23日衆参両院の予算委員会で、渦中の森友学園、籠池泰典理事長の証人喚問が行われた。参議院予算委員会での証人喚問の冒頭、山本一太委員長から虚偽を述べると偽証罪になるなどの注意があったが、籠池氏は冒頭の発言で安倍首相夫人から100万円の寄付を受け取ったことを再度明言した。真実は分からないが、少なくとも安倍夫人から寄付を受け取ったことについて、籠池氏の記憶は鮮明であり、それを問いただす質問にも答弁がぶれることはなかった。

◆西田質疑に表れた自民党の危機感

印象的であったのは、自民党の質問者が西田昌司であったことだ。西田はしきりに「問題の本質は政治家の関与などではなく、このような杜撰(ずさん)な設置計画を大阪府が認可したことと、マスコミ報道だ」と視線を籠池氏に向けること少なく、自民党議員席やテレビカメラをしきりに意識していた。違うだろう。たかが私立小学校の認可についての問題ならばわざわざ、国会予算委員会に証人招致などするものか。自民党は当初参考人での招致にすら、消極的であったではないか。そこに予算委員会のメンバーが現地視察に訪れた際、「この小学校建設には安倍首相の寄付100万円が入っています!」との爆弾発言が飛び出し、籠池氏をこれ以上「野に放っておけば、何を言いだすかわからない」、との危機感が募り23日の証人喚問招致を判断させたに違いない。

森友学園事件をめぐっては、私も複数回、森友学園に電話取材を行う中で、様々な問題を感じてきた。国有地の不当に安い払下げも重大な疑惑ながら、現職の総理夫人が名誉校長に名を連ねていることは最大の関心事だった。そして籠池氏によれば総理夫人からの寄付まであったという。事実ならば安倍政権は崩壊するだろう。

◆問題の本質を逸らして、実を取る狡猾さ

そこで、この日自民党が登用したのが、韓国、中国嫌いで国会では数知れぬ差別質問を繰り返しながら、「ヘイトスピーチ対策法」で民進党の有田芳生議員と歩調をあわせ、共同で法案成立を進め、あの「西田・有田握手」シーンまで残した西田昌司だ。

西田昌司議員(自民党)と有田芳生議員(民進党)

西田は確信的な差別感覚の持ち主ながらどうして、「ヘイトスピーチ対策法」の窓口に起用されたのだろうか。西田の質問を「西田砲」と名付け、彼を支援していた右派の人びとからは、「西田・有田握手」の驚くべきシーンが実現したあと、西田に対して「反日」、「裏切者」の批判が猛烈に高まった。

だがその批判は失当である。西田は狡猾で、身の振り方や演技の計算に長けた人間だ。本人が得意そうに籠池氏への質問で披歴していた通り、西田は税理士の資格も持ち合わせている。問題の本質を逸らして、実を取る技はなかなかのものだ。

 

 

「ヘイトスピーチ対策法」にしたところで、21日首相外遊中に閣議決定された「共謀罪」とセットで運用されれば、拡大解釈により21世紀型「治安維持法」として運用されることは目に見えている。「ヘイトスピーチ対策法」法案成立に血道をあげた有田議員や、しばき隊の罪も糾弾されねばならないが、「私には答弁する能力がありません」と正直すぎる答弁で、大笑い者になった金田勝利法務大臣とは違い、西田は極めて手の込んだ仕込み演技ができる。自民党参議院議員の中でも飛び抜けての演技派西田が、有田議員と握手するくらいは朝飯前だから、この日の質問者に選ばれたのだろう。

◆太田房江・元大阪府知事の不安

しかし西田がいかに、問題の本質を逸らそうとしても、西田の後ろに座る自民党議員の不安そうな顔が、「問題の本質」を物語っていた。中でも飛びぬけておろおろしていたのが、元大阪府知事の太田房江だ。2000年から2期8年大阪府知事の椅子にあった太田は籠池氏との交流や関係があったのか、西田の質問中、常にうかない、不安そうな表情だった。

西田が「問題の本質逸らし」にいくら腐心しても、籠池氏は安部夫人から100万円の寄付を受け取ったことについての証言は翻さない。のちに質問に立った民進党の福山哲郎議員が「先ほどの質問を聞いていて驚いたのですが」というほどに、籠池氏の答弁は明快だった。福山も「偽証罪があると知っての証言か」と繰り返し尋ねたが籠池氏は証言を曲げない。

さらに、安部夫人と籠池氏の夫人は「森友学園事件」発覚後の本年2月、3月になってもまだ頻繁にメールのやり取りを行っていたという証言まで飛び出した。三宅洋平と仲良しで、三宅と一緒に高江のテントも出かけ顰蹙(ひんしゅく)を買い、原発反対で、森友学園の教育理念を絶賛し名誉校長まで引き受けていた安倍昭恵。今頃首相側近に携帯電話を取り上げられているかもしれない。

◆こんなに面白い証人喚問をみたのは久しぶりだ

「森友学園事件」は、検察が動けばいつでも籠池理事長を逮捕できる準備が整っている(政府筋)そうだが、その前に籠池氏がここまで堂々と現職夫人からの寄付を証言するとは予想しなかった。この事件に関しては途中からマスメディアを尻目に、元しばき隊のジャーナリストが籠池氏を篭絡(ろうらく)し、情報を独占するという前代未聞の展開もあったが、この証人喚問での籠池証言は大阪の維新勢力だけでなく、安倍政権への強烈な打撃になることは間違いない。

「梯子を外された」と籠池氏は何度も語った。残念ながら日本会議を中心に、彼、および彼のまわりにいる人々の人間性は、その程度ということが証明されたが、こんなに面白い(不謹慎か)証人喚問をみたのは久しぶりだ。籠池氏にはさらなる「暴露」を期待したい。

(鹿砦社特別取材班)

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