デジタル鹿砦社通信をご覧の皆様、こんにちは。愛煙家の原田卓馬です。

百害あって一利なしと声高に喧伝されるタバコ。2005年にWHO(世界保健機関)によって発効された国際条約の、通称『たばこ規制枠組条約』。それ以降の愛煙家に対する逆風は猛烈に吹き荒れている。

たばこ税の値上げをきっかけに、『わかば』や『エコー』など200円台の旧三級品タバコに切替えた人もいれば、やむを得ず禁煙という選択肢を選んだ人もいる。喫煙が習慣化しただけで、旨くもないのに吸ってしまっていたという人にとっては好機だっただろう。コストアップを理由に嗜好品の質を下げるというのは人間としての品性を欠いた低俗なことのように想えて不愉快なことが多い。タバコがニコチン摂取のためのツールに成り下がってしまっては文化が廃れる。

そこで、たばこの健康被害説の裏に隠れている真相を暴きだし、安心して美味しく楽しくエレガントにタバコを嗜むのが本連載の目的の一つである。

前回に引き続き、タバコの巻紙と巻紙のりのお話であります。JT(日本たばこ産業)のホームページにある材料品添加物リストは何回も紹介しているが、化学的な成分表示ばかりで何がなんだかさっぱりわからない。

「こいつは参った!」

お手上げして、JTに電話して直接聞いてみた。ちなみに原田は某カード会社でコールセンター勤務歴5年であります。

「はい、JTお客様センターのYが承ります。」

── もしもし、原田です。タバコの巻紙の添加物のことを詳しく聞きたいです。
「はい、マキシのことですね。」

JTではホームページでも、電話対応でも一貫してタバコの巻紙をマキシと呼称しているらしい。社内用語としてマニュアルがしっかり整備されているのだろう。Yさんは発音が綺麗で落ち着いた声のお姉さん。

── はい、巻紙の添加物リストの内容について解説をお願いしたいです。

「少々お待ちくださいませ」

突っ込んだ質問には咄嗟の返答ができない様子だ。こういった案件はコールセンターでの通常業務には盛り込まれていない特殊対応のようだ。

── 今、ホームページにある材料品添加物リストを閲覧しながら電話してるんですが、どれがどんな目的で添加されているのか知りたいです。

「全部ですか?」

── とりあえず巻紙の添加物について全部。

「全部、、、ですか。」

・セルロース 16.3
・炭酸カルシウム 7.2
・水酸化マグネシウム 0.4
・クエン酸カリウム 0.4
・クエン酸ナトリウム 0.4
・塩化カリウム 0.3
・リンゴ酸 0.08
・水酸化カリウム 0.08
・グァーガム 0.07
・カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.07
・酢酸カルシウム 0.06
・酢酸カリウム 0.02
・酢酸マグネシウム 0.005

これが巻紙の添加物一覧であります。右横の数字は紙巻たばこ1本に対する最大使用割合(%)です。シガレット100gあたり、最大で16.3gのセルロースが巻紙に使用されているということですね。

13種類もあるのでコールセンターのYさんもびっくり。心の中では、「うわ~、こいつ、めんどくせ~」とつぶやいたことだろうが、そこはプロのJT企業戦士のYさんだ。

「どの添加物についてお知りになりたいですか?」

── じゃあ、上から順にいくとしてまずはセルロースってなんですか?

「はい、セルロースはマキシとフィルターに使用されており、フィルターのアセテートは植物由来のため生分解が可能で、うんぬんかんぬん」

なんかフィルターの話とごちゃまぜになってしまった。

── すいません、フィルターのことは別の機会にということで、巻紙のセルロースことを詳しくお願いします。セルロースって何でできているんですか?

「木材パルプや麻、穀物の繊維で紙の主成分です。」

── 具体的に原料とか産地とかはわかりますか?

「申し訳ありませんが、こちらの部署ですとすぐにはお答えできません。よろしければ折り返しご連絡いたします。」

── はい、お願いします。

折り返し対応になってしまった。電話の向こうでYさんは上司に助けを求めていることだろう。過去の対応経験から、マニュアルには載っていないイレギュラー情報にも詳しい上司よ。

10分程経って、折り返し連絡を受けた。

「先ほどのYの上席のNと申します。マキシの添加物についてご質問ということですが、どういったことでしょうか?」

── 添加物のことがよくわからないので、もっと詳しく知りたいんです。たとえばタバコには燃焼促進剤として火薬が入っているという都市伝説みたいな噂がありますけど、実際それって本当はよくわからないなーと思ったので、お電話しています。

「燃焼促進剤ですか?それはクエン酸塩でございます。」

── クエン酸ですか?

たばこの燃焼促進剤はクエン酸だったのか。とりあえず手元にあったシガレットを舐めてみたが別に酸っぱくはなかった。レモンやミカンのような柑橘類の酸味の成分はクエン酸だが、ここで出てくるのはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムのクエン酸塩である。

「クエン酸カリウム 燃焼促進剤」でググってみたらJTの出願中特許のページを発見!

『シガレット巻紙の製造方法、その製造機及びシガレット巻紙(WO 2012131902 A1)』によれば

「近年、シガレットに使用される低延焼性巻紙が知られており、巻紙の所定領域に燃焼抑制剤が塗布されている。一般に、たばこの紙(巻紙)には抄紙工程で助燃剤が加えられている。助燃剤としては、クエン酸ナトリウムやクエン酸カリウム等の有機酸塩が付与され、これら助燃剤は燃焼を促進するため、燃焼速度の調節剤として用いられている。」

となっている。長くなったので次回に続く。

(原田卓馬)