だ!」と信者さんに更に大袈裟が加わり、二人目の日本人が来たことで「ウチの寺は国際的だ!」と言いそうで自慢げな笑顔と踏ん反り返った姿勢。藤川さんから聞いた、我々が“客寄せパンダ”となる和尚さんの思惑が見えて来た頃でした。

ワンプラ(仏陀の日)。多くの寄進された料理が皿に盛られて並びます。(1994.10.27)
寄進に訪れた信者さんも朝食へ。私も勧められました。(1994.10.27)

比丘の朝食の後、訪れていた信者さんの朝食となります。来ていたオバサンたちに呼ばれて一緒に食事となりました。「これも食べなさい、遠慮しなくていいよ、いっぱいあるよ、いつタイに来たの?タイ語上手いね」など、国は違えど、タイでも人見知りしないオバサンたちの温かさに癒されました。

食事後の片付けは信者さんたちが一斉にやり、私らデックワットはホー・チャンペーンを掃除し、藤川さんは独自の日課の掃除を始めるので、私も弟子らしく手伝いに入りました。部屋の内側外側の壁を雑巾で大雑把に拭いていると、藤川さんは「掃除というのは手の届かん見えんところまで拭くのが掃除というもんや!」とまた癪に障るキツイ言い方をする。こんな細かいことをいちいち言うことに、「年末大掃除じゃないでしょ!」とついに言い返してしまい、自分が甘く悪いことも分かりながらもムカついて仕方ない状況でした。

◆「銀座」に買い物に行く!

昼飯は朝の托鉢と寺で寄進された食材の残り物で済ませます。比丘の後、藤川さんに「デックワットと一緒に早う飯食え!」と促されて慌てて昼食。その後、藤川さんに案内して貰い、今後の生活に必要な日用品類を買い出しに出ます。バイクタクシーに跨って藤川さんが言う“銀座”へ。この街でいちばん賑やかな田舎っぽい商店街でした。いずれ利用するであろう写真屋さんも覗いておきました。

夕方頃、和尚さんに「部屋が空くぞ!」と嬉しい知らせが入りました。還俗した警察官らしい人が鍵を渡してくれて中に入ると、部屋は藤川さんの部屋より広め。しかし、デックワットも同居する雑魚部屋で、ちょっと残念ながら、狭い藤川さんの部屋で文句言われながら居るよりはるかに楽で、ウキウキスキップ気分で部屋を移動しました。

銀座で買った洗剤や、トイレットペーパー、水出し麦茶入れる水筒など並べていると、中学生デックワットが、私に「これどうぞ」と“カーオムーデーン(豚肉ライス)”を持って来てくれ、引越し御挨拶を逆にやられてしまう出遅れ。誰かに「持って行ってやれ」と指図されたのかもと思うも有難い気遣いでした。

夜は水浴びした後、「これが最後の髪いじりか、明日の夜は髪が無いんだな」と髪を梳かしながら中学卒業以降、長髪だった髪を惜しむように触っていました。明日はいよいよ剃髪の日となります。

ペップリー銀座。田舎の商店街の一部です。見難いですが、黄色い看板が写真屋さん(1994年)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

本日発売!2018年もタブーなし!月刊『紙の爆弾』2月号【特集】2018年、状況を変える

生キ様ヲ刻メ! 35周年を迎える日本キックボクシング連盟の〈闘魂〉

大和知也との打ち合いを制し、綱渡り防衛となった高橋一眞
大和知也vs高橋一眞。二度のダウンの後の危ない打ち合いはファンをハラハラさせた。高橋一眞のピンチ

激闘ノックアウトが続いた主要カード3試合。

「格闘技人生賭けて今日全てを出し切ります。僕の生き様を見てください」と語っていた大和知也は一昨年、怪我で王座返上し、昨年9月の再起戦は棚橋賢二郎(拳心館)にKO負けもまだ王座復帰とNKBエース格を目指す。

高橋一眞は一昨年の3連敗から脱出し、昨年6月に宿敵村田裕俊から王座奪取し、再び「KNOCK OUT」出場を目指す今、両者とも負けられない立場。高橋一眞はパンチで出て来る大和にヒザ蹴り中心に右ローキック、ロープ際での接近戦で右ストレートでダウンを奪う。足に来た様子の大和だったが、パンチの距離になると右ストレートで逆転のダウンを奪う。

パンチとヒザ蹴りの攻防の中、更なるパンチ連打で2度目のダウン奪った大和。残り1分半。パンチで出る大和に応戦する一眞は危険な打ち合い。しかし一眞の右ストレートでスリップダウンする大和は立ち上がるも再び足に来ている様子で足がもつれる。一眞は上下の蹴りからヒザ蹴りも出すが、大和とパンチの打ち合いに応じ、どっちが倒れるかスリルある展開の中、一眞の右ストレートがヒット、足に来てフラついて起きれない大和にレフェリーが試合を止めました。

悔しさで号泣の大和。何のヒットで倒したか、自分がダウンしたことも覚えていない試合直後の一眞。2度ダウン後の打ち合いは危険な賭けは一眞にとっては今後に課題を残す初防衛となりました。大和は王座奪回成らず、2連敗。今後再戦するとしたら互いがガードをしっかりしなければならないでしょう。特に「“KNOCK OUT”に出たい」と言う一眞は要注意です。高橋一眞はこれで15戦11勝(9KO)4敗。大和知也は32戦16勝(11KO)13敗3分。

村田裕俊vs優介。向かって来た優介に村田のカウンターパンチがヒット、ダウンとなった瞬間

村田裕俊は2016年12月に初防衛戦で対戦した優介との再戦となる2度目の防衛戦。2017年は注目の選手との対戦が続く中、3連敗の村田。優介は再挑戦に向け、調子を上げてきた侮れない挑戦者。村田の攻勢は想定内で首相撲になっても組負けず、しなりある村田のハイキックとミドルキックが優介を圧倒。

2ラウンドには接近してきた優介に左フックカウンターでダウン奪う村田。優勢に進む中、村田の右ストレートが優介にヒットするも、相打ち気味だった優介の右ハイキックが村田のアゴを捉え、ダブルノックダウンのような形で、優介がやや先に尻餅つくが、ほぼスリップ気味ですぐ立ち上がり、村田は完全に足に来てフラつく中、レフェリーが止めました。

優介が劇的逆転ノックアウトで号泣の王座奪取成る。優介は第14代チャンピオン。村田裕俊はこれで19戦10勝(5KO)7敗2分。優介は25戦18勝(8KO)5敗2分。

村田裕俊の右ストレートはプッシュ気味、この直後、優介の右ハイキックが村田のアゴを捉える
ロープにもたれて倒れ込み、立ち上がれなかった村田裕俊

高橋聖人は昨年4月に村田裕俊を攻略する金星判定勝利。安田浩昭は3年前に髙橋聖人に判定負けしているが、その後勝利を重ね、上位進出してきた底力は侮れない。

パンチ主体の安田に対し、右ローキックを中心に蹴り技で優っていた距離感もよかった聖人。聖人の蹴りのペースが続き、安田の左足が効いていく中、安田の一瞬の右フックが聖人のアゴを捉えると、バッタリ倒れた聖人、完全に効いてしまって上半身を起こそうにも身体が言うこと利かないダメージでレフェリーが試合をストップ。パンチの当たる隙を安田が見逃さなかった展開。キックのキャリアは似たものがあるが、人生の経験値からくる勘があったであろう結末。聖人は反省点ある試合で今後に活かせることでしょう。高橋聖人はこれで10戦8勝(3KO)1敗1分。安田浩昭は10戦8勝(4KO)2敗。

新チャンピオン優介と真門ジム山岡会長。真門ジムでは優介が高橋兄弟に続く現役三つ目の王座獲得となった

◎神風シリーズ vol.6
2017年12月16日(土)後楽園ホール17:30~20:50
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆メインイベント NKBライト級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.高橋一眞(23歳/真門/61.05kg)
VS
挑戦者同級2位.大和知也(前C/32歳/SQUARE-UP/61.23kg)
勝者:高橋一眞 / TKO 1R 2:35 / 主審:前田仁

◆NKBフェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.村田裕俊(28歳/八王子FSG/57.05kg)
VS
挑戦者同級2位.優介(33歳/真門/56.95kg)
勝者:優介 / TKO 2R 1:32 / 主審:鈴木義和

◆フェザー級 5回戦

NKBフェザー級1位.高橋聖人(20歳/真門/57.05kg)
VS
同級3位.安田浩昭(31歳/SQUARE-UP/56.9kg)
勝者:安田浩昭 / TKO 2R 3:02 / 主審:亀川明史

安田浩昭vs高橋聖人。頭をもたげる高橋聖人、身体は言うこと利かない痛烈なダウンシーン
安田浩昭vs高橋聖人。隙を突いた安田の右フックが高橋にヒット
王座挑戦権を得たであろう安田浩昭
初防衛成功の高橋一眞。王座奪取時にも見せた雄叫びポーズ

◆ライト級3回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(30歳/拳心館/60.95kg)
VS
小鹿雅弘(26歳/ジョイント/61.0kg)
引分け / 0-1 / 主審:川上伸
副審:前田30-30. 亀川30-30. 佐藤友章29-30

◆ミドル級3回戦

NKBミドル級6位.釼田昌弘(28歳/テツ/72.3kg)
VS
義充(27歳/アウルスポーツ/72.5kg)
引分け / 0-1 / 主審:佐藤彰彦
副審:鈴木30-30. 亀川29-30. 川上30-30

◆63.0kg契約3回戦

NKBウェルター級5位.マサ・オオヤ(43歳/八王子FSG/63.0kg)
VS
NKBライト級9位.野村怜央(27歳/TEAM-KOK/62.95kg)
勝者:野村怜央 / TKO 2R 1:58 / カウント中のレフェリーストップ
主審:佐藤友章

◆62.0kg契約3回戦

NKBライト級5位.パントリー杉並(25歳/杉並/61.65kg)
VS
J-NETWORK.スーパーライト級7位.伊東伴恭(33歳/ライラプス東京北星/61.9kg)
勝者:伊東伴恭 / 判定0-3 / 主審:亀川明史
副審:川上28-30. 前田27-30. 鈴木28-30

◆ウェルター級3回戦

NKBウェルター級4位.チャン・シー(33歳/SQUARE-UP/66.5kg)
VS
同級6位.SEIITSU(38歳/八王子FSG/66.45kg)
引分け / 0-1 / 主審:佐藤彰彦
副審:川上29-30. 前田30-30. 佐藤友章30-30

◆フェザー級3回戦

NKBフェザー級6位.鎌田政興(27歳/ケーアクティブ/57.0kg)
VS
同級9位.岩田行央(37歳/大塚/57.05kg)
勝者:鎌田政興 / 判定3-0 / 主審:鈴木義和
副審:亀川30-28. 佐藤友章30-28. 佐藤彰彦30-29

前座2試合は割愛します。

《取材戦記》

日本キックボクシング連盟に於いては、ラスト3試合は近来に無い壮絶な決着でした。リングサイド関係者は、意外な盛り上がりに驚きながらも満足気の様子。「来年(2018年)もNKBを盛り上げましょう」と言う声も聞かれました。高いレベルとは言い難いところもあり、「KNOCK OUTイベント」に向かっていくなら磨かねばならない技はあるものの、出場させてみたい選手も揃っています。

新年の興行タイトルは「闘魂シリーズ」だそうで、どこかで聞いたことあるようなシリーズ名ですが、この日のようなスリルは成り行き任せで難しくとも、好カードで盛り上がりを見せればNKBの存在価値も上がることでしょう。高橋三兄弟は課題を抱えつつ、負けてもまた向かっていく姿がカッコよく見えます。

2018年定期興行スケジュールは、2月17日、4月21日、6月16日、10月13日、12月8日、いずれも土曜日、後楽園ホールでの開催で、開始時刻は17:30の予定。この他、地方興行も予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

キックボクシング 2017年の振り返りと2018年の展望!

ルンピニーのベルトも手に入れることが出来るか、二つ掲げたい梅野源治(2016.11.4)

2017年の主に目立った出来事を大雑把に独断と偏見で振り返ると、
・梅野源治とT-98(=今村卓也)のラジャダムナン王座陥落
・「KNOCK OUT」イベントの躍進
・IBFムエタイの発足
・高橋一眞の復活
・志朗と麗也の独立
などがありました。
他にも多くの興行、イベントがありましたが、あくまで独断と偏見です。

◆《1》梅野源治とT-98(=今村卓也)のラジャダムナン王座陥落

2016年6月1日にラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級王座奪取したT-98(=今村卓也)は同年10月9日に日本人として初めて現地で初防衛を果たし、その勢いで2017年の更なる記録更新が期待される中、5月25日に現地での2度目の防衛戦は惜しくも判定で敗れ記録更新成らず。その後T-98は長い休養はとらず再起。今度はルンピニースタジアムに標準を定め、10月22日にルンピニージャパン・ミドル王座奪取を経て挑戦権を獲得。12月2日にタイ現地でルンピニースタジアム・ミドル級王座に挑戦しましたが、判定負けで王座奪取成らず。外国人初の二大殿堂制覇も成りませんでした。

2016年10月23日に、同じくラジャダムナンスタジアム王座をライト級で奪取した梅野源治は、2017年5月17日、現地で初防衛戦を行なうも判定で敗れ王座を失いました。現地に渡るとなかなか難しい本場の壁に阻まれますが、これを打ち破ってこそ崇高の王座であるわけです。

二人揃って王座陥落のままに終わった2017年でしたが、梅野源治は2018年2月18日、REBELS興行で、ルンピニースタジアム・ライト級王座決定戦出場が予定されています。日本人として新たな可能性を懸けて、ムエタイ二大殿堂王座への記録更新は2018年に引き継がれます。

T-98も厳しい立場に置かれたが、梅野同様まだ終われないT-98時代(2017.5.25)

◆《2》「KNOCK OUT」イベントの躍進

2016年9月14日に記者会見興行(お披露目1試合)から発足した「KNOCK OUT」イベントは同年12月、2回目興行(vol.0)から盛大に始まりました。(株)ブシロードがバックアップする背景から2017年は1年間を通じて8回の興行が開催され、想定する範疇ながら「やっぱり凄いな」と思わせる実績を残して来ました。

対戦が難しかった団体の垣根を越えたトップクラスの対戦があり、地上波のTOKYO-MXTVをはじめ、衛星放送やインターネット配信の充実、街頭スクリーンにもコマーシャルが流れる拡散に過去に無い一般社会へアピールの進出がありました。

選手の発言にも「KNOCK OUTに出たい!」と言う声が多くなっています。このリングに立つ為に、既存の各団体やフリーのプロモーション興行も選手の目つきが違って来ています。目指すものが大きいと選手のモチベーションも上がることが実証された1年でした。

ひとつ厳格に守って欲しいのは、本来のキックボクシングルールとシステムを遵守して欲しいこと。一旦勝手な解釈が加わると、そこからまた新たな解釈が加わり、本来のキックから逸脱した方向に行ってしまうので、老舗キック競技を守ることからイベント開催へ向かって行って欲しいところです。

◆《3》IBFムエタイの発足

2017年後半、水面下で動いていたのはIBFのムエタイ団体発足の動きでした。プロボクシングの主要4団体のWBCがムエタイ世界王座を発足されたのは2005年12月。いずれは他団体も手を付ける可能性が高いと思われたプロボクシング認定団体のムエタイ進出でしたが、ここに来てやっぱり出て来た他3団体の中のIBFでした。

多くの世界認定団体と二大殿堂王座、更に活発化するイベント(トーナメント戦優勝制)がある中、それらの価値が低くなってきた時代に、IBFムエタイがトップ争いの末、ムエタイ最高峰となることは無いでしょう。

初の世界王座決定戦を行なった2017年12月20日の世界戦数日前からから「ライトヘビー級か、クルーザー級かどっち?」と思っていたら、開催直前になって別選手によるウェルター級戦になる曖昧さ。発展途上のタイ側に任せていたらこうなるんです。ムエタイなので試合ルールは本場タイ側が主導するのは仕方ないにしても、IBFに限らず、組織管理・管轄はアメリカやメキシコの本部が監視していかないと、タイ側は勝手なことやりだすので、単なる名義貸しにならないよう注意して貰いたいものです。

発足したIBFムエタイ世界王座3試合のセレモニー(2017.12.18)
IBFムエタイ世界ライト級初代王座はセクサンvsパンパヤック戦(2017.12.19)
IBFムエタイ、最初のチャンピオンはウェルター級のピンクラーオ、左側はIBF会長のダーリル・ピープルズ氏、右側は元・タイ国副首相スワット・リパタンパンロップ氏(2017.12.20)
ここにも団体を担うチャンピオンとなった高橋三兄弟の長男・一眞が2018年を戦う(2017.6.25)

◆《4》高橋一眞の復活

2016年に悪夢の3連敗を喫した高橋一眞は2017年は4連勝と完全復活。過去3勝1敗の村田裕俊を破り、NKBライト級王座奪取と、元チャンピオンの大和知也を破り初防衛を果たしました。

長男・一眞は打たれ脆さが心配されます。大和知也との試合はそのスリルある展開を見せ大歓声となりましたが、再び「KNOCK OUT」出場することとなった高橋一眞は、2018年2月12日の「KNOCK OUT FIRST IMPACT」に於いてKNOCK OUT常連の町田光(橋本)戦が予定されており、ここはガードを固め冷静に戦って欲しいところです。

次男・亮も12月のKNOCK OUTに於いて、小笠原瑛作(クロスポイント)と引分ける好ファイトを見せながらも弱点を見せる展開。三男・聖人は安田浩昭に一発で逆転負けする不覚を喫したばかり。それでもNKBを担う立場に成長した高橋三兄弟は、安泰マッチメイクは無く試練を乗り越えていくので、負けながら這い上がるところに好感が持て、それぞれが2018年の急成長が見られるかが期待と見所でしょう。

本場のリングが主戦場となった志朗、2018年も厳しい戦いが続く(2017.12.9)

◆《5》志朗と麗也の独立

志朗と麗也(ともにKICK REVOLUTION)が新日本キックボクシング協会を、脱退宣言発表をしたのは6月20日でした。本場タイのリングでの戦いの場を求めて、これ以降ほぼ現地のみのリングに上がっていますが、現地の有力プロモーターに認められ、勝ち上がることはかなり難しい道程で、下手すれば簡単に切り捨てられる本場で、窮地に追い込まれても2018年も突き進まなければなりません。

早速1月13日(土)、タイ・ルンピニースタジアムにて志朗の出場が決定しています。試合はタイ地上波9チャンネルで放送と、セミファイナル出場が予定されるかなり高水準の待遇で、対戦相手は、チューペット・シットパナンチュンという、タイ7チャンネルや9チャンネルに出ている知名度があり、今最も勢いのある選手の一人として名を馳せており、パンチとローキックが武器で、最近は3連続KO勝ちしており、志朗とはKO決着が予想されています。

麗也は志朗とは別のジムに所属しており、まだ活躍の詳細は聞かれませんが、2018年は志朗に続かなければならない勝負の年となるでしょう。

新春最初の興行は1月8日に、後楽園ホールに於いて17時より、新日本キックボクシング協会・治政館ジム興行「WINNERS 2018.1st」が行なわれます。WINNERS、MAGNUM、TITANS NEOSなど、この団体内でもビッグイベントが揃っており、「KNOCK OUT」以外の国内各団体が突出してくるか、あるいはまた分裂が起こるか、何が起きても不思議ではないキック界が1年後にどうなっているか、波乱にも期待したいところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

江幡ツインズは、キック界の大黒柱! SOUL IN THE RING.15

右ストレートで3度目のダウンへ繋ぐ江幡睦

後楽園ホールと両国国技館でそれぞれが勝利を上げた江幡睦と塁。
睦はいつもよりは格下のトートーとの対戦でしたが、そのトートーの蹴りと繋ぎ技は素早く、油断はならない。対する睦はいつもどおりながら様子見のローキックからパンチへ繋ぎ、隙を見つけるといずれも右ストレートが決め手となる3ノックダウンを奪って余裕のKO勝利。

緑川創のローキックでサグントーンにダメージを与える

両国国技館での「KNOCK OUT」興行では、塁が宮元啓介(橋本)と激闘の末、判定勝利。そのまま後楽園ホールへ駆けつけ睦のセコンドに着く慌しさ。重森陽太(伊原稲城)も「KNOCK OUT」興行に出場し、マキ・ピンサヤーム(タイ)に判定勝ちした後、後楽園ホールへ来場。江幡ツインズとスリーショットとなりました。

緑川創も第1ラウンドに様子見から左フックをボディに炸裂させダウンを奪い、第2ラウンドに右ストレートでダウンを奪ったところでタオル投入されKO勝利。

渡辺健司vs大和侑也戦はちょっと興味深いカードとなった試合でしたが、渡辺のいつもの下がってかわす戦法に、正攻法の大和は持ち味を活かせない。自分の距離を見極めると渡辺のローキックやフック系パンチのしぶとい戦法で判定勝利を掴みました。

終盤にパンチで出ていく大和侑也だが渡辺攻略は難しかった

斗吾が第1ラウンドにパンチで斉藤をグラつかせるも、その追撃が足りず、その後のダメージから回復した斉藤が長身を活かした前蹴りが有効的に使われ、首を組んでのヒザ蹴りをしつこく繰り出す。パンチで攻めた斗吾が辛うじて引分けに持ち込んだ印象。2014年3月に対戦した時は斗吾がヒジ打ちでTKO勝利しているが、今回は斉藤が持ち味を活かした試合でした。

長身の斎藤智宏前蹴りが斗吾を突き飛ばす

瀬戸口勝也は皆川の若さとスピードに出遅れ、皆川は若さと攻めの打ち終わりにフォローを入れる追撃の見映えも良かったが、瀬戸口の強打が皆川のリズムを崩し、ベテランの技で勝利を掴みました。

瀬戸口勝也の強打が若い皆川をたじろがせる

◎SOUL IN THE RING.15 / 2017年12月10日(日)後楽園ホール17:00~20:10
主催:藤本ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆メインイベント54.5kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/54.5kg)
VS
トートー・ペットプームムエタイ(タイ/53.9kg)
勝者:江幡睦 / KO 1R 2:30 / 3ノックダウン
主審:仲俊光

右ストレートで2度目のダウンを奪う江幡睦

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)vsサグントーン・トー・ポンチャイ(タイ/68.0kg)
勝者:緑川創 / KO 2R 1:44 / カウント中のタオル投入
主審:桜井一秀

緑川創のボディへ右ストレートで上下どこでも攻めどころを捉えていく
第8試合勝者、ジョニー・オリベイラ。ラウンドガールもクリスマスバージョン
第7試合勝者、本田聖典
第6試合勝者、古岡大八
第4試合勝者、リカルド・ブラボー

◆68.0㎏契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.渡辺健司(伊原稲城/67.8kg)
VS
大和侑也(元・WBCムエタイ日本同級C/大和/67.8kg)
勝者:渡辺健司 / 判定2-0 / 主審:椎名利一
副審:宮沢30-28. 仲30-29. 桜井29-29

◆73.5㎏契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)
VS
斎藤智宏(Ys.k KICKBOXING/73.5kg)
引分け / 0-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-29. 仲29-29. 桜井29-29

◆フェザー級3回戦

日本フェザー級3位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/56.8kg)vs同級6位.皆川祐哉(藤本/57.0kg)
勝者:瀬戸口勝也 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:仲30-29. 桜井30-28. 宮沢30-28

◆ライト級3回戦

日本ライト級4位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/61.0kg)
VS
同級6位.大月慎也(治政館/61.2kg)
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定2-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-28. 桜井29-28. 宮沢29-28

◆ミドル級3回戦

日本ミドル級2位.本田聖典(伊原新潟/72.3kg)
VS
萩本将次(CRAZY WOLF/71.0kg)
勝者:本田聖典 / TKO 3R 2:20 / 双方ともヒジ打ちによるカット、ドクターの勧告を受入れ、萩本将次をストップ、本田聖典は続行可能。
主審:宮沢誠

◆54.5㎏契約3回戦

日本バンタム級3位.古岡大八(藤本/54.5kg)vs鰤鰤左衛門(CORE/54.5kg)
勝者:古岡大八 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:桜井30-29. 宮沢30-28. 仲30-27

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.渡邉涼介(伊原新潟/60.8kg)vsTASUKU(CRAZY WOLF/60.7 kg)
引分け / 三者三様 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 宮沢28-30. 仲30-29

◆68.0㎏契約3回戦

リカルド・ブラボー(アルゼンチン/67.6kg)vs山本ジエゴ(ウルブズスクワット/67.3kg)
勝者:リカルド・ブラボー / TKO 1R 2:23 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

◆フライ級2回戦

山野英慶(市原/50.8kg)vs空龍(伊原新潟/50.6kg)
勝者:空龍 / TKO 1R 1:20 / カウント中のレフェリーストップ
主審:仲俊光

◆女子52.0㎏契約2回戦

白石瑠里(藤本/52.0kg)vs加藤みどり(エイワ/51.8kg)
勝者:加藤みどり / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:桜井18-20. 仲18-20. 宮沢18-20

◆63.0㎏契約2回戦

KAZUMA(揚心/62.7 kg)vs中田憲四郎(藤本/62.3kg)
勝者:KAZUMA / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名20-19. 仲20-18. 宮沢20-18

《取材戦記》

藤本ジムでの緑川創は勝次とともにエース格。8月に「KNOCK OUT」出場も宮越宗一郎(拳粋会)にダウンを奪われ判定負けをしていますが、その後再起2連勝。来年こそは飛躍しなければならない、何とかビッグタイトルに挑んで欲しいところです。

2018年新春興行は1月7日(日)に後楽園ホールで治政館ジム興行「WINNERS 2018.1st」が開催されます。昔の新春興行は元旦から1週間以内に日本系、全日本系のタイトルマッチが豪華に行なわれたものですが、現在は国内主要タイトルだけでも昔以上に多くあるのに新春に限らずタイトルマッチは少ないのが現状。そして「KNOCK OUTに出場したい」と言う選手も多く、目指すはビッグイベント出場へ、価値観が変化してきた現在、来年もその勢いが増すことでしょう。

両国と後楽園で、江幡塁、重森陽太、江幡睦、勝利のスリーショット

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

今村卓也、再びの12・2ムエタイ王座挑戦は惜敗!

ノッパガーオの右ヒジ打ちをかわす余裕を見せるタクヤ
ノッパガーオの右ミドルキックを受けてしまうタクヤ

この1年半で、今村卓也はムエタイ二大殿堂のラジャダムナンスタジアム王座奪取し、2度目の防衛戦で明け渡すも、今度はルンピニー王座挑戦のチャンスを得て、12月2日(土・現地/日本との時差2時間)、現地でルンピニースタジアム・ミドル級王座に挑みました。

5月25日のラジャダムナン王座陥落後は、数戦を経て、10月22日にディファ有明での蹴拳プロモーション興行に於いて、ルンピニージャパン・ミドル級王座決定戦を、ジフン・エナジー・リー(韓国)に判定勝ちして日本王座に就いています。

このルンピニージャパンタイトルは2015年8月7日に新設の発表があってから1年掛かりで動き出し、徐々に日本王座が埋まって来ている状況。本場ルンピニースタジアムタイトルへの近道とされるルンピニージャパン王座を経て、今回、今村卓也の挑戦が決まりました。

本場ルンピニー王座に就いた日本人は未だ居らず、またムエタイの二大殿堂ルンピニー王座とラジャダムナン王座の両方に就いた外国人(タイ人以外)は過去一人も居ない中での新たな挑戦でした。

タクヤの右ストレート直撃
ノッパガーオも強い左ストレートを返す

◆タイ国ルンピニースタジアム・ミドル級タイトルマッチ(160LBS) 5回戦

チャンピオン.ノッパガーオ・シリラックムエタイ(タイ/72.57kg)
VS
挑戦者. 今村卓也(=T-98/クロスポイント吉祥寺/72.57kg)
勝者:ノッパガーオ・シリラックムエタイ / 判定

ノッパガーオも調子を上げていく左ミドルキック

今村卓也は重いパンチとローキックで慎重に攻めていきます。顔面にヒットする右ストレート、それ以上に応戦するノッパガーオの蹴りとパンチも強いものがありました。

今村卓也のヒジ打ちによるノッパガーオの左眉のカットは、勝利へ期待が持てるものでしたが、ノッパガーオの的確に当ててくる強い蹴りで試合は混戦模様へ。組んでのヒザ蹴り、離れいてもヒザ蹴りも上手いノッパガーオ、今村卓也が優るローキックとパンチでは好感度低いものの、「日本だったらタクヤが勝っていただろう」と言う声もタイ側から聞かれた試合後のリングサイドでした。

タクヤのヒジ打ちで左眉を切ったノッパガーオ
更に流血の顔面へパンチで攻めるタクヤ

再び挑戦へ向けた再起ロードは始まるのか、ラジャダムナン王座陥落後も過密に戦ってきた今年の今村卓也でしたが、しばらく休んでからの再起がいいかもしれません。

判定はノッパガーオに。左がセンチャイ氏(ルンピニージャパン代表)

当日は4つのタイトルマッチの予定があったようですが、今村卓也のひとつ前の試合では、スーパーミドル級王座が新設された試合が行なわれています。

◆ルンピニースタジアム・スーパーミドル級(168LBS)王座決定戦 5回戦

4位.コンピカート・ソー・タワンルン(タイ/76.2kg)
VS
10位.ウィアンニー・マックススポーツジム(フランス/76.2kg)
勝者:コンピカート・ソー・タワンルン(初代チャンピオン) / TKO 2R

6月20日(火)にラーフィー・シンパートーン(フランス)がポンシリー・PKセンチャイから判定勝利し、ルンピニースタジアム・ウェルター級新チャンピオンに就き、同スタジアムでの外国人3人目(フランス人3人目でもあり)チャンピオンとなっています。

この日(12月2日)のウィアンニーはTKOで敗れ、王座奪取成らず(4人目成らず)でした。

二大殿堂も任意団体で、高いレベルの試合を群集に魅せてきた長い歴史と伝統とその権威は高いものの、時代の流れとともに過去になかった規制の緩みが出てきているのも事実で、軽量王国のタイで、ルンピニースタジアムはスーパーミドル級も新設されるという今までに無い重量級まで拡大化された現状。更には、今村卓也もルンピニースタジアムランキングには入っていないが、傘下のルンピニージャパンタイトルを獲ったことで、王座挑戦のチャンスが得られたと現地でも報道されています。最高峰への道が楽になったことが今後、業界にどう影響してくるでしょうか。
また同スタジアムは2014年2月にバンコク中心部のラーマ4世通りから、やや郊外北部のラーマイントラ通りへ移転してからは交通の便が悪くなり、ギャンブラーですらあまり行かなくなったと言う声も聞かれる中、今後集客率や試合レベルはどうなっていくのかという権威の低下が心配される部分もあります。

その反面、2018年は一波乱ありそうな本場ムエタイの動きに、興味あるファンや関係者は注目となるでしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点

私の内なるタイとムエタイ〈17〉タイで三日坊主PART.9 出征の日!

激闘の末、左瞼上下を縫った伊達秀騎選手、苦しい修行を耐えました(1994年10月18日)
伊達秀騎選手(1994年10月18日)

伊達秀騎の試合は壮絶な打ち合いで相手のタイ選手をたじろがす大善戦も、ヒジで切られヒザ蹴り地獄に陥りレフェリーストップ負け。試合後、救急車で運ばれるも肋骨は異常無し、額の傷口は2ヶ所、計10針縫う痛々しい傷……といった試合レポートを書いている場合ではない。伊達くんは試合の3日後の深夜、抜糸しないまま帰国。その翌日の10月22日から、今度は我が身に専念する番です。

◆得度式の日決定!

私はある程度の生活必需品とお土産を持って藤川さんが待つワット・タムケーウへ向かいました。半年振りの寺は、何やら騒がしい人の群れ、葬儀場には3月に来た時よりはるかに多い比丘。パンサー期間(安居期)直後で還俗者はまだ少ない様子です。パチンコ屋のような点滅する灯りが式場内いっぱい飾られ、近くでいきなり花火が激しい振動でドーンと打ち上がり、私の他、参列しているおばさん達も身体をビクッとされる驚きよう。金持ちほど派手になる葬式、日本とは違い賑やかに死者を送るのがタイの葬儀でした。

読経の合間、藤川さんが私に気付き手招きして呼びました。日本を出発する数日前に私が出した手紙が「今日(22日)に着いた」と言い、「お前が17日に来る言うから待っとったのに、来んのならコーンケーンに行こうかと思とったんや」と言う藤川さん。

「17日に寺に行く」なんて書いていないし、「ムエタイ取材もあるので寺行くのはその後になります」と書いたのに、どうせ読んですぐ捨てたのだろう。しっかり把握していない藤川さん。ボケた訳ではない、元々大雑把な人なのである。葬儀が終るのを待って藤川さんの部屋に向かいました。

「今日はまだ入門ではなく、荷物を預かって欲しいのですが、来週、僧衣一式買って、春原さんを迎えに行った後、26日に寺に入ります」と言うと、「お前、僧衣売っとるところ知らんやろ、付き合うてやる。24日でええならサイタイマイバスターミナルまでワシを迎えに来いや!」とまた私を利用する藤川さん。

外泊を渋る和尚さんに言い訳作ってバンコクに行きたいだけだろうに、そんな和尚さんの性格話をしたこと忘れているようである。そう言えばコーンケーンに行く予定はどう言い訳したんだろう、まあいいか。実は僧衣はどこで売ってるのか私もよく知らず、アナンさんにも聞きましたが、一人で行くのも心許ないところでした。
あと、和尚さんにお会いして、いちばん大事な得度式の日を決めて貰いました。
「所用を済ませ26日にお寺に入らせて頂きます」と言うと和尚さんは「じゃあ得度式は29日でいいな!」で決定。あと、カメラマンが来ることも了承して頂き、一旦寺を後にします。

帰りのバスの中、窓から見えるバンコクの賑やかさが増すにつれ、何だか怖気づいて来た胸の内。行くのやめようかな。やめたいな。逃げようかな。いや、そんな弱音を吐くわけにはいかん、何度も襲ってくる逃げ腰に、それを忘れるよう脳から振り払いながら、アナン会長宅に帰りました。

◆自分が纏う黄衣を買う!

24日は予定の午前11時前にやって来た藤川さんと合流。私の“タンブン”の昼食後、市内バスでサナームルアン(王宮前広場)近くに向かい、僧衣用品専門店が並ぶ通りのお店で、必要なもの一式揃えました。

ここに来るまでに藤川さんに、僧衣は何色にするか聞かれていて、私は当初からオレンジ色に決めていました。“黄衣(こうえ)”とは呼ぶものの、色彩的にはオレンジ色で、藤川さんが纏っているのが名古屋味噌のような茶色、またゴールド色ぽい僧衣があって主にこの三種が一般的にタイの比丘は纏っています。ミャンマーやラオス、カンボジアに行くとまた違った赤茶系色がありますが、お釈迦様の時代に遡れば、元々は喜捨されたボロギレや死人から剥ぎ取った衣類を縫い合わせて僧衣としていたと言われるのが原点で、そこからサンガ(僧集団)としての僧衣が確立され、“植物を使った着色の過程で黄色っぽい色が幾つかに分かれ落ち着いたのではないかな?”という大雑把な私の知識。古代はこんな鮮やかではなかったでしょう。

見た目はいっしょに見える三衣(さんえ)、左が上衣、中央が肩掛け帯、右が下衣

とにかく私はこのオレンジ色が好きで、これを纏いたくて出家するのである……!何という浅はかな動機。いや、ムエタイに代わるタイで出来ることに加え、“新世界紀行”が影響しており、この鮮やかなオレンジ色はやっぱり魅力でした。

「茶色にせえや!」と人の希望を無視する藤川さんの勝手な発言。近くを歩いていた若い比丘がオレンジ色の僧衣を纏っているのを見ると「ほれ見い、オレンジ色はいつまで経っても新米みたいやなあ、茶色は高僧に見えるやろ、ワシはそれで茶色にしたんや、ワッハッハッハ!」と笑う藤川さん。

私は「こんな悪党みたいな色、絶対纏うもんか!」と心に強く誓いました。買ったのは黄衣2着とバーツ(鉢)、アングサと呼ばれるチョッキのような肌着を入れると四衣になりますが、このチョッキの黄色い毛糸のセーターもあり寒い時期には羽織るようでした。更に巡礼した場合の蚊帳式テントとこれを吊るす傘、寺で使う枕まで買わされる始末。総額3200バーツ。

「重いやろうから帰れ」と言ってくれた藤川さん。こんな重く嵩張る物持って遠いスクンビット通りの藤川さんが泊まる寺まで混むバスと渋滞の中、付添うのは辛いところ、26日の朝11時にサイタイマイバスターミナル集合を約束。「遅刻するなよ」と煩く言われながら別れました。

◆春原さんと合流!

25日夜はドンムアン空港で、私の得度式を撮ってくれる春原俊樹さんを迎えます。滞在中の接待をしてくれるのはムエタイビジネス大ベテランの青島律さんで、空港で久々に会うと、「薬師寺栄子さんも来ているよ」と言う。以前、藤川さんの寺に、町田さんとやって来たのがフォトジャーナリストの薬師寺さんで、同じ便で日本の格闘技記者さんを迎えに来ていた様子。

同時に5人揃い、青島さんの車で移動して食事に御一緒する破目に。私が出家することは皆が知る仲となっていて、ここに集まる取材陣達はタイ関係の狭い日本人社会の中で繋がった縁の人達。誰にも知られず出家するなんて身勝手な話だったかもしれず、「得度式は春原さん以外誰も来なくていいから」と口にしてしまう私も性格悪い奴でした。

28日昼過ぎに春原さんがペッブリーバスターミナルに着けるよう青島さんにお願いして、この夜は解散し、一人で自由な最後の夜を過ごしました。

◆出征の朝!

翌日26日は朝食をジムの選手と共にした後、アナン会長宅に泊まる選手一同も笑顔と応援の声で私を送り出してくれました。アナンさん夫婦と高津広行くんは得度式に参列してくれる仮の親族として寺で再会予定。11月末に日本でデビュー戦を控える北沢勝くんに「デビュー戦勝てよ!」と檄を飛ばしてやると笑顔で「頑張ります!」と応えてくれる北沢くん。これは出征(出家)に怖気付いている自分に対して飛ばした檄で、引きつった笑顔での旅立ちとなりました。

サイタイマイで集合予定の11時を40分も過ぎ、「遅刻するなよ」と言っていた藤川さんが大幅遅刻。正午までに食事の席に着かねばならず、急いで昼食。こんな状況でもすぐ食事出来るのは、藤川さんの思惑にはまっている私のような存在が居るからなのです。

そしていよいよ本格的に戦地(寺)に向かう時間となり、飲み物買ってバスに乗り込み、ペッブリーに向けて走りだしました。

出征(出家)前の朝食時、ゲオサムリットジム仲間と、右からワチャラチャイ、ティーラポン、グルークチャイ、高津広行、その後方が私、いちばん左が日本デビュー戦を控えた北沢勝(目黒)、グルークチャイはすでに2階級制覇チャンピオンで私以外、皆さん後の大物です

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

鹿砦社新書刊行開始!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』(総理大臣研究会編)
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈16〉タイで三日坊主Part.8 借金貧乏・出家の支度

1994年は例年にない暑い夏でした。昼間、エアコンの無いアパートに居ると、何もしなくてもジワーっと汗が出てきます。

「お前、どうせ仕事も無うて暇なんやろ !」 藤川さんが言った言葉が重く圧し掛かります。人生いちばん暇かと言えるほど、蒸し暑い部屋に居ること多い、確かに暇な時期でした。

やると言ったら後に引けない自分で言い出した出家への道。収入源が少ない中、生活は成り立っていたものの、最短でも3ヶ月留守にする資金は苦しいところ、いよいよ日時は迫り動き出さねばならない状況に切羽詰まっていきました。

◆資金調達

そんな状況の中、アパートを引き払う決断をし、これより13年前に上京した際、お世話になった近くにある母方お祖母ちゃんのアパートへ引っ越しさせて貰いました。

ここは三畳一間でトイレ共同の築40年以上の木造アパート。過去、引っ越す度に少しずつ広く綺麗になっていったのに、上京時に返ったボロアパート。木の窓枠は風が吹く度、ガラスがガタガタ震え、隙間風が入る幼いの頃の家のような古さ。三畳間には、上京後増えた荷物をギッシリ天井まで詰め、地震が来ても崩れないほどの密閉度。ここでは使わない冷蔵庫や洗濯機は暫く外に出させてもらい、何とかスペースを作って布団を敷き、手足を伸ばすことは困難ながら何とか眠れるスペース。

それはタイへ向かう1週間前に引っ越し、数日間は一緒にタイに行く友達のアパートに泊まり、タイ渡航へ備えました。まだ引っ越す前の六畳・三畳トイレ付き2Kのアパートは月43,000円。最大6ヶ月タイでの滞在可能性を考え、この家賃分を浮かせたことになります。

お祖母ちゃんにはタダで泊めて貰った上、旅費を少々借りる親の親不孝者。出家の話はせず、怪しい宗教が多い中では余計な心配は掛けられません。

藤川さんからの贈り物、『得度式次第』

更に横浜で住み込みで働いていたタイの友達2人に、これまた少々お金を借りる罪深いことを重ねてしまいました。

このタイ人たちは、私が以前、タイのルンピニースタジアムでの取材がスムーズに出来るよう手配してくれるなど、お世話になったことがあり、この内の一人は、ラオス国境の街、ノンカイから更に奥地に入った、ブンカーンという町にある実家へ連れていって貰ったことがある仲。「もし機会があったら俺がブンカーンまで行って家族に会って来るから」と約束。

と言うのも、このタイ人たちは、ビザ切れのまま不法就労し、早々に強制送還される訳にもいかない事情あっての横浜在住でした。このタイの友達にも出家の話はした上での借金。更に消費者金融アイフルにまで借りる始末。

何とだらしない旅立ちでしょう。方々に借金したことは誰にも言わず、「お金の無い奴は首の無いのと一緒や」と言っていた藤川さんにもまた煩いこと言われるのは間違いないので言っていません。後々考えれば、この頃には藤川さんは分かっていたのでしょうが……。

◆参考書

『得度式次第』の目次

藤川さんと手紙でやり取りしていた引っ越し前迄に「得度式次第」という本を送ってくれていて、「だいたいの流れだけ酌んでおけ」と言うもので、インドのパーリー語をローマ字表記され、日本語訳がありますが、これで得度式は万全といったものではなく、正に流れだけ酌んでおくだけ。

「経文は覚えなくてもいい」と言われてもある程度、言葉にするであろう経文を頭に入れる必要はあるものの、言うことは出来ても、相手の言うことが聞き取れない恐れがあり、成り行き任せで行くしかないと悟ったところでした。

これはバンコクの有名寺、ワット(寺)・パクナムで修行していたベテラン比丘の渋井修さんが藤川さんに授けた本で、それが私に回してくれたものでした。

藤川さんお勧めの本、『タイの僧院にて』

更に、藤川さんに勧められていた本が「タイの僧院にて」と言う青木保さんの著書で、早速本屋で購入して読むと、昭和40年代に、実際のタイでの出家体験記を書かれたもので、言葉ひとつひとつにその場の空気感が伝わってくる興味をそそる内容でした。

更にもうひとつ、出家に興味を導いていたもので、1989年(平成元年)4月末と5月頭に2週に渡りTBSで放映された新世界紀行の「アジア秘奥三国探検」がありました。放映当初から録画保存したものを何度も繰り返し再生して見るほど興味深い冒険で、剃髪と得度式の様子も映しだされた分りやすい内容でした。

この放送の趣旨は、この年から数えて93年前の明治29年(1896年)暮、僧侶に化けた岩本千綱、山本しん介の日本人二人が、タイのバンコクから舟でアユタヤに渡り、そこから歩いて東北部を北上、ラオスを通り、ベトナムのハノイまで約2000キロメートルを111日に及ぶ、密林大河横断の冒険旅行を、現代の若者二人が挑むという冒険の旅を追っていました。南洋諸国へ移民や経済進出を提唱する南進論が注目された明治20年代、全く事情の分かっていなかった空白地帯を、自らの目で見極めようと旅立った2人の日本人がそこで、不思議な遺跡や人々の暮らしを知ることになるのでした(名古屋章さんの番組ナレーションを引用)。

これも藤川さんのお勧め、”これ買うて読んで勉強しとけ”と言った『ブッダのことば』

「探検旅行のレポーター求む」という新聞広告を見た約2000人の応募の中から選ばれたのが、現代の若者、由井太さんと加山至さんでした。

明治の岩本千綱さんら2人は寺には行きましたが正式な得度はしておらず、ニセ坊主となって旅立ちましたが、現代では法律で罰せられます。そこで本物の比丘(僧侶)となる為、ワット・パクナムの渋井修さんを訪れ、正式に得度式を経て比丘となっています。

虎が出そうな山岳地帯を越え、ラオス国境のノンカイで還俗しましたが、その後もラオスへ渡ってゲリラが出そうな山岳地帯や地雷が残る道を越え、前例のない日本人によるラオスとベトナム間の陸地の国境越えを果たし、各地で93年前と変わらぬ昔のままの姿を見つめ、一部、車での移動や警備隊の同行はあるものの、無事ハノイに到着するドキュメンタリーでした。

これを見た私は「俺もやりたい」と思ったもので、藤川さんに「堀田さんも一度出家してみてください」と言われた直後から、この2人の冒険が頭を過って後押しとなった番組でした。出発前夜は狭い部屋で無理やりテレビとビデオデッキを繋ぎ、再度この番組を見て、仏門生活をやり遂げる決意をしていました。

◆仲間と旅立ち

日本を立ったのは10月15日、たまたまスケジュールが合ったタイで試合する友人であるキックボクサー・伊達秀騎(小国=当時)くんと京成上野駅改札で待ち合わせ、互いに目標を持って成田空港に向かいました。ここ数日間泊めてくれた仲間で、我々2人とも宿泊先は一緒で、以前からお世話になっているバンコクのゲオサムリットジムのアナン会長宅。

そこには同じ小国ジムの高津広行くんもタイでの試合を数戦出場の為、長期滞在中。彼らとはタイで何度も会っており、以前から出家の話は打ち明けられる仲でした。誰にも知られずにと言いながら自ら複数の友人には伝えている状況でしたが、俗人で7名までは止む得ないところ。

この3日後、伊達秀樹くんはノンカイで試合を控え、高津広行くんはこれより先に1試合終えており、私の得度式に参列する準備をしてくれて、更に翌月、試合を控えている身でした。

彼らも日本チャンピオン越え、ムエタイ最高峰を目指し辛い練習を続ける修行の日々。置かれた立場は違うも、修行に向かうのは緊張と不安が行き交う厳しいものと実感する頃でした。

そのノンカイの試合も我が身に気合いを入れる撮影レポートの仕事として、これを終えてから”得度式専門カメラマン”春原俊樹さんを迎え入れ、ペッブリー県の藤川さんが待つワット・タムケーウへ入門準備に掛かります。

借金貧乏旅行の私。この経験を期に今後の人生に役立てれば、”首の無い人間”にはならないだろう。借金返済と、また新たな広くて綺麗なグレード高い住宅物件目指し、本番迫る私でした。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

CLIMAX 2017 日タイ超人対決、実現!

宮越慶二郎はローキックでけん制、更に上下の打ち分け狙って接近したいが、危険なヒジ打ちの気配を感じ、得意の距離が掴み難そう。テーパブットは9月の健太戦で日本人のリズムを掴んだか、第2ラウンドにテーパブットのすかさず放った左ヒジ打ちで眉間をカットされた宮越。傷口がパックリ開く状態から続行はされるも、2度のドクターチェック後、レフェリーストップとなる。

いつ止められてもおかしくない負傷を抱える状況の中、パンチでKO狙ってラッシュする宮越慶二郎
反撃及ばず、傷が悪化しレフェリーが止めた瞬間
ロープに詰めても逃がさない新人のパンチのラッシュが優っていく

伊藤紗弥はパンチが苦手と言うとおり、その手数は少ないが蹴りでは負けない足数と圧力で主導権を維持。ヒザ蹴りでヨーッジンが嫌そうな顔をする瞬間もあり、起死回生のバックハンドブローを放つヨーッジンだがクリーンヒットには至らず。元々ピン級(-45.359kg)のヨーッジンは46.1kgで計量をパスし、46.8kgの伊藤より軽めで、体格差で押された様子もありました。

6月に駿太が新人(=あらと)に僅差で判定勝利していますが、今回も駿太はロープ際に下がり、ムエタイ技(ヒジ・ヒザ中心)狙いか、そのシーンが多く、追う形の新人が好戦的に手数足数多く攻め、判定勝利で王座を獲得。これで日本を越え、世界を目指す段階へ行くか

駿太へ雪辱を果たすべく、積極的に蹴り続けた新人
新人もNJKFに続くWBCムエタイ日本王座を獲得し、更に上位を目指す

第1ラウンドに琢磨の右ストレート気味の攻勢で軽いダウンを喫した浅川でしたが、その後にポイントを巻き返す勢いは足りず、琢磨が判定勝利で王座獲得。

この日、いちばん圧倒して勝った印象が強いYETI達朗はパンチで真樹親太郎を圧倒。第1ラウンドから一気にたたみ掛け、3ノックダウンを奪ってノックアウト勝利。他団体同級チャンピオンを2戦連続で破った勢いは大きい。一旦NJKF王座を白神武央(拳之会)に奪われているが現在、白神が持つWBCムエタイ日本同級王座に、来年2月に雪辱戦となる挑戦が決定しているところで一層の弾みを付けた形。

このところ5連勝、力強さが増したYETI達朗のミドルキック
TETSUROが浅瀬石真司を圧倒していく中でのヒザ蹴りで突き放す
今年、NJKF王座に続き、WBCムエタイ日本王座も獲得した琢磨、右はトロフィーを持つ町田金子ジム会長

浅瀬石は第1ラウンドはローキックでペースを掴んでパンチに繋ぎ、このまま維持できればよかったが、第2ラウンドにヒジで左瞼を切られた後、不用意に右フックを貰ってダウン。主導権はTETSUROが握り、第3ラウンドにパンチで2度、第4ラウンドに1度のダウンを奪う圧倒の中、第5ラウンドも右ストレートでダウンを奪うとレフェリーが試合を止め、TETSUROが新チャンピオンとなる。

◎NJKF 2017.4th / 2017年11月26日(日)後楽園ホール17:00~
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ日本実行委員会、NJKF

◆メインイベント 63.0kg契約 5回戦

WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級チャンピオン.宮越慶二郎(拳粋会/62.9kg)
   VS
テーパブット・シット・オブン(元・BBTVスーパーフェザー級C/タイ/62.3kg)
勝者:テーパブット・シット・オブン / TKO 2R 1:56 / ヒジ打ちによる眉間の裂傷によるレフェリーストップ / 主審:竹村光一

◆WBCムエタイ女子世界ミニフライ級(47.627kg)王座決定戦 5回戦(2分制)

WMC女子世界ミニフライ級チャンピオン.伊藤紗弥(尚武会/46.8kg)
   VS
WPMF女子世界同級暫定チャンピオン.ヨーッジン・シット・ナムカブアン(タイ/46.1kg)
勝者:伊藤紗弥 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:竹村49-47. 君塚50-46. 神谷50-46

◆第6代WBCムエタイ日本フェザー級王座決定戦 5回戦

1位.駿太(谷山/57.15kg)vs2位.新人(=あらと/E.S.G/56.8kg)
勝者:新人 / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:竹村48-49. 君塚47-49. 神谷47-49

◆第6代WBCムエタイ日本スーパーフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.琢磨(東京町田金子/58.7kg)vs3位.浅川大立(ダイケン/58.85kg)
勝者:琢磨 / 判定2-0 / 主審:竹村光一
副審:中山49-47. 君塚47-47. 神谷48-46

激しい攻防の中、パンチの的確さが優った琢磨
両者懸命の打ち合いの中、二つ目のタイトル目指し、積極的に攻めた琢磨
北海道からやって来たTETSUROの王座獲得を祝福する左側の佐藤友則会長も未だ現役

◆70.0kg契約3回戦

NJKFスーパーウェルター級チャンピオン.YETI達朗(キング/69.7kg)
   VS
MA日本スーパーウェルター級チャンピオン.真樹親太郎(真樹・AICHI/69.9kg)
勝者:YETI達朗 / KO 1R 2:43 / 3ノックダウン
主審:宮本和俊

◆NJKFウェルター級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.浅瀬石真司(東京町田金子/66.35kg)
   VS
4位.TETSURO(GRABS/66.2kg)
勝者:TETSURO / TKO 5R 0:23 / レフェリーストップ
主審:君塚明

諦めない浅瀬石真司の反撃、パンチが交錯する両者
尚武会・今井勝義会長も伊藤紗弥と共に歩いて来た世界への道はまだ続く

◆65.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級1位.畠山隼人(E.S.G/64.3kg)
   VS
NJKFウェルター級3位.山崎遼太(OGUNI/65.0kg)
勝者:畠山隼人 /. 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:中山30-29. 竹村30-29. 宮本29-28

◆バンタム級3回戦

NJKFバンタム級7位.淳士(OGUNI/53.1 kg)
   VS
同級10位.古村匡平(立川KBA/53.1kg)
勝者:古村匡平 / KO 2R 2:01 / カウント中のタオル投入
主審:君塚明

◆フライ級3回戦

J-NETWORKスーパーフライ級9位.松岡宏宜(闘神塾/50.4kg)
   VS
NJKFフライ級6位.一航(新興ムエタイ/50.65kg)
勝者:一航 / TKO 2R 2:49 / カウント中のレフェリーストップ
主審:中山宏美

◆スーパーライト級3回戦

野津良太(E.S.G/63.3kg)vs木村弘志(OGUNI/63.25kg)
勝者:野津良太 / TKO 2R 2:16 / カウント中のレフェリーストップ
主審:神谷友和

蹴りの威力は伊藤紗弥が完全に優っていった
ラウンド進むごとに自信を増して攻め続けた伊藤紗弥

《取材戦記》

「CLIMAX 2017 日タイ超人対決、実現!」は今興行のタイトル。超人とは言い難いところ、テーパブットのヒジ打ちの脅威は見せ付けてくれたメインイベントでした。

伊藤紗弥はミニフライ級で、8月にWMCとこの日WBCムエタイの世界2団体を制し、残りはWPMFだけになりました。アトム級と言われる102ポンド(-46.266kg)は元々主要3団体世界王座には無い階級(ローカルタイトルは地域によって在り)なので、このミニフライ級が今後の適正階級となるでしょう。

二つ目の世界獲得、まだ18歳、日本女子のトップを行く笑顔が可愛い伊藤紗弥

ヨーッジン(Yord・Ying)は、ローマ字表記をそのまま読めば“ヨーディング”と呼んでも仕方ないところ、この選手を招聘した主催者がどう読むかで発表される表記になってしまう場合が多いでしょう。なるべくなら発音を聞いて英語表記を比べて見る方が正確になると思います。特にタイ人氏名は、なるべくならタイ語が読めると完璧。発音を聞かなくてもタイ文字だけで読めます。あとは日本語では末子音が無いと不自然な言葉になってしまうので、末子音を加えると“ヨードジング”となってしまいますが、これもタイ語的には正確とは言えない発音になってしまいますので、末子音を省いて“ヨーッジン”になります。このYはJ発音になる場合があるので、“ヨードイング”ではなく“ヨードジング”になります。“日本”をタイ語で“yiipun”と言いますが、“イープン”ではなく、“ジープン”と呼びます。タイ東北部やラオスに行くと“イープン”と呼びます。

この日のリングアナウンサー、コンタキンテ(今田景一)さんが“ヨージン”と呼びましたが、発音はともかく、正確なコールをするよう、ある専門家から教示があったと思われます。

WPMF世界ピン級暫定王座獲得時は“パヤックジン・シットモエサヤーム”になっていますが、リングネームなので、時折“ヨーッジン・シットナムカブアン”で出場もあるようです。

この日、他の興行でも全く別の国内タイトルマッチがあったと思いますが、それぞれが関係者と友人集めてやっているような興行で、来年以降、どう改善していくか、それぞれの団体が考えていかねばならない時代に突入していくでしょう。「KNOCK OUTイベントに世間の注目が集まるだけではいけない」と対抗策を考える既存の団体関係者も多いようです。

NJKFの年内最後の興行は12月3日(日)、岡山で拳之会主催興行が行なわれます。
2018年初回興行は、1月14日(日)誠至会興行が大阪市旭区民センターで行なわれ、2月25日(日)にはNJKF本興行が後楽園ホールで開催となります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

KICK Insist7 強かった石川直樹は世界まで勝ちあがれるか!

幸太vs 石川直樹。石川の猛攻でスタミナ、バランス失い崩れる幸太
離れても組んでもヒザ蹴りで圧倒した石川直樹

5月14日のノンタイトル戦で幸太のパンチで苦戦し、調子付かせてしまった石川直樹は、今度は首相撲からヒザ蹴り地獄でねじ伏せる圧勝。

第1ラウンドは幸太のパンチが優勢。このまま引きずれば幸太のリズムで勝利を導きそうな中、第3ラウンドから石川は戦法を変え、得意の首相撲からヒザ蹴りにもっていくと流れが大きく変わり石川が優位に立つ。第4ラウンドはそのピッチを上げ、ヒザ蹴りの猛攻で2度のダウンを奪って圧倒のノックアウト。首を掴まれてのヒザ蹴りに為す術が無かった幸太はランキング戦から出直しとなる。

瀧澤博人は王座陥落後、この日の再起2戦目は引分けるも、技を酷使した好ファイトを展開。初回から長身を利した左ジャブと前蹴りけん制し、距離が縮まっても突き上げるようなヒザ蹴りを背の低いウィラポンレックの顔面を狙う。パンチ中心に多彩な蹴りとスピードを持つウィラポンレックとの距離の掴み合いでクリーンヒットは少ないが技の攻防が随所で観られた試合。

NJKFからやって来たNAOKIは7月2日にNJKFライト級王座奪取したばかりで、過去、梅野源治と引分けているヨーペットと対戦も攻略できず完敗。技の柔軟さ、蹴るタイミング、組めばヨーペットのバランスの良さでヒザ蹴りへの繋ぎも速いヨーペットが優りました。

◎KICK Insist.7 / 2017年11月19日ディファ有明15:30~20:05
主催:ビクトリージム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆メインイベント 日本フライ級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.石川直樹(治政館/50.6kg)vs 挑戦者1位.幸太(ビクトリー/50.8kg)
勝者:石川直樹 / KO 4R 2:28 / 10カウント / 主審:仲俊光

石川直樹初防衛。治政館ジム長江国政会長(左)と新日本キック伊原信一代表に囲まれての勝利のショット

◆56.0kg契約3回戦

瀧澤博人(元・日本バンタム級C/ビクトリー/56.0kg)
   vs
ウィラポンレック・ギャットゴーンプン(元・タイ北部フライフ級C/タイ/54.8kg)
引分け / 0-1 / 主審:椎名利一
副審:桜井29-30. 仲29-29. 宮沢29-29

瀧澤博人vsウィラポンレック。至近距離からのヒザ蹴りが上手かった瀧澤博人、技が冴える試合が続く
引分けながらツーショットに収まるウィラポンレックと瀧澤博人

◆62.5kg契約3回戦

NJKFライト級チャンピオン.NAOKI(立川KBA/62.5kg)
   vs
ヨーペット・JSK(タイ/62.0kg)
勝者:ヨーペット・JSK / 判定0-3 / 主審:和田良覚
副審:椎名27-30. 仲29-30. 宮沢27-30

NAOKIvsヨーペット。ヨーペットのバランスいいハイキック

◆63.0kg契約3回戦

日本ライト級1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/63.0kg)
   vs
夢センチャイジム(センチャイ/62.8kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / 判定2-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 仲30-29. 和田30-29

永澤サムエル聖光が僅差ながら夢センチャイジムに勝利

◆68.5kg契約3回戦

日本ウェルター級1位.政斗(治政館/68.2kg)
   vs
ピラポン・ギャットアノン(タイ/67.0kg)
勝者:政斗 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名30-29. 桜井29-28. 仲30-29

政斗がピラポンに判定勝利

◆ミドル級3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.1kg)
   vs
J-NETWORKミドル級10位.小原俊之(キングムエ/72.2kg)
勝者:小原俊之 / TKO 3R 2:51 / ハイキック / 主審:和田良覚

小原俊之が今野顕彰をハイキックで倒しTKO勝利
NJKFからやって来た村中克至、ハイキックでダウン奪って直闘に判定勝利
馬渡亮太がベテランの阿部泰彦に僅差の判定勝利

◆61.5kg契約3回戦

日本ライト級2位.直闘(治政館/61.35kg)
   vs
NJKFライト級2位.村中克至(ブリザード/61.0kg)
勝者:村中克至 / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:仲28-29. 宮沢28-29. 和田28-29

◆55.0kg契約3回戦

日本バンタム級2位.阿部泰彦(JMN/54.8kg)
   vs
日本バンタム級4位.馬渡亮太(治政館/54.8kg)
勝者:馬渡亮太 / 判定0-2 / 主審:椎名利一
副審:仲29-30. 和田29-30. 桜井29-29

◆フェザー級3回戦

日本フェザー級7位.櫓木淳平(ビクトリー/56.8kg)
   vs
角チョンボン(CRAZY WOLF/56.3kg)
勝者:角チョンボン / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名28-29. 和田29-30. 桜井29-30

◆55.0kg契約3回戦

日本バンタム級5位.田中亮平(市原/54.6kg)
   vs
高橋茂章(KIX/54.8 kg)
勝者:田中亮平 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:和田30-28. 宮沢30-28. 桜井30-28

角チョンボン、判定勝利(左)。田中亮平、判定勝利(右)

◆フェザー級3回戦

金子大樹(ビクトリー/57.0kg)vs 渡辺航巳(JMN/57.0kg)
勝者:渡辺航巳 / TKO 2R終了 / 金子の負傷による棄権
主審:椎名利一

◆フライ級3回戦

細田昇吾(ビクトリー/50.6kg)vs 平野翼(烈拳會/50.1kg)
勝者:細田昇吾 / TKO 2R 2:20 / 主審:仲俊光

渡辺航巳、TKO勝利(左)。細田昇吾、TKO勝利(右)

◆ミドル級2回戦

徳王(伊原/72.4kg)vs 都築頼秋(ダイケンスリーツリー/71.6kg)
勝者:都築頼秋 / 判定0-3 (18-20. 19-20. 19-20)

◆61.5kg契約2回戦

林瑞紀(治政館/61.5kg)vs 梅木裕介(トーエル/61.1kg)
勝者:林瑞紀 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

◆70.0kg契約2回戦

高橋デミアン(伊原/69.8kg)vs RYOTA(トーエル/69.9 kg)
引分け 0-1 (19-20. 19-19. 19-19)

《取材戦記》

最終試合の石川直樹の首相撲からガッチリ固めてのヒザ蹴り猛攻は、“ヒザ蹴り地獄”と言えるものでした。昨年10月23日、泰史をTKOに破り日本フライ級チャンピオンになった後、今年1月11日、ブンピタックにムエタイ技の壁に阻まれ完敗。5月14日には幸太と引分け、今回は真価を問われる初防衛戦を、メインイベントを飾るに相応しい圧倒のノックアウトとなって株を上げた石川直樹、まだ初防衛したばかりで、遠慮がちなマイクアピールの中、「防衛を重ねて世界を目指したい」と語りました。目指す“世界”もいろいろある訳で、険しい道となろうとも群集が認める最高峰を目指していって欲しいものです。

新日本キックボクシング協会にとっては最後のディファ有明となった今回の興行。老朽化もあるようですが、東京オリンピックの拡張工事に備え、来年6月末で閉鎖が決定しています。最終興行が何であるか分かりませんが、格闘技興行でなくても最後のイベントでディファ有明の最後を見届けたいものです。

リング上の勝者のクローズアップ撮影は主に、次回興行のポスター、パンフレットの対戦カード、各媒体での対戦者同士の並び写真等に使用する目的で撮られるもので、また単に勝者がデータ上で分かるように撮る場合もあるでしょう。せっかくファイティングポーズを撮ったのに、使わないのも勿体無いので選手の存在を活かし、勝者ポーズを載せられる範囲で用意してみました。微力ながら顔が売れてくれればと思います。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき『紙の爆弾』12月号 安倍政権「終わりの始まり」
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』