たった二人(うち一人は既に処刑されたとの報もある)の人質解放に対して、現政権はこれほどまでに対応能力がなかったのかと多くの方々が呆れていることだろう。

◆子どもの感想と変わらぬ発言を繰り返す安倍首相

対策本部をヨルダンに設置してみたところで、実際には何の成果もない。人質交換は「自国の人間が優先だ」とヨルダン政府が発表した通り、日本の存在は完全に無視されている。現地本部の面目は見事に潰された形だ。安倍は人質の画像公開されるたびに「許しがたい暴挙だ。今すぐ人質を解放すべきだ」と繰り返しているが、子供の感想と変わらない。首相なのだから感想を述べている暇があれば解決に向けて尽力して欲しい。

などと、安倍に望むのは間違っている。安倍には問題解決能力はない。人並み外れた「問題発生能力」を備えているが、自分のまいた種で問題が発生すると立ちすくんで小学生並の感想を述べることしかできない。安倍だけでなく現在の自民党はそういう政党であり、公明党も同様だ。さらに言えば野党各党もこの種の問題に対する能力という点では大差ない。共産党の志位は同党の池内沙織衆院議員がTwitterで安倍政権の人質問題対応を批判したことについて「政府が全力を挙げて取り組んでいる最中だ。今あのような形で発信することは不適切だ」と述べ発言を削除させた。さすが「民主集中制、日の丸つけた「スターリン主義政党」の本領発揮だ。

◆ISIS人質事件でなぜ「自己責任論」は語られないのか?

政治家は大方が外交現実対応において必要な能力や経験を備えていないことが分かる。

外交対応能力とは、外国語が話せることを意味しない。むしろ語学力などは二の次だ。世界には多様な価値観が存在し、私たちが「正しい」と考える判断も別の文化では「間違い」にあたることがあること。口頭の「約束」はほぼ必ず破られることが原則であること。「賛同」や「同意」は一時的なものでしかないこと。日本の常識がある国では「死刑」に該当する場合もあること。国際的に「日本人は交渉に弱い」と思われていることを知っておくこと。対応策は1つではなく最善策がダメな場合を想定し最低2つの次善策を用意しておくこと。など民間の大学職員であった私ですら経験的に学んだものだが、政府の対応にそのような痕跡は見られない。

外交評論家と自称する人々で的を得た指摘をしている人がどれほどいるだろうか。東京都知事のねずみ男は国際政治が専門の東大教員だったが、「世界各国回っていてわかったことは、どの国でも売春婦の値段は大学新卒給与の3分の1程度なんですよ」としたり顔で語っていた事を思い出す。売春婦の値段調査に世界中を回っていたのがねずみ男だ。その程度の人間が東大で国際政治を教えていたのだから卒業生である官僚たちの国際感覚も推して知るべしだ。

言い方は悪いが「たった二人」の人質解放に直面してこの体たらくだ。しかも現在人質にされている方は政府の意向でシリアに出かけた可能性が高いと消息筋の未確認情報もある。なるほど、だから今回は「自己責任論」が全く政府側から語られないのか。

◆安倍政権に「集団的自衛権」を担う能力はないことが露呈した

「集団的自衛権」=米国追従の「どの国に対してもの『宣戦布告』」は今回の人質事件と同様の、いや更に困難な事件を多発させるに違いない。それに政府は対応能力が全くないことを今回露呈した。

運転免許書を持っていないのに運転目的で自動車を購入するようなものだ。エンジンをかけて数分後にはどこかにぶつかるか、悪くすると死亡事故を起こすだろう。

勘弁してくれと言いたい。そんな連中が操縦桿を握るあやふやな船で一緒に沈没させられるのは御免だ。

願わくば今回政府の「無為無策」を多くの国民が認識し、それが経済政策や社会保障政策にも通底していることに気がついてほしい。こんな出来の悪い連中に執権を握らせていたら本当の破滅を招き入れる。それを希望する人はいないだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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