7月に入って関西は暑い。蒸し暑く熱中症で病院に搬送される人があとを絶たない。それに加えて、参議院選挙の真最中だ。街頭での演説や広報活動で体調をお崩しにならぬよう、各候補者ならびに運動員の皆様にはお見舞いを申し上げる。そんなむさくるしい酷暑の中の選挙運動で以下のニュースが伝えられた。

———————————————————————

◆警察の投票呼びかけ中止に弁護士ら抗議 

WBS和歌山放送ニュース2016年07月02日付

和歌山市内で「選挙に行こう」と呼びかけていた男女の活動を中止させたのは違法だとして、安全保障関連法の廃止を求める市民団体の担当弁護士が、きのう(1日)和歌山県警察本部に抗議しました。抗議したのは、安全保障関連法の廃止を求めている「市民連合わかやま」の豊田泰史(とよだ・やすふみ)弁護士らです。

豊田弁護士によりますと、団体の男女およそ20人が、きのうの午前中、和歌山市内の量販店前で投票を呼びかけていたところ、和歌山西警察署の警備課長らにビデオなどで撮影され、集団による行進などに関する和歌山県の条例に違反することを理由に、中止させられたということです。

豊田弁護士らは、きのうの夕方、和歌山県庁で記者会見を開き「条例で選挙運動は除外されており、示威(じい)行為にも当たらない。県警の対応は違法だ」と批判しました。

一方、抗議を受けた県警察本部は「選挙運動ではなく、全員で声を合わせ『選挙に行こう』などと叫んでいた点が集団示威に当たる。適正な職務執行だった」とコメントしています。

———————————————————————

◆国政選挙や知事選挙になると県庁職員が勤務時間中に選挙運動に携わっていた和歌山県

さすが和歌山だ。もうだいぶ前の話にはなるが、国政選挙や知事選挙になると県庁職員が勤務時間中に選挙運動に携わっていたのが和歌山県。上級試験で県職員に採用された、若い知人が「こんなこと職務時間中にやってもええんやろうか?」と電話をかけてきたことを思い出した。「いいわけないだろう! 上司の指示だろうが何だろうが断れ。公選法でやられたらせっかく通った上級職をフイにするよ」とアドバイスしたが、若者は結局断れ切れず、渋々選挙運動の片棒を担いでしまったと後日報告があった。

◆自民党の重鎮、二階俊博の和歌山県

和歌山県と言えば自民党の重鎮で二階俊博(和歌山県第3区選出)を忘れるわけにはいかない。

徹底した保守政治家の二階は利権が絡むと思想も揺らぐ。小沢一郎が田中角栄から受け継いだ中国利権の乗っ取りは見事だったというほかない。2000人もの訪中団を引き連れて団長として訪中するなど「親中振り」は自民党の中では際立っているし、韓国への目くばせにも抜け目がない。同時に公共事業誘引型の政治手法はゼネコンからの献金や「グリーンピア南紀」問題など、政治力が無ければ命取りになっていたと言っても過言ではない疑惑だ。

◆疑念が高まるばかりの和歌山県警による「狙い撃ち」

そんな二階が実効支配する和歌山県で起きた今回の事件、和歌山県警警備課の増田氏に電話取材を行った。

増田氏は、「和歌山県公安条例の中の集団行進及び集団示威運動に関する条例の1項には予めの届け出が必要となっている。但し同条例の6条の2項には『選挙運動中における政治的集会もしくは演説については許可を要するものとはしない』との文言がある」という。

増田氏によると、今回「警告」を与えた人々の行為は歩道上に一列に並んで、シュプレヒコールを叫んでいた、だから公安条例に抵触するのではないかという判断だったそうだ。「集会であれば問題はない、誰かが演説をしていれば問題ではない、その要件に当てはまらないので、『許可が必要だ』と警告をした」という。

あれ? では選挙期間中に各都道府県の選挙管理委員会が投票を促す情宣を行っているのは問題にはならないのだろうか? 

増田氏にその疑問をぶつけると、
「選挙管理委員会が『選挙運動』としてやっているんではないかととらえているんですけれども」との回答だった。

え! 選挙管理委員会が「選挙運動をやっている」? そんなことないでしょう。選挙管理委員会が行うのはあくまでも広報活動で「選挙運動」とは全く違うのではないですか?

そう質問をすると「その時には『選挙に行こう』とだけ言っていたわけではないので……」と言葉を濁す。

「では『選挙に行こう』以外にはどのような言葉を発していたのですか」と聞くと、「それはここでお話しすべきことではないんですけども」と増田氏は逃げようとする。オイオイ、最初からビデオ撮影しながら法律か条例の隙間を狙って嫌がらせをしようと企んでいたじゃないのか! 和歌山県警さんよ!

繰り返し選挙管理委員会が行う広報行為と、ここで「警告」を受けた人の違いを重ねて聞いたが、「報道では色々言われているけども他にも色々言っていた」を繰り返すばかりで具体的な内容は一切明かしてくれない。

「もし『警告』に従わずそのままそこでの行動を彼らが続けていたらどうなっていましたか」と聞くと「検挙(逮捕)になったでしょうね」という。え! 逮捕かい!

和歌山県警本部警備課の増田氏はこう述べた。ふーんだ。おかしいよ。誰が「選挙に行こう」と言っていたのか知らないけれども、最初からの狙い撃ちじゃなかったのかとの疑問は消えない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

7月14日衝撃緊急出版!『ヘイトと暴力の連鎖』(『紙の爆弾』増刊)