さて、前回のJT電話取材であやふやにされてしまった香料についてだが、尋ねても満足な回答は得られそうにないので地道に調査してみることにした。

◆JT香料の不祥事

タバコの香料を製造している香料メーカーは、JT全額出資の100%子会社で東京都羽村市にある富士フレーバー株式会社、東レの子会社で千葉県野田市と福島県郡山市に工場を持つ曽田香料株式会社(本社は東京日本橋)、大阪の長岡香料などがあるようだ。

華原朋美出演の「なんだかヒューヒューです」のCMを覚えているだろうか。JT製造販売の清涼飲料水『桃の天然水』は2002年6月に食品衛生法で無認可の「ノルマルブチルアルコール」「ノルマルプロピルアルコール」という香料が含まれていたとして、自主回収・製造中止となっていた。

これは、同年5月に協和香料化学という香料メーカーが無認可の「アセトアルデヒド」、「イソプロパノール」、「ヒマシ油」、「プロピオンアルデヒド」を使用していたとして、工場の営業停止処分・自主回収・取引先食品メーカーへの損害賠償、最終的には自己破産に至ったことをきっかけとして起こった。

で、その、富士フレーバーさんに電話で聞いてみた。

──タバコ香料を製造しているそうですね。

富士フレーバー 「はい、左様でございます。」

──どんな銘柄のなんていう香料を作っているんですか?

富士フレーバー 「タバコ香料はJTからの指示で製造しており、守秘義務があるのでJTの許可なしには情報開示いたしかねます。」

◆食品衛生法、添加物表示の穴

食品衛生法は日本において飲食によって生ずる危害の発生を防止するための法律だ。厚生労働省によって食品や添加物などの基準・検査(表示に関しては消費者庁)などの原則を定めたものである。平成7年には規制強化され、それまで義務づけられていなかった天然由来の添加物に関しても化学合成の添加物と同様に表示が義務づけられた。

しかし、以下の14種の用途においては、使用目的を表す『一括名』で表示することが認められています。

食品衛生の窓 東京福祉保健局 より引用

これは表示の簡略化を狙ってのことのようでいて、業者の説明責任を免除しているだけにしか思えないの私だけですか?「専門的過ぎてわかりにくいから、省略してもていいんじゃね?」的な発想なのだとしたら、消費者を馬鹿にするんじゃないよ!と憤慨、激おこプンプンたばこスパスパ丸なわけである。

香料メーカー「大事なレシピだから説明しません」

監督省庁「わかりにくいから省略してもいいんじゃね?」

消費者「ま、別にいっか」

ではまずいだろう。

添加物のことを気にするナチュラル嗜好の読者の方ならご存知かと思うが、ペットボトルのお茶は『高級玉露茶葉使用』とか記載はあっても、ほんのちょっと混ぜただけのクソ茶葉だったりするわけだ。ビタミンCが酸化防止剤として添加されることがほとんどだが、「ビタミンC=体にイイ!」という発想はもう通用しない。化学合成なのか、天然由来なのかという違いはわからない。普通に考えたら淹れてから何ヶ月も経ったお茶がうまいわけなかろう。パッケージに書いてある売り文句を鵜呑みにするべきではない。

◆ないがしろにされる消費者の知る権利

NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会が提出した『タバコに関する全国規制改革要望書』(http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku0706.htm

の『タバコに含まれる添加物と喫煙により発生する成分は公開し表示すべき』(http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku0706.htm#RANGE!A12)という項目が大変興味深い。暗黙の了解にメスを入れるべきという要望書なのだが、おおまかな回答として財務省が「信頼に足る国際基準がないからまだ無理」と言っている。

高校生の頃に、日本ではコカコーラ社から発売されている『ドクターペッパー』の奇妙な香りが癖になって毎日飲んでいた。パッケージに「20種類以上のフルーツフレーバー」と書いてあるのが面白くて興味本意でコカコーラのコールセンターに電話したことがあるが、回答は「我が社の機密事項なので情報開示いたしかねます」であった。

健康被害が発生してから、被害者ヅラして文句をいうのも、加害者として反省や賠償をするのも賢い選択ではないだろう。香料業界は依然として闇に包まれている。

 

▼原田卓馬(はらだ・たくま)

1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。

※ご意見ご感想、もしくはご質問などはこちらまで twitter @dabidebowie

このコーナーで調査して欲しいことなどどしどしご連絡ください

 

『紙の爆弾』最新号発売中!