《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!

6月8日午前10時から東京地裁429号法廷(有賀貞博裁判長)で、5月28日に「建造物侵入」容疑で逮捕された「火炎瓶テツ」さんを含め3名の「勾留理由開示公判」が行われた。

公判前の8時30分、支援する人々は東京地裁近くに集まり、9時30分に30余席しか無い傍聴席の傍聴抽選が行われた。抽選には100名近くが傍聴券を求め列をなし、この「不当逮捕事件」への関心の高さが伺われた。

私は残念ながら傍聴券抽選には外れたが、取材の意義に賛同して下さった有志の方から傍聴券を譲って頂き傍聴をする機会を得た。この場を借りてご協力頂いた方に深くお礼を申し上げたい。

◆「嫌がらせ」としか思えない行為を傍聴女性に行う職員たち

本コラムでご紹介した通り429号法廷はいつも「警備法廷」だ。法廷前では多数の裁判所職員が列をなし、鞄や携帯電話などの所持品は全て裁判所の命令で「一時預り」を強いられた。

筆記用具だけは持ち込みが認められているはずなのだが、女性傍聴者に対して複数の職員が取り囲み「ノートの中を見せろ」と不当な恫喝をかける。私もノートの所持は確認されたが、中を見せろとは言われなかった。

429号法廷では女性に対して、嫌がらせとしか理解出来ない行為が多発していると聞いていたが、目前で不当行為を目にする事になった。私を含め数人が「自分はノートの所持を確認されただけなのに何故この人にだけ内容確認を強要するのか」と問い詰めると職員は何と「金属探知機」を持ち出し、女性のノートの裏表に「金属探知機」をかざし(何の意味があるのか?)「ご協力有り難うございます」と発言し、去って行った。

◆警察官に連れられて入廷した「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」

傍聴者が法廷に入ると裁判官は「傍聴者は声を出したり拍手などをすると退廷を命じます」と恫喝とも言うべき異例の注意を言い渡した。定刻7分遅れで手錠と腰縄をかけられた「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」が警備の警察官に連れられて入廷し、手錠と腰縄を外され、正面から裁判官と向かい合う位置に二人、弁護士席の前に警察官を挟んで着席した。

この着席位置に弁護側から「被疑者を全員弁護士席の前に着席させよ!」と要求が出されたが、裁判官は取り上げなかった。が判官が事件名を小さな声で読み上げ、弁護側の主張に移った。

弁護士は「本件は逮捕建造物侵入を容疑とした逮捕自体が不当であり、3人は即時に保釈されるべきである」と8項目の求釈明を求めた。しかしそれに対して裁判官は肝心な質問には「答えません」とまともな回答をしない。堪り兼ねた傍聴席から「説明しろ」と声が上がると、裁判官はすかさずその傍聴者に「退廷を命じます」と最初の退廷を出した。

◆被疑者の住所を不明としながら3人の自宅の家宅捜索を行った不合理

その後も弁護団から厳しい質問が相次ぐが、相変わらず裁判官は「答えません」を連発する。

明らかに裁判官は回答から逃げており法律の素人にもその矛盾が明らかだった。

特に勾留の理由に被疑者の住所が不明としながら3人の自宅に家宅捜索を行っている不合理は際立っていた。

その後、3被疑者の意見陳述に移り、各人が10分不当逮捕を糾弾した。被疑者の発言に共感した女性が小さく拍手をすると、裁判官はまたしても退廷を命じ、5、6人の職員が女性を抱え上げ法廷から排除した。

次いで弁護団の意見陳述が行われ「明確な不当逮捕」を厳しく追及して、一連の審理は終わった。

◆閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した裁判官

その瞬間、傍聴席から「仲間を取り返すぞ!」と大声が上がった。すると傍聴席に控えていた職員が傍聴席と法廷の間に列をなし傍聴者の静止を試みる。しかし法廷内の被疑者は両手を上げて強い意思を示し、応じるように傍聴者から次々激励と裁判官糾弾の声が相次ぐ。

たまらずに裁判官は閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した。

午後2時、裁判所は3人の保釈決定を弁護団に伝えて来た。

午後6時半、釈放された3人がテント前広場に集い報告集会が行われている。


◎[参考動画]岩上安身による火炎瓶テツ氏インタビュー(2013年12月30日)


◎[参考動画]火炎瓶テツさん、「憲法改悪と護憲」について語る(2013年4月29日)


◎[参考動画] 火炎瓶テツ@辺野古新基地建設NO!防衛省抗議行動(2015年1月13日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎火炎瓶テツさんの勾留理由開示公判が東京地裁「429号法廷」で行われる意味
◎「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義

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火炎瓶テツさんの勾留理由開示公判が東京地裁「429号法廷」で行われる意味

先日来お知らせしている「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が6月8日(月)10時から東京地裁429号法廷で行われるとの情報を得た。

やはりかと思ったが、法廷は「429号」だった。

東京地裁429号法廷は特別な法廷だ。通常の法定であれば刑事事件(裁判員裁判の殺人事件)であっても、民事事件であっても、傍聴席に空席がある限り、開廷前であれ、開廷中であれ誰でも法廷の傍聴席に自由に出入りできる。

が、東京地裁「429号」法廷は特別だ。ここは常時「警備法廷」として準備されている特別に警戒が厳しい部屋として、業界では悪名高い。

通常の法廷であれば傍聴者は荷物を持って傍聴できるけれども、「429号」法廷の場合ほぼ間違いなく裁判所の職員に鞄所持品、携帯電話などを預けなければならない。加えて私の過去の経験から言えば、裁判所入所時に金蔵探知機で所持品を調べられているのに、この部屋に入る際に更に全身を調べられた。

部屋の前の廊下には目つきの鋭い裁判所職員(?)が常駐し、その姿は何も知らずに訪れると、相当威圧感を受ける。

◆「429号法廷」とは傍聴者たちに対しても「本気で弾圧するぞ」という権力の意思表明

「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が429号法廷で開かれること自体、裁判所や検察は「本気で弾圧するぞ」と言う意思を示していると了解しても間違いないだろう。この場所は主として新左翼活動家や暴力団の抗争などの刑事事件で専ら使われる法廷でもある。

当日、傍聴予定の方はあらかじめ、そういった場所であることを覚悟しておいた方がいい。一般の法廷と雰囲気が全く違う、威圧的な雰囲気の中で「勾留理由開示公判」は行われる。

高々建造物侵入(といっても「押し入った」わけではないのに)容疑で「警備法廷」をあてがうほど、国家(権力)は警戒しているということだ。

「火炎瓶テツ」とその仲間たちは丸腰の人ばかりなのに。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎合法ラディカルな自由メディアの天使「ノエル」少年を権力が恐れる本当の理由

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「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!

6月3日夜(19時~21時)警視庁東京空港警察署(羽田)で、先月28日に不当逮捕され、現在も同署に勾留されている「火炎瓶テツ」氏への激励行動が行われた。警視庁は都心からわざと通いにくい場所を選定して彼らの勾留を決めたのだろう。だが平日の夜にもかかわらず約70名の人が集まり、次々に激励のメッセージを語ったり、歌で伝えたりした。同様の激励行動は5月30日(日)の日中にも行われていて、その際は100名を超える人が参集したという。激励の場では、警察署内の「火炎瓶テツ」氏から(弁護士経由)のメッセージが読み上げられた。「30日激励行動の声が二度聞こえた」と。

激励行動に参加した複数の人がその模様を中継していた。中継画面を視聴している人数も数百人に上る。「火炎瓶テツ」氏逮捕が如何に注目されているかを示す数字だ。

◆凄まじい拡大解釈による「接見禁止」で被疑者の心を萎えさせる

3日は空港から警察署まで徒歩10分ほどの間に私服制服警官が数人、警察署では20名程の警察官が警備にあたっていた。現在「火炎瓶テツ」氏は「接見禁止」(弁護士以外の面会が許されず外界と完全に遮断される)が付けられている。最近集会やデモで逮捕された人には微罪であっても裁判所はいとも簡単に「接見禁止」を出す。「接見禁止」は証拠隠滅や逃亡の恐れがある被疑者に基本限定されるはずだが、その拡大解釈振りも凄まじい。

逮捕勾留された経験のある人物(西宮市に本社のある出版社社長)によると「接見禁止はきつかった。弁護士も毎日来てくれるわけではないし、こちらから手紙は出せても返事は一切受け取れない。あれが長期間続いたら精神がどうなっていた事やら」とその辛さを語っている。某出版社社長は神戸の不便な場所に勾留され、しかも突然の事件で支援体制も整っていなかったことから外部からの声援などでの応援はなかった。

◆「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」(山田悦子さん)

だが、別の逮捕経験者によると、警察署あるいは拘置所外部からの激励は、時としてとても大きな力になるという。まだ若かったある活動家はデモの際に逮捕勾留され連日の厳しい取り調べの中で「完黙」(完全黙秘、事件についての聴取で何も語らないこと)を貫こうとしたが、精神的に参ってしまい、不覚にも供述を始めてしまった。その時警察署の壁の外から「××君絶対完黙で頑張れよ!」との声が聞こえ、ふと我に返り再び「完黙」を貫き通せたという。

甲山事件で冤罪被害者にされた山田悦子さんは講演の度に「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」と語っている。

何を言いがかりに逮捕されるか、少し真面目に政治や社会のことを考えて行動している人には全く油断のならない時代だ。運悪く逮捕されても、余程無茶な起訴をされないかぎり23日で勾留は終わる。その間肝要なのは「完黙」を貫くことだ。取調官は時に甘い言葉で、時に脅しを込めてあれこれ誘導してくるが、とにかく逮捕された件については一切話をしないことが、その後の裁判の行方を左右する。

こんな事、「火炎瓶テツ」は先刻ご承知だろうけれども、今外から彼を支援している人の中にまだご存知ない方がいるかもしれないので念のためお伝えする。

◆6月8日東京地裁で行われる「勾留理由開示」公判の重要性

尚、「火炎瓶テツ」は勾留理由開示公判を要求し、時刻は未定も8日月曜日に東京地裁で公判が開かれる。勾留理由開示公判とは被疑者が「なぜ勾留されなければならないか」を裁判所に問いかけ、明らかにするための特別な法廷だ。不当逮捕や弾圧の際には保釈へ向けた意思表示の一助となるし、「接見禁止」が付けられていても、法廷で傍聴人と顔を合わすことが出来るというメリットもある。勾留理由開示公判は勾留に納得しない被疑者が裁判所をいわば追求する場でもあるので、時に荒れる。

傍聴券が出るほどに傍聴人が参集すれば裁判所に対する大きな圧力になる。東京在住でお時間のある方は関係者に時刻ご確認の上8日は東京地裁へお出かけになると貴重な体験が出来るかもしれない(尚、世間の注目が高まったり、勾留理由開示公判を請求すると、微罪の場合その直前に保釈されるケースも多いので念のため)。


◎[参考動画]2015.05.29「不当逮捕への抗議と…仲間への激励行動」警視庁丸の内警察署前【1/2】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
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◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気

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合法ラディカルな自由メディアの天使「ノエル」少年を権力が恐れる本当の理由

15歳の少年「ノエル」が各所で「ドローン」を駆使した「中継」を行い、それがマスコミで「問題視」され結局逮捕されたのは5月21日であった。迂闊にも彼の活動の詳細について追跡をしてはいなかったので、「ノエル」の活動をここ数日ネット上で確認するまで、その意味と逮捕の不当性についてよく理解できていなかった。

彼は2月頃から全国各所に赴き「配信」を始めている。もっともその前からネット上では様々な議論や発信を行っていたようであるが、「ノエル」の独自性が発揮されるのは何と言っても「自分の顔を映しながら」各所で警察に囲まれるも、それをことごとく「論破」する場面であろう。


◎[参考動画]15歳少年、警察に腕つかまれて連行されそうになるが断固拒否して退散させる

例えば、福島から「配信」された映像では制服警官や補導員が「ちょっと警察所行こうよ」、「これ補導だからね。私補導員だから」と誘導しても「任意なんですか? 任意なんでね。ならお断りします」と至極真っ当な法律の原則に立ち反論する。制服警官は「ノエル」の両腕を掴み強引に(この行為自体「任意同行」を拒否している人間に対しては違法行為だ)引きずり回わし、「名前は何っていうの」、「どこから来たの」と執拗に攻め立てるが「答えません。答える必要がありません」と退ける。補導員と称する女性には「今、補導対象時間外ですよね」と正論をぶつけると「でも、学校に行っていなかったらだめでしょ」と間抜けな応答しかできない。


◎[参考動画]【ノエル】150519 JR有楽町前でドローン撮影をし警察トラブル

有楽町駅前でも同様の光景が展開される。「翼のついていないドローン」を用いて配信を行っていた「ノエル」を何者かが「不審者がいる」と警察に「通報した」と理由を述べ多くの警察官が「ノエル」を囲み「ここは迷惑だから警察署行こうよ」、「危ないから」と誘いをかけるが、「ノエル」はまた「任意ですか?なら応じません」、そして「翼のついていないドローン」を示し「これ飛びませんよね。飛ばないから危険じゃないですよね。何が問題なんですか」と明晰に「配信」視聴者に語り掛ける。正にその通り。翼のない小型ヘリコプター玩具は飛べはしない。プラスチックの固まりに過ぎない。

◆大人と日本の嘘が見えてくる──「個」として思考し、行動する少年ノエル

「ノエル」はまた、自身の行動を歪曲報道したフジテレビにも出かける。そこでニュース番組責任者との面会を求め、応対するフジテレビ社員と応酬を繰り広げる。「ノエル」は以前のニュース番組で自分が歪曲報道されたので、その日放送するニュース番組内容を確認させてくれ、と要求するがそれは出来ないと断られる。すると以前の番組で取り上げられた「ノエル」を模した3Dの画面をパソコン上に示し「これ、僕ってわかりますよね。だから責任者の方と話がしたいんです」と証拠を示し「報道被害の防止が目的」である旨を伝える。フジ社員は「事前に番組内容をお知らせすることは出来ません。放送後ご意見があればご意見を伺う窓口にお伝え下さい」と紋切型で切り抜けようとするが「ノエル」は「放送されると取り返しがつかないんですよ。間違いを放送されて、全国の人に勘違いされた後ではどうしようもないんです。だから番組責任者の方と話がしたいんです」と正論を述べる。フジ社員はごちゃごちゃ言い訳を並べるけれども、どちらに論理的な非があるかは明らかだ。

川崎市で起きた少年殺人事件の容疑者宅前にも出かけている。ここでも「不審者」の通報があったとして警察に囲まれる。警察は「個人のお宅を撮ったら迷惑になるでしょ」と言うも「ノエル」は「僕は僕の顔しか撮っていません」と応じるが、その様子を周りで囲んでいた「マスコミ」が一斉に「ノエル」を撮影し出す。背後から「ノエル」のパソコンのディスプレーを堂々と撮影しているテレビカメラもある。警察は大勢の「マスコミ」取材陣には一切お構いなしだ。煌々と目がくらむような照明を向けテレビカメラやマイクを向ける「大勢」と、パソコンを抱えそれに向かって小言で話している一人とどちらが「迷惑」なのかは常識的な想像力を持った人間であれば理解できよう。

「ノエル」は各地の祭りにも出向き、最終的に浅草の三社祭に「行きます」と言った為に同所で逮捕(ドローンを飛ばしていないにもかかわらず)されたようだ。

「ノエル」を各所で「尋問」していた警察官は「君は誰なの」、「中学生だったら危険があるから保護しないと」、「なんでここにいるの」、「どうやってここに来たの」、「カバンの中には何が入っているの」とクドクドどうでも良いことを聞き出そうとしていたが「ノエル」は冷静に「任意なんですね、なら答えません」と一貫して突っぱねていた。でも、若しこの質問者が警察ではなかったらこれらの行為はどう評価されるだろうか。腕を掴んで引き回す行為は「暴行罪」に明確に該当するだろう。私的な事を付きまといながら、答えることを嫌がっている人に聞き続ける行為は「ストーカー行為」そのものだ。

「ノエル」が15歳であることのみに活路を見出した警察は、しきりに「保護」や「安全」、「君が誰かわからないと心配」などと繰り返しているが、それらが本音ではないことも明らかだ。警察(権力)が懸念したのは「ノエル」の独立した意志に立脚した実に多彩な行動に他ならない。Ustreamやツイットキャスティング、その他様々な方法で個人が各所から映像を配信できる技術が確立された。既にそういった配信方法を利用した「ビジネス」を確立している企業があるし、個人もいる。

だが新配信技術の魅力を知った人の中には、あっという間に「配信内容」よりも「儲け」あるいは「アクセス数」が頭の中で先行し、既存マスコミと何変わらぬ思考に陥る人も少なくない。

「ノエル」の頭の中にも「視聴者を広めたい」という欲求はあったろう。しかしそれ以上に彼の興味、関心領域は無限の如き広がりを見せ、数知れぬアクティブな配信へと自身を突き動かしたのだろう。前回記事「火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働」の中でも指摘したが内容の如何を問わず、「個」として思考し行動する者を何より国家は危険視しする。その補完機関たる「大手マスコミ」も同様だ。

◆放送という既得権が「個人」に侵食されることを恐れるマスメディア


◎[参考動画]ミヤネ屋のノエル逮捕報道

「ノエル」逮捕について、救いがたく低劣な思考を恥じぬことで有名な宮根誠司は「ミヤネ屋」の中で「こんな事をやっていること自体がもうね、人として良いのか悪いのかって判断がついていないこと自体が、自分が取れない映像をを撮ってそれを沢山の人が見て、更に現金化できるぞって、だったら何をしても良いっていう。15歳にもなってこういう事をしてしまうのが問題ですよね。大問題ですよね」とまくし立てている。

己達の頭が硬直して15歳の発想と取材力に至らないことへの口惜しさを見当違いの個人攻撃に向ける宮根。何が大問題なものか!「ノエル」が「配信」したことよりはるかに悪辣な「プライバシー蹂躙放送」(例えばこの番組自体)を生業にして飯を食っているのがお前たち「腐れマスコミ」ではないのか! その証拠に川崎市での容疑者宅近くでの警察による「ノエル」包囲の際、大マスコミはハイエナのように「ノエル」の姿、パソコンの表示画面までを「ノエル」の許可もなく撮影していたではないか。

マスコミが「ノエル」を批判するのは奴らの儲けの領域が一個人により浸食されかかった事への危機意識と憎悪の現れである。既得権である「ニュース」と言う名の偏向報道の現場を全く視点が異なる「個人」に侵食されることがマスコミには許しがたいのだ。

私はある程度の年齢に達すれば、人間の思考能力に大差はないと考える。自分の中学生時代を思い返しても友人にはその辺りで「お笑い芸人」と呼ばれている連中より余程感性が優れていて、テレビに出せば確実にプロを凌駕する悪友が沢山いた。逆に年齢を重ねようとも成長しない人間は全く成長しない。しかし実質年齢だけは重ねていくので、一様に年配者はそれなりに「賢明」だという勘違いが世間にはあるが、大いなる間違いである。だから私は「ノエル」の行動と年齢の関係をことさら特異な物とは考えない。

「ノエル」は釈放されたら更に行動に磨きがかかるだろう。

◎[参考資料]粉川哲夫の雑日記─[12]「日本の発展」(2015年5月31日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
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◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
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火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働

5月28日経産省前で3人の市民が逮捕されたという報に接した。「『戦争法案反対国会前集会』を終えた3名が、経済産業省本館の門扉外側のスペースで抗議行動を行っていたところ、警備員の通報を受けた警察官により身柄を拘束されてしまいました」と友人は語っている。経産省の敷地に入った「建造物侵入」が逮捕容疑のようだが、言いがかりであることは明白だ。

◆火炎瓶テツさんと仲間たちの逮捕容疑は明確な意図に基づいた「言論弾圧」

これは明確な意図に基づいた「言論弾圧」である。逮捕された3名の中の1名は、反原発や反戦争など主として経産省前、だが時に応じて文科省前、東電前や米国大使館前などを自在に移動し、「決して逮捕されない」ように細心の配慮を払って活動していた「火炎瓶テツ」さんだ(本名は書かないが事件の性質上彼の「仕事名」は明かした方が良いと考え、顕名とした)。


◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』終了後?火炎瓶テツと仲間たち【10/10】

私は彼を良く知っている。彼の明晰さと行動力、そして人に訴えかけるアジテーション、即興のラップリズムに乗せた風刺のメッセージ。

東京で抗議行動に参加された方の多くは彼の顔や声を聞いたに違いない。「大丈夫?」と聞くと「何やられても絶対逮捕されませんよ」と昨年語っていた彼は、3・11後大勢が官邸前に集まるのを確認しながら、自分の活動拠点を取り敢えず「経産省前」としたようだ。この点「経産省前テント広場」の方々と着眼点の共通点がある。慧眼だ。

彼のバイタリティーには恐れ入っていた。灼熱の夏の日も、極寒の冬の日も週に最低2、3回は「仲間」とともにどこかで抗議活動を繰り広げている。

そう彼には、彼と共に活動を続ける「仲間」がいる。だから抗議行動の名前は常に「××反対!!火炎瓶テツと仲間たち」となっていた。逮捕された時にも多くの仲間がその現場を確認していたことだろう。

◆下地真樹=阪南大准教授「不当逮捕」と共通する「狙い撃ち」

2012年12月大阪で公安に逮捕された阪南大学経済学部准教授、下地真樹氏(「モジモジ先生」下地真樹さんの声明「警察はウソをついて私を逮捕」)のケースとの共通点も見いだせる。それは彼が単なる「抗議活動参加者」ではなく、優れて自分の言葉で問題の中心部を抉り出し、それを行政なり企業なりに直接ぶつける議論に「ひとりで」対抗できる頭脳と行動力の持ち主と言う点だ。

実は権力にとっては10万人の集会よりも、「個を確立した」10人の方が恐ろしいのかもしれない。党派にも属さず、自分の皮膚感覚と経験、そして学習に依拠して毎度毎度異なるテーマ―で悪政の根本を糾弾する「火炎瓶テツ」は、そろそろ「好きにさせておいてはいけない」と判断されたのだろうか。

彼のニックネームはやや「過激」に聞こえるかもしれないけれども、この時代、心の中に「火炎瓶」を持つぐらいの怒りを持たない方がどうかしている。

◆理性のある人間が戦争に反対し、戦争推進の動きに怒るのは当たり前

国会の中で安倍は一体何を語っているのか? 有事関連法制などというが、その実「どのように戦争を執り行うか」(しかもその前提は極めて根拠が曖昧・希薄である)の技術・解釈論だけであり、呆れるほど結果に対する洞察力を欠いている。戦争が起きたらどんなに非常が待ち受けているかを、真剣に想像している方々がどのくらいいるであろうか。残念ながらそういった懸念なしに過ごすことの出来ない日常が今日の姿だ。政府により戦争への明確な準備が目の前で行われている。

いくら嫌がっても残念ながらそれが現実だ。「人殺し」はいけない。どのような理由があろう避けるべきだ。だが戦争は国家が「お墨付き」を与える「合法的殺戮行為」だ。私的な「人殺し」に反対するのであれば「戦争に反対する」のは明々白々じゃないか。日本の憲法がどうであれ、日本の友好国がどうであれ、もっと言えば自分の親戚や身内が賛成しようとも、理性のある人間は戦争に反対し、それを推し進めようとする動きに怒るのは当たり前ではないか。戦争推進に怒ることなくして、一体何に怒れというのか。

◆「個」を持った「まつろわぬ」人たちがどんどん駆られる島国ファシズム第二段階

国家にとって目障りで邪魔なのは「個」を持った発言者・行動者だ。だから今回の逮捕は「火炎瓶テツ」には気の毒ではあるけれども、とうとう「戦争扇動者」安倍により「こいつは野放しに出来ない」と認められた勲章ともいえる。仮に不当な起訴や重刑が語られれば話は別だが、いくらなんでも大した罪状で罪は問えまい。

私は今日もまた「ついに来たか」と感じた。水際はどんどん迫って来る。影響力はないもののある意味「発言者」である私にとって、「火炎瓶テツ」の逮捕は他人事ではない。彼の主張は私の思想に比べれば余程穏便だったのだから。

これから、どんどん駆られるだろう。「個」を持った人間が、「まつろわぬ」人たちが。この島国のファシズムは第二段階に入った。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

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「工藤會壊滅ありき」で福岡県警が強引に人権を無視し続ける邪な理由

そろそろ福岡県警をぶったたくタイミングが来たようだ。僕は福岡県警を叩き、工藤會に味方する。なにしろ福岡県警は強引だからだ。

たとえば5月15日、福岡県内にある指定暴力団工藤會系の組員が広島県内で拳銃を不法所持した疑いが強まったとして、警視庁は5月15日、福岡県中間市と北九州市の組事務所を容疑者不詳のまま銃刀法違反(加重所持)の疑いで家宅捜索したようだ。

◆逮捕の理由が強引すぎる福岡県警

組織犯罪対策5課は、捜索容疑として組員が昨年1月ごろ、広島県内で回転式拳銃1丁と実包6発を密売人から購入し所持したとい点をあげている。朝日新聞によると「工藤會のヒットマンをしている組員が幹部の指示・命令で、拳銃と実包を20万円で購入し、ある事件で使った」との情報が昨年8月に寄せられたことなどから捜索したようだ。

だが、中間市の組事務所には午前9時過ぎ、捜査員約30人が入ったものの、いずれの事務所でも押収物はなかった。5月22日には、福岡県北九州市で起きた歯科医師に対する殺人未遂事件で、実行犯に殺害を指示したとして、警察は、全国で唯一の特定危険指定暴力団・工藤會のトップら4人を再逮捕した。(朝日新聞2015年5月22日

再逮捕されたのは、工藤會総裁の野村悟容疑者(68)やナンバー2の田上不美夫容疑者(58)ら4人。野村容疑者ら4人は去年5月、北九州市小倉北区で歯科医師の男性を殺害するよう配下の組幹部らに指示した疑いが持たれているという。男性は刃物で襲われ重傷を負い、実行役とされる工藤會系組幹部ら4人が逮捕・起訴されていた。

「県警察は、県民の願いである工藤會の壊滅に向け、いささかも手を緩めることはありません」(福岡県警 吉田尚正本部長)

そうこうしているうちにこんな判決も出た。

「工藤会理事長代行・木村被告に懲役3年判決」(読売新聞2015年05月27日)

組長を務める暴力団事務所が入居するビルを脅し取ろうとしたとして、恐喝未遂罪などに問われた特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)理事長代行の木村博被告(62)の判決が26日、福岡地裁であった。岡部豪裁判長は「暴力団特有の身勝手で反社会的な犯行」と述べ、懲役3年(求刑・懲役4年)を言い渡した。
岡部裁判長は動機を、ビルを組事務所として使用し続けるためと認定。配下の組員らに脅迫させるだけでなく自らも脅していたとして、「極めて執拗で、被害者に強い恐怖感を与えた」と指摘した。判決によると、木村被告は北九州市八幡西区のビル所有者の親族に対し、2009年6月、「事務所を売れ」と脅迫。昨年7、8月には他の組幹部らとともに、親族らを「あんたの嫁や子供たちと話をするわけにはいかんからな」と脅し、ビルを取得しようとした。(読売新聞2015年05月27日

◆「推定無罪」の事件を執拗に掘り起こす裏にある「天下り先作り」

工藤會に対する福岡県警のやり方を見ていると、まずは「暴力団壊滅のモデルケースとするのだ」という福岡県警の意地と、強引さを感じる。たとえば総裁の野村悟が、1998年に同市で起きた漁協の元組合長射殺事件に関与したとして、福岡県警に逮捕された発表した。ナンバー2で会長の田上(たのうえ)不美夫(ふみお)も殺人などの疑いで指名手配された後、逮捕された。

「なぜわざわざ16年前の事件を掘り起こしてまで逮捕したのか。射殺に関して共謀したとされるが、まったく物理的証拠はなく、証言だけだ。こんなものが通ったら、たれ込みがあったら、物理的証拠がなくても誰もが犯人にされちまうぜ」(都内弁護士)

16年前の事件で実行犯らの有罪がすでに確定している。実行犯ですら、総裁や会長たちの関与は語っていない。つまり、98年2月18日に同市小倉北区の路上で起きた脇之浦漁協の元組合長(当時70)射殺事件に関与した疑いがあるというが、限りなく「シロに近い」かもしれないのだ。

今の時点で、この疑惑については「推定無罪」なのだ。にもかからわらず、弁護士によると「身に覚えがない」と否認しているという。暴力団対策センターや反暴力団体などがいくつもでき、警察のOBが講演や勉強会などで飯を食うための措置が何重にもとられているのだ。

「工藤會へのアプローチは警察にとっては、見ばえがいいものかもしれないが、天下りの理由を作っているということも忘れてはいけない」(ヤクザ雑誌ライター)

福岡県警に聞いたところ「平成26年には、16人の暴力団員が『脱組』を希望したが、工藤會かどうか確認していない」という。福岡の暴対センターも声高に「組からの離脱者を増やす」といっているくせに、「昨年の16人が離脱の希望者のうち、工藤會が何人いるかは掌握していない」という。おいおい、ふざけるのもいいかげんにしたらどうだ。じゃあ、警察と連携している暴対センターはどうだろう。

県警も、暴対センターも、工藤會の殲滅をさんざんアピールしておきながら「離脱者のうち、何人が工藤會かわからない」とは、いったいどういう了見だろうか。ふざけるにも限度というものがある。

ゆえに、工藤會を締め付けて「派手にヤクザを締め付けたという印象を全国にアピールしたい」という邪な感覚が署長にはあったといえまいか。

◆工藤會がいまも有する「昔ながらの川筋気質」

工藤會は、昔ながらの川筋気質で「工藤會を取材しましたが、駅についた時点から、客に鞄を持たせない。何台かで組事務所まで送っていただきましたが、きちんと車がスムーズに通るようなフォーメーションもできています。昔ながらの川筋気質で、極道の中でも本格派ですよ。そうした気質があるからこそ、意地でも警察には負けられないのでしょう」(影野臣直・作家)

工藤會の幹事長代行の木村博も、「事務所がはいっているビルを工藤會にただでくれ」と脅したとして逮捕されている。これも否定しているという。要するに、いずれの案件もすべて「推定無罪」なのだ。なのに、工藤會は危険だ、というイメージを植え付けているのが警察連中だ。これは、権力による「蠕動」だといっても言い過ぎではない。

◆「われわれはマグロなどの回遊魚と一緒」(木村工藤會幹事長)

2012年11月末、年末のあわただしい中で鹿砦社の書籍『「改定」暴対法―変貌するヤクザと警察』(田口宏睦著 岡田基志監修)の取材に応じてくれた木村幹事長(当時・現在は理事長代行)は、気さくにさまざまなことを話してくれた。
「われわれはマグロなどの回遊魚と一緒。動いていないとおぼれて死んでしまう」と語っていた。つまり、警察の締め付けがいくらきついからといって、音をあげていては、ヤクザとしての矜持に関わるというのだ。

「そりゃ、警察がいくら締め付けても、金儲けの知恵を考えて、すり抜けるのがヤクザ。どんなに締め付けても音をあげないと思いますよ」(前出・影野臣直)
僕が警察に対する怒りを感じるのは、福岡県に福岡県警が差し込み、「有害図書」としてコンビニエンス協会から僕と宮崎学で作ったヤクザが主人公の漫画本を撤去させたからだ。宮崎学は怒り心頭となり、福岡県相手に訴訟を起こした。当然のことだ。宮崎学ブログ(http://miyazakimanabu.com/2010/04/01/691/)

僕は作家を守り、出版社は見放した。たったそれだけのことだが、僕は宮崎の側に立ち、裁判に協力した。2014年7月に、この訴訟は宮崎側の負けとなるが、実にこの訴訟は勉強になった。

なにゆえに、福岡県警は、工藤會相手に「おとなげない」ほどにむきになるのだろうか。

人権派弁護士は匿名を条件に「ヤクザへの締め付けがなぜこんなに厳しくなったのか」について語る。

「警察が対ヤクザのNPOや社団法人に天下りしたり、企業に『対暴力団コンサルタント』的に雇ってもらったりするためでしょう」

僕から見て「茶番」に見える警察の工藤會殲滅作戦は、いつまで続くのだろうか。税金をもっと有効的に使っていただきたいものである。

(小林俊之)

◎むやみやたらと強化される「ドローン」規制の余波
◎見直すべきは選挙制度であって、憲法ではない──横浜「5.3憲法集会」報告
◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

『「改定」暴対法―変貌するヤクザと警察』(2013年2月鹿砦社)

 

 

ファシズム日本の予言書──辺見庸「抵抗3部作」がどれも絶版になっていた!

3・11後に日本社会の不条理を初めて考え出した若い知人に「最近の社会問題がわかりやすくて役に立つ本はないか」とかなり前に問われたので、10冊ほどを推薦したが、その中に辺見庸の『永遠の不服従のために』、『いま抗暴のときに』、『抵抗論』(いずれも単行本は毎日新聞社、文庫本は講談社)を入れておいた。

彼の人は私に意見を求めておきながら、なかなか腰が重かったようでつい最近になって連絡があった。「教えてもらった3冊とも、もう絶版になっていて、本屋に売っていませんでした」とのことだった。先般の船戸与一の逝去についで、また「え!」とメールを見ながら声を上げてしまった。

この3冊は21世紀に入っていきなりの9・11から米国のアフガニスタン侵攻、イラク殲滅の時代に対する辺見のエッセーや取材が収められているものだが、文庫の初版は2005年だった。今日的な国家主義、ファシズム急加速の序章を詳述した10年ほど前のこの3冊は、今読んでも(否、まだ未読の方々には今の時代にこそ)示唆と警告に満ちているのだが、あろうことか絶版だそうだ。

単行本ならばともかく、文庫でも買い求める人がいなくなったということなのだろうか。この事実、私にはかなりショックである。

いつのまにか絶版本になっていた辺見庸「抵抗3部作」(『永遠の不服従のために』、 『いま、抗暴のときに』、『抵抗論』いずれも講談社文庫)

◆辺見の「悪い予感」を上回って加速する日本の終末状況

絶版になっているの知ったので、まことに大雑把な種明かしをしておこう。「抵抗3部作」とも呼ばれたこの物々しいタイトルの3冊は辺見による「戦後民主主義終了、国家主義ファシズム完成、そして戦争へ」との警鐘が綴られたものだ。往時の米国大統領はブッシュで、日本の総理は小泉純一郎。前述の通り9・11、NYでは貿易センタービルに航空機が突っ込み2つの高層ビルが崩壊、ワシントンではペンタゴン(国防総省)へも同様の航空機突入など米国史上初めて本国に甚大な攻撃を受けた事件(これに絡んでは米国の謀略説も根強いが)を引き金に、猛獣と化した米国は戦争に猛進する。小泉もあろうことか憲法前文を「解釈抽出」して実質的海外派兵を行った。

「改革の本丸は郵政民営化」とのわかったようなわからないようなワンフレーズを多用する総理は、不幸にも絶大な人気を得、共産党支持者の中でも70%が支持をした。

また小泉は朝鮮を訪問し拉致被害者の一部が帰国を果たす(当時の官房副長官は現首相安倍)が、それにより在日韓国朝鮮人への差別が一層激化した時代でもあった。排外主義の激化があからさまになりだした。

一連の出来事は主として13-14年前で、この「抵抗3部作」が文庫化されたのが10年前である。

辺見の悪い予感を上回る第一次安倍内閣誕生から、いっときの民主党政権、そして3・11を経て自民党政権回帰へと、語られるべきテーマや登場人物は明らかに悪化の一途を猛進する。戦後最悪、否新たな戦争を運命付けられた「戦前」とも言うべき時代を迎えている。

2003年頃にいわば「終末」宣言を出していた辺見にすれば、もうこの期に及んで紡ぐ言葉などない、というのが本音なのだろうか、ここ数年の辺見の文章は「最後のアジテーション」とでも表現すべき「抵抗3部作」の激情的ともいう文体ではなく、総じて詩的である。

だからこそ「抵抗3部作」は戦後民主主義の死滅がいかなるものであったかを個々が総括するために、今日的終末状況が21世紀に入りどのように加速化したかを再確認するために(この書群では当然それ以前の状況への言及も豊かだが)是非ともこの時代に読まれるべき価値があると思う。

これからさらに暴虐の時代に突入することは間違いない。その心構えはあなたにあるだろうか。

◆辺見庸「抵抗3部作」絶版は単に「売れなくなった」ことだけが理由だろうか?

戦争の時代がやってくる。どうやらそれは辺見や私が懸念していたよりも到来の時期は大幅に早まるようだ。辺見は相当な危機感とそれまでの小説やエッセーで見せたことのない(たぶん辺見自身が忌み嫌う)直接的な表現をあえて多用し危機の深刻さと重大さを吼えまくっていたのだけれども、今読み返せば辺見の咆哮はそれでもまだ足らなかったのだ。

「抵抗3部作」絶版は単に「売れなくなった」ことだけが理由だろうか、などと意味もない詮索をしてしまう自分の未練たらっしさもみっともないけれども、げに、恐ろしい時代に生きているのだと痛感する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎5月17日熊本で知名定男プロデュースのライブイベント「琉球の風」2015開催!
◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』目下話題の6月号発売中!

 

これで『ヘイトスピーチ、許さない』? 法務省の呆れた人権感覚!

「秋篠宮ご夫妻の次女佳子さま(20)に危害を加える書き込みをインターネット上にして、皇宮警察に警戒を強化させたとして、警視庁捜査1課は21日、偽計業務妨害容疑で、無職池原利運容疑者(43)=東京都新宿区大久保=を逮捕した」

5月21日、時事通信のサイト「時事ドットコム」に、こんなニュースが掲載された。犯人は韓国人をよそおい『2ちゃんねる』に「佳子内親王を慰安婦にしよう」などと書いていたことから、ツイッター上には「韓国人はクズ」「大久保……バレバレ」「在日の仕業か」などの文字が躍った。しかし犯人は在日や韓国人どころか、新大久保でのヘイトスピーチデモに参加し、ツイッターで在特会幹部とメンションを振り合い、会話もしていた日本人の「ネトウヨ」だった。


◎[参考動画]佳子さま“脅迫”43歳男「悪ふざけ」の理由とは(15/05/21ANN)

◆「許さない」と啓発しながら「ネトウヨ」ヘイトクライムを野放しにする法務省人権救済局

韓国人をよそおい、憎悪を煽るようなマネを「スレッドを盛り上げるための悪ふざけ」(時事ドットコムより)のためにすることは、差別扇動、ヘイトクライム(憎悪犯罪)以外のなにものでもない。

「子供も見ているインターネット上で、在日への憎悪を煽る書き込みがされることは、本当に恐い。どうにか取り締まれないのか」

都内に住む40代の在日韓国人女性はそんな思いを抱き、22日に法務省人権救済局の『みんなの人権110番』に電話したそうだ。同省はヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動として『ヘイトスピーチ、許さない』というポスターを作成し、ヘイトスピーチ被害への相談窓口があることを広くアピールしているからだ。

法務省の啓発ポスター『ヘイトスピーチ、許さない』

※法務省の啓発ポスター『ヘイトスピーチ、許さない』
https://www.youtube.com/watch?v=FHGw5w299A8

「韓国人になりすまし、韓国や在日への憎悪を煽るために皇室を貶めるのは、重大な犯罪だしネットでの騒動が恐ろしい。そのような書き込みを取り締まることはできないのか」

彼女がそう言うと、電話に出た女性は、

「あなた自身の人権が侵害された際はその相手に連絡をするが、ネットで『在日韓国人』などと書き込んであるだけでは、対応することはできない」

と言ったそうだ。たとえば誰かのブログに自分の名前があげられ、そこで「あることないこと書かれていた」場合には、ブログ主に連絡をして削除要請をするが、相手が無視したとしてもとくに罰則はない。「それ以上のことを求めたいなら、弁護士に相談して欲しい」とも言われたそうだ。つまり差別扇動のために出自を偽ったり、SNS上で無責任な発言をして憎悪を煽ったとしても、法務省はなんら手を打つことはしないし、できないようだ。

◆『みんなの人権110番』に相談したら、思いっきり踏みにじられた!

また直接的な被害を受けた場合でも、犯人の特定は自身がやらなければならず、差別扇動者を探し出してはじめて、「相手と面談」しに行く。その際もあくまで「ヘイトスピーチはいけないと、止めるように要請する」のみ。面談自体も「応じてくれれば行くが、拒否することも可能」(担当者)。

では実際に面談して相手と話し合ったことがあるのか。そしてその後、ヘイトスピーチは止んだのか。彼女がそう質問すると「相談者から報告が来ることもあるが、事後調査はしていない」との答えが返ってきた。

「在日朝鮮人」へのネットでの差別扇動を止めることもできないどころか、直接被害に遭ったとしても、犯人を捜し出すのも慰謝を要求するのもすべて、本人か弁護士任せ。差別扇動がやんだかの、事後調査すらしない。ならば一体『みんなの人権110番』は、なんのために存在するのか。

「法務省が相談にのってくれる」と、希望を抱いた被差別者達を思いっきり踏みにじる結果になった法務省の『みんなの人権110番』。4月27日付の朝日新聞では、「(法務省はヘイトスピーチへの相談において)『精緻(せいち)に対応できる職員』を各法務局に置く方針」に触れていたが、現段階の対応は、精緻とはとても言い難い。その精緻な職員が育つまでの間、一体どれだけの人が差別扇動に苦しまなくてはならないのか。呆れるばかりの対応しかできないのが、日本の人権機関の実情のようだ。

▼柳瀬川みずほ
ニューヨーク州生まれ埼玉育ち。大学卒業後OLを経て、現在は政治から恋愛までを、ぬるま湯程度の熱さで神出鬼没に語る、女子力高め(になりたい)ライター。

◎「普通の人」こそ脱原発!──『NO NUKES voice』第4号が5月25日発売!
◎公正な社会を求める企業は脱原発に動く──『NO NUKES voice』第4号発売!
◎関西大学の教壇で鹿砦社の松岡社長が〈生きた現実〉を語る!

「普通の人」こそ脱原発!──『NO NUKES voice』第4号が5月25日発売!

 

むやみやたらと強化される「ドローン」規制の余波

4月22日昼、反原発をアピールする目的で首相官邸の屋上に小型の無人機、「ドローン」1機を落下させ、逮捕された影響は大きい。 全国で、公園や公共施設でドローンでの遊技が禁止されているようになり、法規制も検討されるようだ。「まじめに遊んでいる愛好家にはいい迷惑」の声も聞かれるが、「規制前にひと儲け」を企む連中がいる。

「いわゆる盗撮フリークですよ。真上にドローンを飛ばして、海の家から着替えシーンなどを撮影する。もちろん高性能カメラを装着しなくてはなりませんが、早くも九十九里浜では、あるチームが風向きの分析に興じているそうです。今年の夏は、海の家は軒並み、天井をつけなくてはなりませんね」(警察関係者)

カメラ搭載のドローンは、今や1万円前後で購入でき、メカに詳しくなくても、ロケーションさえ把握していれば、自在の場所にドローンを飛ばすことができる。

◆盗撮マニア向けのドローン撮影講習会も

「実は、報道されていませんが、盗撮マニアの間では、野外プレイを楽しみカップル向けに、真上からそのプレイを撮影する技術の講習会がマニア向けにあったようで、どんどん技術的には盗撮マニアの連中が腕を磨いています」(同)

実際に、そうした「盗撮マニア」向けのアダルトショップに行ってみるとドローンを使って女子高のテニス部の様子や、体育館をのぞき見したような映像、または、どう撮影したのか、女子小学生がプールで泳いでいるような映像も販売されています。彼らは、縦横無尽にドローンを動かして、撮影ポイントをなんとかして見つけて、エロい映像を切り取るプロなのだ。

「実は男女混浴で露天風呂を楽しむサークルがあって、ヌーディストたちがある温泉に集まっていたこともあったのだが、その情報すらも漏れていて、ドローンが入り込んで撮られたという話を聞いた」(都内スポーツショップ店員)

さて、女の露出があらゆる機会に増えるシーズンに入り、「ドローン」を使ってエロいシーンを撮るプランがそこかしこで練られているにちがいない。まあ彼らを追跡して捕まえようにも「ドローン」してしまって尻尾すらつかませないのだからやっかいだ。

◆「まさか空中にも警備が必要な時代が来るとは」と警備会社は大わらわ

警備会社は今、大わらわだ。実は福島第一原発で作業をしている人たちに聞くと「ドローンが原発の作業区域内にやってこないとも限らない」として、空中の警備をどうするか、東京電力や作業の請負い会社などが真剣に警備計画の見直しに入った。

万が一、原発の建屋に、危険な薬品を積んだドローンが飛んでこないとは、誰も言い切れないのだ。

果たして、法律の整備が追いつくだろうか。

たとえば、5月19日の中日新聞にはこんな記事が出ていた。
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ドローン規制条例を検討 サミット前提に知事 [中日新聞]
鈴木英敬知事は18日、志摩・賢島での開催を目指す2016年の主要国首脳会議(サミット)に関連し、賢島を含めた伊勢志摩国立公園の指定区域で小型無人機(ドローン)の使用や飛行を規制する罰則付きの条例を検討するよう庁内に指示したことを明らかにした。県内開催が決まった場合に制定する。県庁で記者団に述べた。
県サミット誘致推進プロジェクトチームなどによると、伊勢志摩国立公園は自然公園法が適用されるが、同法は景観や希少な動植物の保護が主眼で、ドローンの規制は困難。そこで要人の移動や宿泊、会議の出席などが想定される場所やルートを県が独自の条例で指定し、規制する。
鈴木知事は「(ドローンの法規制を検討している)国に呼応し、要人警護では万全を期したい」と強調。条例はサミット開催前後の期間も含んで適用する時限的な制定とし、年内にも県議会へ提出する意向を示した。同チームによると、ドローンの規制をめぐっては、軽井沢へのサミット誘致を目指す長野県の阿部守一知事も時限的な規制を検討する考えを示している。(相馬敬)
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まあ、サミットでドローンによるテロなどが起きたら大問題だ。「こんなところで五輪をやっている場合か」という議論にもなりかねない。

◆松本清張の小説世界もドローンがあれば実現できる『十万分の一の偶然』

昔、松本清張の小説『十万分の一の偶然』では、スクープ写真を撮りたいがために、走るトラックにラジコンでヘリコプターをトラックすれすれに飛ばす、というカメラマンが描かれたことがあるが、それは、確かに「痕跡がないので事故と呼ばざるを得ない」という状態を作った。今、ドローンはうまく使えば殺人すらも遠隔操作でできそうなほど(煙突から毒をまくなど)だが、ミステリー小説顔負けになるほど、この玩具は進歩したのだ。

ある面では、こうしたテクノロジーが進化するのは「戦争のせい」だ。グーグルアースがここまで発展したのだって、インターネットがここまで発展したのも、戦争の副産物だ。だが、戦争によって発展してきたものが、戦争に使われてはならない。ここは1つ、人類は知恵を集めて、ドローンを、なんとか人類が役にたつ方向、たとえば事故で閉じ込められた被災者に食料を渡すなど、でつかわれることを切に望むものである。

(小林俊之)

◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる
◎見直すべきは選挙制度であって、憲法ではない──横浜「5.3憲法集会」報告
◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

「医薬分業」や「お薬手帳」で利を得ている者は誰なのか?

読者の皆さんもご経験があろうが、疾病や怪我でクリニックや病院にかかっても、最近では病院では「薬」をもらえないことが当たり前になってきた。会計の時に診察費などを払い薬の「処方箋」を受け取り、どこかの薬局へ行き薬を購入しなければならない。

このように医療機関で薬を出さないように医師と薬剤師の分業化を進めることを「医薬分業」と呼ぶらしい。日本薬剤師会のHPには、

「医師は医学の専門家であり、薬物療法を熟知している半面、複数の薬を服用した際の相互作用や用量を増やした際に起こる副作用等の安全性については、薬という化学物質に精通している薬剤師のようには詳しくありません。それでも、目の前の患者さんが複数の病気や症状に悩んでいれば、医師は3剤、4剤と処方する薬を増やして助けようとするのが道理です。また、明治時代の開業医が診察料よりも薬剤料で生業を立てていたことも、過剰投薬と薬害を助長する土壌となりました。医薬分業を廃止し、薬学の専門家である薬剤師が医療の場から消えれば、今日においても、明治時代と同じ状況が起こりえます。

医薬分業はたしかに“二度手間”ですが、その“二度手間”こそが患者さんの安全を守り、最小の薬剤で最大の効果を上げることで、薬剤費の適正化にも役立っているのです」

とあり、日本薬剤師会の方々は「医薬分業」の推進派であるようだ。まあ、病院やクリニックで薬を出せなくなれば、必然的に薬局の需要が高まるのだから薬剤師の方々の職場は増え、歓迎するのは当然だろう。

◆説得力に欠ける推進派による「医薬分業」のメリット

だが、日本薬剤師会に限らず、「医薬分業」を推進する方々の展開する理由は今一つ説得力に欠ける。医薬分業を推進するメリットとされている点は、以下のようである。患者にとっては、

・重複投薬の危険防止になる。
・院外薬局での薬の充分な説明や投薬指導が受けられる。
・薬局を自由に選択できる。
・待合時間が減少する。
・処方内容の開示
・副作用防止

などが改善するという。

だが複数の医療機関にかかっている場合は「医薬分業」が「重複投薬」の抑止には何ら役には立たない。そういった批判をかわすためか薬局で処方箋による薬を購入しようとすると「お薬手帳はお持ちですか」と聞かれる。自身で薬の摂取を管理できない状態の患者さんにとって「お薬手帳」は有効だろうけれども、私は過去にどんな薬をどこで処方されたかなど、いちいち薬局に知られたくはないし、大方の医師は薬を処方するにあたっては既往症や、現在他に飲んでいる薬があるかを聞いた後に処方する薬を決める。

また社会全般に対しても「過剰投与の減少につながる 」と主張する人が多いが、果たして本当だろうか。薬剤師が仮に医師の出した処方箋に「過剰投薬」を発見したところで医師に対して「この投薬はいかがなものか」との質問を投げかけることなど、薬局の経営の観点からも、医師と薬剤師の力関係からも起こりえない空想だ。

都会にはドラックストアを兼ねた処方箋薬局が林立し、それとは別に処方箋のみを扱う薬局も増加している。小さなクリニックの近くで営業する処方箋薬局の薬剤師が「お客さん」であるクリニック医師の意向に異議を申し立てられるだろか。

たしかにミスに近い小さな過誤を発見できる程度の効用はあろうが、「過剰投薬」を防止するといった観点から医師に対して処方箋上に指示された薬を「取り消すように」と進言できる薬剤師(薬局)など構造的に存在できるはずがない。仮に厳密に進言を行えば「うるさい薬局(薬剤師)」として干されてしまうことは間違いないだろう。

また、薬剤師が「薬」のプロであることは間違いないにしても、処方箋薬局に勤務する薬剤師は商いとしての「薬屋」と言う側面も持つ。患者の症状に応じた薬剤の提供は薬剤師の義務だろうが、同時に「薬局として」売り上げを上げていかなえれば経営がおぼつかない。ここに私は「医薬分業」の決定的な矛盾と欺瞞を感じる。

たしかに大病院内でしか薬が処方されないと、診察後にさらに待ち時間が長くなる。そんなケースには処方箋薬局の存在は有難い。しかし病院にかかる患者は怪我や疾病で体の具合を悪くしているのだ。手間は一度で済むにこしたことはない。私のように田舎に暮らしていれば、医院と薬局2箇所を回るのはかなり余計な手間であるし、体への負荷になる。

◆「院外処方」では病院の経費が削減され、患者の薬価負担が増える

しかも、重要なことは「院外処方」を受けると「院内処方」よりも患者の薬価負担が確実に増えることだ。私自身が過去胃の調子が悪く近所のクリニックで診断を受けた際に1種類の薬を眠前に飲むように、と「院外処方」で薬を貰ったことがある。その時薬局でも受け取った「領収書」の内訳は「調剤技術料」191点、「薬学管理料」41点、「薬剤料」240点である。合計点数が472点だから総額は4720円に相当しその内「薬代」は2400円なのだ。この金額のうち自己負担は3割だから私の支払総額は1420円だった。

しかしクリニック内で「院内処方」として薬を出してくれるのであれば、「調薬技術料」や「薬学管理料」は徴収されないから薬代は2400円×0.3となり、720円で済むはずだ。処方される薬の種類や量にもよろうが、私のケースでは「院内処方」と「院外処方」ではほぼ倍の金額を払わなければならなかった。

更に「医薬分業」には重大な落とし穴がある。クリニックや病院は薬を出さなくなるから製薬会社から薬を購入する経費が大幅に削減できるだろうけれども、「処方箋薬局」は原則全国どこの病院で出された処方箋にも4日以内であれば対応しなければならない。内科、外科、皮膚科、眼科、精神科など、基本すべての診療科が出す「処方箋」に対応する在庫を揃えておかなければならないのだ。

小規模の薬局でそれは可能だろうか。不可能だ。実際に処方箋薬局にいっては見たものの、「在庫がありませんので後日お送りします」と言われたことのある読者も少なくないだろう。

総合病院の薬局が担っていた在庫と同等の種類を揃えておかなければならないのが今進んでいる「医薬分業」だ。そんなことが全ての薬局に担える道理がない。

前出の日本薬剤師会によると、

「2012年度の1年間に全国で発行された処方箋の枚数は7億5888万枚にのぼっていますが、医薬分業率は66.1%に達し、完全分業にようやく近づきつつあります」

そうだ。しかし患者の立場ならすれば「医薬分業」の全面実施は迷惑な話であることこの上ない。完全に医療機関と薬局を分離するのではなく、患者が希望する医療機関には薬局機能も残し、「院外処方」を扱う薬局と並存させるというのが現実的かつ、無理のない運用ではないだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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