簡単に理解できる、絶対矛盾を一つ例示しよう。どうしてこの国では「経済再生担当大臣」が新型コロナウイルスの対策担当に当たっているのであろうか。疫病であるウイルスの蔓延と、「経済再生」がどのような関係にあるのか。

また、ワクチンの担当にどうして「行政改革大臣」が任じられるのか。ワクチン対応にも、旧来とは異なる行政対応を導入したい、との志あってのことなのか。そんなことはあるまい。元防衛大臣で「防衛大臣専用機が欲しい」とのたまった河野太郎は、相変わらず回らない滑舌で、ウイルスの遅滞弁解に忙しいだけだ。河野洋平だってそんなに評価に値する政治家ではなかったけれども、息子のできの悪さを嘆いているのではあるまいか。

行政改革は結構ではあるが、本来厚生省と労働省が担っていた業務には、水と油といってもいい利益相反の業務もあったのだ。それが無理やり合体させられてしまい、結果として医療行政や労働行政には大幅な後退が生じている。全国的な保健所の減少などもその結果である。横浜市はホームページで誇らしげに

《指揮命令系統の一元化により、広域的で緊急的な課題に迅速に対応するとともに、その基盤となる情報を一元管理できるよう18区に分散していた保健所を1か所に集約し、健康危機管理機能の強化を図りました。》

と書いているが、これはつまりかつて18か所あった横浜市の保健所が、現在は一か所だけになっていることをあらわす。

保健所は結核や、感染病が発生したときに、感染源を突き止め消毒を行ったり、医療への誘導を行うのが業務の一環だが、今次のコロナ蔓延には全国的に保健所の数が半数以下に減らされた「行政改革」のしわ寄せが遠因として働いている、ともいえる。京都市では保健所職員の中に昨年1年で2000時間(!)近くの残業を強いられている職員がいたことが判明した。

ひとつき20日の勤務で年間2000時間の残業は、一月あたり160時間の残業を意味するが、一日は誰にも平等に24時間しかない。この保健所勤務の職員さんはコロナでなくて「過労死」してしまっていないか、本当に心配になる。公務員の中には、とくに高級官僚の中には、不労所得や役得にあずかっているものが少なくない実態はあるにせよ、「行政改革」が結果として最低限の行政サービスをおろそかにしてしまっては本末転倒だ。

そもそも「改革」という言葉自体を近年は疑ったほうがよさそうでもある。「司法改革」は雨後の筍のように無意味で、既に半数以上が閉店した法科大学院と、法律の知識を持たない市民に、場合によっては「死刑」判決に立ち会わせる「裁判員裁判」さらには「司法取引」を生み出しただけであるし、企業における「意識改革」は労働者に確立された権利の忘却と、さらなる利益追求のための自己犠牲を強いる。

5月3日憲法記念日、コロナ禍の下とはいえ、いったいどんな営みや議論が交わされ、報じられたことだろうか。「批判する価値はない」とわたしが決めつけた報道各社は、期待にたがわず素っ頓狂な報道に明け暮れた。共同通信は改憲の必要性を誘引する世論調査を行い、わざわざ「改憲における緊急事態条項の必要性」までを質問項目に加えている。コロナにおける緊急事態宣言とを結びつけてある。現憲法で「緊急事態宣言」は発令可能であったのにどうして、改憲が必要なのか、また改憲に「緊急事態条項」を盛り込まなければならないのか。このような基本的な事項すら、論理的に理解できない頭脳が、今次この国におけるマスメディアの実態である。

あなたたちは、菅のイヌか?と罵倒されても仕方あるまい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』7月号

IOC会長トーマス・バッハは、17日から来日する予定であったが、表面的には緊急事態宣言の延長によって来日が見送られた。バッハ来日は、五輪強行のために日本政府の尻を叩くためか、あるいは現地をIOC会長が視察した結果「開催は無理」と宣言するか、どちらかが目標であろうが、どちらに転ぶかについての観測や予想をわたしは、持ち得ていなかった。


◎「参考動画」IOCバッハ会長の来日は「非常に難しい」橋本会長(ANN 2021年5月7日)

「東京五輪」は、既に膨大な「被害」を実際に生じさせている。わかりすいところで例を挙げれば、香川県では聖火リレーの警備をしていた警察官が新型コロナウイルスに感染していたことが判明したし、鹿児島ではやはり交通整理に当たっていた関係者6名が新型コロナウイルスに感染していたことが判明している。「密になるな」、「家から出るな」と政府は呼びかけ、要請しているいっぽうで、聖火リレーを行うちぐはぐさは、当然のように「感染拡大」を招く。

頭の悪い安倍晋三を長期にわたり、総理大臣の椅子に座らせてきた、日本人総体としての知的劣化は、いまさら嘆いても仕方がないけれども、第二次大戦にたとえれば、1945年の初旬が、今日に匹敵するかもしれない。つまり、既に全国の主要都市だけではなく、地方都市にも空襲が降り注ぎ、多くの非戦闘員がすでに犠牲になっている。そしてここで敗戦を選択したところで、膨大な被害は確定しているのであるけれども、このまま負け戦を続ければ、やがて8月には広島と長崎に原爆が投下されるのだ。

いまでも、散々な目にあっているが、このまま「猛進」すれば、「地獄図絵」が必ず待っている。それが2021年5月初旬の日本が置かれた状況ではないだろうか、とわたしは考える。


◎「参考動画」IOCが安倍前総理に「オリンピック功労章」(ANN 2020年11月14日)

バッハはドイツの弁護士であり、モントリオール五輪では旧西独のフェンシングの選手でもあった。アディダスをはじめとして、多数の企業で責任あるポストを歴任し、ゴルファ・アラブ・ドイツ商工会議所の会長も歴任している。スポーツから出発し、ビジネス、政治の世界へも踏み入れた経験のある人物らしい。法律を学んでいる最中に五輪選手として活躍、その後83年に博士論文を書き上げ、弁護士としての歩みをはじめたようだ。

運動能力にも、頭脳にも秀で輝かしい経歴を持つバッハ。しかし、IOCの会長とは、巨大利権の差配者である。世界的パンデミックにあって、スポンサーをはじめとする「利権集団」をどのようにコントロールするか、がバッハの最大命題なのであろう。

予定されていた来日には、五輪とは関係のない「広島訪問」の予定もあった。誰が広島に行こうと、文句を言われる筋合いはないが、被爆地を訪れてあたかもIOCや五輪が「平和」と親和性がある、との印象操作に広島を利用しようとしていたのであれば、「不謹慎だ」とわたしは断じる。


◎「参考動画」米紙 五輪中止を主張 バッハ会長の“悪い癖”批判(ANN 2021年5月7日)

実のところ、この先五輪が強行されようが、中止されようがわたしには、もう強い関心はない。既に可視・不可視の膨大な被害は既に生じているのであり、「敗戦後」はいずれにしても、焼け野原をこの国は甘受しなければならない、ということである。緊急事態宣言下でも本年冬季国体を愛知県は開催した。狂気の沙汰だと思って呆れていた。そして、いくらなんでも世界中が、波状攻撃のように変異株にのたうち回る状態での、五輪開催などは、どこかで誰かが「理性」によって止めるだろう、との甘い期待があった。

現生利益的あるいは、気まぐれと言えばその通りかもしれないが、インターネット上の調査では、五輪開催に反対の人の割合は8割を超えている。この精神はまともだと思う。

しかし「理性」は日本においても、世界を見渡しても権力者の中にはないのだ。
背理と反理性が生じさせる五輪被害。地獄図絵を見たくはない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

最新刊!タブーなき月刊『紙の爆弾』6月号

検索エンジンYahoo Japanには掲載された記事によるが、読者がコメントを書き込むことができる機能がある。わたしはこれまで、このような場所にコメントを書き込む行為は、みずからの発信行為に反するので控えてきた。

だけれども「東京五輪」や「原発」についてコメントしたら、どのような反応が返ってくるのか。そのことを試すために、あえていくつかの書き込みを試みた。そのスクリーンショットが以下の通りである。

やや見にくいので解説をすると、Yahoo Japanが掲載した記事の見出しとそれ対してわたしが書き込んだコメントを順番に並べた。返信とあるのはわたしのコメントに対しての返信の数で、わたしのコメントを肯定した数(「いいね」とも呼ばれるらしい)とわたしのコメントに対して否定的な方が意思表示した数が表示されている。

16日の本通信で「東京五輪に対する世論の変化」を体感的なものとしてだけ記した。けれども、わたしの体感は実態から大きく外れてはいなかったことが、数字で証明された(数字は4月16日、なおコメントはすでに消去した)。

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筆者が書き込んだコメント

 

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Yahoo Japanが掲載した記事の見出しと筆者が書き込んだコメント

 

Yahoo Japanが掲載した記事の見出し

筆者が書き込んだコメント

ここに示したものは、わたしが書き込んだすべてのコメントではない。特徴的なものだけを抽出していることを、あらかじめ申し上げておく。それにしても総論「五輪開催反対」あるいは「聖火リレーのバカらしさ」をときに感情的に、別の記事には冷静に書き込んだコメントいずれにも、肯定の意を示して下さる方の数が圧倒的である。

わたし自身がもっとも驚いたのは、朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」と記す)が、賢明にも「東京五輪」不参加を決めた記事へコメントへの肯定者数である。通常、朝鮮について記事を書くと、記事の内容にかかわらず、脊髄反応のように否定的な反応や批判が返ってくる。わたしはプロフィールにメールアドレスを明かしているので「非国民」といったメールが届くことも、珍しくはない。

しかし、極めて恣意的に小泉政権時代から植え付けられた「朝鮮アレルギー」をも凌駕して、「東京五輪開催反対」の世論は急激に形成されている。週末に行われる共同通信の世論調査は、かねてより政権与党に甘い設問で埋め尽くされ、政治以外の質問も回答には限られた選択肢しか用意さない。社会調査法の基礎を学んだ人に見せれば、まったく客観性を欠く恣意的な調査である。しかし、その恣意的な調査であっても「五輪反対」の割合が増すことはあれ、減ることはない。

それが、コロナ禍という不幸な理由であったにせよ、五輪の本質が暴かれ、広く認知された事実は注目に値するだろう。(つづく)

◎[カテゴリー・リンク]五輪・原発・コロナ社会の背理

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』5月号

◆多数派になった「東京五輪反対」世論と権力の背離

2013年9月7日のブエノスアイレスで、長州の大法螺吹き安倍晋三が嘘八百の召致演説を行い、不幸にも決定してしまった「東京五輪」──。「福島復興五輪」だの、「レガシー作り」だの、空疎で犯罪的ですらある虚飾で固めた「東京五輪」開催に、わたしは招致決定直後から、その欺瞞と犯罪性について、極めて強い言葉で批判と開催反対の意を明らかにしてきた。


◎[参考動画]安倍晋三総理大臣プレゼンテーション IOC総会(2013年9月8日)


◎[参考動画]原発処理水の海洋放出を決定(2021年4月14日)

本通信だけではなく、鹿砦社の発刊する日本唯一の反原発季刊誌『NO NUKES voice』などでも、機会があれば「東京五輪反対」を書き続けてきた。統計を取ったわけでもなく、調査を行ってもいないけれども、原発に反対するひとびとの多くは、わたし同様に「東京五輪反対」に同意してくだっさる傾向にあったが、それ以外の皆さんは積極的であったかどうかはともかく、さして強い反対の意向を「東京五輪」」には持っておられなったように感じる。

本コラムでわたしの偏った原稿を読んでくださる読者の皆さんのなかにも、強硬な「東京五輪反対派」はそれほど多くの割合を占めはしなかったのではないかと思う。しかしこの1年で世論は激変した。大手新聞、テレビが煮え切らない態度でコロナの蔓延や、幾度もやってくる感染の波を伝えならが、「東京五輪まであと100日」と報道する姿勢たいして、新聞はただでも減っている部数をさらに減らし、テレビを視聴する人の平均年齢は、ますます上がる。

そして価値基準において絶対に両立しえない「コロナ対策」と「五輪開催」を同じ番組の中で扱うことに慣れた番組構成は、高齢者にすら飽きられてしまう。


◎[参考動画]IOC委員長は開催断言も世論調査7割以上が否定的(2021年4月14日)

◆ワクチン未接種者が多数の国で強行される「東京五輪」

どういう理由かワクチン接種率はイスラエルとモーリシャスが他国を引き離して高い。ワクチン接種が開始されてからこの傾向は一度も変化を見せておらず、日本の接種率は100位前後を行ったり来たりしている。

ワクチン接種については様々な観点から有効性に疑問があるので、わたしは読者の皆さんに積極医的な接種をすすめるものではない。でも、日本政府は数か月前に何と言っていただろう。「7月までには全国民の接種を終える」、「五輪までにワクチンは間に合う」こう語っていたのはよその国の閣僚ではない。それがどうだ。現在でも毎日新しくワクチン接種を受けている人の数は多くても1日あたり2万人を上回わらない。

このままのペースであれば、7月までに接種を希望する全国民にワクチンを行き渡らせることは、完全に無理だ。つまり「東京五輪」を強行するならばワクチン未接種者が多数の国で五輪を開くことになる。

こういうバカげた状態をさすがに、多数の国民は望みはしない。「宴会自粛」や「リモート講義」で家や下宿に閉じ込められた若者たちは、いまひそかに怒りはじめている。

「僕は通信教育を受けるために、大学受験の勉強をしたわけじゃないです」

都内の有名私立大学に昨春入学した若い知人は、昨年1コマしか対面講義はなかったそうだ。その1コマだけの対面講義も、感染者が出てリモートに切り替わった。なんのために下宿をしているのか。疫病が原因とはいえ、若い友人が怒りを感じるのは、無理なかろう。そんな東京で「五輪」を開こうとしている愚か者たちに、若い知人の怒りは向けられているのだ。

日々の感染者が1000人を超えて「医療崩壊」を医師会が宣言した大阪では4月13、14の両日、万博公園で観客を入れずに「聖火リレー」がおこなわれた。この際大阪府のスポーツ振興課員(常時13~14名在籍)は全員万博公園に出向いていたそうだ。維新・吉村府政は、しきりにコロナ対策に力を入れているようにふるまうが、「聖火リレー」における対応を見れば、その本質は推して知るべしである。

美しいほどに馬鹿げて、それでいて人の命を奪う背理が目の前で繰り広げられている。(つづく)


◎[参考動画]ワクチン接種後に60代女性が死亡 因果関係は?(2021年4月14日)

◎[カテゴリー・リンク]五輪・原発・コロナ社会の背理

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』5月号

『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道

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