イスラム国の人質になっていた後藤健二さんが殺害されたようだ。まずご遺族、関係の方々にお悔やみを申し上げたい。

結局日本政府は湯川さん、後藤さんの解放に関して「全く無力」だった。同時にマスメディアも問題の本質を突く報道は少なく、連日政府の無策振りを「膠着状態か」と報じるばかりで、独自の視点や取材からの報告は目につかなかった。

後藤さん殺害の情報に接して、安倍は目に涙を浮かべて「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する。日本がテロに屈することは決してない」と述べている。

誤解を恐れずに言おう。

湯川さん、後藤さんの殺害を安倍は内心ほくそえんでいるに違いない。

◆「テロ」との戦いに「勝利」は絶対にない

時あたかも「有事法制整備国会」開催中である。お二人の犠牲は最大限安倍に利用されるだろう。そしてそれを報道が後押しするだろう。野党も全くあてにはならない。共産党が「集団的自衛権」に沈黙する(容認する)可能性だってあろう。

だから非力なこのコラムでは精々挙国「反テロ」ファシズムに異を唱える。

「テロ」との戦いに勝利は絶対にない。

「テロ」の根源は何か?

「テロリズム」の本質とは何か?

「戦争」と「テロ」はどのように違うのか?

「戦争」は許されるけども「テロ」は絶対悪なのか?

これらの問いに1つの誤りもなく、正確な回答を出せないようでは「テロリズム」を語る資格はない。

◆テロリズムに栄養を与える要素が世界中には溢れている

爆弾を爆発させてビルを壊したり、拳銃を乱射して多数の死者を出しても、その行為自体が目的であれば「テロリズム」とは呼ばない。単なる「爆弾犯」や「乱射犯」だ。

「テロリスト」とは何らかの目的を持ち、それを獲得するために行われる、破壊活動・実力行使活動を意味する。「白色テロル」や「赤色テロル」といった言葉が使われたのは正に実力行使に、それぞれの立場からの政治的目標があったからに他ならない。

とすれば、「テロリズム」を根絶するためには、暴力や武力を用いても「獲得したい」政治的目標を消滅させる他に手段はない。

そのようなことは不可能だ。世界はそれほど単純ではなく寛容でもない。歴史を背景とした長年の抑圧や資本による蹂躙など「テロリズム」に栄養を与える要素は世界中にあふれている。民族、宗教、資本のせめぎあい等は時に交渉を拒絶する。

「テロリズム」からなるべく離れた場所にいたいならば、最低限今日的世界における「強者(抑圧者)」の側に一方的に身を置かないことだ。他に手はない。

最悪の選択は構造的に勝利がありえない「テロ」と戦うなどと宣言することだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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