3.11直後から毎日休みなく福島第一原発動向をブログで発信し続けてきた「onodekita」さんこと小野俊一医師。東電、福島、被曝をめぐる諸相からメディア・識者批判にいたるまで、縦横無尽に語ってもらった200分インタビューを8回に分けて随時掲載する。今回はその第3回目。

onodekitaさんこと小野俊一医師

◆自分で真実を想定していくしかない

── 汚染水ではストロンチウム90を含む放射性物質濃度(全ベータ)がこれまで発表していた数値の10倍だったとか(河北新報2014年6月21日)、2号機では格納容器内の水位がこれまでの想定の半分しかなかったとか(NHK2014年6月10日)、立て続けに東電は修正情報を発表しています。

当たり前です。だって核燃料はすでに溶けて、地下に潜ってしまっている。それがどこにあるのかさえ把握していないのが実態です。逆におかしいのは、マスコミが東電の広報発表しか報じないことです。現場を取材している記者がほとんどいない。福島の現状をきちんと知りたいのであれば、浜通りのあたりを取材すればいろいろな話が出てくるはずです。情報源を東電に頼ってはいけない。もしもいま、福島で被曝が原因で人が死んだという話が出てきたら、それだけで大変なことになるはずです。そうした事実を隠すために、被曝された現場の人には相当な額のお金を支払われていると思います。

内部情報でいえば、「田舎のトンビ」という人の書き込みが興味深いです。「田舎のトンビ」さんの書き込みはエッチなサイトに紛れ込んでいて、わかりにくいのですが、時折、衝撃的な情報を流しています。

「田舎のトンビ」で検索すると、例えばこんな記事が出てきます。これは2011年12月の書き込みですが、原子炉の下の地面をロータリダイヤモンドピッチみたいな掘削ボーリングでくりぬいて出てきた物質の写真をネットに載せている。まるでウランのイエローケーキみたいな物質です。そしてそれを測定してみると放射線量の検針が100倍で振り切れている。

こんな画像を載せられる「田舎のトンビ」さんはおそらく内部の人だと思います。彼の写真や書き込みが事実だとすれば、福島第一原発の現場は東電の発表値以上に高線量なのは当たり前といえます。そのことはおそらく、東電も知っているはずです。

いまは東電の公式発表やマスコミが報じるニュースと現場の真実との格差が大きすぎると思います。ですから、自分たちでより事実に近いストーリーを練り上げて自分で真実を想定していくしかない。そしてときどき報じられる事実に近いニュースを見つけたら、それらを繋ぎ足していくこと。そうすることで、より事実に近い福島の実態が見えてくるのだと思います。

例えば、「田舎のトンビ」さんの画像を見れば、こうした放射性物質がすでに福島第一原発の地中深くに溜まっていることが想定できる。「4300ベクレルのトリチウムが見つかった」というニュースがあれば、高濃度の放射性物質が出ていないという方がおかしい。だから、こちら側で想像しているイメージに現実のニュースが追いついてくるのを待つしかないと思う。そうすると自分がおかしいと疑問を持っている部分はその後、ニュースで見て、「ああやっぱりこれはそういうことだったのか」と検証として引き上げていくことができるわけです。

──『美味しんぼ』騒動で思い出したのですが、事故直後に『AERA』が「放射能が来る」という特集を組んで、世間からバッシングを受けました。『AERA』は結局、正しかったわけですよね?

確かに『AERA』が報じたように当時、首都圏には放射能が来たのは事実でしたよね。でも、その時、『AERA』を批判した人たちから、そのことについて一切、反省や謝罪の弁がない。『AERA』騒動の一ヶ月か二ヵ月後、私は朝日新聞社に電話して、「記事は正しいと思いますけど、なぜ反論しないのですか? ぜひ、その経緯などを記事にしてください」と意見しました。事故直後、正しいことを書いたメディアが叩かれたわけですから。記事自体も極めて抑制的に書いてました。ただ、表紙の写真がガスマスクをつけた人の写真で、そのタイトルが「放射能が来る」だったから叩かれただけですよね。

がれき問題だってそうです。実は震災のがれきだって東北地域で十分処理できた。それを政府は拡散した。このことに対しても誰もごめんなさい、謝罪の声はないです。過ぎたことは忘れるという実に日本人的な流れです。[つづく]

[2014年6月26日熊本市 小野・出来田内科医院にて]
(構成=デジタル鹿砦社通信編集部)

◎onodekitaさんこと小野俊一氏横浜講演会のお知らせ!
日時=2014年9月21日(日)10:45-11:45
場所=パシフィコ横浜(第3回健康生活フェア)
※「フクシマの真実と内部被曝」 通常1000円(無料入場券あり)
詳細は下記リンクを参照ください。
http://onodekita.sblo.jp/article/102831803.html
http://www.healthylifefair.net/2014_yokohama/

ブログ「院長の独り言」 

▼小野俊一(おの しゅんいち)(小野・出来田内科医院院長)
1964年広島生まれ宮崎育ち。東京大学工学部(精密機械工学科)を卒業後、1988年に東電に入社。福島第二原発(5年間)と本店原子力技術課安全グループ(2年間)で7年間勤務。1995年に退社後、熊本大学医学部に入学し、2002年卒業。NTT病院等の勤務を経て、熊本市の小野・出来田内科医院院長。『フクシマの真実と内部被曝』(2012年11月七桃舎)
◎ブログ「院長の独り言」 http://onodekita.sblo.jp/

 

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