屁世滑稽新聞(屁世26年10月12日)

松島みどり法務大臣は

なぜエリマキ着用で国会登壇できるのか?……の巻

全国の大きなお友だちのかたがた、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。

犬エッチケーテレビの「花子とアン」は終わってしまいましたが、
こちらは終わりません。あちらは作り物のお芝居ですけれども、
こっちは現実世界のお話しなのですもの。
お話しのおばさんは、これからもますます、がんばりますわよ。

さて今日のお話しですが、このあいだの続きで、やはり永田町の
国会動物園のお話しです。

国会動物園が、先月末に再開されましたが、そこでちょっとした騒動が起きました。
ボボ・ブラジルとの名勝負で知られるプロレスラーのアントニオ猪木さんも
いまや71歳とすっかり高齢者のお仲間入りをされたわけですが、
そういう理由からでしょうか、現在は「爺世代の党」所属の参議院議員を
やっておられます。

……え? あゝ、うっかりしておりましたワ。ここまで書いて、わたくし、
間違いに気づきましたワ。「爺世代(ぢいせだい)の党」でなくて「次世代の党」でした。
老人ホームみたいなお顔ぶれなのですもの。どちらを名乗っても同じなのにね。

で、お話しに戻りますが、アントニオ猪木先生は真っ赤なマフラーを
“闘魂のシンボル”として、いつも着用していらっしゃいます。

アントニオ猪木さんは、昨(2013)年夏の参院選挙で「日本維新の会」
から出馬し、18年ぶりに政界復帰を果たしました。
しかも今回は議員名として「アントニオ猪木」を名乗ることも
許されたの。当選直後の開催された臨時国会には、もちろん
“燃える闘魂”を象徴するマフラーを着用してやってきたの。
だけど参議院規則では「襟巻は着用禁止」なので、やむなく
マフラーを外して入場したのよ。きゅうくつで理不尽な規則よねえ。
まるで出来のわるい小学校みたいだわ。

ところが参議院には、こんな規則があるのよ……。

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第16章 紀律及び警察
第1節 紀律

第207条 議員は、議院の品位を重んじなければならない。
第208条 議員は、議場又は委員会議室において、互いに敬称を用いなければならない。
第209条 議場又は委員会議室に入る者は、帽子、外とう、襟巻(えりまき)、傘、つえの類を着用し
又は携帯してはならない。ただし、国会議員及び国会議員以外の出席者にあつては
議長に届け出て、これら以外の者にあつては議長の許可を得て、歩行補助のため
つえを携帯することができる。
第210条 議場においては、喫煙を禁ずる。
第211条 何人も、参考のためにするものゝ外は、議事中、新聞紙或は書籍の類を閲読しては
ならない。
第212条 何人も、議事中、濫(みだ)りに発言し又は騒いで、他人の発言を妨げてはならない。
第213条 何人も、議長の許可がなければ、演壇に登つてはならない。
第214条 議長が振鈴を鳴らしたときは、何人も沈黙しなければならない。
第215条 散会又は休憩に際して、議員は、議長が退席した後でなければ、退席してはならない。
第216条 すべて紀律についての問題は、議長が、これを決する。但し、議長は、討論を用いないで、
議院に諮りこれを決することができる。
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お読みになればわかるように、議場や委員会室では「帽子、外とう、襟巻、傘、つえの類を
着用し又は携帯してはならない」ことに決まっているの。たとえ“闘魂のシンボル”でも、
真っ赤なエリマキを着けたままでは、議場に入れないってわけなの。
これって、たとえ“日本の国家と国民のシンボル”の天皇陛下でも、銭湯じゃ、服を脱がなきゃ
洗い場に入れないのと、同じようなことよね。
……え? 同じじゃないって? こりゃまた失礼いたしました。

それにしてもこの参議院規則って、よい子たちが守らなきゃならないお行儀ごとを
細々(こまごま)と書き連ねたどこかの小学校のコーソクみたいだわ。
ここに書かれたことなんて、ふつうに礼儀が身についている大人なら、誰に言われなくても
守れることでしょ。それをこうやっていちいち列挙しなきゃ成り立たないのなら、「参議院」
なんて名乗るのをやめて「矯正院」とか「教護院」とか「少年院」に呼び名を変えなくちゃ
ならなくてよ。なかの議員センセイのお歴々の顔だけみれば「養老院」なのですけどね。
「元老院」じゃなくて「養老院」ね。
なのに行儀やしぐさが「少年院」並みだなんて、悲しすぎるわ。

さて、参議院にはこんな細々(こまごま)した規則があって、生徒さんたちは守らなくちゃ
ならないの。でもこうやって規則をながめてみると、実際の国会議事堂で、お年を召した
生徒さんたちは、実際には日常的に規則違反を繰り返していることがわかるわ。
とくに目立つのはヤジ。ちゃんと参院規則で「議事中、濫(みだ)りに発言し又は騒いで、
他人の発言を妨げてはならない」と定められているのに、まったく守られていないどころか、
今年の春にはセクハラ野次騒動がきっかけで国会での野次罵声が問題化したおりに、
安倍総理みずから答弁に立って、こう言ってヤジを擁護したほどですものね――「ヤジにも
いろいろありまして、これは議場の華とも言われる場合もありますし、正直、私も若いころは
けっこうヤジった方でございます」。……ルール違反を自慢してどうしたいのでしょうね?
これじゃ不良少年が仲間に吹聴する“万引き自慢”と変わらないわ。……やっぱり衆議院でも
参議院でもなく、「少年院」と呼ぶべきよね。

鳩山由紀夫さんが首相だったときなんか、総理大臣みずからが、議事の真っ最中にみっともない
“内職”をしていたほどですもの。
このときの新聞記事と写真を、あらためて掲げておきますわね。
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誰へのサイン?=鳩山首相
(時事ドットコム 2009/11/26)
鳩山由紀夫首相が26日午後の衆院本会議の最中、扇子に「鳩山由紀夫」「友愛」などと書き込むのに熱中する場面があった。首相は周囲も目に入らずサインに没頭していたが、カメラを向けられると、上を見上げて思わず手で覆い隠した。
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ご自分のファンのために議会で“サイン扇子”づくりの内職にはげんでいた、落第坊主みたいな
鳩山首相の体裁の悪さは、当時インターネット上ですぐに“絵文字”マンガにされておりましたわ。
それがこれよ。

こんなぐあいに、鳩山総理みたいに自分から率先してルール違反をやらかし、安倍総理みたいに
ヤジ暴言で無法地帯に成り果てた国会のルール無視の悪習を讃える不届き者までいるのですもの。
いっそのこと参議院規則の「規律」の定めなんて、やめてしまうのはどうかしら?
とにかく、規則をやぶることが風習になっている不良高校みたいな国会なのですもの。
ヤジを飛ばすチンピラたちが、他人の規則違反をとやかく言うなんて、チャンチャラ可笑しいと
思うわ。

ところが猪木センセイ、お可哀想に、“闘魂マフラー”のことで因縁をつけられて、
けっきょくマフラーをはずして議場に入ることになったのよ。……大人の態度よね。

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……と、ここまでのお話しも、常識的な大人の目から見てじゅうぶんに馬鹿バカしいと
思うのですけど、今回は国会冒頭から、もっと阿呆くさい騒動がおきたってわけ。

この阿呆くさい事件の主人公は、なんと日本のルールをつかさどる法務大臣、
松島みどり法務大臣だったのよ。

松島みどりセンセイも、シンボルカラーは赤なんですって。「アカが大好き!」とか
「あたしのシンボルカラーは赤よ!」なんて公言したら、世が世なら特高警察に逮捕
されて拷問されて殺されちゃうわ、小林多喜二さんみたいに。……それはともかく、
みどりさんが赤をシンボルカラーにするというのは、あたかも「黒ずくめの岸部シロー」
みたいで面白いわよね。名前と正反対の色を好む心理状態というのは、どういうもの
かしら? あまり赤いものばかり身につけて「赤色」を強調しすぎると、選挙のときに
「松島アカ」って書く人がふえて、無効票ばかりで落選するかもしれませんわね。
よけいな心配ですけれども……。

さて、松島みどり法務大臣は、このたびの国会に、規則で禁じられている真っ赤な「襟巻」を
着けて登場したのです。当然、彼女の襟巻すがたをみた議員たちが、そのルール違反を咎(とが)め
ましたが、この法務大臣は奇妙キテレツな反論をして、開き直ったのでした。


自民党の松島みどり議員については、大臣に任命されて
参議院規則で着用が禁じられているハズのスカーフを
着けて登壇することが許されたのでした。これは後進国の
政界にありがちな、理不尽なえこひいきなのでしょうか?
……いいえ。たぶん違います。彼女にかぎっては、この格好
で国会登壇しても許されるのです……動物愛護の精神ゆえに。

なにが 馬鹿バカしいって、彼女の言い分ほど可笑(おか)しなことはないわ。
騒動後の記者会見で、松島みどりさんは、自分は猪木議員のような「マフラー」ではなく、
「スカーフ」を着用しているのだ、と主張したうえで、こんなふうに自己弁護したのよ。

「女性が洋服にセットで付いているスカーフを巻くことは、(参院規則にある)
『外套および襟巻の禁止』にはまったく当たらない。日本の女性のファッション
からスカーフというものを全部追放したいとおっしゃる方なら、そうでしょうけど。
(猪木議員がトレードマークにしており議場で外さざるを得なかった)マフラーは
だめですよね。女性のファッションのためのスカーフとマフラーは違う。」

この反論の意地の汚さと、あまりの無知蒙昧(もうまい)ぶりには、呆(あき)れてしまうばかりだわ。
「スカーフ」もやはり立派な「襟巻」だということを、法務大臣はご存じないのかしら?

ご参考までに、「襟巻」のことを英語でなんと言うのか、ここに列挙しておくわね。
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「襟巻」を意味する英単語
(典拠:研究社リーダーズ英和辞典)

【1】muffler〔マフラー〕:マフラー, 襟巻, 首巻 (【4】のSCARFを参照); 《古》 《顔をおおう》ベール, スカーフ; 二叉手袋 (mitten), ボクシングのグラブ
【2】neckerchief〔ネッカチーフ〕:首巻, 襟巻, ネッカチーフ.
【3】neckpiece〔ネックピース〕:《毛皮などの》襟巻; 《甲冑の》首隠し, 喉輪(のどわ).
【4】scarf〔スカーフ〕:スカーフ; 襟巻, マフラー; ネクタイ (necktie, cravat); 【軍】 飾帯, 肩章 (sash); テーブル掛け, ピアノ掛け《など》; 《古》 【英国教】 頸垂(けいすい)帯《祈祷の際に牧師が着用する黒の長いスカーフ》
【5】wrap〔ラップ〕:包み, 包装(紙), 外被, おおい, ラップ, 肩掛け, 襟巻, ひざ掛け, 外套; 毛布
—————————————–
これを見ればお分かりのとおり、マフラーもスカーフもネッカチーフも「襟巻」なのよ。
それにしても松島みどりセンセイは、「日本の女性のファッションからスカーフというものを
全部追放したいとおっしゃる方なら、そうでしょうけど」などという、まったく論理性のない
言いがかりを、どうして言ってしまったのでしょうか? 40年前のウーマンリブのゲバルト
闘士じゃないんだから、こんな捨て台詞を吐くこともないでしょうに……。これってヤクザ語
に翻訳すると、こんな含蓄をもつのでしょうね――「ワシを責めたら日本中の女を敵にまわす
ことになるデぇ、ワレ!」

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……と、まあ、たかが参議院の規則とはいえ、この法務大臣にかかったら、そんなもん
端(はな)から無視なのですからコワイものです。
規則や法律を、自分の都合でどうにでもネジ曲げる法務大臣……。腐りきったニッポンに
ついに最凶最悪の法務大臣が出てきましたわ。今年の夏はハリウッド版ゴジラ映画が
大ヒットしましたが、国会動物園にもゴジラ並みのバケモノが発生した、ということでしょう。

でも、私はこうも思いますの。
衣服はからだから着脱可能なアクセサリーにすぎません。
その意味では、たとえば「かつら」は脱いだり、かぶったり出来るわけです。
けれども地毛だと着脱するのは無理ですわ。

松島みどり法務大臣の真っ赤なエリマキが、彼女のからだの一部だとしたら……。
からだの一部なら着脱なんて出来なくてよ。

きらびやかなエリマキをもつ動物として、みなさんはエリマキトカゲをご存じでしょう。
オーストラリアの北部と、その北にひろがるパプアニューギニアの南部に暮らしている
イグアナの仲間です。そういえば、イグアナの形態模写で知られるタモリさんは
郷里の福岡に移住されるそうよ。「笑っていいとも!」で一世一代の富を築き上げ、
虚飾の人間関係にも飽き、東京そのものだって最近ではデング熱や、舶来の毒グモの
セアカゴケグモや、さらに加えて福島方面からいろいろな形で入り込んでくる放射能汚染物質
のせいで生活環境が劣悪化していますから、“最暗黒の東京”を見限って落ち着いたところに
引っ越すというのは、人として賢明な選択だと思うわ。


みなさんはエリマキトカゲをご存じですか?
今からちょうど30年前、三菱自動車のテレビCMに、豪州原産の
珍獣エリマキトカゲが登場して、日本では国民的な人気者に
なったのでした。
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★エリマキトカゲが主役の、三菱ミラージュのCM

あゝ、イグアナじゃなくて、エリマキトカゲの話でしたわ。
エリマキトカゲは、いまから190年ちかく前に大英博物館の動物専門学芸員だった
ジョン・エドワード・グレイさんが正式な学名をつけたの。動物分類学では
「クラミドサウルス・キンギイ(Chlamydosaurus kingii)」というのよ。
英語では「フリルド・ネック リザード(Frill-necked lizard)」と呼ばれてきたの。
日本語になおせば「首をフリルで飾ったトカゲ」、文字どおり「襟巻とかげ」という意味よ。

そのエリマキトカゲの変種が、なんと日本の国会に現れたようなの。
この珍動物には、「クラミドサウルス・ミドリイ」という学名がつけられたわ。


これは貴重な映像です。エリマキトカゲの亜種「クラミドサウルス・
ミドリイ」です。現在、東京永田町の国会動物園に収容されています。

エリマキトカゲの「ミドリ亜種」は本来は大自然のなかで暮らす動物ですから、
不健康な国会動物園に入れておくのは、可哀想だと思うの。
人知れぬ野原で気楽な暮らしをするのが、野生動物のしあわせだと思うの。


エリマキトカゲの「ミドリ亜種」が、エリマキを広げて
疾走しているところです。エリマキトカゲはめったに
こうした疾走をしません。生死を分ける危機的状況のもとで
命がけで疾走するのです。

……そういう事情ですから、エリマキトカゲの襟巻をむりやり剥(は)がして
動物園の大型オリに入れる、というわけにはいきません。
動物愛護の精神に反しますからね。

★          ★          ★

それにしても国会動物園というのは奇妙なところね。
どうせ服装規定をつくるのなら、日本の国会なのだから、男子は羽織袴(はおりはかま)、
女子は晴れ着を「制服」にすればいいと思うの。国民の代表である議員さんたちが
率先垂範(そっせんすいはん)して和服を着れば、もうそれだけで生糸生産から始まって
和服屋さんに至るまで、和服の生産・流通・販売にたずさわる人々が安心して生業を
営めるし、髪結いさんや着付け師さんのような和装のプロフェッショナルたちの生活も
安定するのにね。日本では大人が、それも国会議員がそういうことをせずに、成人式に
参加する子供たちと、その親御さんにぜんぶ負担を押しつけているのですから非道いものです。
それでいて「日本文化を守れ!」とか叫んでいるのだから、国会議員センセイたちの
恥知らずな愚かさを見るにつけ、オヘソでお茶を沸かしてしまいそうになるわ。

日本の国会は、本来、イギリスの議会制度をマネたものです。
イギリスでは議会のことを「パーラメント(Parliament)」というけれど、
この呼び名は、「話す」という意味のフランスの昔ことば「パルレ(parler)」に由来してるの。
だから「パーラメント」を日本語に直訳すると、まあ「シャベリ場」ということになるわね。
実際、イギリスでは「会議や交渉を行なう場」として議会が発達したわけですから。

イギリスでは裁判所や国会では、お歴々がカツラをかぶるという歴史的な風習が今も
残っているのよ。銀髪のカツラは「権威のシンボル」ということになっているから、
大事な場所でのカツラ着用は、少なくとも男子の「正装」なのです。
マナーとかドレスコード(服装規定)というのは、つまらない人たちが顰(しか)めツラして
鹿爪(しかつめ)らしく、他人に強制する“大層なもの”になっていますが、それらの
起源をさぐると案外、たわいのないものなのよ。
西洋の“権威づけのカツラ”にしても、元々は、世の中が不潔でノミやシラミが蔓延していた
時代に、頭に毛ジラミがはびこるのを防ぐため、地毛を短く刈って、人毛を編んで作ったカツラを
かぶった、という習慣から始まっているのですから。

そんなたわいのない“権威づけのカツラ”ですけれども、日本がお手本にしたイギリスで
いまだに続いている伝統なのですから、洋装好きの政治家さんたちは、いっそのこと
これも真似すりゃいいじゃない。
すだれ頭のセットで苦労しているセイセイがたには朗報ですわよ。


国会の服装規定は、さすがに後進国の議会だけあって、
問題が山積しています。議会政治の先進国であるイギリスでは
開会日に、昔のように金髪のカツラをかぶって出席するという
奇習が残っていますが、日本の国会もここからパクった制度なの
だから、イギリスみたいにカツラをかぶればいいのです。

きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5035)から引用》と明記して下さい)

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