使用済み核燃料の行き場はありません! 関電は、またも詭弁、奇策で誤魔化そうとしています! 関電に約束を履行させ、老朽原発を廃炉に! 木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)

◆原発を運転すれば、危険で、行き場のない使用済み核燃料が発生します

燃料プールは、原発より地震に脆弱で、新しい使用済み核燃料を保管する燃料プールが崩壊すれば大惨事に至ります

原発を運転すると、核燃料中に、運転に不都合な各種の核分裂生成物(死の灰)、マイナーアクチニド(プルトニウムより重い元素)などが生成し、原発の制御が困難になります。一方、燃料被覆管に腐食や変形が生じます。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間(3~5年)燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなり、使用済み核燃料が発生します。

使用済み核燃料は、発生直後には膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールに水冷保管して、放射線と発熱の減少を待たなければなりません。

そのプールが満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した(例えば、10年以上水冷保管した後の)使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

出来た空間には、高放射線量、高発熱量の新しい使用済み核燃料を入れますが、その燃料プールが、地震などで崩壊すれば、大惨事に至ります。なお、燃料プールは、原発本体とは比較にならないほど脆弱で、「むき出しの原子炉」とも呼ばれています。

電力会社は、使用済み核燃料の搬出先として、再処理工場(青森県)の稼働を願望していましたが、去る8月23日、日本原燃は27回目の再処理工場の完成延期を発表しました。乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場はありません。

使用済み核燃料の発生源・原発を全廃しましょう!

◆使用済み核燃料に関して約束反古を繰り返す関電

関電は1997年に「使用済み核燃料は福井県外に搬出する」と、当時の福井県知事に約束しました。核燃料再処理工場が稼働すれば、青森県に搬出できると楽観しての約束でした。しかし、1997年に予定されていた再処理工場の稼働は、延期を重ね、未だに稼働の見込みはありません。そのため、関電も、「福井県外搬出」の約束を繰り返し反古にしています。

関電は2021年にも、福井県知事に「使用済み核燃料の中間貯蔵地を2023年末までに福井県外に探す。探せなければ老朽原発を停止する」と約束しましたが、未だに候補地を見出すことはできていません。老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働への福井県知事の承認を得るための空約束でした。

関電は、約束期限が迫った2023年6月、保管する使用済み核燃料のわずか5%程度をフランスに持ち出す計画を示し、「県外搬出という意味で、中間貯蔵と同等」としました。また、8月、唐突に上関町に中間貯蔵地建設のための調査を申し入れ、約束不履行を取り繕おうとしました。

さらに、10月には、再処理工場の活用、中間貯蔵施設確保を盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけた「使用済み核燃料に関するロードマップ」を発表しました。老朽原発の運転を継続するための詭弁で、実現性が全くない「絵に描いた餅」です。

◆関電、使用済み核燃料の原発敷地内での乾式貯蔵に布石

ロードマップで、関電は「使用済み核燃料搬出の円滑化のために原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討する」とし、福井県内での乾式貯蔵に向けての布石を打ちました。関電の燃料プールはもうすぐ満杯になり、原発を停止せざるを得なくなるため、プールに空きを作ろうとする策略です。

乾式貯蔵を許せば、永久貯蔵になりかねません。

◆再処理工場の27回目の完成延期で、ロードマップは破綻

関電がロードマップで示した願望は、昨年8月、日本原燃が27回目の再処理工場の完成延期(約2年半)を表明したことによって破綻しました。

それでも、関電は開き直って、「ロードマップを本年度末までに見直す。実効性のある見直しができなければ、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」としました。しかし、その場しのぎの空約束と約束反古を繰り返してきた関電の言動は、信用できるものではありません。

今回も、「使用済み核燃料のフランスへの搬出量を倍増させる(合計:ウラン使用済み燃料380トン、MOX使用済み燃料20トン)」などの小手先の奇策、稼働延期を繰り返し稼働の見込みが極めて薄い再処理工場(青森県)への2028年度からの搬出(198トン)などの詭弁を弄して、誤魔化そうとしています。許してなりません。

なお、関電の3原発の使用済み燃料プールには、全容量4450トンのうち87%に当たる3850トンが保管されています(2024年12月)。したがって、フランスや青森県への搬出が、関電の思惑通りに進んだとしても、搬出量は、全使用済み核燃料のごく一部に過ぎません(15%程度)。

また、関電の使用済み核燃料の多くは高燃焼度燃料であり、MOX燃料も増え続けていますが、これらの核燃料の再処理は極めて困難です(硝酸での溶解が困難な白金族などの成分が多く含まれ、発熱量も大きい)。

以上を勘案すると、今回の関電の奇策、詭弁は、約束履行に見せかけて、老朽原発の運転継続を狙うだけでなく、近々満杯になる使用済み核燃料プールに空きを作って、全ての原発の運転継続を可能にするための謀略であると言えます。

使用済み核燃料の行き場はありません。関電に約束通り老朽原発の停止を実行させ、使用済み核燃料の発生源・原発の全廃への突破口としましょう!

◆福井県議会議長に、陳情書を提出しました!

「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、関電の使用済み核燃料搬出問題が議事となる福井県議会(2月17日開会)での慎重かつ公正な審議を求めて、県議会議長に、2月12日、下記の陳情書を提出しました。同様な陳述書は、「オール福井反原発連絡会」からも提出されました。

陳情書
福井県議会議長
宮本俊様

老朽原発うごかすな!実行委員会「使用済み核燃料の県外搬出に関するロードマップ」の実効性のある見直しができない関西電力(関電)に、危険極まりない老朽原発の廃炉を実行するよう求めて下さい

県議会議長、県議会議員の皆様には、弛まぬ福井県政へのご尽力に、敬意を表します。

さて、関電は、一昨年10月10日、使用済み核燃料の福井県外搬出に関するロードマップを発表し、杉本達治福井県知事は、わずか3日後にこれを容認しています。関電は、このロードマップの中に、青森県の核燃料再処理工場の活用、中間貯蔵施設の確保を盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけています。

しかし、このロードマップは、日本原燃が、昨年8月23日、「核燃料再処理工場の完成目標を2026年度内に変更する」と、27回目の完成延期(約2年半)を表明したことによって破綻しました。

それでも、関電の森望社長は開き直って、9月5日、杉本福井県知事と面談し、使用済み核燃料の県外搬出に向けた「ロードマップ」を、「本年度末までに見直す。実効性のある見直しができない場合、高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」と述べています。

しかし、現在までに、「使用済み核燃料の行き場」に関して、その場しのぎの空約束と約束反古を繰り返してきた関電の言動は、信用できるものではありません。今回も「使用済み核燃料のフランスへの搬出を若干上乗せする」などの小手先の奇策で誤魔化すと危惧されます。

なお、再処理工場の稼働は極めて困難であること、例え稼働したとしても過酷事故の確率が高いことは、多くが指摘するところです。また、関電は、再処理できない高燃焼度の使用済み核燃料および使用済みMOX燃料も抱えています(これらは、今後増大します)。

したがって、使用済み核燃料の行き場はなく、福井県内に永久あるいは長期保管される可能性は大と言わざるを得ません。関電は、約束通り老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の廃炉を実行し、使用済み核燃料の発生源・原発の全廃に向かうべきです。

このような状況に鑑み、福井県議会に以下を陳情いたします。

陳情項目

[1]関電に、「本年度末までに、ロードマップの実効性のある見直しができない場合、高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」との約束を即時履行させてください。このとき、「実効性のある見直し」とは、「関電の保有する、あるいは今後発生させる使用済み核燃料の全ての県外搬出が見通せるもの」であることです。

[2]関電は、「使用済み核燃料の搬出の円滑化」を口実に「乾式貯蔵施設」を建設しようとしています。しかし、今までの搬出の実績からして、「乾式貯蔵施設」はなくても、使用済み核燃料は搬出できます。「乾式貯蔵施設」の建設は、永久あるいは長期福井県内貯蔵への道を開くことになりかねません。「乾式貯蔵施設」の建設を認めないでください。

[3]高浜原発1号機は運転開始後すでに50年を超え、高浜2号機、美浜3号機も、もうすぐ50年超えの「超老朽原発」です。老朽原発では、圧力容器の脆化、配管の腐食、減肉、電源ケーブルの劣化が進んでいます。また、老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数ありますが、全てが見直され、改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物の中で交換不可能なもの(圧力容器など)があります。関電に、危険極まりない「超老朽原発」の即時廃炉を求めて下さい。

[4]私たち「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、福井県内だけでなく、関西、中部など全国の会員で成り立っています。そこで、福井県外の住民の立場から、福井県議会に以下をお願いいたします。

原発および使用済み核燃料保管施設が過酷事故を起こせば、その被害は、福井県内だけでなく、広く関西、中部などにおよぶことは、福島原発事故の教訓から容易に推測されます。例えば、京都府や滋賀県の大部分は若狭の原発から70km以内にあり、高浜原発、大飯原発は福井県庁のある福井市より近距離にあるのみならず、特に冬場は、若狭の風下になります。

したがって、福井県議会や福井県知事の決断は、福井県外の多くの住民の命と生活に関わります。福井県議会は、周辺府県の住民の「原発のない、自然エネルギーのみで成り立つ社会」を求める声にも十分に耳をお貸し下さい。

2025年2月12日記

◆お願い

「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、若狭での「脱原発・反原発」の声の拡大を目指して、また、「関電の約束違反を糾弾し、老朽原発の廃炉」を求めて、以下の行動と集会を企画しています。ご支援、ご参加をお願いします。

■3.22(土)~23(日)
若狭一斉チラシ配り(愛称:拡大アメーバデモ)

「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、長期にわたって若狭や周辺地域で、チラシの各戸配布(愛称「アメーバデモ」)を繰り返し、住民との対話を重ねてきました。その中で、多くの住民が「原発は無い方がよい」と考え、圧倒的多数が「老朽原発稼働反対」であることを知りました。

昨年の能登半島地震以降は、原発推進の声はほぼ皆無です。能登半島地震によって、原発は地震に脆弱で、地震と原発過酷事故が重なれば、避難も、屋内退避も困難を極めることを実感されたのでしょう。

3月22、23日、あなたも参加してみませんか?
関西、福井などから配車の予定です。

■3.31(月)
使用済み核燃料の行き場はないぞ
関電は約束守れ!美浜集会
とき:3月31日(月)13時より
ところ:関電原子力事業本部前(JR美浜駅より徒歩3分)
集会後町内デモを行います
関電の「使用済み核燃料搬出先に関する実効性のあるロードマップ」の提出期限である3月31日、関電原子力事業本部前(美浜町)で、関電の約束違反を糾弾し、老朽原発停止の実行を求めます。

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2025年春号(NO NUKES voice 改題 通巻42号)
紙の爆弾 2025年4月号増刊
A5判 132ページ(巻頭カラー4ページ+本文128ページ)
定価770円(税込み) 2025年3月21日発売
 
《特集》原発被曝を問い直す 福島十四年後の実相
 

[グラビア]原発事故の後始末 汚染土2兆2000億円の現場(写真・文=山川剛史

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
[報告]福島原発事故被害者の被曝と原子力ギャング

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
[講演]飯舘村の放射能汚染のこれまでとこれから

山川剛史(東京新聞編集委員)
[報告]迫る汚染土の再利用 解決の道はあるのか

伊藤延由(飯舘村 元「いいたてふぁーむ」管理人)
[報告]「被ばくの実態」調査から原発事故の実像を測る

尾﨑美代子(本誌編集委員/西成「集い処はな」店主)
[報告]自宅の放射線測定記録に疑惑あり
いのちにかかわるデータは捏造されたのか?

子ども脱被ばく裁判の会
[報告]呆れ果てても、諦めない! 子ども脱被ばく裁判で明らかになったこと

片岡輝美(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
十年間の闘いを経て
水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
裁判によって知らない事実が明らかになった
井戸謙一(「子ども脱被ばく裁判の会」弁護団共同代表)
この裁判が生み出したいくつかの成果
樋口英明(元福井地裁裁判長)
真実はこれを求める人にのみ与えられる

和田央子(放射能拡散に反対する会)
[報告]原子力マフィアが主導する福島汚染土再生利用

後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
[報告]《検証》もしも柏崎刈羽原発が攻撃されたら……

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
[報告]英国の核燃料サイクル政策の大転換

山崎隆敏(元越前市議会議員)
[報告]万博と原子力 「いのち輝く未来」と「核ゴミ・被曝労働」の矛盾撞着

《第2弾》避難対策は全国どこでも「絵に描いた餅」

日野正美(女川原発再稼働差止訴訟原告団事務局長)
[報告]女川原発の避難計画は不備だらけ! 住民無視の運転を中止せよ!

土光 均(米子市議会議員)
[報告]県庁所在地に立地する島根原発で大災害が起きた時
松江市民に逃げ場所はあるか?

森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
[報告]原発避難者にとっての14年 その絶望と希望

原田弘三(翻訳家)[報告]「脱炭素」の本質

佐藤雅彦(翻訳家/ジャーナリスト)
[報告]NUKE WARS――原子力帝国の逆襲
    原子力は地域社会に「核分裂」をもたらす

板坂 剛(作家/舞踊家)
[報告]再び 三島由紀夫生誕百年に想う

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
[報告]山田悦子の語る世界〈26〉最終回 絶望の時代《今》を生きる意味〈下〉

平宮康広(元技術者)
[報告]水冷コンビナートの提案〈3〉

再稼働阻止全国ネットワーク
 東電に原発うごかす資格なし すべての原発の再稼働阻止
 フクシマは終わっていない

《福島》黒田節子(原発いらね!ふくしま女と仲間たち)
「本当のフクシマを知ってください」 西日本スピーキングツアー
《福島》橋本あき(福島県郡山在住)
 東電福島原発事故の残響は続く
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
【ネット署名】深刻な原発事故を起こした東京電力による
 柏崎刈羽原発の再稼動を許すなの声を結集しよう
《北海道》瀬尾英幸(泊原発立地四町村住民連絡協議会)
 泊原発は必ず止める
《静岡》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
「基準津波25.2メートル」に対応するために、またまた防波壁かさあげ!
《福井》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 関西電力(関電)に、約束を履行させ、全ての老朽原発を廃炉に!
《東海第二》横田朔子(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
 日本原電も東海第二原発も崖っぷち!~東海第二原発の中央制御室で火災発生~
《東海第二》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 防潮堤の修復案を示せない原電は、廃炉事業に専念するよう求めます
《書評》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)
 小田実の『被災の思想 難死の思想』── 本の〈発掘〉①

[反原発川柳]乱鬼龍

「福井女子中学生殺人事件」再審結審 再審無罪を前に自信を取り戻していく冤罪犠牲者の前川さん 尾﨑美代子

39年前に福井で起こった「福井女子中学生殺人事件」の再審が、3月6日結審した。判決は7月18日、午後4時より、名古屋高裁金沢支部で言い渡される。 

事件の詳細は『紙の爆弾』(鹿砦社)2月号に寄稿しているので、ぜひ読んで欲しい。亡くなった桜井昌司さんから「前川(冤罪犠牲者の前川彰司さん)の事件も書いてや」と頼まれてたが、資料を読み始め、何度も諦めていた。関係者が余りに多く、その関係も複雑だからだった。

読み始めあきらめ、読み始めあきらめていたところ、まもなく再審開始の可否がでるとのことで慌てて読み始めた。そして昨年12月、再審開始の決定。決定書を見ると、それまでの資料になかった内容が書かれていた。

弁護団長の吉村弁護士も会見で「想定外でした」と話していた内容、そこには「夜のヒットスタジオ」「アン・ルイス」「吉川晃司」の文字が……。再審請求審で初めて明らかにされた証拠だった。一体、何があったのか? 詳細を知りたい方はぜひ「紙の爆弾」を読んで欲しい。  

この事件、全体をみると、福井県のいわゆる地方都市で、地元警察が、地元のワル、不良、ヤクザになった若者を、うまくあやつり協力者に仕立てていくような構図がみてとれる。

先日、北海道旭川市で女性2人が被害女性を深夜、川の橋の欄干に座らせ、川に落とし殺害した事件で、片方の被告に懲役25年が求刑された。この事件では、もう一人の女性が、事件を捜索する旭川中央署の刑事と不倫関係にあったことが報じられた。もともと互いに出入りしてた地元のスナックで仲良くなったようだ。その容疑者がどんな女性だったかは良くわからないが、刑事を後ろ盾にすることで、一層怖いものなしの強気になれたことは容易に想像できる。

福井の事件で登場する大勢の関係者もまだ若く、社会的経験も少ない。そして不良、ヤクザなど脛に傷持つ者ばかりだ。その弱みに刑事がつけこみ、事件を解決しようと、あらぬストーリーを作っていったのだ。

女子中学生は、実際極めて凄惨な方法で殺害されていた。不良グループと付き合っていたことからリンチと思われた。だが捜査は難航し、犯人逮捕に至らず、捜査機関は焦る。

そんなとき、別の覚醒剤で逮捕され取調べられていたヤクザの斎藤(仮名)が、刑事に「犯人しらないか」と聞かれる。犯人は斎藤周辺のワル仲間とみているのだろう。捜査機関は、犯人を教えたら、あるいはヒントをくれたら、刑を軽くするみたいにほのめかす。斎藤は知人に「犯人知らんか?」と手紙を書く。そう、斎藤も犯人を知らないのだ。しかし、斎藤は自分の刑を軽くしたくて、「犯人は後輩の前川だ」と刑事に告げる。

さらに、車で前川を犯行現場に送った人間、斎藤をゲーセンに送った人間、犯行後困った前川を斎藤がいるゲーセンに連れてきた人間、その際前川の服に血がついてるのを見た人間、ひと晩前川を匿った人間など、次々と関係者を登場させる。しかし、うそのストーリーだから、斎藤の話はコロコロ変わる。

ここまで読んで、「刑事もばかだね。斎藤のいうことが違っていたら、諦めればいいやん」と思う人もいるだろう。違う、違う。刑事が斎藤らワルたちを利用しようとしているのだ。

刑事は、斎藤が刑務所に送られる際「おい、何か土産を置いてけや」とか、「まだ知ってることがあるんじゃないか」とか、斎藤やその周辺の人間を使って、自分たちのストーリーを作ろうと必死なのだ。「関係者」を担わされた若者も、みな、脛に傷があるため、刑事の言いなりにストーリーを合わせてしまう。  

しかし、彼らも成人になり家庭を持つようになると、「なんと馬鹿なことしたのか」と反省し、本当のことを言うようになる。前川さんを犯人とする証言をした男性は、刑事にウソの証言を強いられ、代わりの自分の覚せい剤事件をチャラにしてもらったと再審の場で証言した。前に嘘の証言した夜は、刑事に食事やスナックを奢られ、あげく結婚祝いに5000円包まれた祝儀袋を貰ったと証言。刑事の名前がばっちり書かれた祝儀袋を証拠提出した。本当に酷い話だ。

以前私も支援した石川県の盛一国賠という裁判があった。この盛一君も若い時、刑事に目をつけられ「S」にされた。どんなに覚せい剤をやっても絶対捕まらない。その代り、刑事に言われるがままに、薬をやっている知人や先輩を逮捕させるような工作を刑事としていく。そんななか亡くなった知人もいた。

盛一君も成人し、家庭をもち、「馬鹿なことをした」と猛省し、刑事らとの関係をきっぱり絶った。そして、そんな刑事と不倫で付き合う女性友達に「あんな連中とつきあわんほうがいい」と忠告する。

しかし、この女性は、盛一君のその言葉を刑事に伝える。そのため、盛一君がやってもいない覚せい剤事件で逮捕される。「これ以上余計なこと言うな」という脅しだ。その証拠に盛一が連れていかれた取調室に、以前盛一君が良く飲食をともにした刑事が顔を出し、盛一君に一言「バーカ」と言って消えたという。

多くの冤罪を作っているのは、警察、検察、そして裁判所だ。もちろん刑事という後ろ盾が出来て強気になって、犯罪を犯した人たちも悪い。しかし、北海道の事件も、盛一君の事件も、そして前川さんの事件で関係者とされた人たちも、勝手なストーリーの「駒」に使われ、最後はポイと捨てられた。本当に酷いやつらだ。

前川さんには昨日の朝電話した。桜井さんに紹介され、初めて連絡してから2年半。その間何度か電話で話したり、うちの店にも来てくれたり。最初はボソリ、ボソリとひとこと、ふたこと話すだけだった前川さんだが、その声は、再審開始が決まって以降、どんどん自信を取り戻しているような気がする。

《酒井隆史さん釜ヶ崎トークショーのご案内》

3月30日(日)、酒井隆史さんのトークショーを行います。釜ヶ崎の問題にも取り組んでおられる酒井さんには、2019年「はな」でお話をして頂いたのが最後なのでとても久しぶりです。なお、そのお話は冊子「ジェントリフィケーションへの抵抗を解体しようとする者たち」にまとめており、非常に多くの方々に読んで頂きました。

今回はちょっと大上段に構えたテーマになっていますが、様々な問題をその場で質問したり、議論出来るような形にしたいと思いますので、40人ほど限定、要予約でお願い致します。

メール、携帯、そしてメッセンジャーでも受け付けております。宜しくお願い致します!!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

暴走する湯崎県政! 跡地利用はコンセプトがブレブレ!「マリーナホップ」は存続で良かった疑惑が深まる さとうしゅういち

広島県の湯崎英彦知事は、広島市内で唯一の水族館だったマリホ水族館や同じくし内唯一の観覧車を含むショッピングモール「マリーナホップ」(広島市西区観音新町地区)との県有地契約を2024年度限りで打ち切り、後継の施設を東京の自動車用品会社「トムス」に造らせようとしています。

◆波乱続いたモビリティーパーク案

そのトムスの案ですが、モビリティーパークといって、車やバイクなどの乗り物をテーマとした施設にする予定でした。ところが、この案については、当初から波乱続きです。マツダやトヨペットなど地元の大手企業がメインから引いています。なぜ、大手が引くのか?それは、「見通しが不透明」だからではないのか?

また、中国新聞社がこの問題について情報公開請求したところ、「企業秘密に当たる」などという理由で黒塗り文書が公開されるなど、不透明な湯崎県政の対応が続いてきました。

◆温浴施設に外国人富裕層ターゲットのホテル?

そして、このほど、2025年2月定例県議会において、県当局は、修正案を議会側に提示してきました。それは、モビリティーパークに加えて温浴施設、そして主には外国人富裕層をターゲットとしたホテルを加えるというものです。

しかし、冷静に考えると、西区観音新町地区から例えば原爆ドームを含む平和記念公園からは少々遠いのです。純粋に商売だけを考えれば、世界遺産である宮島や、中区の平和記念公園、あるいは広島駅周辺なら外国人富裕層向けのホテルは成り立つでしょう。それ以外の成功例で言えば、いま「時の人」となっているウクライナのゼレンスキー大統領たちがG7広島サミットで利用した南区元宇品のグランドプリンスホテル広島があります。しかし、グランドプリンスホテル広島の場合は、原生林に囲まれ、海に面した窓からの景色も極めて良好です。工業地帯だったマリーナホップ跡地とはくらべものにもなりません。

◆コンセプトがブレブレ

そもそも、コンセプトが異なる色々なものをぶち込んでも、上手くいかない。車やバイクに興味が薄い層も取り込む、というが、逆に、ピンボケしかねないのではないでしょうか? 近年では商売でも選挙でも、良いか悪いかは別にして「ハッキリした」会社や政党・政治家が(購入先・投票先としても就職先としても)ウケる傾向が顕著にみられます。

◆これなら、マリーナホップ存続で良かった

はっきり申し上げます。こんなことなら、マリホ水族館や観覧車を中心にマリーナホップを存続させた方が、広島県民のためには「より少なく悪い」選択肢だったのではないでしょうか? 確かに、広島市内にショッピングモールが他にも増えた中で、苦戦はしていた。しかし、マリホ水族館は、広島市内では唯一の水族館でした。観覧車も含めて、子どもと一緒に安心して遊びに行ける場所でした。筆者には子どもはいませんけれども、広島市内には意外と子ども・若者が安心して遊べる場所は少ないのです。そういうことと、子ども医療費の助成が全国と比べても遅れている。このあたり「も」人口流出の背景の一つになっているのではないでしょうか?

マリホ水族館(筆者撮影)

◆インバウンド重視の暴走は広島の水・食べ物を台無しに

今、広島県内も広島市や廿日市市を中心にインバウンドブームに沸いてはいます。廿日市市の本土側では大規模なリゾート開発工事が進んでいます。しかし、その現場から大量の土砂が流出。今年は恒例のカキ祭りが中止になるほどカキが不作でした。因果関係は不明ですが、きちんと調べる必要があるのではないか?一方、廿日市市の宮島側でも包ヶ浦自然公園に富裕層向けのホテル誘致が計画されています。そして、住民から懸念の声が亜上がっています。

※宮島包ヶ浦自然公園のホテル誘致計画を白紙撤回してください
https://voice.charity/events/2476

こうした声を無視して市は開発を推進し、県はそれを許可して良いのでしょうか?カキの養殖に悪影響が出れば、広島県が進めてきた広島食材や料理のPRも根底から崩れます。立ち止まることが必要です。

◆「東京・関東の煌びやかさ」ばかり重んじる湯崎県政の限界

湯崎英彦・広島県知事は2025年、4期16年目の最後の年を迎えています。湯崎さんは就任当初は、不十分だった情報公開などに積極的だったし、筆者も期待して湯崎さんに一票を入れました。

しかし、3選を果たされたあたりから、どうも、東京の企業とか、中央官僚とか、平川教育長ら関東の煌びやかな経歴な方ばかりを優遇する県政、地元で地道に頑張って来られている若手・中堅や企業を疎んじる県政へと暴走を加速しているように思えます。

もちろん、広島県はいわゆる封建的な風土も健在です。それも、いわゆる国政野党に顕著です(詳しくは「茶番選挙 仁義なき候補者選考」楾大樹著などご参照ください)。

こうした中で、地元で地道に頑張って来られている若手・中堅や企業は挟み撃ちにあって「面白くない」状態なのではないでしょうか?

湯崎県政をリセットし、県民に広島を取り戻し、知事から広島の水・食べ物を守る庶民革命。11月に県知事選挙が予定されている今年こそ、正念場です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎X @hiroseto https://x.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/
★広島瀬戸内新聞公式YouTubeへのご登録もお待ちしております。

『季節』2025年春号 〈3.11〉に想う── 季節編集委員会

今年も〈3.11〉がやって来ました。──

この頃になるいつも想うのですが、原発事故で狂わされた人の人生、生活、命です。

いまだにフクシマでは棄民政策がなされ、生まれ育った故郷に戻れない人たちも多いです。確かに法律上は戻れることになった町もあるでしょうが、人がほとんどいなくなった町で、どうやって生活していくのでしょうか。

筆者は50歳を過ぎてから、望郷の念が強くなり、中学、高校の同窓会活動に精を出し始めました。多くの同期生もそのようで、いったんは都会へ出ても、かなりの人数が帰郷しています。

フクシマでは、帰るに帰れない人たちが多いです。原発事故を起こした東電に対し、まさに「故郷を返せ!」と叫びたい方も多いでしょう。当時の東電の幹部はどう考え、どう責任を取ろうとしているのでしょうか。いつも素朴な疑問に苛まれます。みずからの意見も公にせず責任も取らず、彼らはひっそりと暮らしているかのように思われます。

昨年10月、当時の東電トップ、勝俣恒久が亡くなりました。一切の責任も取らずに、です。また勝俣死去をマスメディアはほとんど報じませんでした。彼が生前やってきたことの意味の問い直しぐらいやるべきだったのではないでしょうか。

今後、当時の東電の幹部が相次いで亡くなっていくでしょう。責任をどう取るのでしょうか。せめて気持ちだけでも家、屋敷を売って被災者へ寄付するぐらいはやるべきでしょう。被災者はみな人生、生活を狂わされ命を絶った方もいるわけですから──。

ところで本誌も昨年夏・秋合併号で創刊10周年を迎えることができました。本誌は月刊『紙の爆弾』の増刊号として季刊ペースで発行してまいりました。あとの5年は新型コロナとの闘いで苦戦しました。創刊10周年の集いも開く予定が諸事情で開けませんでした。4月5日に『紙の爆弾』20周年と共に、記念の集い(具体的には巻末参照)を開催することになりました。両誌とも、今後10年、20年と続かせようと願って。関東周辺にお住いの方はぜひご参加をお願いいたします。

■『季節』2025春号の発行が10日遅れます。

本来3月11日発行の『季節』2025春号ですが、10日遅れ3月21日発行(17日発送)となりました。申し訳ございません。例年3.11当日の発行で、今年もそのつもりだったのですが……。これは財政的な問題とは直接関係はございません。編集作業が遅れ、遅れ自体は2、3日のことでしたが、今年の2月は2日少なく、また年度末で印刷・製本の予定ラインから一端外れたことで歯車が狂い10日遅れの発行となりました。とはいえ、工程管理が緩かったのは事実で弁解の余地もございません。何卒ご容赦お願いいたします。

2025年3月 季節編集委員会

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2025年春号(NO NUKES voice 改題 通巻42号)
紙の爆弾 2025年4月号増刊
A5判 132ページ(巻頭カラー4ページ+本文128ページ)
定価770円(税込み) 2025年3月21日発売
 
《特集》原発被曝を問い直す 福島十四年後の実相

[グラビア]原発事故の後始末 汚染土2兆2000億円の現場(写真・文=山川剛史

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
[報告]福島原発事故被害者の被曝と原子力ギャング

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
[講演]飯舘村の放射能汚染のこれまでとこれから

山川剛史(東京新聞編集委員)
[報告]迫る汚染土の再利用 解決の道はあるのか

伊藤延由(飯舘村 元「いいたてふぁーむ」管理人)
[報告]「被ばくの実態」調査から原発事故の実像を測る

尾﨑美代子(本誌編集委員/西成「集い処はな」店主)
[報告]自宅の放射線測定記録に疑惑あり
いのちにかかわるデータは捏造されたのか?

子ども脱被ばく裁判の会
[報告]呆れ果てても、諦めない! 子ども脱被ばく裁判で明らかになったこと

片岡輝美(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
十年間の闘いを経て
水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
裁判によって知らない事実が明らかになった
井戸謙一(「子ども脱被ばく裁判の会」弁護団共同代表)
この裁判が生み出したいくつかの成果
樋口英明(元福井地裁裁判長)
真実はこれを求める人にのみ与えられる

和田央子(放射能拡散に反対する会)
[報告]原子力マフィアが主導する福島汚染土再生利用

後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
[報告]《検証》もしも柏崎刈羽原発が攻撃されたら……

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
[報告]英国の核燃料サイクル政策の大転換

山崎隆敏(元越前市議会議員)
[報告]万博と原子力 「いのち輝く未来」と「核ゴミ・被曝労働」の矛盾撞着

《第2弾》避難対策は全国どこでも「絵に描いた餅」

日野正美(女川原発再稼働差止訴訟原告団事務局長)
[報告]女川原発の避難計画は不備だらけ! 住民無視の運転を中止せよ!

土光 均(米子市議会議員)
[報告]県庁所在地に立地する島根原発で大災害が起きた時
松江市民に逃げ場所はあるか?

森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
[報告]原発避難者にとっての14年 その絶望と希望

原田弘三(翻訳家)[報告]「脱炭素」の本質

佐藤雅彦(翻訳家/ジャーナリスト)
[報告]NUKE WARS――原子力帝国の逆襲
    原子力は地域社会に「核分裂」をもたらす

板坂 剛(作家/舞踊家)
[報告]再び 三島由紀夫生誕百年に想う

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
[報告]山田悦子の語る世界〈26〉最終回 絶望の時代《今》を生きる意味〈下〉

平宮康広(元技術者)
[報告]水冷コンビナートの提案〈3〉

再稼働阻止全国ネットワーク
 東電に原発うごかす資格なし すべての原発の再稼働阻止
 フクシマは終わっていない

《福島》黒田節子(原発いらね!ふくしま女と仲間たち)
「本当のフクシマを知ってください」 西日本スピーキングツアー
《福島》橋本あき(福島県郡山在住)
 東電福島原発事故の残響は続く
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
【ネット署名】深刻な原発事故を起こした東京電力による
 柏崎刈羽原発の再稼動を許すなの声を結集しよう
《北海道》瀬尾英幸(泊原発立地四町村住民連絡協議会)
 泊原発は必ず止める
《静岡》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
「基準津波25.2メートル」に対応するために、またまた防波壁かさあげ!
《福井》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 関西電力(関電)に、約束を履行させ、全ての老朽原発を廃炉に!
《東海第二》横田朔子(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
 日本原電も東海第二原発も崖っぷち!~東海第二原発の中央制御室で火災発生~
《東海第二》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 防潮堤の修復案を示せない原電は、廃炉事業に専念するよう求めます
《書評》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)
 小田実の『被災の思想 難死の思想』── 本の〈発掘〉①

[反原発川柳]乱鬼龍

『紙の爆弾』2025年4月号に寄せて 『紙の爆弾』編集長 中川志大

おかげさまで『紙の爆弾』は、次号2025年5月号で創刊20周年を迎えます。姉妹誌の反原発情報誌『季節』は昨年創刊10周年を迎えました。それらを記念し、2025年4月5日(土)に東京で読者の集いを開催します。一回限りの全力イベントです。発売中の4月号でご案内を掲載しておりますので、ぜひご参加をお願いいたします。

今月号では「USAIDとは何か」を徹底解説。米国トランプ政権の「USAID廃止」がインターネットを中心にこれほど盛り上がったのは、そもそも「メディアがおかしい」という意識が、人々の中にあったからです。日本でも「マスゴミ」という言葉は昔からあり、権力監視の一環としてのマスコミ監視は、本誌のようなメディアの普遍的なテーマでもあります。ただし、単なる「ゴミ」ではなく、むしろ権力機関の一部として、その役割を積極的に果たしてきたことに、今注目が集まっているわけです。「政官業米電(電波)利権複合体」は植草一秀氏の指摘です。しかし、USAIDやNED(全米民主化基金)がなくなればいいのかというと、ことはそう単純ではありません。その点が、既存マスコミはもちろん、インターネットでもほとんど触れられていない点だと思われます。新たな形による「支配」にこそ、私たちは警戒しなければなりません。

USAIDを資金源とするNEDやCIA(米国中央情報局)に限らず、諜報や工作が歴史を動かしてきたことは、指摘するまでもない事実です。今月号ではいくつかの事例とともに、元外交官の孫崎享氏が解説。私たちが日々接しているニュースが、それらの結果にすぎないということは、頭に入れておかなければなりません。そして、諜報・工作のメインターゲットは、外国政府だけではなく、その国の「世論操作」です。ウクライナ・ゼレンスキー大統領とトランプ大統領の会談「決裂」に、3月号登場の鳩山友紀夫元首相は「問題はプーチンを悪者で敵だとする考えに染まっていては、戦争は終わらない。日本だけでもトランプに協力して戦争を止めたらどうだ」とXでコメント。踊らされない視点こそ、重要です。

昨年11月号に続き、鈴木宣弘・東京大学大学院教授が、「食と農の危機」を再び解説。コメをはじめ食料価格の高騰が続く中、「農業の憲法」といわれる食料・農業・農村基本法の大改悪に伴い4月1日に施行される「食料供給困難事態対策法」で、日本の農業はどうなるのか。そして、この危機に立ち向かうために私たちができることは何なのか。まさに今読むべき内容です。

また、2月13日に東京・広島・大阪・熊本・中央・武蔵美大の大学生たちが中心となって集会を開いた「学費値上げ反対運動」を取材。これがなぜ「新しい形の学生運動」といえるのか、レポートをぜひお読みください。学生たちのnoteもぜひご参照を。(https://note.com/no_raise_ut/n/n2caa621385ee

ほか、4月号では、オンラインカジノ摘発と大阪カジノ万博の関係、再び注目される「フジテレビ・日枝久とジャニーズ」、世界に跋扈する「現代版ノストラダムス」など、各分野で真相に迫る多彩なレポートをお届けします。全国書店で発売中です。ぜひご一読をお願いします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2025年 4月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2025年3月7日発売

戦争勃発させ国を壊す「西側工作」米ロ「諜報戦」の実相 孫崎享
4月施行 食と農と命を殺す「食料供給困難事態対策法」 鈴木宣弘
イスラエル暴虐の行方 トランプとネタニヤフを結ぶ「ガザ2035」構想 広岡裕児
世界マスコミ「沈黙」の真相 USAID廃止に潜むイーロン・マスクの野望 西本頑司
日本を蝕む「2+2」を破棄せよ 日米安保第四条の闇 木村三浩
「警察・自衛隊の外国攻撃」と「秘密保護強化」能動的サイバー防御法案は戦争推進法である 足立昌勝
「LGBT問題」「トランスジェンダー神話」刊行にあたって 反「性自認至上主義・クイア思想」の宣言 滝本太郎
自衛隊改組と日本永世中立化 日本から始まる新時代の地政学 藤原肇
吉本芸人に相次ぐ「見せしめ聴取」オンラインカジノ摘発 警察と政府の目的 片岡亮
「学費値上げ反対」と「103万円の壁」問題 「大学学費ゼロ」が世界の常識である 浅野健一
フジテレビと芸能プロの関係史 再び注目される「日枝久とジャニーズ」 本誌芸能取材班
世界各地を席巻する「現代版ノストラダムス」たちの予言をひもとく 浜田和幸
「総裁選公約」はどこに消えた? 石破茂「無策」の理由 山田厚俊
NHKへの最後通牒――「さらば“波”だ!」と言おう 佐藤雅彦
日本政治の衰退と世代間分断の根本原因 上條影虎
鎌倉名物カフェ立ち退き問題「小泉政権のキングメーカー」の死 青山みつお
シリーズ日本の冤罪 養女強姦虚偽告訴事件 片岡健
「カウンター大学院生リンチ事件」から十年(下) 松岡利康

〈連載〉
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
「ニッポン崩壊」の近現代史 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

資金ショートに止まらぬスタッフ流出! 広島エキキタ巨大「湯崎病院」は砂上の楼閣! 筆者に関係者から公益通報も! さとうしゅういち

◆「全国トップレベル」「若手医師を集める」……美辞麗句を並べ立てる湯崎英彦知事

広島県の湯崎英彦知事は、「県立広島病院」(いわゆる県病院)、「JR広島病院」(2025年度から「県立二葉の里病院」に改称)、「中電病院」並びに「広島がん高精度放射線治療センター」の4病院を統合し、広島市東区の広島駅北口(エキキタ)に1000床規模の巨大病院を造ろうしています。「若手医師を集める、トップレベルの医療を提供する、断らない救急、中山間地域へ医師を派遣する、小児救急を充実させる」など美辞麗句を並べています。

◆早くも25億円の資金ショートで議会でも炎上

2025年度からは、その前段階として県病院とJR広島病院改め県立二葉の里病院、そして県立安芸津病院を運営する「地方独立行政法人」を発足させようとしています。総事業費は総務省が管轄する特別地方交付税や消費税を財源とする厚労省の補助金などを財源に1300-1400億円。病院の統廃合事業としても破格の予算規模です。ところが、昨今の建築費の高騰などで、事業費が大幅に上振れし、新病院の規模の縮小が必至となっています。さらに、その地方独立行政法人の資金不足が発覚。県が25億円を貸し付けなければいけない状況になっています。

県議会でも〈炎上〉しています。知事と距離のある保守系会派は、「しょっぱなから運転資金が足らないような事業はやるべきではないというのが最初にある。『面積が変わるんですか?』『さぁ……』『駐車場はいくらかかるんですか?』『さぁ……』って財政的にも要件的にも何も決まっていない」(東広島市・井原修議員)とバッサリ。知事に近い自民党系会派の議員からも「本当にこのまま計画通りに進めても大丈夫なのか?」(佐伯区・宮崎康則議員)という疑問が呈される始末です。

◆最近まで県立広島病院で勤務していた関係者から「公益通報」

こうした中、広島瀬戸内新聞は2月26日までに「最近まで県立広島病院で勤務していた関係者」(県立広島病院の将来を考える会 様)からこの問題についての「公益通報」を匿名の文書でいただきました。

「県立広島病院の職員の大部分は移転に断固反対しています。しかし関係者が内部から声を上げることは難しく、関係者各位のお力をお借りしたいと考え、投稿する次第です。匿名である点はご容赦ください。」

県立広島病院で勤務していた関係者からの「公益通報」の一部

広島瀬戸内新聞では、今回頂いた文書については、公益通報者保護法上の行政機関以外の外部への通報、いわゆる3号通報として取り扱っております。湯崎英彦知事らが犯人探しなどをした場合は同法違反となります。

文書では問題点についてA4ページ8枚と別紙の資料12ページにわたって取り上げています。本紙では「県病院潰し」「巨大病院への集約」構想の問題を指摘してきましたが、今回、改めて内部の声が明らかになりました。

この「文書」の方も「新病院移転構想が始まったときから計画の意義に対して疑念を抱いてきましたが、それでも現状より広くて充実した設備ができるのであればと受け入れてきました。」という立場だったそうです。ところが、ここへきて、建築資材高騰の影響で、予算大幅オーバーとなり、その影響で「建設図面素案を見ると、その内容はかなり厳しいと言わざるを得ず、なんのための移転かわからなくなってきました。」ということです。

以下、公益通報文書(文書、と略します)に沿って、巨大病院計画の問題点を明らかにします。

◆広電比治山線大混雑! 道路渋滞も悪化!「超過密地区に大規模病院をつくる日本初めての試み」の無謀

文書は、今回の計画を「超過密地区に大規模病院をつくる日本初めての試み」と指摘。日本における1000床以上の病院はそもそも郊外化か都市部であっても周囲を広大な緑地に囲まれた敷地内に建設されている、と指摘。高層建築物が立ち並ぶ超過密地区に大規模病院を造る「湯崎病院」構想の異常さを指摘しています。

これにより、ただでさえ激しい周辺部の渋滞が悪化すること、現在宇品周辺に居住している県病院職員は、移転後は、広電宇品線を使うことになるために、同線は大混雑になること。周辺道路も渋滞の悪化で救急車のアクセスは悪く、高層ビルと山に挟まれてドクターヘリも近づきにくいことなどを指摘しています。

◆予算高騰→規模縮小でスタッフも患者も窮屈な病院

そして、文書は予算高騰により「病院規模縮小による諸問題が発生する」と指摘。当初の計画は地下1F、地上16Fだったのが地上14Fのみになり、「診察スペースは非常に狭い」「内科・外科の診察室の総数は今の県病院より少ない」「外来の2フロアをつなぐエスカレーターがなくなる」「待合室の椅子も驚異的に少ない」「憩いの場となるようなスペースやレストラン、喫茶店などはない」ことを告発。

医局の部屋も非常に少なく、先生の個人の机も確保できるかどうか微妙、ということです。職員の休憩スペースも少なく、患者も職員も踏んだり蹴ったりです。

◆「広大ふるさと枠」失敗の総括なき湯崎県政

広島では無医地区が全国ワースト2の状態が続いています。県も手をこまねいているわけではなく、広大医学部では、2009年度から卒業後に知事が指定する医療機関に9年間勤務すれば、奨学金の返済が免除される「ふるさと枠」制度を導入しています。

しかし、過疎地の病院と言っても本当のへき地ではなく、三次市や庄原市、安芸高田市などの中心部の病院への赴任の場合が圧倒的に多いのです。自治医科大学と違って、総合診療医になる必要はありません。ふるさと枠で157人中総合診療医になった先生はたったの3人だそうです。

現在の施策の効果が出ていないのに、その総括もなく、今度は巨大病院。文書は「現在までのふるさと枠運用にも関わらず、中山間地域に医師が不足し、無医村地区全国ワースト2位の記録を更新し続けている理由について、税金を払わされてきた県民に説明するのが先ではないでしょうか?」と指摘していますが、全く同感です。

◆画餅の「トップレベルの医療」「断らない救急」

巨大病院が掲げる「トップレベルの医療」については、統合される4病院の中に「全国トップレベルと言える医師は私の知る範囲では数えるほどしかいません」「かといってトップレベルの医師を招聘するような動きは全くなく、広島大学の関連病院のひとつとしか機能しないことは確実です」と指摘。

「断らない救急」についても、これを掲げている神戸市民病院がブラック職場として有名だと、指摘。

県病院でも、「夜間受診する患者の一部はクレーマーあるいはモンスターが多く、暴言暴力も横行していることから、常時、警備員が診察室内に配備されているような状況」で今でさえ疲弊している現場がさらに疲弊し、さらには職員の離職につながる、と指摘しています。

◆旧設備の更新はままならぬ一方JR広島病院など新しい建物を壊そうとする不可解さ

当初の巨大病院計画案では、2016年1月に新築したばかりのJR広島病院を壊して駐車場に使用としていました。ただし、これは、最初にご紹介した建築資材費の高騰を受けて、病院施設として存続させる方向も検討されています。このほかにも県病院内には2004年新築の緩和ケア支援センターが独立した棟であります。

また、県病院にはハイブリッド手術室も着工中ですが、数年後には取り壊すのでしょうか?

「その一方で、古い設備の更新は、予算がないから、という理由で拒否される状況が長年続いています。」と文書は批判します。特に内視鏡部門に関してはその傾向が顕著であり「一世代以上前の内視鏡で検査させられている場合も多く、機械は破損するまで更新してもらえ」ない、酷い状況だそうです。

「未来の全国トップレベルを目指すより、現在の全国標準レベルを目指すべきではないでしょうか?新病院建築に必要な予算のせめて1000分の1でいいので既存の古い設備の更新に予算を回していただきたい」と文書は訴えています。

JR広島病院(2025年度から「県立二葉の里病院」に改称)

◆研修医に独身寮なし! 若手医師が集まるの?!

湯崎知事は「全国から若手医師を引き寄せる」と言っておられます。だが、福利厚生の面でも、研修医に普通なら用意される独身寮もない、ということ。現在の県病院は、近くに駐車場込みで家賃1万2000円の官舎があります。

しかし、新病院に移行後は、自己責任で住宅を用意させるため、人が集まるかどうか?も怪しいのです。

◆独法化で職員動揺!「巨大病院」どころかスタッフ流出!

文書では独立行政法人への移行で、スタッフが辞めていく問題も指摘されています。

「現在の勤務環境は非常に過酷ですが、定年まで頑張って働けば、と言う思いで頑張ってきたスタッフ」が多かったのに「2025年度から独立行政法人に移行することで公務員としての身分保障がなくなることになり、多くの職員は動揺」しているそうです。

公務員宿舎から数年以内の退去を求められる、移転で満員電車通勤になるなどの不安が鬱積。「スタッフの離職は既に始まっており、病床数が維持できず2025年2月から一病棟を閉鎖しました」とのことで「新病院発足時には極端なスタッフ不足に陥っている可能性があります」と警鐘を鳴らします。

◆「現在地で改築・高層化」が無難

その上で、この方は代替案として、南区宇品の現在地の県病院のうち、1981年の新耐震基準以前の建物(東棟と南棟、北棟)を改築し、JR病院や中電病院の急性機能を移転すれば良いのではないか?と提案しています。

東棟、南棟はまとめて新病棟に。管理棟を高層化し、北棟の機能を集約。北棟を立駐に変更することを文書では提案しています。

確かに、広島市宇品の現在の県病院の位置なら、島しょ部からもアクセスは維持できますし、交通渋滞の心配もありません。

湯崎知事は、現在地は津波の心配があるとして、現在地での県病院の建て替えをかたくなに拒否してきました。一方でエキキタのすぐ北側に迫る二葉山は、豪雨時だけでなく、巨大地震の時も含めた土砂災害のリスクも大きいのです。文書でも「尾長天満宮には埋もれた鳥居があるなど、過去に土石流があった形跡が残って」いるのです。

もちろん、現在地でもどうせ、老朽化に伴い建て替えが必要です。それでも、新病院にすることによる問題点は避けられます。

◆それでも新病院にこだわるなら「湯崎退場」一択だ!

湯崎英彦知事! これでもあなたは、新病院にこだわるのですか? このままでは、新病院どころではありませんよ?

そもそも、県立広島病院=県病院は国の統廃合計画でさえも対象外。それなのに、貴方の功名心で、それこそ、角を矯めて牛を殺すことになりかねません。

「多額の税金が投入される以上、それを支払っている県民の方々は、きたるべき未来を知る権利があるのではないか」と文書は指摘します。その指摘に応えられないのであれば、知事は今すぐお辞めになるべきです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎X @hiroseto https://x.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/
★広島瀬戸内新聞公式YouTubeへのご登録もお待ちしております。

◎鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/

朝日新聞330万部、毎日新聞130万部、2024年12月度のABC部数 黒薮哲哉

2024年12月度のABC部数が明らかになった。各社とも部数減に歯止めがかからない。朝日新聞は、この1年間で約20万部を減らした。読売新聞は、約37万部を減らした。

中央紙のABC部数は次の通りである。

朝日新聞:3,309,247(-200,134)
毎日新聞:1,349,731(-245,738)
読売新聞:5,697,385(-365,748)
日経新聞:1,338,314(-70,833)
産経新聞: 822,272(-63,548)

なお、ABC部数には、「押し紙」(偽装部数)が含まれているので、新聞販売店が実際に配達している部数とは異なる。新聞社によって「押し紙」の割合は異なるが、「押し紙」裁判で明らかになっているデータによると、販売店に搬入される新聞の3割から5割程度が「押し紙」である。従って実際の配達部数は、ABC部数よりも遥かに少ないと推測される。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年2月26日)掲載の同名記事
を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

人工画像・動画と新世代の世論誘導、USAIDは廃止されたが別の手口が… 黒薮哲哉

メディアの世界でこのところやたらと目に留まるのが、加工した画像や動画である。特にXなどSNSを媒体としたニュース報道では、加工が施されているものが、日増しに増えている。事実を正確に伝える役割を持つジャーナリズムの中に、恣意的なイメージ操作が闖入してきたのである。しかも、こうした現象は、西側メディアだけではなく、非西側メディアでも観察できる。

画像や動画の加工は、フェイクニュースの原点であり、ジャーナリズムを破壊し、最後にはジャーナリストの存在を無意味なものにしてしまう。その危険性に大半の情報発信は気づいていない。事実、国内外を問わず影響力のある人々まで、おそらくは罪悪感なく加工行為に手を染めている。

◆取材しない「ジャーナリズム」の氾濫

数カ月前、あるメディアの経営者が、「わたしの媒体は、取材はしません」と淡々と話していた。取材経費が乏しい上に、スタッフの数が少ないので、現地に足を運んで取材するよりもインターネットで情報を探し、それをリライトしてニュースとして公開しているのだという。取材しない「ジャーナリズム」を社のモットーにしているのである。

別のメディア関係者も、取材よりもインターネット上の情報収集が「仕事」の主流を占めると話していた。従ってスタッフを採用する際も、ジャーナリストよりも、ネット上で情報を収集する能力が採用の鍵になる。たとえば外国語が堪能で、翻訳能力と作文能力があれば、申し分のない人材である。外国語の記事を、あたかも自社の果実であるかのようにアレンジできるからだ。

こうしたメディア状況の下で、フェイクニュースと事実・真実の区別が付かなくなり始めている。これは視聴者や読者にとっては、憂慮すべき事態である。自分たちが生活している世界を客観的な事実で再認識することが不可能になるからだ。命をリスクにかけて、紛争地帯まで足を運んで事実を確認する必用もなくなる。

◆たちの悪い反共プロパガンダが影響力を高める

米国のUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)やNED(全米民主主義基金)を廃止が、世界的にトランプ政権の評価を高め、非西側メディアまでもそれを歓迎しているが、USAIDやNEDの次世代の世論誘導装置が、SNSや画像・動画の加工になることに気づいている人はほとんどいない。USAIDやNEDの戦術は、特定の組織や個人を抽出して、そこに資金を投入して、「人力」で世論運動活動を実施するものだった。

これに対して次世代の世論誘導は、不特定多数の人々が直接的なターゲットになる。USAIDやNEDの活動よりも、よりたちが悪い反共プロパガンダが、今後、圧倒的な影響力をもってわれわれの生活の中に闖入してくる危険性があるのだ。

イーロン・マスク氏がXを買収し、さらにトランプ政権に入閣した目的を再考する必用があるのではないか。ジャーナリズムは、エンターテイメントではない。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年2月20日)掲載の同名記事
を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

「カウンター大学院生リンチ事件」(「しばき隊リンチ事件」)から10年(下)──あらためてその〈意味〉と〈責任〉を問う 鹿砦社代表 松岡利康

くだんの大学院生リンチ事件は、私たちにいろんなことを教えてくれた。元々私は、いわゆる「知識人」もマスメディアも司法(裁判所)も、これまでも数多裏切られてきたことで信用はしていなかったが、このリンチ事件でそれが決定的になった。

◆「知識人」の醜態

このリンチ事件をめぐっては多くの「知識人」が蠢き右往左往してきた。それはそうだろう、「反差別」運動の旗手として自分たちが崇めてきた李信恵とこの親衛隊と言ってもいい者らが、思いもよらない凄惨な事件を起こしたのだから──。

李信恵ら事件現場に連座した者らは一夜明けて、おそらく胸中では『しまった!』と思ったに違いない。実際に五人のうち李信恵ら3人は「謝罪文」を被害者М君に提出し「活動自粛」も約束している。

また、その「反差別」運動を支援したり、なんらかの形で関わった者らは『なんてことをしてくれたんだ!』と愕然としたり絶望したりしたに違いない。当初、この事件を知った辛淑玉は「Мさんリンチ事件に関わった友人たちへ」と題するステートメント(全7枚)を公にしている。のちに撤回することになるが、おそらく事件を知ったショックから執筆した本音だろう。

しかし彼らはこぞってそれを反故にし活動を再開した。ここには人間としての良心の欠片もない。

在日の「知識人」として著名な辛淑玉は、なぜここで踏みとどまらなかったのか、ここに大きな錯誤があり、被害者М君を絶望のどん底に落とした。加害者らに影響力のある彼女が踏みとどまり、厳しく対処していれば、また違った展開になっていただろう。

加害者らと近い、当時参議院議員だった有田芳生や作家で法政大学教授の中沢けいらは事件直後来阪し善後策を練っている。特に有田は事件当日の午後に来阪している。これは偶然だろうか?

「知識人」として加害者らに信頼が篤く「李信恵さんの裁判を支援する会」の事務局長だった岸政彦(当時龍谷大学教授。現京都大学教授)は、当初コリアNGOセンターが行った、加害者への事情聴取にも立ち合い、彼の立場からして事件の内容をよく知ったはずだし、人間として研究者として、また「李信恵さんの裁判を支援する会」の事務局長として厳正に対処すべきだった。岸が厳正な姿勢を貫けば、彼の株ももっと上がり、事件後の展開ももっと違ったものになったはずである。責任ある立場にあった彼がどう考えているか、みずからの意見を表明しないので鹿砦社特別取材班は彼の研究室(龍谷大学)を訪れ直撃し問い質したが右往左往するばかりだった(この時の彼の発言と画像は『反差別と暴力の正体』に掲載)。

取材班の直撃取材に慌てふためく岸政彦

ちなみに鹿砦社特別取材班は、岸の他に有田芳生、中沢けいらにも直撃取材している(『人権と暴力の深層』に掲載)。

さらに、いわゆる「知識人」として取材を試みたが逃げられた者に師岡康子弁護士、精神科医・香山リカらがいる。

師岡は俗に「師岡メール」(『暴力・暴言型社会運動の終焉』に全文掲載)と言われるメールをМ君の知人・金展克に送り、М君が刑事告訴しないように説得してほしいと依頼している。М君は事件後しばらくは刑事告訴を躊躇したが、加害者らの態度に誠意が見られなかったことなどでやむなく刑事告訴に踏み切った。その後、加害者5名や彼らを支援する周囲の者らは開き直り謝罪文を反故にし活動自粛の約束を破った。さらには、あろうことか加害者と連携する者らによってМ君に対する激しいセカンドリンチが本格化する。

ここで師岡はリンチ被害者М君について「これからずっと一生、反レイシズム運動の破壊者」と言って憚らない。なんという「人権派弁護士」だろうか? 真の「反レイシズム運動の破壊者」は、集団リンチを行った者だろうに。

また、香山リカに至っては、精神科医とは思えない対応をした。私たちはまず加害者と何らかの関係がある者らと共に彼女にも質問状を送ったが返答が来ないので、彼女が業務委託している事務所に電話で慇懃丁寧に取材を申し込んだところ取材班のスタッフに電話を「ガチャ切り」されたと嘘をツイートしている。密かに録音されていることもあるので、取材班は殊更慇懃丁寧に電話し、その場に私もいたが、「ガチャ切り」は真っ赤な嘘である。

そうして、質問書を「どこに送付したか、書いてみては?」と言うから正直に送った住所をSNSに書いたところ、本当に書くと思わなかったらしく、しばらくして神原元弁護士から削除要請の電話があった。

さらには、鹿砦社が裁判を起こし「小口ビジネスモデルに活路を見出した」と大ウソをついている。確かに鹿砦社は1995年頃から訴訟まみれになりながらも億を越す資金を費やし闘ってきた。しかし、それで儲けたことはなく、逆に神経を擦り減らし資金を注ぎ込んだだけで「小口ビジネス」などにはなっていない。さらに香山は「嫌がらせされ続けている」とか「『リンチ』ですらなかった」とか「鹿砦社の罪は重い」とか言い放っている。私たちは香山に「嫌がらせ」など続けていないし、香山は判決文を読んだのか、「『リンチ』ですらなかった」ということが妄言で、「罪が重い」のはリンチ事件を隠蔽し、よって被害者М君がPTSDに苛まされていることに手を貸した香山のほうこそ「罪は重い」! 特に香山は精神科医だから、暴力で、未来を嘱望されていた某国立大学大学院博士課程(当時)のМ君の人生を台無しにしたリンチ事件の重みが解っていないのか、精神科医・香山の見識と人間性、精神科医としての資質と職責を問う。

ここでは紙幅の都合上リンチ事件に蠢いた数人を採り上げるにとどまったが、これらの他にも弾劾されるべき人物は決して少なくはない。血の通った人間ならば、胸に手を当てて虚心に反省すべきだ。

◆報じるべき問題を報じないメディアの責任

大小を問わず、本件リンチ事件を報じたメディアは唯一鹿砦社のみだった。『週刊実話』がコラム記事で小さく採り上げたが、加害者らとつながる者による激しい抗議で謝罪した。以来、被害者と鹿砦社へのメディアの援軍は遂に現れなかった。SNSで、この問題に言及する者がいたにすぎない(主に右派とされる者)。

メディアは、朝日新聞はじめほとんどのマスメディアが李信恵を「反差別」運動の旗手として持ち上げてきた手前か、真相が明らかになってきた段階でも無視した。つまり、言ってしまえば犯罪に加担したと言っても過言ではない。メディア、特に大手新聞は社会の木鐸ではなかったのか?

М君や鹿砦社は何度も司法記者クラブに記者会見を申し込んだが、一切拒否された。一方加害者らの記者会見はすんなりと何度も開かれた。リンチ事件の真相が明らかになった段階でも、大手新聞は李信恵の活動や生き方を美談として採り上げ続けた。ジャーナリズムの見識を疑わざるをえない。

特に、当時朝日新聞の大阪社会部記者だった阿久沢悦子は、М君が同紙で事件を採り上げてもらえると期待したが裏切られた。阿久沢記者は「浪速の歌う巨人」と自他称される趙博を紹介し、体よく貴重な資料を趙に渡す。趙は一時は私たちと共闘を約束し一献傾けたが、突然掌を返す。当時まだ公になっていないA級資料ばかりだ。この資料はどこへ行ったのか? まさか権力の元に渡されたのではないか、という危惧が絶えない。趙は、いろんな運動や組織に顔を出し、こうした行為を行っていると聞く。ある党派では「スパイ」視されているそうだ。阿久沢にこうしたことを聞き質そうとしたら、またもや逃げられた。いやしくも朝日の記者ならば、堂々と私たちの取材に応じよ!

メディアで言えば、これに出入りする「ジャーナリスト」と称される者らも責任を問われるべきだ。特に事件の詳細を知る安田浩一、西岡研介らは逃げないだけましだが、終始加害者側に与した。安田は李信恵と公私ともども深い関係にあるとされるし、西岡は先の『週刊実話』謝罪問題に関わったとの情報がある。

いずれにしろ、メディアが事件隠蔽に手を貸し、いまだに李信恵を持て囃し立てていることは大いに問題だと言わざるをえない。

ジャーナリストで本件事件に関心を寄せ被害者に寄り添ってくれたのは山口正紀(故人)、北村肇(故人)、黒薮哲哉、寺澤有ぐらいである。それも私たちが出版した本を渡したりして説明してからだ(私たちとて事件から1年余り経ってから知ったのだが)。加害者側の隠蔽活動が成功したということだろう。それでも事件を発見し社会に摘示するのがメディアの責任だと思うのだが……。

◆果たして司法(裁判所)は公平・公正なのか?

誰しも司法(裁判所)は「憲法の番人」で公平・公正だという神話を信じている。果たしてそうか?

本件一連の裁判闘争に関わるまでは、私もまだその神話をわずかながらも信じていた。だが、一連のリンチ事件関連訴訟を体験する中で、その神話が完全に崩れた。

おそらくリンチ被害者М君も、ようやくしっかりした代理人が就き司法(裁判所)への期待が大きかったようだし、完全勝訴を信じてやまなかった。

ところが、その期待はあえなく裏切られる。

M君が加害者五人組を提訴した民事訴訟、一審大阪地裁は、李信恵がМ君の胸倉を掴み一発殴り(ここのところが、グーなのかパーなのか激しいリンチで記憶が定かでないことを衝き、これは認められなかった)集団リンチへの口火を切ったにもかかわらず免責された。

刑事でも同様だ。なにか在日の李信恵に対して躊躇や遠慮が感じられた。李信恵のみならず、伊藤大介、松本英一らについても同様だ。伊藤は一審では賠償が認められたが控訴審では一転免責された。この訴訟の経過については、山口正紀(故人。元読売新聞記者)の長大なレポート「〈М君の顔〉から目を逸らした裁判官たち──リンチ事件・対5人訴訟“免罪判決”の構造」(『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載)をぜひご一読いただきたい。

結局、高裁で賠償が認められたのは金良平に113万円余プラス金利、一発だけ殴った凡に1万円だけで、あとの3人は免責されるという非常識極まりない判決だった。軽微な判決と断ぜざるを得ない。さすがに裁判所も全面免責というわけにはいかなかったのか、李信恵ら3人だけを免責し、金良平と凡にのみ賠償を課しお茶を濁したということだろうと思う。

また、М君の裁判闘争への応援の意味もあって、鹿砦社は李信恵を訴え、さらに3年間鹿砦社に入り込みほとんどの就業時間に本来の業務を怠りネットで活動を続けたカウンター活動家・藤井正美も訴えた。これらについて李信恵、藤井正美ともに反訴し(李、藤井両人の代理人は神原元弁護士)、鹿砦社の請求は一部は認められたがほぼ棄却され、一方鹿砦社は李信恵に110万円(一審は165万円。控訴審で減額)、同藤井に11万円の支払いが命じられた。

各々の訴訟の詳細は省くが、不公平・不公正感は否めない。特に対藤井訴訟では、あれだけの職務怠慢を平気な顔をして続けながら免責、逆に多大な被害を被った鹿砦社に賠償を課すという非常識な判決だった。この訴訟、鹿砦社の代理人は森野俊彦弁護士、司法を裁判所の中から変えようと「日本裁判官ネットワーク」で現役の裁判官時代から活動され顔を出して会見をされたりしていた。裁判所としては愉快ではない存在だったのだろう、当初からとっちめてやろうという敵意さえ感じられた。

ともあれ、私たちが「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び、俗に「しばき隊リンチ事件」といわれる本件から10年が経過した──。

人生を狂わされたМ君にはМ君なりの想いがあろう。事件が隠蔽され1年余り経ってから関わった私にも私なりの想いがあり、その一部を申し述べさせていただいた。
それにしても、なぜ「知識人」は逃げたりメディアは報じなかったり裁判所は真正面から傷ついたМ君に向き合わなかったのか ── なんらかの〈意志〉が働いているとしか思えない。私たちの後から関わってくれた黒薮哲哉が指摘するように一連の訴訟は、司法当局が管理する「報告事件」かもしれない。闇は深い。(本文中敬称略)

《関連過去記事カテゴリー》  M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/

鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

なんじゃこりゃ?! トランプ2.0政権のウクライナ・ガザ「和平」……「米露権威主義の枢軸」vs「市民発・法の支配」の時代へ! さとうしゅういち

米国のトランプ大統領は、2025年1月20日に就任すると、(ある程度就任前から予告していた)とはいえ、世界を震撼させる外交方針を打ち出しました。

◆火事場泥棒にも程がある! トランプ大統領

一つは、ガザ停戦。米国がガザを所有し、巨大リゾート開発を行う、という、奇想天外なものです。これが火事場泥棒と言わずしてなんというのか? そして、〈ハマス壊滅〉でイスラエルは徹底的に支援するという点は、バイデンと変わりはありません。これでは和平など夢のまた夢でしょう。

二つ目は、ロシア・ウクライナ戦争の終戦です。トランプ大統領はICCから国際指名手配中でもあるロシアのプーチン大統領と電話会談。終戦への協議を開始しました。これについては、選挙公約通りです。ただし、終戦のやり方が問題です。

筆者は、今回の戦争で、先に手を出したロシアが悪いと考えています。他方で、ロシアが侵攻する前のドンパス戦争については、ウクライナ側にも一定の問題がありました。100%ロシアが悪いわけでもなく、また、平和記念式典に広島市長がロシアを招待しないのはおかしいと考えています。

とはいえ、今回のトランプ大統領による和平案は明らかにおかしい。仲介者でありながら、最初からウクライナに領土をあきらめるように迫っています。さらには、レアアースなどの天然資源を米国にいわば「献上」するように求めています。

三つ目には、ロシアのプーチン大統領や、ガザにおける大虐殺でイスラエル首相のネタニヤフ被疑者に逮捕状を出していたICC(国際刑事裁判所)=赤根智子所長に対して、トランプ政権は制裁を科しました。

ガザにせよ、ウクライナにせよ、火事場泥棒と言う言葉がトランプ大統領には良く当てはまります。こんなことを放置しておけば、そのうち「尖閣、竹島、北方領土は米国が所有」とでも言いだしかねません。

◆「米国自身が戦争」から「ブローカー」へ

米国自身が戦争をするスタイルの帝国主義はおそらく、2021年8月15日、アフガニスタンからバイデンが撤退したことで、実は終わったとみられます。ウクライナにしても、バイデン政権は武器を送るだけでした。 

もちろん、核保有国であるロシアとの直接対決を避けたかったことはありますが、それだけではない。米国自身にもう、余裕がないのです。そこで、企業でいうと総会屋みたいな感じで紛争の仲介でぼろ儲け。そういうビジネスモデルの転換があるのではないでしょうか?

◆第二次世界大戦以降のダブスタ国家からダークサイドで筋通すトランプへ?!

第二次世界大戦以降、バイデンまでの米国、特に民主党政権や共和党でもジョージ・ブッシュらネオコンは、人権や民主主義を「錦の御旗」に掲げつつ、自分たちの都合の悪いことには口をつぐむ。そういう意味では偽善的であり、ダブスタなところもありました。

第二次世界大戦までは、米国はいわゆるモンロー主義が強く、第一次世界大戦でも、自分たちが大きな被害を受けてから参戦するくらいでした。第二次世界大戦が開始されるまでもその空気は強かった。だが、日本軍の真珠湾攻撃がある意味それを変えてしまった。

第二次世界大戦では米国は「民主主義とファシズムの戦いだ!」と言いながら、当時の戦時国際法に反するような民間人爆撃、広島・長崎への原爆投下を行ったのは米国、それも民主党政権でした。

冷戦期には、ソビエトを悪に見立て、民主主義の守護者を自称しつつ、ベトナム戦争などで蛮行を繰り返してきました。あるいは、イランの民主政権をクーデターで倒し、皇帝独裁を復活させるなど、ご都合主義的な面も目立ちました。それでも、「人権」「民主主義」は米国の点前でした。

そして、1989年に冷戦が崩壊すると、しばらくは米国の「一人勝ち」状態になった。1990年代は国連のお墨付き付きで、ブッシュジュニア政権以降は「有志連合」方式で、「米国の気に食わない政府は武力で倒して民主化する」方向で暴走。オバマ政権も実は、これを継承していました。オバマが広島に来た時「死が舞い降りてきた」などと他人事のような演説をしていましたが、オバマとはそもそもそういう人です。期待する方が間違いです。

バイデン政権は、ロシア・ウクライナ戦争では、ロシア非難、ウクライナ支援。一方で、パレスチナ問題についてはネタニヤフによるパレスチナ侵略や虐殺を支持し、パレスチナ支持の学生運動を弾圧しました。これがダブスタと言わずなんというのでしょうか? 他方で、トランプ政権1.0を受け継いで、アフガンから撤退する、保護貿易を進める、前後のトランプ政権との連続性も見受けられます。むしろ、このころには米欧日vs中露の新冷戦と言われる時代に突入したかに見えました。

しかし、2025年発足のトランプ2.0政権は、ロシアーウクライナ戦争で、ウクライナに領土放棄や天然資源の献上を迫っています。一方で、パレスチナ問題では、米国がガザを所有という、パレスチナ人を人とも思わない態度はバイデンから受け継いでいるとも言えます。ある意味、悪い意味で筋が通るようになったとも言えます。

◆〈法の支配〉では筋通すICC

ICCは、プーチンとネタニヤフ、両方に逮捕状を出しています。従って、プーチンを支持する一部日本の左翼の方々、ネタニヤフ被疑者を支持する日本の右派の方々両方から評判が悪い。

しかし、新冷戦における東側=ロシア、西側のイスラエル双方の戦争責任を問うているわけで、極めて公平です。ただ、それは、実はプーチン、ネタニヤフ両方と仲がいいトランプにとっては、不都合であり、今回の制裁になったのです。

◆米露権威主義の枢軸で戸惑う日本政府

日本政府は、バイデンまでの米国が建前「法の支配」を主張しており、その尻馬に乗る形で、「自由で開かれたインド太平洋」とか「法の支配」「力による現状変更を許さない」とオウム返しで言ってきただけではないか? 〈法の支配〉の大切さを本当に理解していたわけではないでしょう。

しかし、冷静に考えると、日本も軍拡では中国に対抗し続けるのは土台無理です。〈法の支配〉しかないのです。ネタニヤフもプーチンも、逮捕状が出たことで、外交に制約がかかり、だいぶ堪えています。習近平主席だって、それを見たら、うかつなことは控えるでしょう。

日本は、ICCの赤根所長を守っていくべきです。ただ、トランプによるICC制裁に反対する独仏英などの声明に日本政府は参加しませんでした。情けない。もちろん、イギリスにはパレスチナ問題の原因として、ドイツには、いままでさんざん、イスラエルを支持してきたことの反省は求めたいですが。かくなるうえは、市民や広島市などの平和行政のレベルで、ICCの姿勢を支持することを呼びかけます。

◆ゼレンスキーはパレスチナに謝罪し、共同して〈米露権威主義の枢軸〉に当たれ!

さて、ウクライナのゼレンスキー大統領は2023年10月7日のハマス政権によるイスラエルへの〈攻撃〉(恒常的に続いてきたネタニヤフ被疑者による侵略・虐殺への報復)を受けて、ネタニヤフ被疑者を全面支持してしまいました。

しかし、これを契機に、ゼレンスキー氏は、インド(パキスタンと険悪な関係で、反イスラム色が強い)以外のグローバルサウスからドン引きされてしまい、旗色が悪くなったのです。もはや、トランプになって米国はウクライナのはしごを外しました。

また、ネタニヤフ被疑者率いるイスラエルはロシア制裁に加わらないほぼ唯一の西側国家です。ゼレンスキー氏は潔くネタニヤフ被疑者支持が誤りであったことを認め、パレスチナに謝罪されたらどうでしょうか? その上で〈米国によるガザ所有にもウクライナ領土のロシアへの割譲および、トランプの火事場泥棒的なウクライナ天然資源巻き上げに断固反対する〉共同声明を出し、世界中の市民、グローバルサウスやEU諸国、あるいは日本や中国などに支持を呼び掛けるのです。

もはや、ゼレンスキーがロシアとまともに武力で闘っても勝てません。消耗戦なら人口が多いロシアが有利に決まっている。それを直視した上で、各国政府だけでなく、市民レベルでの国際政治での多数派工作に徹し、米ロとイスラエルの〈権威主義の枢軸〉に対抗すべきだ。この場合、中国も米露側においやらない柔軟さが求められます。

◆日本・広島は〈法の支配〉軸に横の連携で〈米露権威主義の枢軸〉けん制を

また、日本も他人事ではない。それこそ、トランプが〈尖閣・竹島・北方領土を所有〉などと言いだしたらどうするのか?そうさせないためにも、裏で良いのでウクライナとパレスチナの首脳会談をセットするなどしても良いでしょう。官房機密費とはこういう時のためにあるもので、自民候補の選挙費用ではないのです。

米欧日vs露中の〈新冷戦〉から 米露中の権威主義の枢軸vs市民が進める法の支配へ、対立軸は変化しています。大国間の戦争は起きづらくなるが、大国政府の談合で市民が犠牲になりやすい時代にもなりかねない。

日本政府は、核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加をしない、と2月18日決めました。しかし、再考願いたい。岩屋外相の発言を意訳すると米国が核兵器の先制使用をしてくれることも日本政府は当てにしているから、というのが不参加の理屈です。だが、そうなると、ロシアの核威嚇も否定できなくなる。そして、いまや、米露が談合して、ロシアによる核威嚇も不問に付している。そういう状況の下で、過度な米国忖度は無意味です。

こうした中、広島はどう対応すべきか? まず、平和首長会議など横の連携重視に徹するべきです。オバマやバイデン相手の米国忖度路線は通用しません。核兵器禁止条約批准国や平和首長会議加入自治体と広島はスクラムを組み、核兵器保有国の首脳を突き上げていく。それしかないのではないでしょうか?

原爆ドーム前でのネタニヤフ被疑者による侵略・虐殺への抗議行動。毎日18時頃から有志が今も粘り強くたち続けています(2月13日筆者撮影)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎X @hiroseto https://x.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/
★広島瀬戸内新聞公式YouTubeへのご登録もお待ちしております。