2018年4月9日付読売新聞

相変わらず誰かの弱点を見つけると、攻撃に容赦のない性格は変わらないようだ。4月9日参議院決算委員会で質問に立った西田昌司議員は官僚を罵倒して見せた。「西田の罵声」、数年前まではもっぱら、中国、朝鮮への攻撃や差別に集中していて、いわゆる「ネトウヨ」の皆さんには「西田砲」などと評判が高かったようだが、「ヘイトスピーチ対策法」立法で有田芳生議員(現立憲民主党)と握手を交わしてからは、「売国奴」、「裏切り者」とかなり手痛い攻撃にさらされていた。

でも、立場の弱い人間を見つけるや、鬼の首でも取ったようにはしゃぎまくるパフォーマンスに変化はない。午後には野党の質問が控える。その前に強烈なイメージで売り込んでおかないとテレビ中継も入る委員会で存在感は保てはしない、と考えたのだろう。「西田砲」は一見健在に見えるかもしれない。


◎[参考動画]太田理財局長、森友との口裏合わせ認め陳謝「ばかか!」自民・西田昌司議員(2018年4月9日参議院決算委員会から抜粋)

◆追い詰められたのは官僚ではなく西田が所属する自民党と公明党の連立政権

だが、追い詰められているのは西田も所属する自民党と公明党が連立を組む、政権に他ならない。過日、本コラムで触れたが、日本の官僚組織は独自の文化で「鉄の結束」を保持している。ここにきてさらに防衛省からあらたな「隠蔽日報」が見つかったり、財務省が口裏合わせを認めたことは、まったく偶然ではない。官僚の側から「政権」への見切りが確定的になったというメッセージが発せられただけのこと。これを食らって一番困るのは与党であり、内閣だ。

一見従順そうに見えるが、官僚の強烈な結束と権利意識、そして何よりも彼らの高学歴は、選挙の時だけ綺麗ごとを並べる凡庸な政治家とは底力が違う。国会に出てきて形ばかり答弁をしているから、「役人」にしか見えないけれども、省庁の次官や次官補にまで成り上がる連中は、猛烈な自我を私生活では持っている。国会ではあんなにおとなしいのに、こんなハチャメチャな性格なのか、と呆れるほどの公私に差がある高級官僚と酒を飲むと腰を抜かしそうになる。

そして彼らの多くは、実は政治(家)などを恐れてはいない。昔親しかった同年齢の官僚は、年齢を重ねると「役人」らしくなるのか、と思っていたがさにあらず。ここには到底書けないような強烈な個性の持ち主が少なくないのだ。西田が吼えようが、わめこうが官僚は何とも思っていないだろう。「なんなら次にはこれを出してもいいんだよ」との冷え冷えとした声が聞こえてきそうだ。

勘違いされては困るから明言しておくが、私は官僚の「鉄の結束」や文書改竄、隠蔽、文書を「破棄した」との虚偽答弁を肯定しているのではまったくない。言語道断の不法行為であり、検察の特捜部は、このような時にこそ「有印公文書偽造」や「背任」で現役・元職の高級官僚を検挙するのが仕事だろう。いま発売中の『紙の爆弾』5月号で編集長中川志大が神戸学院大学の上脇博之教授にこの問題をインタビューしている。官僚とは? 民主主義とは? 公文書とは? 情報公開とは? がわかりやすく解説されている。


◎[参考動画]国会【森友問題これで終了か】昭恵夫人は潔白!西田昌司議員が終了宣言をする引き金となった質疑応答!=《森友学園問題》西田昌司・自民党、安倍晋三内閣答弁【2017年3月24日国会中継 参議院 予算委員会】 (2017年3月25日マネーVoice公開)※当時は佐川氏も余裕の答弁。今となってはチャンチャラおかしい1年前の国会西田劇場35分!

◆民族差別剥きだし国会発言連発の西田が有田芳生と組んで成立させた「ヘイトスピーチ対策法」

西田昌司議員(自民党)と有田芳生議員(現・立憲民主党)

ところで西田である。この男は一言でいえば「京都の恥」だろう。右翼的な政治姿勢ながら有田芳生と握手して実質「言論弾圧」を誘引しかねない「ヘイトスピーチ対策法」を成立させた戦犯であることを忘れるわけにはいかない。

国会の中で散々民族差別剥きだしの質問を多発していた西田が、ある日急に自身の罪を悔い改め180度思想や価値観を変えることなどあるだろうか。ない。断じてない。

西田が吼える相手は、常に「攻めやすい」相手ばかりである(と西田が思っている)対象ばかりで、西田の差別心に揺らぎはまったくない。

この点の相似人物は二階俊博だろう。ただし、靖国に参拝しながら中国利権を一手に握る二階は西田ほど目立ちたがらず、大声を出さない。地道に無節操をコツコツと続け、今日の地位を手に入れたのが二階だ。

空虚に吼える西田は無節操な三文役者である。だが、残念至極は、演技ではなく、質問内容で、確実に倒閣を果たすことができる弁舌を備えた野党議員がほとんどいないことだ。

これだけの材料がそろっていて一人前の料理(倒閣)が出来なければ料理人失格だ。どこかにいないか? いるはずだろう。


◎[参考動画]「なぜヘイトスピーチを規制するのか」西田昌司×有田芳生 ヘイトスピーチ対談 VOL.1(2016年5月31日shukannishida2公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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