松江署が情報提供を求め、配布していたチラシ

2012年9月に島根県の松江市で飲食店従業員の女性、柏木佐知子さん(当時26)が失踪した事件は、2015年8月に柏木さんが運転していた車ごと川に転落していたのが見つかり、「解決」したような様相を呈した。だが、私はこのほど現場を取材し、ある重大な疑念を抱いた。事故当時の現場はあまりにも危険な状態で放置されていたのではないか――。

◆転落死事故として処理

柏木さんは2012年9月27日午前2時過ぎ、松江市内で知人らと別れたのち、運転していた車と共に行方が途絶えた。島根県警は同10月6日から公開捜査に切り替えたが、有力な情報は得られないまま時が過ぎ、いつしか全国の重大未解決事件の1つに数えられるようになった。

事態が一変したのは、柏木さんの失踪から3年余りが過ぎた一昨年8月のことだ。島根県警が同月4日から同市内を流れる大橋川を捜索したところ、川底に沈んでいる乗用車が見つかった。8日、車をクレーンで引き揚げたところ、車種やプレートのナンバーが柏木さんの車と一致。車内から見つかった白骨死体の一部をDNA型鑑定したところ、柏木さんだと判明したという。

県警が検証したところ、事件性を疑わせる点はなく、車はスピードを出した状態で川に転落したとみられた。こうして全国の注目を集めた重大未解決事件は、柏木さんが車の運転を誤ったことによる転落死事故だったとして処理されたのだ。

行き止まりのすぐ後ろは川。車を運転していた柏木さんはここから転落した

◆現場取材で浮上した疑問

私が現地を訪ねたのは今年1月中旬のことだが、柏木さんが転落した現場を見て、驚いた。柏木さんは道路の行き止まりになっているところから川に転落したとみられているのだが、写真のように車で直進していると、道路は突然無くなり、川に突っ込むようになっているのだ。

現在は行き止まりのところに注意喚起のための反射板や、「この先 河川あり 転落注意!」という看板が設置されている。しかし、地元の住人たちに聞き込みをしたところ、誰もが異口同音に「ああいう注意を喚起するものはすべて、事故当時は無かったもので、川で車と柏木さんの遺体が見つかってから設置されたんです」と述べた。さらにこのあたりの道路は「街灯がなく夜は真っ暗になる」という。

私は思った。これでは、車を運転していた柏木さんが、道路が行き止まりになっているのに気づかず、川に転落してしまったことについて、単なる「運転の誤り」として片づけるわけにはいかないのではないだろうか。

事故当時、「この先 河川あり」という看板や行き止まりの反射板は無かった

◆道路を実際に自転車で走ってみたが・・・

私は実際に自分でも、柏木さんが川に転落した際に車を走らせたのと同じように、動画を撮影しながら自転車で走ってみた。それが後掲の動画である。視聴してもらえばわかると思うが、行き止まりの間近まで来なければ、行き止まりの向こうが川になっているのを視認できない。現在は行き止まりの少し手前で道路上にUターンを促す矢印と共に「行き止まり」と書かれているが、これも地元の人たちによると、柏木さんが転落した当時には「なかった」という。

このような転落防止の措置がすべて事故当時に施されていれば、おそらく柏木さんの不幸な事故は起こらなかったろう。現時点で特定の誰かに事故の責任があったとも断定しかねるが、少なくとも事故の原因を柏木さんの「運転の誤り」と決めつけていいとは思えない。今後も調査を進め、何かわかれば、当欄でレポートしたい。


◎[参考動画]松江市「柏木佐知子さん転落死事故」現場検証

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年3月号