社長が夜逃げした。
予兆はあった。昨年まで社長が力を入れていた開発が失敗に終わり、大赤字を抱えてしまった。その頃から危険信号は灯っていたのだ。
元々システム開発者で、若くして会社を立ち上げた社長は、まだ30代後半。長めの髪を整えたりせず、やや長いアゴは肌荒れでカサカサになっている。金遣いが荒いところだけは社長っぽいが、専ら夜の五反田で遊ぶのが趣味だ。銀座に行くほどの貫禄はない。服装には金をかけず、安そうなチェックのシャツをよく着ている。その辺りが五反田に似合う。そのせいか夜遊び好きなのにモテない。経営には疎く、社員に任せて専ら自分の好きなシステム開発ばかりをやっている。

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