どこから情報を掴むのかわからないが、いわゆる「架空請求」のメールが時々やってくる。以前は日に数百を超えることもあったが最近では数カ月に一回程度には減って入る。私は送り付けて来る文面自体が気に入らないので、徹底して電話をかけまくり、悪徳詐欺を働く人間を追い詰めて、実際に何件か潰したこともある。しかし世間での「架空請求」詐欺被害はいっこうに減らないようだ。

下記会話は数年前、私の居住地の警察署に「架空請求」の情報を提供したときの会話である。それ以前にも110番通報や電話で何度か警察には情報提供をしていたが、会話にもある通りひどいときは「民事事件は警察の管轄ではない」と言って切られたこともあった。今回はそのやりとりの後編だ。

―― そんな役人みたいなこと言わないで。お巡りさんは鉄砲もってますよね。
警察 ただ持たされてるだけですけどね。
―― 力があるわけでしょ。
警察 そこまでの力はないんですけどね。
―― いえいえ、捜査をする力はあるでしょ。あなたお一人ではなくとも警察として、こういう詐欺事件に緊急に対応する力を持っていらっしゃるでしょ。
警察 当然刑事の方ではそういう形で、対応させていただきますし、安心していただいたらいいと思います。
―― 私はいいんです。私ではなく、ほかの人が引っかかってからでは遅いでしょ。「警察に連絡してください」ってあちこちのポスターに書いてあるじゃないですか。
警察 そうですね。
―― それが電話したら「なかなか……」って言われたら、どうしたらいいのか、となりますよ。
警察 早急に上の方には伝えときますんで。ご住所から伺っていいですか?
―― ○○市の○○と言います。
警察 ○○市以下の住所伺っていいですか?
―― こんないい加減な対応されたら住所までいうのは怖いわ。ちゃんと「やりますよ」と言ってくれたら住所いいますよ。はっきり言いますが、情けないですよ。私は被害申告をしているんですよ。
警察 まあ、たしかにそうなんですけど。
―― そうでしょ。それを「ご意見として伺っておきます」っていうけど意見じゃないですよ。被害申告なんですから。
警察 ご意見というのは別の話で、「電話などの凍結をしろと」とか。
―― 私は「電話の凍結をしろ」なんって一言も言ってませんよ。とにかく電話一本かけて事情を聴くのは令状もなにもいらないでしょ。
警察 うーん……。
―― 要らないよ。痴漢でもなんでもあれば、「あなたどうだったの?」と事情を聞きに行くでしょ。同じじゃないですか。
警察 これが詐欺のメールだというのは、こっちも重々承知なんですよ。
―― でしょ。なら確証もあるわけですね。私は踏み込めとか、検挙しろといってるんじゃなくて、「あなたたちなにをやっているのか」と電話一本入れるだけでも違いますよ。なぜかといえば、警察ではない私が電話したって、そのあと違うんですから。私は民間人ですよ。民間人の私が架空請求の詐欺を2、3件潰したことあるけど。
警察 2、3件。おおお。
―― 「おおお」じゃないでしょ。そんなところで感心されたら困るんですよ(笑)。おまわりさんがしっかりしてくれないから私が電話かけなきゃいけない。かけたくないですよ。電話代使ってね。お巡りさんたちがしっかりしてくれないから私が自腹で電話をかけなきゃいけない。しっかりしてくださいよ。頼みますよ。
警察 おっしゃる通りだと思います。
―― おっしゃるとおりって(爆笑)。「それは違います」と言ってくれたら安心できるけど、「おっしゃる通り」といわれたら、全然信用できない。どうすればいいんですか、市民は?
警察 たしかにこのメールは何千何万という人に連絡して、その回答を待ってようなやつなんですよ。
―― そうよね。
警察 それで、これが本当のものだと勘違いした人だけを対象にしたものなんですよ。
―― 知ってます。
警察 基本的には無視していただく、っていうのを警察は指導させていただいているんですよ。電話番号も何千何万とありまして……。
―― だけど、これはいま申し上げ上げたけれども、インターネットで検索すれば、この番号自体がたくさん……。
警察 それもね、1つだけじゃないんですよ。
―― 知ってます。知ってます。日替わりで変わるし、2、3日しか営業しないわけでしょ。
警察 そうなんです。2、3日しかしないです。
―― だから2、3日のうちに止めておくことが大切でしょ。
警察 そうなんです。それが早急にね、できる……
―― なんで民間の私にできてお巡りさんにできないの?
警察 あのー、できるっていうのはあれですよね?
―― 電話をかけるだけで向こうは萎縮するんですよ。
警察 ああ、萎縮するということですか?
―― そう。
警察 ほー。
―― 私は弁護士に相談してやったこともありますよ。本気で(振込詐欺を)防止しにいきなさいよ。
警察 たしかにおっしゃるとおりですね。
―― なんで民間人の私が電話代を払ってそれをしなきゃいけないの?
警察 あー。
―― 「あー」じゃないよ。
警察 おっしゃられていることも一理ありますね。
―― たしかにこのあたりはお巡りさんの数も予算も少ないとは伺っているので、お忙しくて大変だろうとは思うけど、それでもこれはのんびりほおっておいたらいいものではないでしょ。
警察 そうですね。これについては防犯指導が必要ですね。電話番号をとめたからといって、すべての方の意識づけをまずかえたほうがいい。
―― いや、それは別の話。もちろん広報とかは必要でしょう。けれども年を取ってわからない人に広報してもわからないでしょ。だからいつまでたってもなくならないわけでしょ。
警察 そうですね。
―― 元から断つのは申し訳ないけども、意識づけだけではできない。モグラたたきのように、出てきた奴を警察に叩いてもらうことをやってもらわないと仕方がないわけでしょ。
警察 まず刑事の方に上げさせていただきます。
―― これ以上は申し上げませんけど、上に早く上げてください。
警察 本当に貴重なお話だったんで。
―― だから、本当はね、あなたに気概があったらすぐに電話しないといけないよ。こんなの職務規定違反でもなんでも何でもないんだから。一般市民から連絡が来て、詐欺の電話の話がある。インターネットにもその番号は載っていると申告がある。そちらの署のなかにパソコンが1台もないわけじゃないでしょ。
警察 そうですね。もちろんそれ分かってるのは当然のことやと思うんですよ。それが詐欺で別のところにも相談があるようなものだと思いますので。
―― だから「当然のこと」と気にしているんじゃなくて、1件1件しっかり潰していく。悪い奴は。
警察 なるほど。
―― 「なるほど」じゃないよ(爆笑)。○○さんは元々○○県の方ですか?
警察 ええ。
―― そうか。○○県の人おっとりして性格の良い方多いもんね。
警察 出身は違いますけどね。
―― ご出身は?
警察 ○○県ですね。
―― そうなん。関西弁上手ですね。
警察 ま、ま、ま、妻ももらってますしね。
―― 幸せやな。
警察 いえいえ。でも本当におっしゃることは当然のことやと思いますし。
―― だから思ってもらうだけじゃなくて、お巡りさんには行動してもらわないと。警察のしかるべきところからビシッと行ったら、こいつらはビビりよるから。どうせ飛ばしの電話番号やけどね。
警察 そうなんですよね。
―― 飛ばしの電話番号でもキャリアはすぐわかるから。キャリアたどっていけばわかる。裁判所で令状一枚とればすぐ動けるよ。
警察 そうですね。
―― でしょ? だから早急にやって。しっかり頼みますよ。
警察 ありがとうございます。(了)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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